243: 2015/06/30(火) 03:04:35.97 ID:3pleY1h/0


前回:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第八夜】

最初から:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」
「艦これ」運営鎮守府 公式カレンダー二○二六

 二度と会う事はないんだろうなと思っていた。……“会ってはいけない”んだろうなと思っていた。
 ――身体が震える。
 先ほどから私がこんな状態になっていた理由が、今わかった。――身体は理解していたんだ。司令官にここで会うという事を。

三日月「し……司令、官……」

提督「……え?」 キョトン

提督「大佐、三日月と知り合いなのですか?」

前提督「ははは、知り合いもなにも、ねぇ……」 ジロ

三日月「……っ」 ゾク

前提督「元々彼女は僕の鎮守府にいた子だからね。ちょっと席を立たせてもらうよ」 スタ

 コン、コン、コン、コン

三日月(こっちに向かって、くる)

 コン、コン、コン、コン   ピタ

前提督「…………」

三日月「…………」 ブルブル

前提督「……ふぅ……」 ヤレヤレ

 スッ

前提督「挨拶はどうした」

三日月「!!」 ビクッ

三日月「お、お久しぶりです……司令官!」

三日月「あ、挨拶遅れて、も……申し訳、ありませんでした」

前提督「……あぁ、久しぶりだねぇ、三日月。何日ぶりかな?」

三日月「た、多分……じゅ、12日ぶりだと思います……」

前提督「……へぇ」

前提督「なぁ、三日月」

前提督「その多分ってのは……なんだい?」

三日月「……え?」

244: 2015/06/30(火) 03:49:42.64 ID:3pleY1h/0

前提督「何度も言う通り、私と君が会うのは久しぶりだ。そう、久しぶりなんだ」

前提督「私は君の元上官だ。そんな私と久しぶりに会うのに、君は何日ぶりかという情報を『多分』なんていう曖昧な言葉で伝えるのかい?」

三日月「っっ!!」 ビク

三日月「じゅ、12日ぶりです!」

前提督「……ははは」 ニコニコ

 スッ

前提督「……13日ぶりだ、この無能が」

三日月「……ご、ごめんなさい……」

電「!!」 ピク

金剛「…………」

提督「は?」

前提督「ん? 何だい? “少佐”殿」 ニッコリ

提督「あっ、その……いえ。何でもありません」

前提督「そうか。よし、じゃあさっきの続きの会話でも――」

電「あ、あの!」

前提督「ん? 君は……」

電「……暁型4番艦、電なのです。あなたが会いたいと言っていた」

前提督「!! ――あぁ、君が電か。特型駆逐艦は非常に優秀だと聞いたからね、会いたかったんだよ」

電「……光栄なのです」

前提督「……んで、少し気になってはいたんだが、何で君は三日月の手をずっと握っているんだい?」

電「……それは三日月ちゃんと電が大の仲良しだからなのです」 チラ

電「ね?」 ニッコリ

 ギュー

 電ちゃんの握る手が、また少し強くなる。
 そして、優しく微笑んでくれている。その表情はまるで「大丈夫だよ」と言ってくれているかのような、上手く言い表せられないけど、安心感の様なモノを感じさせる。

 きっと、私の事を心配してくれているんだ。ずっと。私の具合が悪くなった時から、ずっと。

 ねぇ、電ちゃん。――なんでそんなに優しいの?

三日月「…………」

電「み、三日月ちゃん?」

 電ちゃんは、優しい子だ。こんな私に優しくしてくれるし、その優しさは敵であるはずの深海棲艦にまで向けている。
 街にいたときだってそうだ。私に気を使ってくれてた。

 ――そんな子が、私なんかの友達で、いいのかな? こんな“役立たず”で“無能”なんかの私で。


 ――ぱっ……

電「……え!? な、なんで手を……」 アタフタアタフタ

三日月「…………」

電「み、三日月、ちゃん……? ど、どうしたのですか?」

前提督「……ははは」

前提督「電ちゃん、だっけ?」

前提督「友人はちゃんと選んだ方が良いよ? 友人にするべき人にはアタリとハズレがある」

前提督「……そいつは、“ハズレ”だよ」 ニコ

245: 2015/06/30(火) 04:34:01.42 ID:3pleY1h/0

 バァン!!

提督「…………」

前提督「……どうしたんだい? 少佐殿」

提督「……金剛」

金剛「……ヘーイ、何でショー?」

提督「紅茶、淹れて来てくれないか?」 ニコ

金剛「……オーウ! オッケーですヨー!」 ニッコリ

金剛「私がとっても美味しい紅茶を入れて持ってきてあげマース!」

提督「大佐、いきなり机を叩いてしまって失礼しました。少し変な虫がいたんですが、逃がしてしまいました。変な音を立ててしまったから、気分を害してしまったでしょう。気分を変えるために、うちの鎮守府の金剛が美味しい紅茶をお持ちいたします」 ニコリ

前提督「……おぉ、それは楽しみだね。期待して待っているよ?」

金剛「HAHAHA! 期待しててネ! ……頬が落ちないように気を付けてネー?」 スタスタ


電「…………」

電(……司令官さんが、あの大きな音を立てて空気を変えてくれなかったら、危なかったのです)

電(……ぶん殴っちゃいそうだったのです) ギリ

三日月「…………」

電「……三日月ちゃん」

三日月「……ごめんね、電ちゃん……」

電「何が、なのです……?」

三日月「私なんかの友達になっちゃ、ダメだよ……絶対にいつか迷惑かけちゃうし、私は電ちゃんの友達を名乗る資格なんて、ない。電ちゃんは、もっとマシな人と――」

 ガシッ

三日月「え?」

電「み、三日月ちゃん」

電「それ……本気で言っているのですか?」

電「本気で言っているんだったら……電、怒るのです」

三日月「……ほ、本気よ……だ、だって! 私は!」

 ――パシーン!!

三日月「――え?」

電「……み、三日月ちゃんの……ばか!!」 ポロポロ

三日月「……」

 電ちゃんが、泣いている。一瞬何をされたか分からなかった。だけど、右の頬が痛いことに気が付いて、何をされたかもわかった。

三日月「…………」

 ことばが、見つからない。なんて言えばいいのか、わかんなかった。

三日月「い、電ちゃん……」

電「…………」 スタスタ

 私から離れていく電ちゃんに、私は何も言えなかった。

三日月「……」 ジワァ

 そして、ぶたれた頬よりも、胸の方が痛かった。

246: 2015/06/30(火) 05:23:06.36 ID:3pleY1h/0

 スタスタスタスタ

神通「……三日月ちゃん」

三日月「!!」 ゴシゴシ

三日月「じ、神通さん……お久しぶりです。」

神通「はい、お久しぶりです」

神通「会えてうれしかったわ。元気そうで何よりです」 ニッコリ

三日月「……はい。私も、嬉しいです。ごめんなさい、お恥ずかしいとこを見せてしまって。神通さん、前より綺麗になられましたね」

神通(改二)「ふふ、ありがとうございます」

神通「それと、さっきの事は大丈夫ですよ。……良い友人じゃないですか、彼女」

三日月「…………」

神通「……さっきのは、三日月ちゃんが完全に悪いです」

三日月「え?」

神通「何がどう悪かったのか、しっかり考えて、彼女には謝らなきゃいけませんよ? 三日月ちゃんの悪い所が出ていましたよ?」

三日月「……私の悪い所なんて、いっぱいあり過ぎて……分かりません。……神通さんが一番分かっているはずですよ?」

神通「ええ。……ですが、あなたの良い所も同じくらい知っています」

三日月「…………」

神通「答えは言いません。自分で見つけて、自分で答えにたどり着くのよ? 訓練だと思って、頑張ってください」

神通「……あと、ごめんね」 ボソ

三日月「…………」

前提督「神通」 クイクイ

神通「……はい、提督。すぐにそちらへ行きます。……では」 ペコリ

 スタスタスタスタ

三日月「…………」

 神通さんは、相変わらずいい人だった。前の鎮守府でも、神通さんはずっと優しかった。
 ――……私はあんなことをしてしまったのに。

247: 2015/06/30(火) 05:23:54.72 ID:3pleY1h/0

 prrrr

前提督「すまない、私だ。出ていいかい?」

提督「ええ、お構いなく」

前提督「では失礼」 ピッ

前提督「あぁ、私だ。……うん。うん。……随分と早いね。もっと遊んでても良かったんだよ? ……そうか、分かった」 ニッコリ

三日月「……」 ジー

前提督「……なんだい?」

三日月「!! い、いえ……失礼しました」

前提督「あぁ、ごめん、なんでもないよ。……分かった。そこで待っててくれ。……うん、じゃ」 ピッ

提督「どうかなさったんですか?」

前提督「あぁ、実は他の艦娘も二名ほど同行させていたんだけど、あまりぞろぞろとやってくるのもどうかと思って、近場の街で遊ばせていたんだ。……けど、その子たちがここにやってきたらしく、今入口にいるらしい」

提督「あぁ、本当ですか。では案内を……」

電「電が行くのです」

提督「……わかった。では電に任せようかな。お願いする」

電「了解なのです」

前提督「よろしく頼むよ」

電「……はいなのです」

 スタスタスタスタ

三日月「……あっ……」

電「…………」 スタスタ

電「……三日月ちゃんは、休んでてください……」 ボソ

三日月「…………」

 スタスタスタスタ

三日月(どこかで、謝らなきゃ……)

258: 2015/07/01(水) 20:59:00.57 ID:AMfiezTP0

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電「…………」 スタスタ

電「……っ……」 スタスタ

電(電は……最低なのです……三日月ちゃんの事を馬鹿にされて怒ったのに、その三日月ちゃんをぶっちゃうなんて……)

電(……でも、なんであんなこと言ったのかな……三日月ちゃん)

 スタスタスタスタ

 ――ガチャリ

 スタスタスタスタ

電「…………」 スタスタ


夕立「あっ、誰か来たっぽい!」

菊月「……お前、こんなとこに来てまでそんな話し方するのか……」

夕立「癖だからしょーがないっぽい!」

電「こんにちはなのです。電は――って、え?」

菊月「…………」

菊月(やはり、艦娘だったか)

電「あ、あなたは……先ほどお会いした……」

菊月「あぁ、この鎮守府の艦娘だったのか。ならば、あの街にいたことも納得ができる。……先ほどぶりだな。暁型4番艦……電」

電「な、何で知って……って、そうじゃなく、あの時は本当にごめんなさいなのです!」 ペコリ

菊月「別に気にしなくていいさ。私の不注意でもあったしな」

夕立「???」 キョトン

夕立「お二人とも、知り合いっぽい?」

電「お知り合いと言うか……その……」

菊月「……お前から逃げてる時にぶつかって、少し会話した程度だ。……なんとなく予想はしていたが、まさかここの艦娘だとは思わなかったけどな」

菊月(……特型駆逐艦も、見かけはあまり私と変わらないのだな)

夕立「え!? って事はあなたもあの街にいたっぽい!? そして菊月ちゃんと会ってたのに再会っぽい? すっごい偶然っぽい!」 キラキラ

夕立「ねぇねぇ、あなたお名前なーに? 私、白露型駆逐艦、夕立よ! よろしくね!」 グイグイ

電「あ、暁型4番艦、い、電なのです……よろしくなのです」

夕立「うん! よろしくっぽい!」 ニコニコ

電(お、お犬さんみたいな子なのです……)

電(……けど……) ジー

夕立「♪」 ニコニコ

電(む、胸の大きさは駆逐艦とは思えないのです!!)

菊月「……見ての通り、やかましい奴だが……悪い奴じゃない」

菊月「私は……菊月だ。よろしく頼む」

電「……え? 菊月、さん? もしかして、睦月型のですか?」

菊月「……そうだが?」

電「も、もしかして、三日月ちゃんの……お姉ちゃんですか?」

菊月「!!」

夕立「……」 ピク

259: 2015/07/01(水) 21:27:42.57 ID:AMfiezTP0

菊月「お前……三日月と知り合いなのか?」

電「は、はい。三日月ちゃんはこの鎮守府はできたばっかで、まだ艦娘は三人しかいないのです。三日月ちゃんは電の次……っといってもほぼ同時ですけれど、二人目の子なのです」

菊月「……そう、か……」

夕立「……やっぱり、あの街で見かけたのは見間違いじゃなかったのね……」

菊月「!! お前、三日月を街で見かけていたのか!?」

夕立「…………」 コクン

菊月「だったらなんで言わ――」

夕立「…………」

菊月「……いや、すまない……。……そう、だったのか」

電「……あ、あの……お聞きしたいことがあるのです」

菊月「……なんだ?」

電「三日月ちゃんと……そちらの司令官さんについ――」

夕立「ねぇ」

夕立「……あの子の話、しないでよ」

電「え?」

夕立「あの子の名前なんて、聞きたくもないっぽい」

夕立「……イライラするっぽい」

菊月「…………」

電「……な、なんですか……それ……!」

電「なんですか!! それ!!」

菊月「……」

夕立「……」

電「そちらの司令官さんも!! 夕立さんも!! なんでそんなひどい態度なんですか!!」

夕立「……」

電「夕立さん、さっきまであんなに笑顔だったのに、なんで三日月ちゃんの名前が出ただけで、そんな風になるんですかッ!!」

電「……み、三日月ちゃんが……可哀想なのです……!!」 ジワァ

夕立「……さいな」

電「……え?」

夕立「――うるっさいなぁ!!」

電「――ッ!?」 ビク

260: 2015/07/01(水) 21:58:41.62 ID:AMfiezTP0

夕立「……あの子の名前を出さないでって言ったでしょ……」

夕立「……けど、怒鳴ってごめん……ぽい」

電「……っ……!」 グッ

電「怒鳴ったことなんて別に大丈夫なのです! けど、あなたの司令官さんは三日月ちゃんになんで――」

夕立「……黙ってッ!!」

電「だ、黙らないのです!!」

電「あなたの司令官さんは!! 三日月ちゃんの事を“無能”って言ったんですよ!? それに、他にもいろいろ言っていましたし、態度だって……あなたの司令官さんは優しくていい人だって聞いていたのです。けどそんな要素どこにも――」

夕立「黙れってッ!! 言ってるでしょッ!!」 ギロ

電「っ――!!」 ビク

夕立「……提督さんのこと、よく知りもしないくせに……!!」 プルプル

菊月「…………」

電「……し、知りませんよ! ……だけど」

 ガシッ

夕立「…………」

夕立「……電ちゃん、だったっけ?」

夕立「……そんなに知りたければ、教えてあげるっぽい。覚悟して聞いてよ」


夕立「あの子は……提督さんの娘とお嫁さんを、頃したのよ……!」


電「――え?」

261: 2015/07/01(水) 22:27:33.91 ID:AMfiezTP0

電「う……うそ……」

電(……み、三日月ちゃんが……?)

夕立「……嘘じゃないよ」

夕立「私とあの子は、ずっと一緒の部隊だった。その時の様子も一緒に見てる」

夕立「それに、あの子が“自分自身で”言ってる。『私は人頃しです。司令官の娘さんとお嫁さんを頃したのは私です』って。……全部本当のことよ」

電「…………」

夕立「……その様子だと、何にも聞いてなかったみたいね。……何にも変わってないのよ……あの子は……いっつも一人で抱え込んでさ……!!」 ギリ

夕立「……ホント、イライラするっぽい……」 パッ

夕立「それに……あの子は提督さんのことを……!!」

菊月「夕立!!」

夕立「――!!」 ハッ

菊月「もう、やめてくれ……聞いてて……つらいんだ……」 フリフリ

夕立「……ごめん……なさい」

電「…………」

夕立「……電ちゃんも……ごめんなさい……」

電「……電も……ごめんなさいなのです……」

電「…………」

夕立「…………」

菊月「…………」

菊月「……電。司令室までの案内を頼む」

電「……はい。こちら……なのです……」 スタスタ

菊月「……感謝する」 スタスタ

夕立「……」 スタスタ

262: 2015/07/02(木) 02:02:58.80 ID:OCzmjaGo0

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「…………」

金剛「ヘーイ皆さーん! 紅茶ができたヨー!」

提督「おぉ、ありがとう金剛」

前提督「いい香りだね。ありがとう」

金剛「いえいえー」

金剛「はい! 神通もどーぞデース!」

神通「あっ、ありがとうございます。いい香りですね」 ニコ

金剛「神通とはさっき紅茶トークで盛り上がった仲デース! また話しまショー!」 ニッコリ

神通「ええ、楽しみにしています」

三日月(金剛さん……もう神通さんと仲良くなったんだ。さすがだなぁ)

三日月(それにしても電ちゃん……ちょっと遅い。何かあったのかな)

金剛「へいヅッキー。美味しい紅茶を持ってきたヨー」 スタスタ

三日月「あ、ありがとうございます」

金剛「ノープログレムデース。お隣いいデスカー?」

三日月「……はい」

金剛「オウ、センキュー! では、失礼しマース」 スッ

三日月「…………」 ズズー

金剛「はぁ……幸せデース……紅茶 is god……」 ポワー

三日月「……金剛さん、すっごい幸せそうですね」

金剛「イエース。三度の飯より紅茶が好きデース」 ニッコリ

三日月「ご飯はしっかり食べなきゃですよ?」

金剛「わかってますヨー? 紅茶でお腹は膨れまセーン」

三日月「でも、飲み過ぎると水っぱらになってお腹出ちゃいますよ?」

金剛「え? それマジ?」 ガーン

三日月「ずっとではないから大丈夫ですよ。けど、飲み過ぎは良くないので、控えめが良いかと」

金剛「……1日8杯なら……セーフデスか?」 グヌヌヌヌ

三日月「ふふふ、多すぎですよ、それは」 クスクス

金剛「……やっと笑ってくれたデース」

三日月「え?」

金剛「ヅッキー、ずっと不安そうな顔でしたから、私心配だったデース」

金剛「ヅッキーは悲しそうな表情より、笑っている方がステキデース」 ニッコリ

三日月「……金剛さん……」

263: 2015/07/02(木) 02:55:28.95 ID:OCzmjaGo0

金剛「……ヅッキー」

 ギュ

金剛「……Youは頑張り屋さんデス。毎日の訓練も頑張っていマスし、朝早起きして朝練までしてる努力家デース」 ボソ

金剛「それに、思いやりのある優しい子デス。それは電も同じデス」 ボソ

金剛「電の場合はちょっとお寝坊さんデスけれど」 クスクス

三日月「…………」

 金剛さんは私を抱き締めながら、小さく耳元で囁いてくれた。

金剛「私は……そんなお二人が大好きデース。提督と同じくらい、私はあなた達が……」 ボソ

金剛「……大好きなの」 ギュ

三日月「……金剛さん……」

金剛「だから、あの人に三日月を馬鹿にされた時……すごく……嫌な気持ちになりマシタ。イラっとしマシタ」

金剛「……ケド、最初会った時とかは本当に良い人デシタ。……さっきは人が変わったようでしたけれど、今もさっきみたいな様子は見られません。……だから……何か理由はあるんだと思いマス」

三日月「…………」 ギュ

 理由はもちろんある。だって私は……あの人にとっては……。

金剛「……その理由は、聞きません。三日月が話したくなった時に話してくれればいいデスし、話したくないならいいデス」

金剛「……ケド、これだけは覚えておいてくだサーイ」

三日月「…………」

金剛「私は……何があってもあなたの味方ヨ」 ギュー

金剛「……提督も一緒デース。さっきまであの人との会話はすごく楽しそうでしたけれど……」


前提督「――――」

提督「……ははは」


金剛「今はちょっとぎこちない笑い方してマース。提督も同じ気持ちなんデス」

三日月「……司令官……」

金剛「……ここの鎮守府のみんなは、三日月が大好きデス。だから……何かあったら……」

金剛「……私達に頼って……」 ギュー

三日月「……金剛、さん……」

 不意にも、目頭が熱くなった。ギュッと私を抱き締めてくれている金剛さんは、少しだけ震えてた。
 哀しんでいるのかもしれない。

 ――私が何も打ち明けないから。

三日月「…………金剛さん、実は私――」

 コンコンコン

三日月「!!」 ハッ ――パッ


電「電です。お客様をお連れしたのです」

264: 2015/07/02(木) 03:26:50.96 ID:OCzmjaGo0

提督「あぁ、電か。お疲れ様。入ってくれ」

金剛「……電が戻って来たみたいデスネ」

三日月「……はい」 コクリ

 ガチャリ

 スタスタスタスタ

三日月「――!!」

電「……ただいま、お戻りしました」

提督「あぁ。案内、ありがとうな」

夕立「……」

菊月「……」

三日月「……き、きく……づき……?」

菊月「……久しいな……三日月。……まだそんなに日は経っていないけどな」

三日月「それに……夕立……さん」

夕立「……」 プイ

 ガタッ

前提督「お前達……街で遊んでいても良かったのに……」

夕立「菊月ちゃんがそういうわけにはいかないって、聞かなかったっぽい!」 ニッコリ

菊月「二人がここにいるのに私達だけで遊んでいるわけにもいかないだろう……」

前提督「ははは、本当に菊月は真面目だなぁ」 ナデナデ

菊月「あっ、ちょ……こ、こんなところでやめて、くれ!」


三日月「……え?」 キョトン

三日月(な、なんで司令官が……菊月の事を……?)

前提督「あぁ、すまないね少佐殿。君達、ご挨拶を」

夕立「白露型4番艦、夕立です! 改二です! よろしくお願いします!」 ビシィ

菊月「……菊月だ。睦月型9番艦……」 ビシ

前提督「敬語を遣いなさい」 コツン

菊月「あいた! ……うぅ、なんなのさ。……菊月です」

提督「!! 睦月型9番艦って事は……三日月の」 チラ

三日月「……」 プルプル

菊月「……」

三日月「……な、なん……で……?」 プルプル

三日月(あなたは……司令官は――)

前提督『“所詮”は睦月型だな。役立たずめ』

三日月(睦月型を……私のせいで……!!)

265: 2015/07/02(木) 03:54:17.94 ID:OCzmjaGo0

前提督「……昔、どっかの誰かに僕はこう言ったことがある」

前提督「『所詮は睦月型だな。役立たずめ』って」

前提督「だけど……この子は非常に優秀な子だった。ここ最近の活躍を僕は心の底から評価してる。だからついこの前優秀な神通率いる部隊の“一人”として配属して、僕の護衛をさせているんです」 ナデナデ

菊月「…………」

前提督「僕の考えは間違っていたんだよ。睦月型でも役立たずは……」


前提督「“一隻”だけなんだなぁってね」


三日月「…………あはは……」

 何かが、折れる音がした。何が折れたのかまでは……わからなかった。

三日月「……っ!!」 ジワァ

 なぜだか、涙があふれ出して、止まらなかった。

 ――そして、その時だった。

 バッ

電「…………」

 電ちゃんが私の歪む視界の中で、司令官に殴りかかった。

266: 2015/07/02(木) 04:18:42.53 ID:OCzmjaGo0

提督「!! いなづ――」

 その言葉が、言い終わる前だった。電ちゃんは――

 シュッ   ――バタァン!!

電「ッ!?」

神通「……」

 床に叩き伏せられていた。

前提督「……あれあれ? 電ちゃん。今君、僕に何をしようとしたのかな?」

提督「た、大佐! 電は!」

前提督「君には聞いていない」

提督「っ!!」 グッ

前提督「電ちゃん? 怒らないから正直に言ってごらん?」

電「…………」

提督(電……頼む! 嘘を付いてくれ!!)

三日月「い、いなづま……ちゃん」

電「…………ふふ」


電「あなたをぶん殴ろうとしたに決まっているじゃないですか」


提督「……くっ!!」


前提督「……神通」

神通「はい」

前提督「折れ」

 ――バキッ!!

三日月「――へ?」

 聞いたことが無い音が部屋の中に響き渡った。
 何が起きたのか、一瞬では理解できなかった。――次の瞬間までは。

電「うっ――――ぁぁぁぁぁァァあああッ!!」

 電ちゃんの聞いたことない絶叫が耳に届いた。

267: 2015/07/02(木) 04:55:29.38 ID:OCzmjaGo0

提督「金剛!! 俺を抑えてくれッ!!」

金剛「ッ!!」 ガシッ

提督「はぁ……はぁ……!!」

提督「ごめん、な……!!」

金剛「……提督が謝ることなんて、ないワ……!!」

提督「……向こうの秘書官の神通に感謝だな……あのまま彼女が止めなかったら、電は……あいつを、殴って……!! 解体処分だっただろう……ッ」

金剛「…………」


三日月「いな、づま……ちゃん……?」


電「えぐ……ぃたい……痛い……!!」

前提督「……まったく、ダメだよ電ちゃん。僕を殴ってたらもっとひどい目にあってたよ」

前提督「なんでそんなに怒ってるのか分からないけれど、上官は殴ってはダメなんだよ。……なぁ、三日月?」

三日月「!!」 ビクッ

電「……はぁ、はぁ……ひっぐ……!!」

前提督「……けど、良い教訓になっただろう? 痛い目にあわせてごめんね、電ちゃん」

前提督「何か、言う事はあるかい? あるよね? 悪いことをしてしまったあとに言う言葉」

電「はぁ……はぁ……!!」 ギリ

電「『なんでそんなに怒ってるのか分からないけれど』……? ふざけないでください!!」

電「なんで……三日月ちゃんが……私の大事な大事な友達が!!」

三日月「!!」

電「傷つけられているのに!!」

 ――やめて。

電「怒らないと思ってるんですか!!」

 ――やめて。やめてやめてやめて。

三日月「……いなづまちゃん……やめて……!」

前提督「…………」

電「……上官が……私情を挟んで、部下を……しかも今は他の鎮守府にいる子を……いじめるのは……楽しいですか?」

三日月「い、いなづまちゃん……!!」

電「私が……はぁ……言ってあげるのです……あなたが、みかづきちゃん、に……はぁ……いったように……!!」

三日月「や、やめて……」 フリフリ

電「……ふふ」 ニヤリ


電「この――無能提督」



268: 2015/07/02(木) 05:28:34.84 ID:OCzmjaGo0

前提督「神通……折っていいよ?」

神通「……どこをですか?」

前提督「……優秀な君には似合わない質問だな。左腕だよ。左右ともに一緒にしてあげなさい」

神通「…………」

電「……はは……暁お姉ちゃんが……しれいか……ていと、く……になった方が……まだゆうのう……なのです」

電「……むのう、提督……」

前提督「神通!!」

神通「…………はい」

 ――バキッ!!

電「あっ――がっ、ぐぅぅぅうううううッ!!」

夕立「……ッ」 プイ

菊月「……」


三日月「やめて……やめてやめてやめてやめてやめて……やめて!!」


電「はぁ……はぁ……はぁ……げほ……!!」

電「……なんどでもいって……あげましょうか?」

前提督「……っ!!」 ブチ

前提督「なんなんだ君は!!」

電「……みかづきちゃんの……なかま……なのです……」


三日月「――――――――」



電『同じく艦娘なのです! 暁型4番艦の電なのでしゅ!』 ビシッ

電『……///』

電『うぅ……舌が痛いのです……』


電『電は新しいお仲間である三日月ちゃんのお役に立ててうれしいのです』 ニッコリ

 ――わたし、さっき電ちゃんになんて言った……?

三日月『私なんかの友達になっちゃ、ダメだよ……絶対にいつか迷惑かけちゃうし、私は電ちゃんの友達を名乗る資格なんて、ない。電ちゃんは、もっとマシな人と――』

 ――わたし、あの時、初めての実戦の時、電ちゃんにこう言った。

三日月『電さん、大丈夫ですか?』

電『は、はい。あ、足を引っ張らないように頑張るのです』

三日月『……電さん』

三日月『そんな気にしなくて大丈夫ですよ』

三日月『何事も経験ですし、助け合い協力し合うのが仲間です』

三日月『足を引っ張らないように頑張るのではなく、何があっても一緒に支え合って頑張りましょうっ。私だって、まだまだ未熟者ですから』 ニッコリ

電『み、三日月ちゃん……』

三日月『ね?』

電『……あ、あの……ありがとう』 ニコリ

三日月『ふふふ、いえいえっ』

269: 2015/07/02(木) 05:58:31.81 ID:OCzmjaGo0

 ――そうだ、私はあの時、そう言ったじゃないか。なのに。

三日月『私なんかの友達になっちゃ、ダメだよ……絶対に“いつか迷惑かけちゃう”し、私は電ちゃんの友達を名乗る資格なんて、ない。電ちゃんは、もっとマシな人と――』

 ――いつか迷惑かける? あんなこと言ったくせに? 仲間とはそういうものだって偉そうに語ったくせに? それって……「迷惑すらかけられないあなたは、仲間じゃない」って言ってるようなものなんじゃないかな?


電『戦争には勝ちたいけど、命は助けたいって……おかしいと思いますか?』

 電ちゃんは、本当に、優しすぎる子なんだ。

電『変な事言ってるのは……電が一番分かっていることなのです』

電『けど、電は……あまり戦いたくはないのです。沈んだ船も……できれば助けたいのです』

電『……それが“人類の敵”である、深海棲艦であってもなのです』

 ――そんな彼女が、今……本気で怒っている。私のために。“何にも打ち明けず、一人でずっと抱え込んでいる”私のために!


電『三日月ちゃんは、無力なんかじゃないのです』

電『電は……わたしは、三日月ちゃんに救われたんです』

電『……今まで、いっぱい我慢してきたんですね? 後ろは電が抱きしめてあげます。守ってあげます。だから……もう我慢しないで?』 ギュー


 ――――ッ!!

三日月「やめて……!!」 バッ

夕立「!?」

菊月「…………」

 タッタッタッタ!!

 ガシッ

前提督「な!?」

三日月「司令官……お願いです……!」 ガシ

三日月「電ちゃんを……これ以上苦しめないでください……!!」

電「みかづき……ちゃん……?」

三日月「……私の友達を!! これ以上……傷つけないでください!!」

電「!!」

271: 2015/07/02(木) 06:41:02.85 ID:OCzmjaGo0

前提督「……離れなさい」

三日月「電ちゃんが! 私のせいで傷ついてるのは……わかっています!」

三日月「司令官が……私の事を恨んでいるのも……わかってます!! 私が、一番!!」

夕立「……」

三日月「けど、これ以上……」

三日月「私の“大切な友達”を、傷つけないでッ!!」

電「っ――!!」

電「……えへへ……いうのが……おそい……の……です」 ジワァ

電「……みか、づき……ちゃん……だい……す……」

電「…………」


前提督「……っ、離れろ!」

三日月「うっぐ……!!」 ギュ

前提督「――!!」


 ―――――――――――――――――――――

 ガシッ

『行かないでよ! パパ!』 ギュ

『お願い……!!』

『うっぐ……!!』 ギュ

 ―――――――――――――――――――――

前提督「ッッ――!! くっそ!!」 ドン

三日月「ひゃ!」

 ガシ

神通「……」

三日月「じ、神通……さん」

神通「……提督。電ちゃんが気を失いました」

電「…………」

三日月「え……?」

神通「至急何とかしないと……まずいです」

前提督「……少佐……」

提督「……なん、ですか」

前提督「……今すぐ入渠させた方が良い。30分もすれば……完治するよ……」

提督「……三日月、電を今すぐ入渠場へと運んでくれ……」

三日月「は、は――」

272: 2015/07/02(木) 06:55:13.49 ID:OCzmjaGo0

 スッ

夕立「……」

三日月「ゆ、夕立さん……」

夕立「そっちの提督さん、少し冷静になった方がいいっぽい」

夕立「……この子じゃ急いで運べないと思うっぽい」

提督「……じゃ――」

夕立「――だから、夕立に運ばせてください」

夕立「パワーと……スピードだけなら自信あるっぽい……!」

前提督「……」

提督「……ありがとう……頼んだ」

電「…………」 ガシッ

夕立「任されたっぽい! ……お姫様抱っこなんて、久しぶりっぽい」 フゥ

三日月「……」

夕立「……ねぇ、早く案内してほしいっぽい!!」

三日月「へ!?」

夕立「運ぶのは手伝うけど、場所わからなきゃ意味ないでしょ! 臨機応変に対応してよ!」

夕立「ッ!! あなたは速力だけだったら夕立にも負けなかったでしょ!?」

三日月「――!! は、はい! こっちです!」 バッ

夕立「……ふん!」 バッ

 タッタッタッタ!!

菊月「……夕立……三日月……」

前提督「……」

神通「……」

提督「……」

金剛「……」

提督「……大佐……」

前提督「……なんだい?」

提督「……お話が……あります……!!」 ギロ

金剛「…………」

金剛(提督……拳握り過ぎて……出血してる……)

金剛「…………」 スッ ジー

金剛「あはは……私も……してた」


三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第十夜】

引用: 【艦これ】三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」