521: 2016/04/04(月) 08:26:00.55 ID:nLMgEvvH0
前回:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第十二夜】
最初から:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三日月「――以上が……私の罪の話です」
提督「…………」
金剛「…………」
三日月「幻滅……しましたよね? ……でも、私はもうこの事を秘密にしないことにしたんです。私は、もう逃げたくないから」
提督「……」 ガタッ
三日月「ッ」 ビクッ
提督「三日月、お前さ」 スタスタスタスタ
三日月「は、はい!」
スタスタ、ピタ
提督「……ホント、真面目だよなぁ」
三日月「へ?」 キョトン
提督「いや、真面目すぎるわ。……本当に、さ」 ナデナデ
三日月「? ……?」
提督「……俺の母さんと父さんもさ、本当に真面目な人達だった。いや、むしろ真面目すぎだったな」
提督「息子の俺と弟の世話はちゃんとしてくれてたけど、やっぱり仕事一番の人達だった。仕事柄家にいないことも多かった。久々に帰って来たなぁと思ってたら、仕事で失敗してきたのか、すっげぇ落ち込んでたし、いつまでも反省してた。……息子の俺から見ても、気にしすぎだろって思えたな」
提督「……けど優しかった。俺、本当に二人の事……尊敬してた」
三日月「…………」
金剛「…………」
提督「真面目に何かできて、何事にも真っ直ぐ向き合えるって事はさ、誰にでもできる事じゃない」
三日月「…………」
522: 2016/04/04(月) 08:30:04.67 ID:nLMgEvvH0
提督「三日月はさ、なんか俺の親に似てるんだ。それが雰囲気で伝わるって来るって言うかさ……えと、な……最初会ったばっかの時からそんな感じがしてた」
提督「……ごめん、ちょっと気持ち悪いよな。こんなこと言われて」
三日月「!! そんなことないです」 フリフリ
提督「ははは、ありがとな。……三日月と会ったばっかの時さ、俺が手を伸ばした時、お前はすごく怯えたし、拒絶したよな」
三日月「……はい。あの時は、本当に失礼しました」
提督「いや、いいんだ。けど、当時はめっちゃ落ち込んだ。溜息も出ちまった」
三日月(……あの時の溜息はそういう事だったんだ)
提督「でも、今俺は三日月の過去の話を聞いて、何で拒絶されたのかって理由も分かったし、好きで拒絶したわけじゃないって事もわかった」
提督「……三日月」 スッ
三日月「え? し、司令官!?」
ギュー
三日月「え、えええええ!? ぁ、あの!! 司令官!? ……こ、ここここ金剛さんが見てますよ!? そ、それに……は、恥ずかし……ぃ……!!///」 カァァァァ
提督「俺はお前を責めない」
三日月「――え?」
提督「俺はお前を責めない。幻滅もしない」
提督「……お前の頑張りを、知ってるから」
三日月「……司令官」
提督「三日月がやっちまった事は……許されることじゃない。多くの人が……犠牲になった。犠牲になった人の親族も、三日月の事……恨むと思う。俺だって多分、お前と会ってない状態でその事を聞いたら……三日月を許していないと思う。俺は聖人じゃないしな」
三日月「…………」
提督「けど、俺はお前を知ってる」
提督「お前の頑張りを知ってる」
提督「お前が罪を抱えて、一人で頑張ってきたことも今知った」
提督「……そんなお前の姿を知っていて、どうやってお前を責めろって言うんだよ……幻滅しただなんて……言えるんだよ。――無理に決まってんだろ!!」
三日月「…………」
提督「お前、ほんと真面目過ぎだ……全部一人で抱えるなよ……」 ギュー
三日月「……司令官も、電ちゃんと同じことを言うんですね」
金剛「――そんなの当たり前じゃないッ!!」
523: 2016/04/04(月) 08:31:09.58 ID:nLMgEvvH0
三日月「金剛さん……」
金剛「……ワタシも、同じ気持ち……責めないヨ……失望なんてしない!!」
金剛「……ワタシ、ヅッキーの事……大好きだもン。ヅッキーが頑張ってる事、知ってる」
金剛「ワタシが言っていい事じゃないってことも承知してる。……でも、ワタシは言うワ!」
金剛「ワタシは、ヅッキーの罪を許しマスッ!!」
三日月「こんごう……さん……!!」
ガチャリ
電「そう言う事なのです」
三日月「……電ちゃん」
電「三日月ちゃん」
金剛「ヅッキー」
提督「三日月」
電「電はあなたを責めないのです」
金剛「ワタシはあなたを責めないワ」
提督「俺はお前を責めない」
524: 2016/04/04(月) 08:33:16.56 ID:nLMgEvvH0
三日月「……はは……あはは」
三日月「……わたし、さいきん……ほんとに……泣き虫なんです……!!」 ポロ、ポロ
三日月「……皆さん……お人好しすぎますよ」 ポロポロ
三日月「……ひっぐ……ぁう……!!」 ボロボロ
提督「…………」 ナデナデ
司令官は何も言わず、私の頭を撫でてくれた。優しく抱きしめてくれた。泣いてる私を、静かに、抱きしめてくれた。
――優しい。皆、本当に優しい。こんな人達、珍しいと思う。お人好し過ぎる。おかしいとすら思ってしまう。
――けど、私はこの人たちが大好き。本当に、大好き。
三日月「……ぅぐっ……ぅう、っ……!!」
提督「…………」 ナデナデ
トクン――と胸がときめく。ちょっと胸が苦しくなる。泣いているからなのかもしれない。
トクン、トクン、トクン。胸が苦しいのに、全然気分が悪くない。むしろ、なんだか心地良かった。――この痛みが何なのかは、結局最後まで分からなかった。
525: 2016/04/04(月) 08:50:40.92 ID:nLMgEvvH0
提督「…………」
ガチャ
金剛「ヘーイテートクー? 紅茶入れてきたデース」
提督「おぉ、ありがとう。……三日月は大丈夫だったか?」
金剛「ハイ。今はもうぐっすりデスヨー。電が一緒にいてくれてるし、ノープログレムだと思いマース」
提督「そっか。運んでくれてありがとうな、金剛」
金剛「お安い御用デース! ハイ、提督の紅茶だヨー」 ホイ!
提督「おう、ありがとう。いただくよ」
金剛「ふっふー、テートクー……お隣失礼するデース!!」 ポフン
提督「……なぁ、金剛。お前にだけは伝えておくよ」
金剛「ンー?」
提督「……俺は、上層部の人間が……大っ嫌いなんだ」
金剛「……理由、あるんでショー?」
提督「あぁ。……あいつらはな」
提督「艦娘を人間とは思ってない。ただの道具としか思っていないんだ」
金剛「…………」
提督「全員がそういう考えを持っているわけじゃないんだけどな。まぁ、それでも大抵の奴らは、艦娘を道具として扱ってる」
提督「俺は、どうしてもそれが許せないんだ」
金剛「どうしてデース?」
提督「え?」
金剛「提督。ワタシ達は、あなた達とは違うヨ」
金剛「艤装さえあれば海に浮かべる。力もある。……深海棲艦にまともに対抗できるのはワタシ達艦娘だけデス。……人類が、どうすることもできない、“敵”に対抗できる唯一のへい――」
提督「兵器じゃないよ」
526: 2016/04/04(月) 08:58:46.72 ID:nLMgEvvH0
金剛「……どうして?」
提督「お前らは、俺達と変わらない人間だよ」
提督「泣いて、笑って、怒って、時には苦しみながら、一生懸命……戦ってる。そんなお前達が、兵器なわけない」
金剛「……提督」
提督「感情があるんだ。戦うために、努力だってしてるんだ。……なんで上の奴らはそんなお前らの事を兵器だなんて言えるのか、俺には理解できねぇよ」
金剛「…………」
提督「けど、現実的に考えちまうと、俺みたいな考え方の奴がおかしいってのが今の現状だ。……でも、それでも俺は一つの鎮守府を任せられた、“提督”というものになれた。……お前らの練度を見れるっていう不思議な才能があったからな」
金剛「…………」
提督「こんな変人な俺ですら提督にしなきゃいけないくらい、今は人材不足なのさ。……この才能があったら、子供でも、女でも、老人でも、誰でも“提督”になれる。……当然士官学校には入れられて、色々と勉強させられるけどな」
提督「……俺は、いつか上の奴らにお前らの考え方は間違ってるって言えるくらい、偉くなるつもりだ。その結果が……深海棲艦以外にも敵を増やすことになってもだ。――だから」
金剛「――もちろん、ついて行きマスヨ?」
提督「!!」
金剛「ワタシは、一生あなたについて行きマース」
金剛「……だって、提督の…………――○○さんの笑顔が……守りたいから」 ニッコリ
提督「……金剛……」
提督「本当にありがとう、な」 ニッコリ
金剛「えへへー……ハイデースっ!!」 ニコニコ
提督(……本当に金剛は……頼れる奴だな。アイツらも同じこと……言ってくれるのだろうか?)
金剛「……うふふふふー……でもでもぉ~/// 乙女に恥ずかしいことを言わせたテートクにはー……こうデース!」 ガバ
提督「おぅ!?」
金剛「えへへー、ヅッキー達がいたらこういう英国式スキンシップもできないもんネー! 今はワタシになすがままニ! ギューってされるデース!」 ギュー
提督「い、いや別にいいんだけどさ!! こ、紅茶こぼれる!!」
金剛「ヅッキーばっかり羨ましいからネー……ワタシだって甘えたいんですかラ~」 ギュー ニコニコ
提督「聞いてらっしゃらない!? って、金剛、本当にあぶ……――あっつーッ!!」
527: 2016/04/04(月) 08:59:57.14 ID:nLMgEvvH0
三日月「すぅー……すぅー……」
電「ふふ、三日月ちゃん可愛いのです」 ニッコリ
電「……今日は疲れたんですよねー? 本当に、お疲れさまなのです」 ナデナデ
三日月「……すぅー……んんー?」 ピクリ
電(はわわ!? 起きちゃったのです!?) ビク
三日月「……いなづまちゃん?」
電「はわわ……三日月ちゃん、ご、ごめんなさいなのです お、起こしちゃ――」
ギュー
電「……なのです?」
三日月「……いなづまちゃん……ありがとう……ね……」
三日月「……すぅー……すぅー……」
電「ね、寝ちゃった……それとも、寝ぼけて、た? なのです?」
ギュー
電「……えへへー……まぁ、可愛いから何でもいいのです!」
三日月「……すぅー……すぅー」
電「……ふわぁ~……電も眠くなってきちゃったのです」 ウトウト
電「けど……」 ジー
ギュー
電「あははー……手、放してくれないのです」
電「――ハッ!! そうなのです! 電も三日月ちゃんと一緒にここで寝ればいいのです!!」 キラーン
電「そうと決まれば早速、お邪魔するのですー」 ヌクヌク
三日月「……すぅー……すぅー」
電「…………」
電(三日月ちゃん……電は、何があっても三日月ちゃんの味方なのです)
電「…………し、司令官さんだって……三日月ちゃんになら…………私はそのくらい、三日月ちゃんの事…………す……」
三日月「……すぅー……すぅー」
電「……三日月ちゃん、おやすみなさいっ、なのです」
528: 2016/04/04(月) 09:58:38.72 ID:nLMgEvvH0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
一週間なんて、すぐに過ぎるんだなって、実感できた。
ザバーンッ!!
三日月「電ちゃん!! 金剛さんまでだいぶ距離が近づいたから、ここは!――」 ザッ
電「はいなのです! 二手に分かれて左右から攻めた方が良いですよね!」 ザザー
三日月「――うん!! そう! 電ちゃん頼りになります!!」 ザー
金剛「中々やるじゃなーい……けど、負けないデース!! ファイアー!!」 ズドーン!!
朝から夕方まで。たまに夜戦の演習。それがみっちり続いた。それだけじゃない。強くなるために、色々な事をやった。
提督「三対三で、相手は軽巡一人と駆逐艦二人。こっちは金剛がいるから、状況的にはこっちのが有利だな」
三日月「ですけど、あちらは神通さんがいます」
提督「……あそこの神通、良く育ってたな。相当厄介そうだな」
三日月「はい。……戦うとしたら本当に厄介な方です」
金剛「うーん、まずは神通をなんとかしないとだネー」
提督「そうだな。そのためには彼女に対抗できる火力と射程距離のある金剛が重要となってくるな」
電「なのです! 金剛さん、一緒に頑張ろうなのです!」
金剛「もちろんデース!」
提督「けど、他の二人も油断していい相手じゃないよな。金剛には神通との戦いに集中してもらいたいが、そのためにはあの二人も何とかしなきゃだもんな」
電「……その事に関して、電からの作戦提案があるのです」
提督「おぉ、聞こうか」
電「まず――」
――作戦を立てて、連携訓練なんかもやった。
すごく疲れたし、大変だった。けど、とても楽しかった。
529: 2016/04/04(月) 10:02:17.74 ID:nLMgEvvH0
電「……今日もクタクタなのです……金剛さん、更に強くなった気がするのです」
三日月「あはは……金剛さんも一緒に訓練してるから、強くなってるんだよ。けど、今日は何回か当てれたよね」
電「はい! あれは素直に嬉しかったのです!」
三日月「うん、私も嬉しかった」 ニッコリ
電「……そう言えば三日月ちゃん、電と話す時敬語じゃなくなったのですね」
三日月「へ? あぁ、うん」
三日月「電ちゃんは……私の……一番大事な友達だから。自然体でいこうかなぁって思ったの。……も、もしかして嫌だった?」
電「い、いえいえ! むしろ嬉しいのです!!」
三日月「ふふ……よかった」 ニコニコ
電「……三日月ちゃん」 スッ
三日月「……どうしたの? 電ちゃん」 ギュ
電「……ついに、明日が演習ですね」
三日月「……そう、だね」
電「電、明日は絶対、ぜぇったいに負けたくないのです」
三日月「…………私は……」
電「三日月ちゃんは、勝ちたくないのです?」
三日月「……正直言うと、よくわからない、かな。神通さんにも、夕立さんにも、菊月にも……司令官にも……思いはぶつけたけど……あの後何も言われなかったから……。正直、ちょっと会うのも怖い。会いたいのに、まだ怖いんだ」
電「…………」
三日月「……けどね、電ちゃん」
電「ん?」
三日月「それは、一つの私の気持ちにしか過ぎないよ」
電「……三日月ちゃん」
三日月「勝って、皆さんと喜び合いたい。あの人たちに私の成長を見せてあげたい。もう昔の私じゃないって事を、証明したい。……そして、私が撃ってしまった人たちの分、多くの人達を救ってあげたい」
三日月「……あはは。色々な気持ちがごちゃ混ぜになり過ぎちゃって、よくわからないんだぁ」
電「三日月ちゃんらしくて、なんか良いですね」
三日月「そ、そうかなぁ」
電「はいなのです!」 ニッコリ
電「……けど三日月ちゃん」
三日月「?」
電「難しく考えてもしょうがないのです。だから、ひとまず演習、頑張りましょう! なのです!」 ニッコリ
三日月「……ふふ、そうだね。難しく考えても、しょうがないよね」
三日月「――うん! 電ちゃん! 私、頑張る! 頑張るしか取り柄がない私だから!」
電「そんなことないけど、その意気なのです! 電も頑張るのです! おー!! なのです!!」
三日月「おー!!」
色々な事があったけど、ここからがスタートだ。私は――三日月は、この演習から変わるんだ。
――そしてついに、演習の日がやってきた。
531: 2016/04/16(土) 03:00:53.65 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
菊月『……最近、三日月の様子がおかしい気がするんだ』
如月『……菊月もそう思う? 私も最近そう思うの。何か、暗いわよね』
菊月『…………この前の任務から帰ってきてからだな』
如月『うん……』
菊月『……最近の司令官は、どうにも三日月に対して態度が――』 ボソボソ
如月『あ、司令官』
菊月『!!』
前提督『…………』 スタスタスタスタ
如月『あらあら、どうしたの司令官ぼーっとして?』 ニコニコ
前提督『……うるさい』
如月『へ?』
菊月『へ?』
前提督『君らはさっさと遠征に行ってこい』 スタスタスタスタ
菊月『……司令官……』
如月『き、きっと機嫌が悪かったのね……あんな態度の司令官、見たことないもの』
菊月『……そうだな……あ、三日月』
如月『あら、本当。どうしたの、こんなところでぼーっとしてて』
三日月『ごめんなさい』
菊月『え?』
三日月『先ほどの司令官の態度が悪かったの……きっと、私のせいです……私の……』
如月『み、三日月?』
三日月『私、みんなにまで迷惑かけてるんだ……本当に……ごめんなさい!』 ダッ!
菊月『み、三日月!』
私たち姉妹と三日月は、それ以降あまり関わらなくなってしまった。部屋も変わり、あの子は日中ずっと訓練をしていたから、中々顔を合わす機会が無くなってしまった。
532: 2016/04/16(土) 03:19:18.06 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――づき! ――菊月!!
菊月『…………ぇ?』
前提督『き、気が付いた!! よ、良かった……!! 本当に良かった!!』
如月『ごめんなさい……菊月……! 私が敵に気が付かなかったから……菊月は!』
前提督『…………とにかく今は入渠が先だ……僕が連れていく! 如月も一緒に来てくれ!!』
前提督『僕は……またやらかしてしまう所だった……ちゃんとした指示で遠征に出していれば……くっ!!』
意識が朦朧としていた。けど、司令官の声はしっかりと聞こえていた。
入渠が終わった後、私はずっと司令官から謝られっぱなしだった。
――そして、三日月は気が付けば私達の元から去っていて、私は今の部隊に配属された。
533: 2016/04/16(土) 03:47:17.43 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
夕立『……ぽ、ぽい~……』
鎮守府に配属が決まった。けど、問題が発生した。司令室がどこだか分からない。
夕立『地図なんて見ても分からないっぽい……』
夕立『ど、どうしよ……このままじゃ夕立、餓氏しちゃうっぽい!?』
夕立『そ、そんなの嫌ぽいいいいいいい!!』
『あ、あの……』
夕立『……ぽい?』 クル
三日月『ど、どうしたんですか? もしかして、迷子?』
夕立『お……おぉ~!! あなた、この鎮守府の人っぽい!?』
三日月『え、えぇ』
夕立『お願いします!! 司令室まで連れてってぇ~!!』
それが彼女との出会いだった。
534: 2016/04/16(土) 04:15:29.23 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
夕立『えへへー、今回も三日月ちゃんのおかげで助かったっぽい!』
三日月『ふふ、ならよかったです』 ニッコリ
夕立『三日月ちゃんには、ここに配属された時からお世話になってばっかだよね。ホントごめんっぽい』
三日月『えっ、いやいや、このくらい大丈夫ですよ。全然』
夕立『ほ、ほんと?』
三日月『ほんとです』
夕立『~~~!! 三日月ちゃん本当に優しいっぽい! 三日月ちゃんと友達になれて、私ほんとに嬉しいっぽい!』
三日月『と、友達?』
夕立『うん! ……嫌っぽい?』
三日月『い、いえ! そんなことないです! むしろ嬉しいですよ?』
夕立『ならよかったっぽい!』 ギュー
三日月『……えへへ』
夕立『けど、夕立はちょっと三日月ちゃんにお世話になってばっかだから……もっと成長しないと!』
三日月『そんなの大丈夫なのに……』
三日月『……と、友達はお互いを助け合うものだと思いますし』
夕立『お互いを助け合う?』
三日月『はいっ。友達ってそういうものな気がします』
夕立『なら、私は三日月ちゃんが何か困っていたら助けてあげるっぽい!』
三日月『……なら、私は夕立さんが何か困っていたら助けてあげますねっ』 ニコ
夕立『ぽい~! 約束っぽい!』 ニコニコ
三日月『はい! 約束です!』 ニコニコ
ただの口約束だったのかもしれない。けど、私にとっては大切な思い出だったし、初めてできた友達との約束だった。
だから――
夕立『み、三日月ちゃん。一人で抱え込んじゃダメだよ。私達、仲間でしょ? 友達でしょ?』
夕立『ゆ、夕立達……“お互いを助け合う事を約束し合った友達同士”でしょ?』
夕立『だから、一人で抱え込んじゃ――』
三日月『そんなの今は関係ありませんッ!!』
その言葉だけは聞きたくなかった。
535: 2016/04/16(土) 04:53:46.96 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
小さい頃に、私はあなたと出会いました。
神通『…………』
私は何なのだろう。私はそれが分からなかった。
『今から貴様らには!! こいつらの指導係となってもらう!! これも大事な訓練の一つだ!! 手は抜くなよ!!』
怖い雰囲気の男の人が何か言っている。そして、少し経つと私の前には優しそうな人がやって来た。
『やぁ』
神通『お兄さん……誰?』
前提督『僕は君の……そうだな、先生みたいなものかな? 訓練兵だから、あまり立派な人とはまだ言えないけどひとまずよろしくね』 ニッコリ
優しい、笑顔だった。
神通『先生?』
前提督『ん? どうしたんだい神通』
神通『問題……解けました』
前提督『もうかい!? 早いねぇ……どれどれ』
前提督『……驚いた、全問正解じゃないか! 偉いぞ!』 ナデナデ
神通『……えへへ』
私は自分が何なのかは分からない。けど、これだけは分かった。私はこの人の喜ぶ顔が好き。
536: 2016/04/16(土) 04:56:38.98 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『来たか、訓練生145番よ』
前提督『はい。言われた通りこの子も連れてきました』
神通『…………』 ペコリ
『よろしい』
あの時の怖い人だ。何かあるんだろうか。
『ではこれから一つだけ指示を出す。彼女の数字を見て、私に教えろ』
前提督『え?』
『時間がないんだ早くしろ』
前提督『数字を見ろって言われましても……』
『よく見てみろ。じぃーっくりとな』
前提督『うーん……』 ジー
神通『…………』
前提督『……』 ジー
神通『……///』 カァァァァ
ちょっと恥ずかしかった。
前提督『……1、ですね』
『!! 貴様、見えるのか?』
前提督『は、はい……』
『……すばらしい。君には才能がある。おめでとう、晴れて君は訓練兵卒業だ』
前提督『え?』
神通『?』
それから、ちょっと先生とは離れ離れになった。けれど、私はその間も勉強を頑張り、訓練も頑張った。そして私は次第に、自分が艦娘という存在だという事を知った。
――それでも私は何なのか分からなかった。艦娘? 艦娘は人間? 兵器? 分からない。分からなかった。そして、自分が何でありたいかも分からなかった。
537: 2016/04/16(土) 05:03:19.49 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
神通『先生……いや、提督。お久しぶりです』
前提督『神通? 神通なのかい!?』
神通『はい、あの時の神通です』
前提督『おぉ……いや、本当に見違えたよ。立派になったね、神通』
神通『ふふ、ありがとうございます。提督も最近は何かいいことがありましたか?』
前提督『はは、そうだねぇ……まず子供が生まれた。今ではもうだいぶおっきくなってきたね。まだまだ甘えん坊さんだけど、これがまた可愛いだよ』
神通『あらあら。おめでとうございます、提督』
先生が女性とお付き合いしてることはあの時から知っていた。だから子供がいてもおかしくないだろうし、素直に喜ばしいことだった。
前提督『いやでも、正直不安でいっぱいだったこの状況で、初めての艦娘が君で本当に安心できるよ。改めてよろしくね、神通』
神通『はい、こちらこそよろしくお願いします。あと提督』
前提督『ん?』
神通『久しぶりに会えて……本当に嬉しいです』
前提督『……僕もだよ、神通』
538: 2016/04/16(土) 05:04:11.50 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
神通『ここも大所帯になりましたね』
前提督『そうだね。嬉しい限りだよ』
私にも、仲間ができた。部下ができた。時間が経つのはとても早く感じる。
神通『けど、お忙しくなった分提督は中々実家の方に帰省できなくなってしまいましたね。娘さんも奥様も寂しがっているでしょうし……』
前提督『……まぁ、そうだね。けど、彼女は理解のある人だし、娘もこの事は承知している』
神通『…………いい子、ですね』
前提督『あぁ。あの子は本当にいい子なんだ』
前提督『どんなに寂しがっていても、僕が何か言えばちゃんという事を聞くんだ。……自分の感情を頃しているの、バレバレなんだけどね』
神通『ちゃんという事を聞く?』
前提督『あぁ。……この前、行かないでよって泣かれてしまった時も、結局は僕のわがままを言わないでくれって一言で泣き止んでしまってさ……本当にあの子は……いい子過ぎるんだ』
神通『……いい子、ですか』
前提督『ははは……うん』
神通『…………』
541: 2016/04/16(土) 10:44:40.94 ID:7mTxrmSz0
『…………じん、つーさん……』 ヨロヨロ
神通『あら、三日月ちゃん。お疲れさまです』
三日月『はぁ、はぁ……ご、50……しゅうー……お、終わり……まし、た……はぁ、はぁ』 ヨロヨロ
神通『はい、ご苦労様です。他の皆さんは?』
三日月『はぁ、はぁ、はぁ……げほ……えと……みんな、倒れています……』
神通『なるほど……根性がありませんね。あとでペナルティです』
三日月『!! み、みんな限界なんです……そ、それはちょっとかわいそ……』
神通『けど、三日月ちゃんは根性でやり切りましたよね? あなたにできて他の子にできないとは私は思いません』
三日月『けど……』
神通『……なら三日月ちゃんが倒れている子達の残りの分も走り切ってください。そしたらペナルティはなしにしてあげます』
三日月『え?』
神通『この後予定していた訓練ももちろんやってもらいます。それでもやりますか?』
三日月『……っ、や、やります!! やってやります!!』
神通『そうですか。では頑張ってください』
三日月『ッ~~~~~!!』 タッタッタッタ
前提督『……神通、中々厳しいね』
神通『そうですか?』
前提督『あの子、前配属されたばかりの三日月だろ? いくらなんでも代わりに走らせるのは厳しいんじゃ』
神通『えぇ、私もあの子以外にだったら多分やらせないでしょう。問答無用で次の訓練をやらせています』
前提督『え?』
神通『あの子、多分走ってる途中で何回か吐いてますね。拭いてきたんでしょうけど、口元に薄らと跡が残ってました。それでもなお走り終えて、ここまで報告に来ました。私はその根性を買って、あの子ならやり切れると思って追加で走らせることにしました』
前提督『……オーバーワーク過ぎないか?』
神通『私が体験してきたことです。あの子にもきっとできますし、ちゃんと休息も与えます』
前提督『あの子が走り終えたという事が嘘かもしれないと言う可能性は?』
神通『あんなに馬鹿真面目な子がそんなことするとは思えません』
前提督『はははは、確かにな。……あの子、なんだか少し僕の娘に似ている気がするよ』
神通『娘さんに?』
前提督『あぁ。見た目もだけど、性格までちょっと似てるかもね』
神通『はぁ』
三日月ちゃんは、いい子だ。そして娘さんもいい子みたいだ。
……私は、いい子なのだろうか? 分からない。
そして、私が何なのかも、いまだに分からない。
542: 2016/04/16(土) 11:23:38.95 ID:7mTxrmSz0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
夕立ちゃんが私に泣きながら聞いてくる。彼女は悲しみながら、怒っていた。
夕立『神通さん! ……私……私、どうしたらいいの……? 三日月ちゃんのこと……わたし……!!』
神通『……夕立ちゃん』
夕立『私……あの子の力になりたいのに……!! ……悲しんでいる三日月ちゃんの事、可哀想だと思ってるのに……!』
夕立『……許せないとも思ってるの……!』
夕立『……わたし……どうすればいいの!? 何にも、わかんないの!!』
神通『……夕立ちゃん。その質問に、私は答えることができません』
神通『いいですか、夕立ちゃん――』
私だって、分かりませんよ。
私達は、色々と体験し過ぎてしまいました。だけど、今の夕立ちゃんに対してそんな返答はできない。彼女は迷っている。
――だから私は、まるで自分に言い聞かせるように、その言葉を吐き出す。
神通『自分が選んだ道こそが、最善の選択なんです。周りからしたら、それが間違っていることなのかもしれません。だけど、そんなの関係ありません。だって、どれが正解だなんて、誰にもわからないんですから』
神通『だから、あなた自身が決めなさい。どうするべきなのか……自分で』
私のこの言葉が、三日月ちゃんと夕立ちゃんの仲を崩壊させてしまった最大の理由なのかもしれない。
スタスタスタスタ
神通『…………』
<司令室前>
神通『…………』
前提督『……んで、なんで……こんなことに……』
神通(……提督の声……)
前提督『……あいつが悪いんだ。あいつが悪いんだ。そうだ、そうだそうだそうだそうだそうだ。……そうに決まっているさ』
提督は、今精神的に不安定なんだ。
神通『……先生……』
けど、私にはどうすることもできない。私の言葉では、彼をどうしたって救う事は出来ないんだ。では、私はどうすればいい? そんなのはわからない。自分で決めるしかないんだ。
前提督『……あんないい子が……なんで氏ななきゃいけなかったんだ……!!』
神通『…………』
そうだ。私、少しでもいいから提督の娘さんの様な存在になろう。代わりになろう。
神通『……ふふ』
私が何なのかなんて、今はもうどうでもいい。人間じゃなくたって、兵器じゃなくたっていい。私は、提督にとってのいい子になろう。彼の言う事をちゃんと聞くいい子になろう。自分の感情なんか関係ない。彼にとってのいい子になろう。
神通『…………』 スタスタスタスタ
何が正解で、何が間違っているのかだなんて、関係ない。――私はあの人のいい子になるんだ。
「皆、そろそろ起きるんだ」
543: 2016/04/16(土) 11:39:39.73 ID:7mTxrmSz0
神通「へ?」
夕立「ぽい?」
菊月「ん?」
前提督「ははは、三人ともぐっすりだったね。神通まで寝ているなんて珍しいこともあるね」
神通「し、失礼しました」
前提督「いや、いいんだよ。けど、もうそろそろ彼の鎮守府に着くから、準備だけはしておいてくれ」
神通「分かりました」
夕立「車はぐっすり寝れるから電車よりも好きっぽい~」
菊月「…………」
夕立「菊月ちゃん?」
菊月「なんだか、昔の夢を見ていた気がする」
夕立「菊月ちゃんも? なんか夕立もそんな気がする」
神通「……さ、二人とも。準備をしますよ。本日は演習なんですから、気を引き締めていきましょう」
夕立「了解っぽい」
菊月「…………あぁ」
神通「それで菊月ちゃん。作戦は前に菊月ちゃんが決めたもので大丈夫ですか?」
菊月「あぁ。変更はない」
神通「分かりました。では、改めて最後にもう一度確認を行いましょう」
夕立・菊月「了解」
前提督「…………」
三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第十四夜】



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