567: 2016/05/10(火) 16:45:47.24 ID:h60+Pw5w0
前回:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第十四夜】
最初から:三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」
<鎮守府 司令室>
前提督「……そんな……馬鹿な……夕立が、負けた?」
前提督「……こんな馬鹿なことがありえるのか!?」
提督「……三日月も努力してるんだよ。あんただって知ってるだろ」
提督(あんなに自信のなかった三日月が、あんな発言するなんてな……よく頑張ったな、三日月)
前提督「うるさい!!」
提督「……なぁ、大佐。アンタ、いつまで現実から逃げているつもりなんだ?」
前提督「……」
金剛『ファイアー!!』 ドォォォンッ!!
神通『ッ、当たりません!!』 ズドンズドン!!
提督「……氏んだ人間は、もう戻って来ないんだ……。アンタだってわかってるんだろ」
ガシ
前提督「……黙れ。君に何が分かるって言うんだ?」
提督「わからねぇよ、アンタの気持ちなんて」
電『やああああああああああ!!』 ドンドン!!
菊月『ッ!!』 バンバンバン!!
前提督「僕は現実から逃げてなんかいない。全部、アイツが悪い。事実しか言っていないよ」
提督「……ッ!!」 シュ
バキ!!
前提督「ぐはっ……!!」 ヨロ
提督「…………」
前提督「……貴様、今殴ったのか!? 仮にも僕は君よりも階級は――」
提督「今はそんなの関係ない。ここにいるのはアンタと俺だけだ。男同士の会話だ。だから、聞けよ」
提督「……もう、現実から逃げるな!! アンタだって本当は分かってるんだって、知ってるんだ!! アンタ自身が語った過去でその事は分かってるんだよ!!」
前提督「君に何が分かるんだ!! 家族を失ったことがない君なんかに!!」
提督「俺の両親も!! あの船に乗っていたッ!!」
前提督「……え?」
提督「一年前のあの船の船長とその補佐は……俺の両親だ……」
前提督「…………」
提督「…………」
568: 2016/05/10(火) 16:46:47.61 ID:h60+Pw5w0
前提督「……君、頭おかしいよ」
前提督「じゃあ何で君は……アイツを恨んでいないんだ!! 僕達の家族を頃したアイツを!!」
提督「三日月一人に押し付けられるわけないだろ!!」
前提督「やっぱり君はおかしいよ!! 普通じゃない!!」
提督「……俺だって、最初その話を聞いた時……動揺した……」
提督「だけど、アイツだけが悪いんじゃない……アンタ言ってたじゃねぇか……みんながそれぞれ失敗したって……」
前提督「違う。違う!! 悪いのは全部アイツなんだ!!」
提督「三日月も――アンタも他の奴らも、悪くねぇよ!!」
前提督「っ!!」
提督「悪いのは全部……この戦争だ……」
前提督「違う!! 僕の家族を頃したアイツが全部!!」
提督「――辛い思いをしてるのはアンタや俺達だけじゃねぇんだ!!!!」
提督「今、こうして俺達が話してるこの瞬間にも、きっと誰かが苦しんでる。深海棲艦に、脅かされてる。駆逐イ級にすら勝てない人類だぞ……」
提督「辛い思いをしてるのは……俺達だけじゃねぇんだ……それが、戦争なんだよ……」
前提督「……黙れ!! 黙れ!! 黙れ!!」
前提督「僕の家族は……妻は、娘は!! アイツが!!」
ガシ
提督「押し付けるな!! 三日月に罪悪感がないとでも思ってんのか!? 自分で撃ってしまったって罪を抱えながら、全部押し付けられてんだぞ!! アンタが三日月の立場だったらどうなる!?」
提督「あの子は……俺の両親と同じで真面目過ぎるんだよ!! 一人で抱え込もうとして、結果的に一人で抱え込んでるんだ!! ――なんで本当は気付いてるアンタが、三日月の馬鹿な発言に耳を傾けて真に受けてるんだ!!」
提督「一人で抱え込むなんてこと、間違ってんだ。部下が間違った方向へ行こうとしてたら、それを正しい方向へと導いてやるのが!! 提督の役目だろうぁ!!」
前提督「黙れえええええええええええええッ!!」
提督「…………」
前提督「……僕は……!!」
提督「!!」
前提督「君ほど……強くないんだ……!!」 ポロポロ
569: 2016/05/10(火) 16:47:39.15 ID:h60+Pw5w0
提督「…………」 パッ
ピー!! ピー!! ピー!!
提督「!? 通信機に連絡?」 ピッ
提督「どうした!?」
レーダー妖精さん「テイトク!! チンジュフフキンカイイキニテ、シンカイセイカンガ!! コチラニセッキンチュウデス!!」
提督「!?」
提督「レーダーに反応があったのか!?」
レーダー妖精さん「ハイ!! ネツゲンタスウデス!! ソレニ、ポイント1-2カラモシンカイセイカンガコチラニセッキンチュウデス!!」
提督(な、なんでこのタイミングで!? 金剛に調査してもらった時、鎮守府近海に深海棲艦の反応はなかった……まさか今さっき生まれたのか!?)
提督「鎮守府付近海域の深海棲艦はどのくらいまで近づいてきている!?」
レーダー妖精さん「ジュップンモシナイウチニコチラニトウチャクスルトオモワレマス!! ポイント1-2カラノシンカイセイカンモ、マモナク1-1にトウチャクシマス!!」
提督(1-1……? あの子達がいる海域の近くじゃないか!!)
570: 2016/05/10(火) 16:48:49.04 ID:h60+Pw5w0
三日月「…………夕立さん、落ち着きました?」
夕立「……うん」
三日月「……夕立さん、ごめんね……本当に」
夕立「…………」 ギュ
三日月「……なんか、本当に懐かしいですね、この感じ」
夕立「…………」 ギュー
三日月(電ちゃん達の援護に行きたいけど、そんなことできる状況じゃなさそう……)
ピー!! ピー!! ピー!!
三日月「!?」 ビク
三日月「通信!?」
夕立「ゆ、夕立のも鳴ってるっぽい!?」
ピッ
提督『全員!! 一旦演習は終了するんだ!!』
神通「え?」 小破
金剛「はぁ……はぁ……提督?」 中破
電「はぁ、はぁ……司令官さん、何かあったのですか?」 中破
菊月「…………」 中破
提督『直ちに戻って来るんだ!! 深海棲艦が鎮守府近海に現れこっちに向かっていると連絡が入った』
金剛「深海棲艦デス!?」
神通「まずいですね……今、鎮守府はがら空きです。すぐに戻らないと提督たちが危ないです!」
提督『しかもそれだけじゃない。君達がいる近くの海域、ポイント1-1に深海棲艦が間もなく到着する!! それもこちらに向かっ――、る!!――』 ザー、ザー
神通「!? つ、通信が……切れた」
三日月「な、なんでこのタイミングで……」
神通「皆さん!! こちらに一旦集まってください!!」
571: 2016/05/10(火) 16:50:29.44 ID:h60+Pw5w0
ザーザー!!
金剛「電!」
電「少し離れてしまっていたのです。あ、三日月ちゃん!」
ザザ
三日月「ごめんなさい! 少し遅くなりました」
夕立「ごめん三日月ちゃん、肩貸してくれて……」
三日月「大丈夫です!」
菊月(!? 夕立、大破しているのか? それに三日月と会話を……)
神通「……皆さん、状況は理解していると思います。直ちに鎮守府に戻りましょう」
金剛「ケド、深海棲艦は別の方向からもやってきていマス、そちらは」
三日月「そっちには、私が向かいます!!」
電「み、三日月ちゃん?」
三日月「今は迷ってる時間はありません! 今無傷なのは現状私だけです。皆さんは鎮守府に戻ってください。私は、時間を稼ぎます!!」
電「な!?」
菊月「だ、ダメだ!!!!」
三日月「……菊月」
菊月「お前……いや、私達は今演習弾なんだぞ? その状況でどうやって時間を稼ぐんだ」
三日月「ひたすら逃げます。それに、演習弾でもトドメはさせませんが、ダメージを与えることはできる」
菊月「だ、ダメだ!! そんな危険な事!!」
三日月「今!! こうしている間にも深海棲艦は近づきて来ています!! 鎮守府に!! 迷っている時間はありません!!」
菊月「嫌だ!! だったら私も行く!! お前一人に行かせられない!!」
三日月「だ、ダメ!! 今あなた付いてこれる状態じゃないじゃない!!」
菊月「う、うるさい!! 姉の言う事を聞けぇ!!」
三日月「ッ!!」
572: 2016/05/10(火) 16:52:01.66 ID:h60+Pw5w0
神通「菊月ちゃん、落ち着いてください」
菊月「ッ!!」
金剛「……ヅッキー……」
三日月「金剛さん……止めないでください」
金剛「……必ず、助けに行くヨ。それまで、絶対に無事でいて!! 無事じゃなかったら……とっても高い紅茶を買ってもらうからネ!!」
三日月「……はい!!」
電「…………三日月ちゃん」
三日月「電ちゃん……電ちゃんも止めないで」
電「うん、止めないのです。三日月ちゃんなら大丈夫だって、信じてますから」 ニッコリ
電「だから、無事でいてください。信じてますから」
三日月「……うん!!」
菊月「……お前ら……!!」
三日月「……菊月。私を信じて? ……私、絶対に沈まないから、安心して? ……だって、久しぶりに菊月とお話ししたいから」
菊月「!!」
三日月「あとで、謝りたいこともあるから……私、絶対に沈まない。妹を信じて?」
菊月「…………ッ、わかった……」
三日月「ありがとう、菊月」 ニコ
菊月「……私は……礼を言われる筋合いなんかない……」 ボソ
三日月「……夕立さんも、ね?」
ガシー
573: 2016/05/10(火) 16:53:16.76 ID:h60+Pw5w0
夕立「…………やだ。離したくない」
三日月「……夕立さん、私を信じて?」
夕立「…………」
三日月「……夕立“ちゃん”」
夕立「!!」
三日月「私、大丈夫だから。絶対に生きるから、ね? ……そうだ」 ガサゴソ
三日月「これ、夕立ちゃんに預かっていてほしいの」 スッ
夕立「……お守り?」
三日月「うん。大切な人から頂いた、私の大切な物。それ、預かってて?」
夕立「……なんで?」
三日月「あとで夕立ちゃんと話す時に、受け取りたいから。形見じゃないよ? それを受け取りたいから、私は絶対に無事でいる」
三日月「あとで、失った時間をたっぷり取り戻そう? 私、本当に馬鹿な事をしちゃったから……夕立ちゃんにも、菊月にも、神通さんにも……前の司令官にも……謝りたいから」
夕立「……うん。預かるっぽい」 スッ
三日月「ありがとう、夕立ちゃん」
神通「…………」
電「三日月ちゃん……信じてますからね」
三日月「うん、電ちゃん。ありがとう」
三日月「……それじゃ、行ってきます。鎮守府、お願いします!!」 ザッ!!
金剛「ヅッキー!! 絶対、絶対に無事でいてネー!!」
三日月「はい!!」 ザザー!!
三日月(……必ず、生き残るんだ。絶対に!!)
578: 2016/05/11(水) 07:22:45.60 ID:C5b0hlDv0
ザー、ザー!!
三日月「……見えた!! ポイント1-1、間もなく到着……深海棲艦は……!!」
イ級「……」
イ級「……」
ハ級「……」
三日月(イ級二隻とハ級一隻……あと……あれは、何?)
ル級「…………」
三日月「っ!!」 ゾク
三日月(せ、戦艦……ル級?)
ル級「!!」 ン? クル
三日月「っ、こっちに気が付いた」 キキ
イ級「…………」
イ級「…………」
ハ級「…………」
ル級「…………」
四隻から視線を受ける。
三日月「……ハ級……懐かしい相手です……っ」
三日月(怖がるな、三日月……私がここで簡単にやられてここを通してしまったら……鎮守府に……司令官達のところに!!)
三日月「……あなた達は……絶対にここで食い止めます……!!」
負けたら、私は……殺される、沈むだろう。絶対に嫌だ。私は、生きなきゃダメなんだ。過去の罪と向き合うために。命を奪ってしまったあの人たちの分、多くの人を救わなきゃいけない。
三日月「……負けたくありません」
私は生き残る。
三日月「戦いなんですから!!」 カチャリ
579: 2016/05/11(水) 07:47:41.16 ID:C5b0hlDv0
三日月「ええええええええい!!」 ズドンズドン!!
イ級「!!」 ドカンドカン!!
イ級「……!!」 小破
三日月(よし、演習弾でも、ダメージは与えられる!!)
ル級「!!」 カチャ
三日月「ッ――!!」 ザザッ
ドォォォォォンッ!! ドォォォォォンッ!!
バシャアアアアアアアアン!!
三日月「回避、できる!!」
ドォンドン!! ドカン!! ズドォォォォォン!!
三日月「っ、っ!!」 ヒョイ、ヒョン
耳に届く砲撃の音と、目に映る砲弾の嵐。一発も当たってはいけない。当たったら、沈む。
580: 2016/05/11(水) 07:50:14.83 ID:C5b0hlDv0
三日月「えええええええええええええいッ!!!!!」 ガチャ ズドンズドン!!
ハ級「!!」 ボォォォォォン!!
三日月「……いける。このまま、この感じを維持するんだ」
避ける、避ける、避ける。
三日月「!! ――っ!!」 スッ!! ヒュン
私に迫る砲弾は、私の命を刈り取る。当たったら私は氏ぬ。沈む。睦月型の装甲は、紙だ。一発でも当たったら、ダメだ。
――前の私は、所詮睦月型は役立たずだと言われ、姉妹を馬鹿にされ、現実を思い知らされ、怒ってしまった。――怒る権利なんて、ないくせに。
前の司令官は、心の底からそんなことを思っていたわけじゃない。そんな気がするんだ。昔、司令官が菊月と如月と話す時の冷たい態度を見て、私は皆に迷惑をかけているんだなって思ってしまった。――確認もせず。それが、その時だけのたまたまの光景だったかもしれないのに、私は何も確認をしなかった。その後ずっと訓練場に籠って、部屋を変え、皆と話すことを拒絶していた。
三日月「…………」 ヒョイ、ヒョン
私は、本当に馬鹿で、弱い。結局、いつも後悔してばかりだ。――もう、後悔なんてしたくない。
睦月型の性能も関係ない。私自身が強くなればいいんだ。
睦月型が弱いんじゃない。睦月型は世界一だ、私が弱いんだ。――だから、私は強くなります。
三日月「あなた達は、一歩も通しません!! 睦月型10番艦、三日月が!! この三日月があなた達を食い止めますッ!!」
三日月「全員、かかってこぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!!」 カチャ バンバンバン!!
581: 2016/05/11(水) 08:07:56.49 ID:C5b0hlDv0
ル級「!!」 ザッ
ル級が距離を詰めてくる。
三日月「ッ!!」 ドンドンドンドン!!
私も距離を離しながら反撃をする。でも、他の深海棲艦の攻撃も避けつつだ。
三日月「くっ……!!」
イ級「イィ――――――――――!!」 ドォンドン!!
ハ級「――――!!」 ズドンズドン!!
ザザー!! スッ
イ級「!!」 ズドンズドン!!
水柱の数々。砲撃の嵐。――全部避けろ、三日月!!
三日月「うあああああああああああああッ!!」 ヒョイ、ヒュン
ル級「……!! ――ッ!?」
ル級が、私を困惑するような表情で見つめる。
三日月「私は、睦月型の三日月です!!」 バンバンバン!!
ル級「ッ!!!!」
ズドォォォォォン!!
三日月(砲撃が来た――避け)
ツルン
三日月「え?」
視界が揺らぐ。世界が向きを変える。なんで? ――その理由はすぐにわかる。
三日月「ふあっ!!」 バシャーン!!
私は、転んだんだ。こんな大事な時に。頭上を過ぎる砲弾が、全てを理解させる。私は転んだ。
ル級「……」 ニヤァ
三日月「――――!!」
ドォンドォンドォンドオオオオオオンッ!!
ル級の砲撃が、イ級たちの砲撃が、ハ級の砲撃が――私に迫る。時間がゆっくりと進む。
三日月「っ!!」
三日月(皆さん……ごめんなさい……!!)
ヒュウウウウウウウウウウウ
三日月「っ、司令官……!!」
バッ
三日月「――え?」
その時見た景色は、私の目を疑わせる。――何で?
夕立「ッ!!」 スッ
三日月「夕立ちゃ――」
ドカンドカンドカアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
582: 2016/05/11(水) 08:10:17.61 ID:C5b0hlDv0
神通『くっ、なんでル級が突然……!! これでは鎮守府に戻れません……!!』
金剛『こんな深海棲艦が突然現れるケース、初めてデース!!』
菊月『夕立!! 私から離れるんじゃないぞ!!』
夕立『…………』
電『……夕立さん?』
夕立(こ、こんなところにル級が現れるなんて……も、もしかして、三日月ちゃんのところにもル級がいたら……!!)
夕立『み、三日月ちゃん!!』 バッ
菊月『な――!? ゆ、夕立!! 待て!!』
菊月『夕立ッ!!!!』
――バッシャアアアアアアアアアン!!
三日月「うっ、げっほ、げほ……!!」
三日月(結構、吹き飛ばれた……頭がクラクラす――はっ!?)
三日月「ゆ、夕立ちゃんッ!!!!」
夕立「…………」
三日月「夕立ちゃん!! なんで……ゆ、夕立ちゃん!!」 バッ
夕立「……あ、あぁ……みかづき……ちゃ、ん……ぶじで……よかっ、た……」
三日月「ゆ、夕立ちゃん……ち、血が……何で大破状態で……こんな……夕立ちゃん!!」
夕立「……あはは……からだ……かってに、うごいて……た……まもれて、よかった、っぽい」
三日月「なんで……なんでぇ……!!」 ガシ
夕立ちゃんの手を掴む。血だらけだ。全身から血の気が引く。
三日月「やだ……いや……夕立ちゃん!!」
三日月「せ、せっかく……仲直りできたのに!! なんで、なんでですかぁ!!」
夕立「……わたし、さ…………ばかだった……」
三日月「ち、ちがうよ……馬鹿なのは……わた、し……!!」
夕立「……いなづまちゃんの……いうとおり、だった……げほ、ごほ……わからずやだ、ったの……わたし……だ」
三日月「ぁぁ、やだ、やだやだやだ!! 嫌だよ夕立ちゃん!!」
夕立「……ごめんね……みかづきちゃん……!!」 ポロポロ
三日月(何が生き残るだ、何が無事でいるだ!! 肝心な時に、私は……!!)
夕立「にげてごめんね……おしつけ……て、ぇ……ごめん……ね。たすけてあげれなくて……ごめん……ぽ、い」
三日月「ひっぐ……いやだ!! 氏なないでよ!! 夕立ちゃあああああん!!」
三日月「これからなのに!! や、やっと仲直りできたのに!! なんで、なんで……嫌だよ!!!!」 ガシ
夕立「……えへへ……みかづきちゃんの、て……ちっちゃくて……かわいい……っぽい……。けど、こんなちいさな……てを……わたしは、つきはなしてたんだ……!!」 ボロ、ボロ
三日月「ぁぁぁ……うぁぁぁ……っ!!」
夕立「……みかづきちゃん」
カチャ
三日月「――――」
夕立「ごめ――」
ドカアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!
583: 2016/05/11(水) 08:13:09.07 ID:C5b0hlDv0
バシャンバシャンバシャーン!!
三日月「が、は……げほ、げっほ!!」
三日月「――ハッ!! ゆ、夕立ちゃん!!」
三日月「――へ?」
私は、ずっと、夕立さんの手を握っていた。震える彼女の手を、離さなかった。――今私が見ている現実は、直視したくないものだった。
三日月「あぁぁぁ……ぁぁぁぁ……!!」
私は確かに彼女の手を握っている。確かにここにある。――私の手には、夕立ちゃんの腕だけが残っていた。
三日月「」
夕立ちゃんの腕が徐々に、静かに、光の粒のように、海の中の藻屑のようになり……消えていく。
三日月「」
それが、夕立ちゃんの氏を現実とさせる。――夕立ちゃんは、沈んだ。
三日月「」
イ級「……」
イ級「……」
ハ級「……」
ル級「……」
三日月「」
ピー、ピー!!
電『はっ、つ、繋がったのです!! 三日月ちゃん!! そっちに夕立ちゃんが行ったのです!! きっと、三日月ちゃんを助けに行ったのです!!』
菊月『今私達二人はもう間もなく鎮守府に到着する!! 三日月……頼む!! 今の夕立は何をするか分からない!! だから、アイツを――守ってくれ!!』
ドンドンドンドン!!
菊月『ハッ!? い、いなづ――!! ――』 ザザ、ザー
ザアアアアアアアアアアアア
三日月「…………」
ル級「……」 ガチャ
――ブチッ
三日月「……全員……あなた達……全員」
三日月「沈めてやる」
592: 2016/05/21(土) 05:31:54.96 ID:M1A2jsa80
金剛『……電、神通、菊月。このル級はワタシに任せてくだサーイ』
電『へ?』
金剛『ル級は戦艦、ワタシも戦艦デース。相手にするのは、ワタシが最適デス』
神通『でもそれじゃ――』
金剛『早くッ!! こうしている間にも深海棲艦は鎮守府に向かっていマスッ!!』
神通『……菊月ちゃん。電さん』
電『は、はい』
菊月『……なんだ』
神通『先に鎮守府へ向かってください』
金剛『なっ!? 神通!! あなたまさか残――』
神通『違います。私は夕立ちゃんを追います』
菊月『神通さん……』
神通『金剛さん。ここはあなたにお任せします。……決着はまだ付いていないんですから、こんなところで沈んだら……許しませんよ?』
金剛『……フフ、ワタシを誰だと思っているんデスカー?』
神通『……お調子者の紅茶好きです』 ニコ
金剛『違いマース!! 金剛型の金剛デス!!』
ル級『…………』 カチャ
金剛『……さっ、ル級はもう我慢の限界の様デース。……皆、早くッ』
電『……金剛さんも信じてますから!!』 ザッ
菊月『……任せた』 ザザッ
神通『金剛さん。……ご武運を』 ザッ
…………………
……………
………
金剛「はぁ、はぁ、はぁ……ゲッホ……!!」 ヨロヨロ
ル級「…………」
金剛「さすがに……演習弾だとキツイ……ワネ……」
ル級「……」 カチャ
金剛(一隻撃退したのに、お替りが来たのは……さすがに厳しい)
金剛「……ケド、負けるわけにはいかないワ……」
金剛「何隻でも……相手してやりマース!!」 ガチャ
593: 2016/05/21(土) 05:36:48.69 ID:M1A2jsa80
身体はすぐに動いた。痛む身体に鞭を打ちながら、駆け抜ける。
三日月「…………」 ザー
イ級「イィーーーーーーー!!」 ドォンドォン!!
三日月「…………」 ヒュン
避ける。そんな攻撃当たってたまるか。――それに、邪魔。
三日月「…………」 ザザッ
考える。“どうすれば相手を沈めることができるのか”を。演習弾で、どうやって沈めるかを。演習弾は、通常弾と違い普通に当たっても氏ぬことはない。ただ、痛みは感じるし、ダメージは受ける。
なら、何かしらすれば深海棲艦も沈めることはできるはずだ。――そうだ。
三日月「…………」 チラ
魚雷を確認する。残り、5本だ。
――演習弾は普通に当てても意味はない。演習用の魚雷もそうだ。――普通に当てなければいいんだ。
三日月「…………」 ザッ
接近。回避。準備。全てを淡々と行う。魚雷を手に持つ。避ける。近づく。
ザザー!! ドォンドン!! ――ヒュン ザバァァァン!!
ザッ!!
イ級「!?」
三日月「…………」 チャキ
気が付けばもうイ級の“目の前”だ。――さぁ、弾けてください。
三日月「――っ!!」 シュッ
グチャ
イ級「――!? ィ――――――――ッ!!!!」
私は握っていた魚雷を、イ級の目に迷うことなく突き刺す。
淀んだ色の液体が飛び散る。でも、そんなのは気にしない。すぐさま手を離し、構える。
カチャ
三日月「…………」
バンバンッ!!
イ級「ィ――」
ドカアアアアアアンッ!! バシャンバシャンバシャン
三日月「――ッ!! げっほ、げほ!! ……はぁ、はぁ……ち、近くだったから……ある程度こっちにも被害がでるわね……けど」
イ級「」 ブクブクブクブク
三日月「…………これならいけそうです……」 クル
594: 2016/05/21(土) 05:37:30.32 ID:M1A2jsa80
イ級「…………?」
ハ級「……!? ……?」
ル級「…………」
三日月「……内側から弾け飛べば、沈めますよ?」 チャキ
ハ級「!!」 ドォンドォン!!
三日月「ッ!!」
バッ!!
595: 2016/05/21(土) 05:51:47.82 ID:M1A2jsa80
三日月(また、私は失敗してしまった)
ドンドンドンドン!!
三日月(あんなこと言った癖に、肝心な時に……やらかしてしまった) シュン、シュッ ヒョイ
ドオオオオオン!! ドオオオオオン!!
三日月(……夕立ちゃん……ごめんね……) ヒョイ、ヒョイ
ル級「――!? !?」
三日月(ごめんね……夕立ちゃん……ごめんね) スッ
イ級「ィ!?」
グチャ
イ級「ィィィィィィイィィィィイイィッ!!」
三日月「……うるさいわ」 カチャ
バァンッ!! ――ドカアアアアンッ!! バシャンバシャン!!
三日月「ぁ、っぐ……げっほ……はぁ、はぁ……げっほ!! はぁ、はぁ……!!」 ヨロヨロ ポタ、ポタ
三日月「……残り……二隻ぃ……!!」
三日月「……あはは……こんなに早く沈められるのに……なんで……私……あの時……」
ハ級「……」 ブルブル
ハ級「ッ!!」 バッ
ル級「!?」
ル級「!!」 ドォォン!! ドカァァァァァン!!
ハ級「!!」 バシャーン!!
三日月「……あの時のハ級と違って、根性がないわね……」
三日月「……あの時のハ級も簡単に沈んでくれれば良かったのに」
ル級「……」 ガチャ
三日月(……こんなことはただの八つ当たりだってわかってる)
三日月(けど……今の私は……望んでいる。戦いに勝つことじゃなくて……目の前の深海棲艦を……コロ……)
三日月「…………あなた……」
ル級「…………ッ」
三日月「……楽に沈めると思うなよ?」
596: 2016/05/21(土) 06:15:27.19 ID:M1A2jsa80
ル級「……タカガ駆逐艦ニ!」
三日月(こいつ、話せたの……?)
ル級「貴様ノ様ナ、駆逐艦ゴトキニ!!」
ル級「何ガデキルッテ言ウンダ!!」
三日月「…………」
ル級「貴様モ!! 貴様モサッキノ奴ノ様ニ、バラバラニナルガイイ!!」 ガチャリ
バァン!!
ル級「――ァ、アアアアアアアアアアアアッ!! 目、目ガ……!! キ、貴様ァ……!!」 中破
三日月「……戦艦だから慢心しましたね? 人型のあなたなら、演習弾でも目に当たれば痛いでしょ? ……この近さなら、私はどこでも狙える」
バァン!
ル級「ガァ、ッハ!! アァ、……アア、ァァァァアアアア……!! イダイ……!! 目ガァ!!」 大破
三日月「……どれだけ射撃訓練したと思ってるの?」
ル級「ッ!! ……!!」
三日月「……沈めてやる」
ル級「クッ……クッソ……!!」
三日月「沈めてやる……沈めてやる……!!」
ル級「タカガ……駆逐艦ゴトキニイィィィィイイイイイ!!」
三日月「駆逐艦を……馬鹿にするなあああああああああああああッ!!!!」 カチャ
ガシ
三日月「――へ?」
神通「…………」
三日月「神通……さん? どうしてここに……?」
597: 2016/05/21(土) 07:51:12.21 ID:M1A2jsa80
神通「……夕立ちゃんを追って……来ました」
三日月「!!」
神通「ゆ、夕立ちゃんは……?」
三日月「…………ごめんなさい」
神通「…………」
三日月「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」
三日月「夕立ちゃん……わ、私を……守って……!!」
神通「……敵、深海棲艦は?」
三日月「……四隻中、二隻は沈めました」
神通「!?」
三日月「一隻は逃亡した際、目の前のル級に処分されました」
ル級「……ゥウ、クッソォ……!!」
神通(もう、満身創痍のル級。これを……三日月ちゃんが)
三日月「…………私のせいなんです」
三日月「夕立ちゃん……私を守って……!!」
神通「…………」
三日月「私、また……失敗しました。前は司令官の家族を……そして今度は、大切な友人」
神通「三日月ちゃん」 ギュ
ル級「ッ!!」 カチャ
神通「そこのル級、動くな」
神通「しばらくそのまま待ってろ」
ル級「ッ」 ビク
598: 2016/05/21(土) 07:52:39.65 ID:M1A2jsa80
三日月「…………」
神通「三日月ちゃん、頑張ったんですね?」
三日月「!!」
神通「こんなにボロボロになって、血だらけになって……時間を稼いでいてくれていたんですね?」 ナデナデ
三日月「……けど……夕立ちゃんが……私のせいで!! 私のせいで!!」
神通「…………三日月ちゃん」 ギュ
神通「あなたは、私達を恨んでいないのですか?」
三日月「え?」
神通「私も……夕立ちゃんも、三日月ちゃんを……救ってあげなかった。提督があなたをいじめる時も、私は中途半端で、見守るだけで、あなたを救わなかった」
神通「すごく最低な事を聞いちゃうと思います。私は最低な艦娘だから」
神通「……三日月ちゃんはなんで、そんなことをした私達……夕立ちゃんを……恨んでいないの? 悲しむの……?」
三日月「……関係ないですよ!!」
三日月「そんなの、関係ないんです!!」
三日月「恨んでる? そんなわけないじゃないですか!! 私は、神通さんも、夕立ちゃんも……前の司令官も、大好きなんです!!」
三日月「思い出がいっぱいなんです!! けど、それを私が壊した!! だから……だから後悔してるんですよ!!」
三日月「救わなかったとか、そんなの関係……ないんです。恨むわけ……ないじゃないですか」
三日月「思い出をくれたあなた達を……!! 恨む理由なんて、ないんです!!」
神通「……三日月ちゃん……」
三日月「けど……壊しちゃうんです……私……全部、全部……!!」
三日月「嫌だ……もう、夕立ちゃんに会えないの……嫌だ……!!」
三日月「謝りたい……謝りたいよ……神通さん!! 夕立ちゃんに……もういちど……あやまりたいよぉ……!!」
三日月「うわあああああああああああんッ!! ――ああああああああああッ!!」
神通「…………」
599: 2016/05/21(土) 07:54:24.96 ID:M1A2jsa80
神通『私は提督の御心のままに動くだけです。それが間違った事でも、私が嫌な事でも関係ありません。私は提督の命令に従うだけです』
金剛『……友人としてチューコクしマース』
金剛『そんなの、間違ってるワ』
電『神通さん。あなたの忠誠の仕方は、間違っているのです。……あなたは三日月ちゃんに優しくしてるみたいですが、それこそ自己満足なのです』
電『――優しくするんだったら、どうしてあの子がその人にいじめられている時に、助けてあげないんですか!! 守ってあげないんですか!!』
電『……あなたが守りたいのはその人なんですか? 三日月ちゃんなんですか?』
神通(……何が、提督のいい子になろうだ……)
神通(提督のいい子でもない……全部逃げていただけじゃないか……!! 何がいい子になるだ!! 近くのこんな小さな子に背負わせて……!!)
神通(……本当に、私……最低よ……)
600: 2016/05/21(土) 07:57:11.67 ID:M1A2jsa80
三日月「ひっぐ……ひっぐ……!!」 ギュ
神通「…………っ!!」
ル級「……ハハ」
神通「……何がおかしいの?」
ル級「……クダラン。本当ニ艦娘トハクダラン存在ダ」
神通「…………」
ル級「余計ナ感情ヲ持チ、人間等ニ利用サレ、青ヲ取リ戻ソウトスル我々ノ邪魔バカリヲスル!!」
神通「…………」
ル級「……消耗品ノ癖ニ……邪魔ヲスルナ!! 愚カ者ドモメ!!」 ガチャ
神通「…………」 カチャ
バァン!!
神通「え?」
ル級「――!?」
三日月「……え?」
ル級「キ、貴様……ナゼ……生キテ――」
バァンッ!!
ル級「――」 ドカアアアアアアアアアン!!
三日月「……うそ……」
「嘘じゃないよ」
夕立「夕立、元気いっぱいっぽい!」
601: 2016/05/21(土) 08:00:39.40 ID:M1A2jsa80
ブクブクブクブク……
夕立(……あれ……ここは……どこ?) キョロキョロ
夕立(……あぁ……私、沈んだのか……身体の感覚、無いや)
夕立(……海の中は青いのかと思ってたけど……暗いんだね……少し、怖いっぽい)
夕立(そういえば、三日月ちゃんから預かったお守り、持ったままだった)
夕立(…………三日月ちゃん、ごめんね)
「ネェネェ」
夕立(……何、この声?)
「アナタ、ヤリノコシタコトハアル?」
夕立(……あぁ、もしかして神様かな? 声が女の人っぽいから、女神様っぽい?)
「ヤリノコシタコトハアル?」
夕立「……いっぱいあるよ」
「フーン」
「ジャアサ、マダマダ艦娘トシテタタカエル?」
夕立「……よくわかんないっぽい。夕立、お馬鹿だから」
夕立「けど、夕立は戦うよ。皆のために、提督さんのために。……友達のために。守るために」
夕立「ハンモックを張ってでも、戦うよ」
「……アナタノ覚悟、ウケトッタヨ」
「直してあげるわ」
夕立「え?」
応急修理女神「私を持たせた提督は良い人ね。私達、結構高い“お守り”なのよ?」
応急修理女神「武器は12.7cm連装砲B型改二ね? 弾が変なのだったからちゃんとしたのにしておいたわ。さ、行ってらっしゃい」
応急修理女神「もう、極力無茶しちゃダメよ? 痛いのはあなたなんだから、ね?」 スゥゥゥゥ
602: 2016/05/21(土) 08:02:06.08 ID:M1A2jsa80
夕立「……ごめん、三日月ちゃん」
夕立「お守り……無くなっちゃったみたい」 アハハ
三日月「夕立ちゃん……ゆうだち、ちゃん……?」 ヨロヨロ
夕立「っぽい!」
ダキっ
三日月「ほ、本物だ……本当に、夕立……ちゃんだ」 ジワァ
夕立「えへへ……心配かけてごめんっぽい」
三日月「ひっぐ……!! ごめんね……あああ……うぁぁぁ……!!」
夕立「……大丈夫だよ。私、生きてるから……」 ギュ
三日月「ッ――!! ……あぅ……ぅうぅ……っ!!」 ボロ、ボロ
ダッダッダッダ!!
ギュ!!
夕立「っぽい!?」
神通「……夕立ちゃんの、お馬鹿!! 一人で突っ走り過ぎです!! ホントに――お馬鹿ッ!!」
夕立「じ、神通さん……」
神通「ですが……」
神通「無事で……本当に良かった……本当に……良かった……っ!!」 ポロポロ
夕立「……心配かけて、みんな……ごめんなさい」
夕立「ごめんなさい……!!」 ジワァ
私達は、皆泣いていた。
一緒に、泣いていた。全員で――三人で抱きしめ合いながら、泣いた。
三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」【第十六夜】



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