112: 2015/03/29(日) 14:28:29.46 ID:vI7gBQda0


前回:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第三夜】

最初から:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」
「艦これ」運営鎮守府 公式カレンダー二○二六

三日月「それが……電ちゃんの答えなんですね?」

電「はい」

電「私の……答えなの……です」

三日月「……そっか」

三日月「電ちゃんなら、きっと強くなれます」

電「…………」

三日月「…………電ちゃん?」

三日月「私も……強く……なれると思いますか?」

電「……すー……すー……」

三日月「……ふふ、寝ちゃったのか……」

三日月「おやすみなさい。電ちゃん」 ギュー

 電ちゃんなら、きっと強くなれる。
 でも、私はどうなんだろうか。司令官は、私を最強にしてくれると言ってくれた。つまりそれは、鎮守府で一番強い艦娘にするってことだ。果たしてそんなことができるのだろうか。

三日月(……私次第なのかも……しれない)

 司令官に言われたことを、私自身が信じなければ、決して強くはなれない。そんなことは分かってる。――けど、やっぱり不安なんだ。

三日月「…………寝なきゃ」

電「すー、すー」

 今は余計な事は考えないようにしよう。そう思い、私は静かに眠りについた。

113: 2015/03/29(日) 15:00:11.72 ID:vI7gBQda0

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



三日月「……あれ、ここはどこだろう」

 目を開けると、そこは白い世界だった。その白い世界はずっと奥まで続いていて、終わりが見えない。
 私はそんな中、一人でポツンと立っている。辺りを見渡しても、誰もいない。ただ一人だ。
 シーンっと辺りは静まっており、まるで時間が止まっているみたいだ。


『……では、行きましょう』


三日月「!?」 クル

三日月(左から……声?)

 静まり返っていた空間だったけれど、突然声が聞こえた。私は自然と左側に視線を移してしまう。

三日月「……私?」

 そこには、私がいた。


三日月『大丈夫です。皆さん私が守りますから! こんな私が旗艦では頼りないかもしれませんが、それだけは信じてくださいっ』


 そこにいる私は、にっこりと笑いながら周りの人達にそう伝えている。周りの人達の顔はぼやけていて見えない。人数はそこにいる私含めて6人だ。


三日月『……では、行きましょう! 皆さん、暁の水平線に勝利を刻みましょうっ!』

『『『了解!!』』』

三日月『では、全艦出撃です!』


三日月「…………」

 そこにいる私は、とても自信に満ち溢れている。多少下出に出ているけれど、私ではあんなことは言えない。
 ……いや、言いたい。だからこそ、ハッキリわかる。

三日月(ここは、夢の中だわ……)

三日月「……そしてあそこにいる私は……」

 自分がなりたいと思っている“理想の自分”だ。

114: 2015/03/29(日) 16:31:24.11 ID:vI7gBQda0


『……ふふふ……』


三日月「!?」 ビク

 今度は、後ろから笑い声が聞こえた。少し身体がビクッと反応してしまう。

三日月「……」 クル

三日月「……え?」

三日月(周りが……暗く……!?)

 先ほどまで白かった世界が、黒く染まり始めていた。辺りを見渡しても、理想の自分はいなくなっており、先ほどまであった白の世界は段々と蝕まれていく。


三日月『……ひどいよね……』


三日月「……わ、わた……し?」

 ここに先ほどまであった白の世界はすでに無くなり、黒の世界へと変わっていた。そして、もう一人の自分が立っている。距離はさっきまでいた理想の自分よりもはるかに近い。


三日月『……私だって、私だって、私だって、私だって、私だって……』 ブツブツ

三日月『……頑張ってるのに……司令官は……司令官は……!』


三日月「……」


三日月『……私は役立たず。私は無個性。私は疫病神』


三日月「…………」


三日月『役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず』


三日月「……やめて」


三日月『私は役立たず』


三日月「やめて」


三日月『私は……』 クル


三日月「!?」 ビク


三日月『……』 ニヤリ

三日月『人頃し』


三日月「――ッ!!」 バッ

 ダッダッダッダ

三日月「やめてッ!!」 ガシ

三日月『…………』

115: 2015/03/29(日) 16:52:31.95 ID:vI7gBQda0

三日月「そんなこと……私が一番分かってる……!!」

三日月「だから……もうやめて!」

三日月『…………』

三日月『……司令官の言ったことが本当だなんてまだ信じてるの?』

三日月「!!」

三日月『睦月型が最強になれるわけ……無いじゃない。役立たずの癖に』 ニヤニヤ

三日月「……そ、そんなこと!! わから――」

三日月『分かるに決まってるじゃない』

三日月『私、あなただもん』

三日月「な……」

三日月『罵声を浴び続け、暴力を振るわれ、姉妹を馬鹿にされた……役立たずのあなただもん』

三日月『任務が失敗となる原因を作ってしまった張本人のあなただもん』

三日月「―――!!」

三日月『……前の司令官の家族が乗った』 ニヤニヤ

三日月「お願い……やめて……!!」


三日月『……船を深海棲艦から守り抜けず』


三日月「やめて……やめてやめてやめて!!」


三日月『轟沈させたあなただもん』


三日月「やめてぇぇぇ!!」

116: 2015/03/29(日) 17:28:30.18 ID:vI7gBQda0

三日月『…………』

三日月「もう……やめて……」 ポロポロ

三日月『……ねぇ、なんで泣いてるの?』

三日月『自分が役立たずだってこと、自分で一番分かっているんでしょ?』

三日月『なのになんで直接言われると泣くの?』

三日月「…………」

 ガシッ

三日月『……あなたが現実を見れていないからよ』

三日月「……!!」

三日月『あなたは……いや、私は役立たず。いくら頑張ったって……最強になんて』

三日月『なれないよ』





三日月「――!!」 バッ

三日月「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……!!」

三日月(夢から……覚めた……?) キョロキョロ

電「……すー……すー……」

三日月「……電ちゃんが起きなくてよかった……」

三日月(……汗、だいぶかいちゃった)

 時間を確認すると、マルゴーマルマルだった。

三日月「…………」 スッ

 私は電ちゃんを起こさないように注意しながら、ベッドから降りた。

117: 2015/03/29(日) 18:17:29.42 ID:vI7gBQda0

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「はぁ……はぁ……!」 タッタッタッタ

 朝のランニングは、目を覚ますには最適だ。

三日月(夢の中のあの私は……私の弱い心だ) タッタッタッタ

三日月(……言われたことだって……私が一番分かってる) タッタッタッタ

三日月(現実だってちゃんと見えてる。私が役立たずだなんて知ってる!) タッタッタッタ

三日月「はぁ……はぁ……!!」 タッタッタッタ

三日月(過去の過ちの罪の重さだって知ってる。全部知ってるよ!) タッタッタッタ

三日月「……でも……はぁ……はぁ……だからって……!!」


―――――――――――――――――――――


提督『お前を、最強にしてやる。誰よりも強い、鎮守府最強にな』


―――――――――――――――――――――

三日月(努力しないでいい理由になんて……ならない!)  タッタッタッタ

 ピタ

三日月「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 私は、もっと頑張らないとダメだ。

三日月(現実も受け止める。罪も受け入れる。逃げちゃダメなんだ)

三日月「……私は……自分の弱い心なんかに負けない……」

 夢の中で、なりたい理想の自分と……弱い心の自分を同時に見た。そして、弱い心の自分に対して何も言い返せなかった。
そんなのじゃダメだ。

三日月「私は……強くならなきゃ」

三日月「もっともっと頑張って……理想の自分になるんだ」

三日月「……いつまでも役立たずじゃ……いられないもん」

 朝の陽ざしが顔に当たる。その陽ざしはいつもよりまぶしく感じた。
 寝る前に感じていた不安は、気が付けば消え去っていた。

118: 2015/03/30(月) 02:25:15.27 ID:vmVYByvT0

 スタスタスタスタ

提督「よっ」

三日月「え? 司令官……?」

三日月「あっ、失礼しました! お、おはようございます!」 ペコリ

提督「おう、おはよう三日月」

提督「こんな朝早くからランニングするなんて、えらいな」

三日月「いえ、それほどでもありませんよ」

提督「……謙虚だなぁお前は」

提督「ほら、水飲みな」 スッ

三日月「え!? そ、そんな……申し訳ないですよ!」

提督「何が申し訳ないんだよ。運動したんだからちゃんと水分補給もしなきゃだろ。ほら」

 ペタ

三日月「ひゃあ! つ、冷た!」 ビクゥ

提督「あっはっは! 素直に受け取らなかった罰だ」 ケラケラ

三日月「……も、もう……」

提督「はっはっは。悪かったって」

提督「まぁ、ひとまず飲んどけ。な?」

三日月「……すみません、いただきます」

提督「……三日月。そういう時はすみませんって言うんじゃなくてな」

提督「ありがとうって言えばいいんだ。分かったか?」 ニコ

三日月「……ふふ。はいっ」

三日月「ありがとうございます!」 ニッコリ

119: 2015/03/30(月) 03:23:22.28 ID:vmVYByvT0

 司令官は仕事の時はできるだけ威厳のありそうな喋り方をしていると聞いた。確かに、普段とでは雰囲気が違う気がする。あまり変わらないかもしれないと司令官は仰っていたけれど、そんな事はないと思う。まぁ、結構素が出てしまっていることが多いけれど。
 仕事中は爽やかな人ってイメージで、プライベートでは面倒見の良いお兄さんって感じがするかも。よくよく考えると威厳がありそうな喋り方をしているのに、爽やかだと思えてしまえるのはどうなんだろうかってなる。あまり気にしないようにしよう。

提督「……本当に失礼かもしれないけど、俺三日月が笑ったの初めて見たかもしれない」

三日月「わ、私だって笑いますよ!」

三日月「……けれど……私……確かに司令官の前では笑っていませんでしたね。反応も素っ気無くて、話しかけてくれる司令官に反応するのも遅くなっちゃっていました」

三日月「ごめんなさい」 ペコリ

提督「……三日月」 ナデナデ

提督「そんなこと全く気にしてないよ。だからお前も気にすんな」 ナデナデ

三日月「……はいっ」


三日月「あっ……あと昨日の夜はその……」

提督「ん?」

三日月「え……えっと……そ、その……」 モジモジ

三日月「ご、……ごめんなさい……」 ペコリ

三日月「……///」 カァァ

提督「……みーかーづーきー」 スッ

三日月「へ?」

提督「そい」 ペチン

三日月「いひゃ!」

提督「お仕置きのデコピンだ」

提督「そういう時は謝るんじゃなくて?」

三日月「……えっと、その……」

提督「おう」

三日月「……あ、ありがとう……ございました……」 ニコリ

提督「……おうっ」

121: 2015/03/30(月) 04:34:25.13 ID:vmVYByvT0

三日月「それと司令官。私……もっと頑張りますね」

三日月「昨日あなたが言ってくれた期待に応えられるように」

提督「……だからこんな朝早くからランニングしてたのか」

三日月「はい! 戦う場所は海の上と言っても、体力は必要ですから」

三日月「まぁ……前にいた鎮守府の先輩の受け売りなんですけど」

提督「そっか。でも、無茶だけはするなよ? 体調崩したりしたら元も子もないからな?」

三日月「はいっ。けど、努力は怠りません!」

三日月「……いつまでも弱いままの、役立たずではいられませんから」

提督(……三日月、なんか少し雰囲気が変わったな。まぁだけど……)

提督「三日月。確かに頑張ることは良いことだけど、お前は今も弱くはないし役立たずなんかじゃないぞ。昨日も言ったけどな」

三日月「いや……それは……やはり違いますよ。現実は見ないと」

三日月「今の私はまだ弱いですし、このままではお荷物になってしまいます。そう言ってくれるのは本当にうれしいですけれど」

提督「……じゃあ聞くけど、三日月は強い人ってのはどんな奴の事をいうと思うんだ?」

三日月「え?」

三日月「それは……」 ウーン

122: 2015/03/30(月) 05:53:50.33 ID:vmVYByvT0

三日月「まず、単純に火力がある人だと思います。戦艦の方々などですね」

三日月「あと何があってもくじけない心を持っている人も強い人だと思います」

提督「ほい、ストップ」

三日月「?」

提督「三日月は今、強い人がどんな奴かって聞かれて、力がある奴とくじけない心を持った奴ってすぐに答えた」

三日月「はい」

提督「それは正解だ。確かにそんな奴らは強いって言えるだろうな」

提督「けど、そんなのほんの一部の要素にしか過ぎないよ」

三日月「え?」

提督「いいか三日月? 強さってのは人それぞれによって思い浮かべるものが変わるんだ」

提督「力のある奴とくじけない心を持った奴って答えたけど、もっと思い浮かぶだろ?」

三日月(……防御が固い人。運が良い人は……じゃんけんとかで強いよね。……まだまだ思い浮かぶかも)

三日月「はい。思い浮かびます」 コクン

提督「だろ? つまりな、強いって言葉は意外と曖昧な存在なんだ。たくさんの意味を持つ言葉だし、人のよってすぐに思い浮かべるものも変わる。捉え方も考え方すらも変わる。言葉の面白さってやつだな」

提督「三日月は、自分が火力はないから弱いって思っていないか? 敵を落とすことができないから」

三日月「……一理あります」

 そう、図星だ。私は火力がない。だから深海棲艦を倒すことがなかなかできないんだ。

提督「そうか。でもな三日月」

提督「お前には仲間を必氏に守ろうとする強い心がある。電の優しい心だって、俺は強さだと思っているよ」

三日月「……しかし……敵をたおせなくちゃ……」

提督「それよりも、大事なことだと思うぞ? 俺はな」

三日月「…………」

123: 2015/03/30(月) 06:58:42.88 ID:vmVYByvT0

提督「三日月は敵を倒せなかったって落ち込んでるけれど、動くイ級に三発も攻撃を当てられたんだぞ? 砲撃って、当てるのめちゃくちゃ難しいんだろ?」

三日月「それは……まぁ……」

 確かに難しい。相手の動きを読む必要もあるし、弾道の軌道も予測する必要があって、その日の風なんかも関係してくる。それも動きながらだ。こうして考えてみると、かなり難しい。

提督「だろ? それを三発も当てられたんだ。それってすごいことだと思うぞ?」

提督「それに、電の攻撃では一撃で撃沈できたって話だけど、三日月がダメージを与えてくれていたのと、敵の意識が完全に三日月へ向いていたことが関係すると思う」

提督「相手だって命がけなんだ。真正面から直撃をする際、防御はするし致命傷は避けるだろうさ。でも、意識が向いていなかった電からの砲撃をいきなり食らうことになったら、防御なんてできるわけがない。だから一発で撃沈できたんじゃないか?」

提督「全部推測の話だから確信は持てないけど……そう考えるとなんか元気出てこないか? 自分でもいけるって思えてくる気がしないか?」

三日月「……そうかも、しれません」

提督「だろ? 何事も、ポジティブに考えた方が気が楽になるさ」

三日月「……」

提督「もう一回だけ言うけど、お前は弱くなんかないよ。お世辞じゃなくて、純粋に思っていることだ」

 この人は、会ったばかりの私にこう言ってくれる。なんだか……

三日月「……///」

 すごく嬉しくて、顔が熱くなる。

三日月「司令官」

三日月「……私、頑張りますっ」

提督「……無茶はするなよ? 焦んなくても、俺がお前らの道筋を作ってやる。お前達はその道筋を辿って、もっと成長していけばいいんだ」

提督「頼りないかもしれないけれど……信じてくれ」

三日月「……はい」

三日月「……あなたを、信じます」


三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第五夜】

引用: 【艦これ】三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」