307: 2016/01/16(土) 21:24:32.11 ID:X7Mjk9epo
308: 2016/01/16(土) 21:25:10.61 ID:X7Mjk9epo
「海色」
瑞鶴「んっ……ここ、は……?」
朧げな意識のまま周囲を見渡すと、真っ白な海がどこまでも続いてる。
私は、あの爆発に巻き込まれて……
瑞鶴「……よっ、と」
大丈夫、どうやら歩ける。見た感じ、損傷はどこにもない。
今度こそ本当に氏後の世界ってトコに来ちゃったのかな?
瑞鶴「…………」
しばらく歩いてみるけど何も見つからない。見渡す限り、どこまでも海が広がってるだけ。
309: 2016/01/16(土) 21:25:48.94 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「加賀さん……」
不意に好きな人の名前を呼んでみた……瞬間、海は血のように赤く、空は闇よりも深い黒に染まる。
瑞鶴「うぇっ……何なのこれ……!」
そんな中で前方に目をやると加賀さんの姿。いや、それだけじゃない。赤城先輩に飛龍先輩、蒼龍先輩も!
瑞鶴「加賀さーん!」
私は足早にそっちに向かうけど……
瑞鶴「えっ!?」
四人の姿がどんどん薄れていく。
瑞鶴「加賀さん、待ってよ!」
その背中に触れようとするけど、みんなの姿は完全に消えてしまって……精一杯伸ばした手は虚空を掠めた。
310: 2016/01/16(土) 21:26:43.75 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「そんな……どうして……!」
しばらく呆然と立ち尽くしていたけど……周囲の風景が見覚えのあるものだと気付く。
瑞鶴「ミッドウェー……」
海軍が誇る世界最強の第一機動艦隊、南雲機動部隊の4空母が沈んだ場所……
瑞鶴「えっ?」
何、言ってるんだ私……? 突然頭の中にそんな記憶が入ってくるけど、どこかおかしい。
加賀さんも赤城先輩も、二航戦の二人だって健在だ。そもそも、今までミッドウェーが戦場になったことなんて無い。
311: 2016/01/16(土) 21:27:15.97 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「っ!?」
頭の中で情報を整理できず混乱していると、突然周囲の風景が変化した。これは、マリアナ……?
瑞鶴「翔鶴姉! 大鳳!」
視線の先には翔鶴姉と、後輩の大鳳の背中。近づくと、先程と同じようにその姿が徐々に薄れていく。
そっか。マリアナはこの二人が沈んだ場所。大鳳の方はこれが初陣だったのに……
頭の中に当たり前のように入ってくる、まったく覚えのない情報。一体何なんだろう……
312: 2016/01/16(土) 21:28:15.30 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「今度は、私か……」
三度変化する風景。レイテ……それだけで自分が沈んだ場所だと理解できた。今度は私自身が消えていくのかな?
瑞鶴「あっ……」
しかしその考えはすぐに否定される。前方に私の幻影。当然、近づくとどんどん消えていく。
瑞鶴「栄光の空母機動部隊はここで壊滅。この後は……あ、あれ?」
私の幻影が消えて、周囲を見回すとまたミッドウェー。加賀さん達4人の幻影も。どうなってるの?
瑞鶴「加賀さーん!」
今度こそ、何か話せるかな? そんな淡い希望を胸に走って行くけど、やっぱりみんな追いつく前に消えてしまう。
同時に周囲の風景はまたマリアナへ。翔鶴姉と大鳳の背中が見えるのもさっきと同じ。
313: 2016/01/16(土) 21:29:12.93 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「はあ……」
もう何回、何十回繰り返したかな? 幻影を追いかけたけど、何にも触れられない。
瑞鶴「何なのよ、もう……」
さすがに疲れてきたのでその場で座り込んで目を閉じると、空母以外の艦娘のことも頭に入ってくる。
色んな海で色んな戦いがあって、戦艦も駆逐艦も、巡洋艦も……殆どの艦が沈んじゃったんだよね。
私の艦隊の仲間達も……加賀さん、雷、私と鈴谷、浜風。榛名は……大破着底だったか。
???『…………か……す……』
っ!? しばらく座り込んでると、突然囁くような声が聞こえる。
???『何度でも……繰り返す……変わらない、限り……!』
今度はハッキリと聞き取れた。声色は加賀さんか、赤城先輩に似てる。
その声の方へ走るけど、何も変わらない。追いつけない追いかけっこを声の通りに何度も繰り返すだけ。
314: 2016/01/16(土) 21:30:14.80 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「何度でも、繰り返す……か」
ああ、そうだった。色々と思い出してきた。これは過去に実際にあったこと。繰り返されてきた戦場の記憶。
加賀さんが、まだ軍に配属されてすらいない私を五航戦と呼んで、私は何の疑問も持たずにそれを受け入れてた。
浜風が、一度も会ったことないはずの金剛や信濃の痛みを知っていた……
ほとんどの艦娘には苦手とする海域があった。当たり前だ……かつて自分が沈んだ場所なのだから。
この世界そのものがループしてるのか、それとも先代の艦娘とかがいて、何年か置きに戦争が起きているのか。
それはまだ思い出せないけど……一つ確かなのは、私達は深海棲艦との戦いを何度も何度も繰り返してきたってこと。
315: 2016/01/16(土) 21:31:17.98 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「…………」
私は一旦立ち止まり、漆黒の空を仰いでスッと大きく息を吸い込んだ。
瑞鶴「変われるよッ!!!」
悲しみに閉ざされて、泣くだけじゃ前には進めない。私は精一杯叫んで、天に向けて矢を放つ。
瑞鶴「加賀さんと……大切な仲間達と一緒なら、私はどこまでも歩いていける!」
瑞鶴「過去だって取り戻せる! 運命にだって抗ってみせる! きっと未来も切り開けるよ!」
根拠なんてどこにもない。もしかしたら、過去にも同じことを言って失敗してたのかも知れない。
それでも私は、今度こそこの戦いを終わらせたいと願った。
放たれた矢は漆黒の空を切り裂き、周囲は最初の暖かい海色を取り戻す。
これで帰れるのかな? それとも……
316: 2016/01/16(土) 21:32:34.10 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「!?」
ふと見ると前方に女性が一人。長い髪にサイドテール。銀髪なんだけど、雰囲気は翔鶴姉よりも赤城先輩に似てる。
それにどことなく加賀さんの面影も。深海棲艦……なのかな? 服はボロボロで、色々危ない所が見えそうなんだけど、艤装は付けてないみたい。
空母棲姫「…………」
女の人は私の前に立って、顔をマジマジと見つめてくる。ちょっと恥ずかしい。
空母棲姫「綺麗で真っ直ぐな目をしているわ……あなたの母親と同じ……」
317: 2016/01/16(土) 21:33:11.53 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「えっ!? お母さんのこと、知ってるの?」
今のところ襲ってくる気配も無いみたいだし、思い切って聞いてみよう!
瑞鶴「あの、お母さんって空母水鬼のことだよね? どうしてお母さんが深海棲艦に?」
空母棲姫「知りたいの? それがあなたにとって、とても残酷な真実だったとしても……?」
瑞鶴「もう何を言われても大丈夫だよ。教えて」
空母棲姫「そう……」
彼女は淡々と話し出した。遠い遠い昔の話……深海棲艦の出自のこと。
そして、軍令部の一部が深海側に肩入れしていることを。
318: 2016/01/16(土) 21:34:13.94 ID:X7Mjk9epo
空母棲姫「あなたの母は軍令部次長の腹心だったわ。けれど、あの男と違って深海側に協力するのを良しとしなかった」
空母棲姫「それどころか深海棲艦に関する事実を公表して、大本営が過ちを認めた上で立ち向かうべきだと説いたのよ」
空母棲姫「深海派筆頭だった次長は、口封じの為にあなたの母を捕らえて監禁したわ。表向きには、船の事故で亡くなったことにしてね」
空母棲姫「その後も深海派に協力するよう説得を続けたけど、彼女は首を縦には振らなかったわ」
空母棲姫「説得不可能と判断した次長は、最後の手段に出た……」
瑞鶴「あの艤装をくっ付けて、深海棲艦にしちゃったってこと……?」
空母棲姫「そう。あなたも気付いているでしょうけど、鬼や姫の名を冠する深海棲艦は量産型のイロハ級とは全くの別物よ」
319: 2016/01/16(土) 21:35:00.77 ID:X7Mjk9epo
空母棲姫「負の感情が凝り固まって出来た、言うなれば概念のような存在のイロハ級に対して」
空母棲姫「鬼や姫は人間に専用の艤装を取り付けたもの……つまり艦娘と同じ存在なのよ」
やっぱりそうなんだ……あの戦艦棲姫や水母棲姫も……そして、この人も。
空母棲姫「この艤装を付けられた者は深海棲艦が放つ負の感情に囚われ、彼女らと同じように人間に対して憎しみを抱くようになる」
空母棲姫「私や空母水鬼は艤装を付けられてからまだ日が浅いわ。今はその支配にも抗えているからこうしてあなたと話も出来ているけど……」
空母棲姫「それでも戦闘になると自身を制御できなくなり、歯止めが効かなくなってしまう」
空母棲姫「私も空母水鬼もいずれは戦艦棲姫と同じようになってしまうでしょうね。あの、憎しみのままに血と戦争を求める殺戮機械に……」
320: 2016/01/16(土) 21:35:54.94 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「ちょ、ちょっと待って! お母さんはもう沈んじゃったんじゃないの!?」
空母棲姫「沈んではいるわね。でも氏んではいない……戦艦棲姫が沈む前に言っていたでしょう?」
戦艦棲姫『私は沈むわ。力を蓄える為に、またしばらく眠りにつかなければならないけど……』
空母棲姫「今は深海で眠っているだけ。しばらくしたら力を取り戻して活動を再開するわ。それが何を意味するか……わかるわよね?」
瑞鶴「お母さんと、何度も何度も戦わなくちゃいけない……ってこと?」
空母棲姫「そう。その上戦う度に艤装の支配は強まっていって……最後にはあなた達のことも完全に忘れてしまうのよ……」
そうか……これが私達にとっての残酷な真実……か。
321: 2016/01/16(土) 21:36:48.83 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「鬼や姫クラスの深海棲艦も、倒しても何度も復活するってこと? それじゃあこの戦いはずっと終わらないの?」
空母棲姫「それは……」
瑞鶴「うっ……!?」
瞬間、立ち眩みしたと思ったら周囲が急に明るくなってきた。
空母棲姫「……そろそろお目覚めの時間のようね」
瑞鶴「ちょっ、待ってよ! まだ聞きたいことがいっぱいあるのに……!」
空母棲姫「大丈夫よ。あなたならきっと真実に辿り着ける。レイテを生き残ったあなたなら……ね」
声と共に女性の姿もどんどん薄れていって、記憶と共に海色に溶けていく。
322: 2016/01/16(土) 21:37:20.70 ID:X7Mjk9epo
空母棲姫『瑞鶴……目を覚ました時、きっとあなたはここでの事を殆ど忘れているでしょう……』
空母棲姫『でも、もしほんの一片でも、心のどこかで覚えていたのなら……それがあなた達の未来を切り開く希望になるわ』
空母棲姫『また会いましょう、瑞鶴。今度は加賀と一緒に、戦場で……!』
323: 2016/01/16(土) 21:38:02.03 ID:X7Mjk9epo
_____幌筵泊地、執務室
加賀「艦隊、泊地に帰投しました。作戦報告書はこちらになります」
幌筵提督「はい、お疲れ様」
加賀「ご不明な点があったら鈴谷に聞いて下さい。私は用があるので……失礼します」
幌筵提督「あ、ちょっと加賀さん!」
加賀「はい?」
幌筵提督「その……たまには休んでよ。任務が終わった後、いつも南方のあの場所まで行っちゃうでしょ?」
幌筵提督「そんな生活続けてたら加賀さんの方が保たないよ?」
加賀「心配には及びません。任務に支障が出ないようにはしているつもりです」
324: 2016/01/16(土) 21:38:53.59 ID:X7Mjk9epo
鈴谷「何言ってるの加賀さん。明らかに無理してんじゃん」
鈴谷「別に鈴谷達だって、瑞鶴のこと諦めたわけじゃないよ? ただ、あの後あれだけ捜しても手掛かり一つ見つからなかったわけだし」
鈴谷「同じ場所を闇雲に捜したところで見つかりっこないよ」
鈴谷「だから偵察機の映像とか、あの時の潮の流れなんかを分析した情報を集めて地道にさ……」
加賀「ええ。だからそっちの方はあなた達に任せているでしょう? 私は自分が納得するまで捜すだけよ」
鈴谷「加賀さん!?」
加賀「もういいでしょう? 時間が惜しいので……失礼します」
325: 2016/01/16(土) 21:39:56.66 ID:X7Mjk9epo
_____南方海域付近
ありったけの偵察機と電探を載せてまたこの場所へ。もう何度目の捜索か……数えるのはとうにやめてしまった。
加賀「瑞鶴……」
最愛の人の名を呟きながら、空を睨んで矢を構える。
加賀「必ず……私が見つけ出す……! 全機発艦……っ!?」
発艦と同時に全身を襲う激痛。放たれた艦載機は彩雲40機と翔鶴さんから借り受けた、試製景雲46機。
景雲……ごく最近開発された、大重量艦載機と呼ばれる機体。翔鶴さんや大鳳のように、強化された装甲甲板を持っていなければ発着艦すら困難な代物。
私のような旧型艦が無理に使えば、身体への負荷は凄まじいものになる。けれど、そんな事気にしてる場合じゃない。
索敵能力に優れ、より広い範囲を捜索できるこの子達なら小さな痕跡でも発見出来るかも知れない。今は、そんな僅かな可能性にでも縋りたい。
加賀「まったく……いつの間にあの子は、私の中でこんなに大きくなったのかしら……」
326: 2016/01/16(土) 21:40:51.82 ID:X7Mjk9epo
捜索を始めてから小一時間程経過したところで、景雲からの入電。
加賀「……何かしら?」
景雲妖精『我、敵艦を発見す!』
加賀「!?」
そんな、馬鹿な。この辺り一帯は非戦闘海域。あの戦艦棲姫への追撃戦以外で戦いが起こったことは一度もないはず。
景雲妖精『敵艦、空母ヲ級改1隻。小破未満の軽微な損傷を負っているものと思われます』
なるほど。他の場所で戦闘があって、ここまで逃げてきたと言うわけね。相手は高い索敵能力を持つ正規空母。見つかるのは時間の問題か。
こちらが単独で行動中と知れば、敵は必ず仕掛けてくる。艦攻どころか艦戦すら積んでいない今の状態で応戦は不可能。
このまま着艦を行わずに離脱しても、私の速力で振り切れるかどうかは微妙なところ。
それに何より……翔鶴さんから預かった大切な景雲。捨てるわけにはいかない。
327: 2016/01/16(土) 21:41:58.65 ID:X7Mjk9epo
加賀「全航空隊、海域より離脱します。着艦体勢に入って」
仕方ない。着艦しながらひたすら回避に徹し、敵が発艦できなくなる夜になるのを待つしかない。
加賀「来たわね……」
全軍離脱の指示を出してから数分後、電探に敵の艦載機の位置が表示される。捕捉されたみたいね。
彩雲は全機着艦出来た。景雲も相手の艦載機を振り切って着艦体勢。撃墜されることはないと思うけど……
加賀「く……っ!!」
1機目の景雲が着艦。掲げた飛行甲板に凄まじい衝撃が走る。大重量艦載機と呼ばれる所以……その痛みは発艦時の比では無い。
加賀「あと、45機……!」
328: 2016/01/16(土) 21:43:18.76 ID:X7Mjk9epo
20機程度着艦を終えたところで敵の艦載機が見える。艦戦21機、艦攻45機、艦爆は10機。
ヲ級改の本来の搭載数は144機だから、前の戦闘で相当損耗したみたいね。それでも、私一人を沈めるには十分な数。
ヲ級改「あら? 非戦闘艦が偵察機片手に彷徨いてると思ったら、とんだ大物だったわね」
敵空母は艦載機を操りながら語りかけてくる。当然、返答をしている余裕は無い。
ヲ級改「今日は随伴艦は全滅するし、艦載機もたくさん落とされるしで散々だったけど……」
ヲ級改「まさかこんな場面に出くわすなんて。あなたを倒せば、先の戦いの失態も帳消しになるだろうね」
言いながら攻撃隊を嗾けてくる。これは……着艦をしながら躱せるようなレベルじゃない。
329: 2016/01/16(土) 21:44:11.18 ID:X7Mjk9epo
加賀「……くっ!」
艦爆の急降下爆撃は何とか躱すものの、本命の艦攻隊による魚雷が飛行甲板に直撃。中破。
加賀「飛行甲板をやられました。着艦不能です。まだ着艦出来てない子達は最寄りのラバウル基地を目指して下さい」
景雲妖精A『そ、そんな……加賀さんを置いて行くなんて……!』
加賀「あなた達が残っていてもどうにもならないでしょう? 早く行きなさい」
景雲妖精B『特攻……特攻すれば、きっとアイツだって沈められます!』
加賀「駄目です。そんな形であなた達を失ってしまったら、翔鶴さんに顔向け出来ません」
景雲妖精A『でも命には変えられないでしょう!? 我々は加賀さんの為ならこの命を捧げる覚悟は出来ています!』
330: 2016/01/16(土) 21:45:24.33 ID:X7Mjk9epo
敵は着艦体勢に入っていてしばらく艦載機は飛ばせないけれど、直掩の戦闘機はまだ残っている。
今特攻したとして、包囲網を突破して敵にぶつかれるのは精々1機か2機。発着艦不能になる程の致命傷を与えられる可能性は限りなく0に近い。
加賀「そんなことをしてもあなた達の命を無駄に散らすだけよ。今の私には、幸運の女神はついていないのだから……」
景雲妖精B『加賀さん……』
加賀「私に考えがあります。よく聞いて」
ヲ級は南方海域で艦娘達と交戦して、ここまで撤退してきた。このまま南方まで飛べば、その部隊が見つかるかも知れない。
最悪、無線で連絡が取れる距離まで行けばSOSを出せる。ここで無策のまま夜になるのを待つよりはまだ可能性があると言える。
景雲妖精A『りょ、了解です……加賀さん、どうかご無事で!』
作戦を聞いた偵察隊の子達は進路を変えて南方へ。ヲ級はそれを追う素振りすら見せない。
331: 2016/01/16(土) 21:46:29.13 ID:X7Mjk9epo
ヲ級改「無駄なことを……すぐ楽にしてあげるわ」
装備換装を終えたヲ級が再び発艦。中破している所為で思い通りに動けない。これは……避けられないわね。
そして今の状態でまともに喰らえば……恐らく私は沈む。
加賀「瑞鶴……」
もういない、あの子の名前を呼ぶ。本当は私自身もわかってた。ただそれを認めたくなかっただけで……
加賀「あなたはもう、いないのよね……」
あなたに触れられないのなら……あなたの笑顔を見られないのなら……
この世界に、意味なんてない……
ヲ級改「終わりね。沈みなさい!」
加賀「瑞鶴……! 今、あなたのところへ……」
332: 2016/01/16(土) 21:47:21.94 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「させるかぁーーーっ!」
烈風改を始めとする艦戦隊で加賀さんの真上にいる敵攻撃機を撃墜。
そして、流星改から放たれた魚雷がヲ級を正確に捉えた!
ヲ級改「ぐっ……な、何故……? あなたは……沈んだ……はずじゃ……」
敵はこちらを振り向き、睨みつけてくるけどもう沈むしかない状態。攻撃は出来ない。
まあ、私自身も何で生きてるのかなんてわかんないんだけどさ。
あれだけ大きな爆発に巻き込まれたのに、艤装も艦載機も直ってるし。
瑞鶴「加賀さんっ!」
沈み行くヲ級を無視して加賀さんの方に向かう。良かった、被弾はしてないみたい。
敵の攻撃隊は全て撃墜。まあみんな、優秀な子達ですから!
333: 2016/01/16(土) 21:49:21.95 ID:X7Mjk9epo
加賀「……ずい……かく?」
瑞鶴「もう、加賀さんってば駄目じゃないですか~。いくら非戦闘海域だからって、艦戦すら持ってこないなんて」
加賀「…………」
あれ? 加賀さんは放心状態。私がここにいるのが信じられないかのよう。いや、それは私もなんだけどさ。
瑞鶴「加賀さ~んっ!」
とりあえず揺さぶってみたり、ほっぺを突っついてみるけど反応は無し。よしよし。
瑞鶴「加賀さ……っ!?」
中破して露わになってる、豊満で艶かしいお胸に手を伸ばそうとしたら、物凄い勢いで抱きついてきた。
加賀「ずい……か……く……瑞鶴っ! 瑞鶴!」
私の、悲しいくらい無い胸に顔を埋める加賀さん。泣いてるんだけど、その表情を決して私には見せようとしない。
そんな部分もまたいじらしくて、愛らしくて……私は加賀さんをギュッと抱き締めた。
334: 2016/01/16(土) 21:50:17.08 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「加賀さん……」
こんな時に私が掛けるべき言葉。そんなのは一つしかない。決まってるよ。
瑞鶴「ただいま……!」
加賀「瑞鶴……」
漸く顔を上げて、その優しい笑顔を見せてくれる加賀さん。えへへ……好きだなぁ、この笑顔。
加賀「おかえり」
次の瞬間には、加賀さんの方から抱き締めてくれた。この感覚も随分久しぶりだ。
遠くへと広がる海の色は暖かくて、まるで夢の中で描いた絵のようなんだけど、この温もりは紛れもなく本物で。
本当に加賀さんの……大切な人のところに戻ってこれたんだって実感する。
335: 2016/01/16(土) 21:51:08.57 ID:X7Mjk9epo
加賀「それにしてもあなた、今までどこにいたの?」
加賀さんを曳航しながら帰港中、当然の疑問を投げ掛けられる。ただ、その答えを私自身も知らない。
瑞鶴「いや、それが本当に私にもよくわかんないんです」
瑞鶴「気がついたら南方の入り口辺りにいて、すぐに景雲……でしたっけ? あの艦載機を見つけて……」
瑞鶴「加賀さんがピンチだって聞いたんで光の速さで走ってきたんですけど」
瑞鶴「沈んだ後のことは何も……あっ」
一つ、思い出したことがある。酷く朧げで、頼りない記憶だけど……
336: 2016/01/16(土) 21:51:48.25 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「夢を、見ました」
加賀「夢?」
瑞鶴「はい。加賀さんのお母さんの夢……」
加賀「あなた何を言っているの? 会ったこともないでしょう?」
瑞鶴「それはそうなんですけど、何となくだけどわかったんです。加賀さんのお母さんなんだって……」
瑞鶴「それで、なんかすっごい重要なことを伝えられたような……えっと、何だったかなぁ……」
駄目だ。必氏に夢の内容を思い出そうとするけど、肝心な部分は霞掛かったように見えてこない。
337: 2016/01/16(土) 21:52:27.63 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「ああもう駄目、思い出せない! きっとアレですよ。娘のことをよろしくねって感じの」
加賀「ふふ、何それ。まったく、あなたって子は……」
微笑しながら撫でてくる加賀さん。えへへ……
瑞鶴「まっ、お義母さまに託されたことですし! これからも守ってあげますよ、加賀さん!」
加賀「調子に乗らないの」
瑞鶴「あいたたた! い、いたっ、いひゃいですって! ごめんなさーい」
調子に乗って加賀さんの背中をバンバン叩くと、予想通り反撃を受けてほっぺを抓られる。
このやり取りも久しぶりだな。えへへ、感動の再会ってのも悪くないんだけど、やっぱ私と加賀さんの関係って言えばこんな感じだよね。
338: 2016/01/16(土) 21:53:19.11 ID:X7Mjk9epo
_____幌筵泊地
途中、会敵することもなく無事に泊地に帰投。時刻はマルフタマルマル。
さすがに深夜なので島の人達に会うことはなかった。
瑞鶴「提督さん達、もう寝ちゃってるかなー? 失礼しまーす」
幌筵提督「!?」
瑞鶴「あっ……」
鈴谷「ずい……鶴……!?」
執務室に入ると、みんなの……大切な仲間達の姿。私は即座に駆け寄る。
339: 2016/01/16(土) 21:53:55.40 ID:X7Mjk9epo
幌筵提督「瑞鶴ちゃん!? 加賀さんも、無事なの!?」
鈴谷「本当に今までどこほっつき歩いてたの!? べ、別に泣いてなんかないし……」
榛名「瑞鶴さん……良かった……本当に、良かったです」
浜風「瑞鶴。必ず戻ってくるって、信じてました」
雷「もう! どれだけ心配したと思ってるのよ?!」
みんな、暖かい言葉で迎えてくれて……私は溢れそうになる涙を堪えながら提督さんの前に立って敬礼する。
瑞鶴「旗艦瑞鶴、ただいま戻りましたッ!」
幌筵提督「うん。おかえり……瑞鶴ちゃん」
そう言って提督さんは私を抱き締めてくれた。この温かさ、私はきっとこの先忘れない。いつまでも忘れないよ。
340: 2016/01/16(土) 21:55:27.92 ID:X7Mjk9epo
鈴谷「それにしても本当に良かったよ。瑞鶴も勿論だけど、加賀さんのことだってすんごい心配だったんだからさ」
瑞鶴「え? 加賀さんも?」
浜風「そうですね。あなたがいなくなった後の加賀は、とてもじゃないけど見ていられないような状態でしたよ」
加賀「ちょっと、二人とも。やめなさい」
鈴谷「加賀さんったら毎日毎日、いつ寝てんだってくらいに瑞鶴が沈んだ場所に通いまくって捜索を続けてたの」
鈴谷「そんな生活してたらいつか壊れちゃうよって言っても全然聞かなくて、止めようものなら物凄い形相で睨んでくるしさー」
鈴谷「いやーマジ殺されるかと思ったわ~」
341: 2016/01/16(土) 21:56:28.72 ID:X7Mjk9epo
榛名「そう言えば、榛名も見てしまいました。少し前に翔鶴さんがここに来ていたんですけど」
榛名「加賀さんは、瑞鶴さんを守り切れなくてごめんなさいって何度も何度も翔鶴さんに謝り倒していて……」
榛名「それでその、一週間以内に瑞鶴さんが見つからなかったら切腹して詫びますって言い出して、翔鶴さんの方はドン引きしてました……」
雷「私も、ちょっと前に加賀さんが落ち込んでて、もう見てられなくなったからギュッて抱き締めてあげたんだけど……」
雷「胸の辺りが瑞鶴に似ててとても落ち着くって言われたわ」
加賀「」
瑞鶴「も、もうやめてーみんな! 加賀さんが息してないの!」
真っ赤になった顔を手で覆いながら蹲る加賀さん。いや、私からしたら嬉しいんだけどさ。
342: 2016/01/16(土) 21:57:49.83 ID:X7Mjk9epo
幌筵提督「ほら、瑞鶴ちゃん。加賀さんの気持ちに、応えてあげなきゃ」
次の瞬間、提督さんに背中を押されて加賀さんの前に。みんなも期待を込めた眼差しで私達を見ている。
この流れって……もう、結局みんなしてこういう方向に持って行きたかっただけか~。
仕方ないなぁ。ちょっと癪だけど、私も加賀さんに伝えたいこと、あるんだからね!
瑞鶴「加賀さん!」
私は蹲ってる加賀さんを抱きかかえる。このお姫様抱っこの体勢もいつ以来だったか……随分懐かしく感じる。
加賀「ず、瑞鶴……?」
真っ赤になってる加賀さんの顔を引き寄せる。お互いの吐息さえも掛かりそうな距離。
343: 2016/01/16(土) 21:59:41.61 ID:X7Mjk9epo
瑞鶴「加賀さん……本当にありがとね。そこまで加賀さんに想って貰えるなんて、私は幸せだよ」
瑞鶴「今さら、改めて言うことでもないかも知れないんだけど……」
瑞鶴「加賀さん、愛してます」
加賀「まったく……真顔でよくそんな恥ずかしいことが言えるわね。これだから瑞鶴は……」
顔を真っ赤にしながらも視線は私を見つめてくれてる加賀さん。
私がただ黙って見つめ返していると、加賀さんも根負けして口を開いた。
加賀「……愛してるわ、瑞鶴」
えへへ、やっと聞けた。私達は少しの間見つめ合った後、お互いに唇を重ねた。直後に沸き起こる、みんなからの祝福の拍手。
照れくさいとか、恥ずかしいと言った感情は一切無くて、ただ純粋に嬉しかった。
この泊地に配属されて、みんなと一緒に頑張ってここまでやって来れて本当に良かった。
みんなと出会えて、色んな事を乗り越えてきて……こんなにも心が一つになる世界を見つけた。
失った物もたくさんある。それが切なくて、時を巻き戻してみたくなることもあるよ。
それでもやっぱり、みんなといられる今が最高!
344: 2016/01/16(土) 22:00:29.13 ID:X7Mjk9epo
翔鶴「うふふ……瑞鶴ったら」
赤城「翔鶴? 何を読んでいるの?」
翔鶴「赤城さん。瑞鶴から手紙が来たんです」
赤城「あらあら……あの二人もなのね……」
赤城「小鳥の翼がついに大きくなって、旅立ちの日が来たのね」
翔鶴「あの二人には幸せになって欲しいですね。私達に負けないくらいに!」
赤城「そうね。瑞鶴さん、加賀さん……どうか幸せを掴んでくださいね」
赤城「今回こそは……ね」
345: 2016/01/16(土) 22:01:50.30 ID:X7Mjk9epo
翔鶴姉へ
元気にしていますか? 最近は忙しくて、あんまり顔を出せなくてごめんね。
今は休暇を取って加賀さんと旅行に行っています。少し長くなりそうだけど、翔鶴姉と赤城さんの結婚式までには帰れると思います。
横須賀で二人の晴れ姿を見られるのを楽しみにしています。
あまり無理はしないで、体に気をつけて健やかに過ごして下さい。
瑞鶴
P.S. 私も加賀さんと結婚します。
完
346: 2016/01/16(土) 22:03:02.72 ID:X7Mjk9epo
このSSは今回で終了となります。まだ解決してない問題も残ってますが、続編等は今のところ考えてないです。
今後は瑞加賀や赤翔なんかの単発ネタ等を思いついた時にスレ立てして投下していこうと思っています。
それではここまで読んで下さった方、レス下さった方、最後までお付き合い頂いて本当にありがとうございました。
良い瑞加賀を。



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