1: 2008/07/18(金) 21:21:05.47ID:TnSwBk6GO
女『男君、さようなら』
女『新ジャンル、さようなら』
---------------------------
ピピピピ……
ガチャンッ
男「あー目覚ましうるせぇ…」
男「もう朝かよ、学校だりぃ…」
男「……なんか、妙に静かだな?」
男「何なんだろ…?」
ドライブレコーダー作動中ステッカー【東北ずん子】四国めたん
4: 2008/07/18(金) 21:23:56.26ID:TnSwBk6GO
男「おはよう」
母「あら、今日は早いのね」
母「いつもは目覚ましかけてもなかなか起きて来ないのに」
男「そういやそうだな」
母「ま、いいわ。朝ご飯食べちゃいなさい」
男「うん」

6: 2008/07/18(金) 21:28:09.66ID:TnSwBk6GO
男「うーん…」
母「何ぼーっとしてるの」
男「いや、何でもない…」
母「早くしないと、学校遅刻するわよ?」
男「……ん?」
男「母さん、今のセリフ」
母「ん?」
男「別の誰かが、毎日言ってたような……」
母「幻聴でも聞いたんじゃない?」
母「つまらないこと言ってないで、さっさと食べる!」
男「………?」

8: 2008/07/18(金) 21:35:22.77ID:TnSwBk6GO
男「なーんか変だな、今日の俺…」
男友「よっす、男ー」
男「よう、おはよう」
男友「どうした、変な顔して」
男「いや、何でもないけど」
男友「何でもないって顔じゃないぞ」
男「別に……」
男「……あれ?」
男「そういえば、俺朝お前と登校してたっけ?」
男友「毎朝っつう訳じゃないが、まぁ大体一緒じゃね?」
男「そうか?」
男「…誰かと登校してた気がするのは、気のせいか」
男友「暑さにやられたか、男」
男「うるせぇよ」

11: 2008/07/18(金) 21:42:35.34ID:TnSwBk6GO
~教室~
男「………」
男「やっぱり、どこかに違和感がある」
男「登校直後のこのガヤガヤ感には覚えがあるのに」
男「俺だけ取り残された気分だ…」
男「なぁ、男友」
男友「なんじゃらほい」
男「俺、前からこんなだったっけ」
男友「何を唐突に、意味不明なことを」
男「なんて言うか、こんな風に普通だったっけってこと」
男友「アホか、お前なんか取り立てて個性もない
  一般ピーポーだっつの」
男「そうだよな…」
男「すまん、変なこと聞いちまったな」
男「しっかりしてくれよー、大将」

14: 2008/07/18(金) 21:49:50.33ID:TnSwBk6GO
男(……)
男(…やっぱり、なんか昨日と違う)
男(小骨が奥歯に突っかかってるみたいな、嫌な気分がする……)
男(どうしたんだろ、この感じ)
男(……あーっ、イライラするー!)
教師「何してる、男!」
男「うぇっ!?」
教師「人の話しを聞いてるのか!」
男「は、はい…」
教師「お前、後で職員室に来い!」
男「…すいません」
男(最悪だ…)

15: 2008/07/18(金) 21:57:37.41ID:TnSwBk6GO
教師「いいか男、ここは高校なんだ。義務教育の為の場所じゃない」
男「はい…」
教師「辞めるなら、いつ辞めても構わないんだぞ?」
男「すいません」
男(……職員室も、普通だな)
男(三十代過ぎた担任、ハゲの教頭、ロマンスグレーの校長)
男(……うーん)
男(やっぱり違う気がする…)
教師「人の話を聞けと、言っとるだろ!」
---ベシッ
男「いてっ!」
教師「そんなにオレの話はつまらんか?」
男「いいえ…」

17: 2008/07/18(金) 22:06:22.99ID:TnSwBk6GO
男「やっと解放された…」
男友「数学のあいつ、しつこいからなー」
男友「説教小一時間なんざ、ザラだろう」
男「そうだっけ…」
男友「そうだよ、お前ほんとに大丈夫か?」
男「大丈夫、だと思う…」
男友「そんなに気分悪いなら、もう早びきしろよ?」
男「そうしよっかな…」
男「…いや、やっぱりやめた」
男友「なんで」
男「なんとなくだけど」
男友「なんとなくかよ」
男「うん」
男友「お前、アホだな」
男「否定はしない」

20: 2008/07/18(金) 22:18:36.89ID:TnSwBk6GO
~図書室~
男「………」
男友「図書室に来て、本を探すでもなくキョロキョロと」
男友「なにがしたいんだ、こいつは?」
男「なあ」
男友「ん?」
男「図書委員長ってどいつだ?」
男友「さあ、オレはお前以上に本なんか読まないからな」
男友「その辺のやつにでも聞いてみろよ」
男「それもそうだ」
男「すいません、図書委員長ってどこにいます?」
脇役「え?」
脇役「図書委員長は僕ですけど、何か?」
男「あ、いや…」
男「何でもないです、すいません」
脇役「そうですか、ならいいんですけど」
男友「気は済んだか?」
男「悪い。もうちょっと付き合ってくれ」
男友「めんどくせえなぁ」

21: 2008/07/18(金) 22:29:48.73ID:TnSwBk6GO
男(委員長は、男だったか…?)
男友「おい」
男(違ったような、違わないような……)
男友「おい!」
男「あ?」
男「あぁ、何だ?」
男友「聞いてなかったのかよ」
男「悪い、何だ?」
男友「何だって、お前がここに来たがったんだろ?」
男友「屋上だよ、お・く・じょ・う!」
男「すまん、そうだよな」
男友「正確には、屋上前の階段踊場だけどな」
男友「で、こんなとこ来て何がしたいワケ?」
男「鍵がかかってる…」
男友「知らんかったのか?」
男友「生徒が自由に入れる場所じゃないっつうの」
男「だよな」
男友「因みに、中入っても鳩とかカラスの糞だらけだぜ?」
男「そっか…」

22: 2008/07/18(金) 22:42:15.27ID:TnSwBk6GO
男友「今度こそ、気は済んだな?」
男「あぁ…」
男友「腑に落ちないって顔してるな」
男友「何がそんなに気になってるんだよ?」
男「それが分かれば、苦労はしない」
男友「ふぅん」
男友「俺にはどうしようもないな」
男「突き合わせちまって、悪かったな」
男友「それは別にいいんだけどさ」
男友「分からんことを気にし過ぎるのも、体に毒だぜ?」
男友「気楽に行けよ、な?」
男「………」

27: 2008/07/18(金) 22:59:22.10ID:TnSwBk6GO
~帰路~
男「………」
男友「まぁた考えこんでやがる」
男友「つまらん奴め、氏んでしまえ」
男「ひどい言われようだな」
男友「お、今度はちゃんと聞いてたか」
男「聞いてるよ、さっきから」
---ドンッ
幼女「いたっ!」
男「おっと」
男「大丈夫か?」
幼「ふぇぇ…」
母「あら、すみませんうちの子が」
男「いえ、平気ですから」
母「ごめんなさいね。ほら、泣かないでお兄ちゃんに謝りなさい」
幼「…ごめんなさい」
母「いい子いい子。さ、行きましょう」
男友「微笑ましいよな、ああいう親子」
男「……あ」
男友「口を半開きにしてどうした」
男「幼女は常に母親と一緒…」
男「一人で行動するはずはない、んだよな…」
男友「気持ち悪いこと口走りやがった」
男「………」

29: 2008/07/18(金) 23:11:15.68ID:TnSwBk6GO
男「今日は異常に疲れる日だったな…」
男「ただいま」
弟「お帰り、兄貴」
男「おう弟、もう帰ってたのか」
弟「部活が早上がりだったからね、兄貴こそ早かったじゃん」
男「まあな」
男「……ん?」
男「弟、弟……」
弟「呼んだ?」
男「弟、ひとつ変なことを聞いてもいいか?」
弟「何?」
男「俺たちに、姉か妹っていなかったけ?」
弟「…兄貴、変な趣味に開眼してないだろうね」
弟「俺たちは、生まれてからずっと二人だけの兄弟でしたけど?」
男「だよな…」
弟「そうだよ、知らないはずないだろ」
男「………」

32: 2008/07/18(金) 23:22:59.62ID:TnSwBk6GO
男「うーん…」
男「一体何が引っかかってんだろ」
男「………」
男「分からん、全っ然分からん!」
男「単なる俺の思い過ごしかな…」
男「そうならそれに越したことはないんだけどな」
男「…そうだ」
男「今日違和感を感じたことをまとめたら、
  何か分かるかもな」
男「よっし、そうと決まればパソコンパソコン!」

36: 2008/07/18(金) 23:38:42.97ID:TnSwBk6GO
・要点抜粋
一、母さんの『早くしないと遅刻するわよ』を、
  誰か別の奴に言われた気がする
二、教室で異様なぼっち感
三、授業がスムーズに進む
四、教師に違和感
五、屋上に鍵
六、幼女が子供っぽい
七、弟しか兄弟がいない

男「…まとめてみて思った」
男「俺、頭おかしいかもしれない」
男「なんか、馬鹿馬鹿しくなってきたな」
男「ふあぁ…」
男「…寝るか」

38: 2008/07/18(金) 23:51:40.50ID:TnSwBk6GO
女『…おーい』
男「……ぐう」
女『起きてよー』
男「すやすや」
女『起きないと、おへそ食べちゃうわよー?』
男「…zzZ」
女『……#』ピキピキ
女『起きろってのこの阿呆!』
---スパーンッ
男「ぬわっ!?」
女『やっと起きた!』
男「ぬ…?」
男「もう朝なのか?」
女『違うわよ、外真っ暗じゃない』
男「ほんとだ…」
女『しっかりしてよね!』
男「……む?」
男「誰だお前?」
女『覚えてない、男君?』
男「知らん」
女『………』

39: 2008/07/19(土) 00:00:18.94ID:7caNmGBaO
男「いや、ちょっと待て」
男「あんたの顔、どっかで見覚えあるぞ」
女『そりゃあそうよ』
女『だって私たち、昨日までクラスメートだったじゃない』
男「なに?」
女『それだけじゃないよ』
女『恋人だった時もあったし、先輩や後輩だった時もあった』
女『私たちの関係は、一括りにはできない複雑なものなのです』

男「…思い出した」
男「お前、女か!」
女『ピンポーン』

41: 2008/07/19(土) 00:08:23.58ID:7caNmGBaO
男「つうか、なんで俺お前のこと忘れてたんだ?」
女『私が、そうなるよう願ったから』
男「ワケがわからん、詳しく話せ」
女『詳しく話すと、ベタな表現がそこかしこに出て来るけどいいの?』
男「構わん、知らずに放置されるよりよっぽどマシだ」
女『じゃあ話してあげる』

42: 2008/07/19(土) 00:09:26.93ID:7caNmGBaO
>>40
そのコメントに、何か深い意味はあるのか?

43: 2008/07/19(土) 00:16:33.82ID:7caNmGBaO
女『まずは、前提条件としてひとつ言っておくわ』
女『今のままだと、あなたは永遠に高校生のままよ』
男「女、お前は俺の学力を馬鹿にしてるのか?」
女『そういう意味じゃないの』
女『気づいていないでしょうけど、あなたの日常は常に堂々巡りしてるの』
男「信じられんな」
女『疑わしいのは分かるけど、全て本当のこと』
女『一日が終わり、一年が終わると、また同じ年を一年過ごすようになる』
女『そういう風に、あなたは生まれついているのよ』
男「………」

49: 2008/07/19(土) 00:54:56.66ID:7caNmGBaO
男「何でだよ、何でそんなことになってんだ?」
女『だって私たち、登場人物だし』
男「登場人物?」
女『これベタな話しだから、あんまり言いたくなかったんだけどねー』
女『私たちは、新ジャンルっていう小話しの中の主人公なのよ』
男「いや、嘘だろ…」
女『嘘じゃないことは、あなたが今日感じた違和感が証明してる』
女『あなた、昨日までは朝起こしに来てくれる幼なじみがいなかった?』
男「あ……」
女『担任は艶やかな女教師で、図書委員はメガネを掛けた美人さん』
女『綺麗なお姉さんや、可愛い妹なんてのもいたはずよ』
男「そういえば…」
女『それはね、全部舞台設定』
女『私やあなたが、揺るぎなくキャラクターを演じる為の予定調和だったのよ』

50: 2008/07/19(土) 01:00:47.01ID:7caNmGBaO
女『私たちはみんな、オタクの妄想の産物』
女『彼らの考えたキャラを演じて、ただ終わることのない一生を続けていく』
女『悔しいけど、それを破ることは出来なかった』
男「………」
女『でもね、男君』
女『今、そんな不毛な状況を打ち壊すことが出来るかもしれないの』
男「何だって?」
女『新ジャンル氷河期の到来よ』
男「何だ、それは?」

54: 2008/07/19(土) 01:13:53.78ID:7caNmGBaO
女『簡単に言えば、今は私たちの書き手が減って、
  新ジャンルそのものが衰退してるの』
女『私は、一番キャラクターがいじられやすいから、
  早くそのことに気づけたんだ』
女『男君、分かる?チャンスは今しかないの』
女『普通に年を取って、普通に家族と過ごせて』
女『無意味なキャラ付けに踊らされることなく、
  一人の人として生きることが出来る』
女『だから決断して』
女『あなたがイエスと言えば、世界はこれから普通に回り始めるわ』
男「………」
男「話しの展開が早すぎて、なにがなにやら」
女『それもそうね…』

55: 2008/07/19(土) 01:25:17.89ID:7caNmGBaO
男「まあ、何となく雰囲気だけは伝わった」
男「要するにお前は、ツンデレ幼なじみも妖艶美人教師もクールな委員長も
  綺麗な姉も可愛い妹もいない世界を選べと俺に言っとるわけだ」
女『ま、まぁ、下世話な言い方だとそうなるわね…』
男「ならもう答えは決まってる」
男「新世界、断固拒否!」
女『おい!』
男「だーれが夢のsneg状態を自ら葬るものか!」
男「ここでリアルハーレム選ばなきゃ、俺の男が廃るぜ!」
女『ば、馬鹿!』
女『人が本気で心配してんのに、何がリアルハーレムよ!』
男「つまらん現実より、ウハウハパラダイスだろJK!」
女『脳みそ腐ってんのあんた!?』
男「男の九割の本音だよ!」

59: 2008/07/19(土) 01:40:58.37ID:7caNmGBaO
男「残念だったな、俺は今の立場を捨てる気はない」
女『あんたがそこまで外道だとは思わなかった…』
女『もういいわ、素直に普通に生きることを選んでたら
  伏せといてあげるつもりだったけど』
女『こんなんじゃ隠しててもしょうがないわね』
男「何、まだあるのか?」
女『そう』
男「言ってみろ。尤も今の俺には、毛ほども
  効かないだろうがなふははははは」
女『ふーん、じゃあ言うけど』
女『あんたのその夢、叶わないから』
男「……へ?」
女『さもあんたに選択権があるよう言ってみたけど』
女『実際、もう新ジャンルは終わりなのよ』
男「なにぃッ!?」
女『氷河期が続けば、隆盛を誇った恐竜ですら滅びる』
女『いわんや新ジャンルをや、滅亡の時はそう遠くないわね』
男「そ、そんな……」
女『勿論、さっきあんたが話してたハーレムも、消えてなくなるわね?』
男「く、くそうッ…!」
女『あんたが残念でしたー』

106: 2008/07/19(土) 16:45:34.82ID:7caNmGBaO
男「何てこった、夢のハーレム生活が……」
女『楽園なんてこの世に存在しないのよ』
男「うぅ…」
女『まぁ、頑張って普通の恋愛が出来るようになりなさい』
男「くそう……」
女『あはは』
男「…そうだ、そういえば」
女『切り替え早いわね、どうかした?』
男「その新ジャンルとやらが終わったら、お前は一体どうなるんだよ」
女『別に、どうにもならないわよ?』
女『あんたと同じように、一人の人間に戻って普通の人生を生きるだけ』
男「でもさ、さっきお前自分のことを忘れるように
  願ったって言ってたじゃん」
男「そんなこと、する必要ないだろ?」
女『その方が、色々都合がいいの』

109: 2008/07/19(土) 17:01:54.01ID:7caNmGBaO
女『新ジャンルの物語は、大抵あんたと私の恋愛話し』
女『時には結婚まで行く描写もあるけど、ただそれだけ』
女『普通の人が生きていくのに、疑似恋愛の記憶は邪魔でしかないでしょ』
男「それはそうかも知れんが…」
女『だから、あんたは私のことを忘れて、私はあんたのことを忘れる』
男『これで新ジャンルの幕は下りるって寸法よ』
男「寂しい最後になりそうだな…」
女『そうかも知れないわね』

111: 2008/07/19(土) 17:20:18.06ID:7caNmGBaO
男「終わりか…」
男「なんか、実感がわかないな」
女『当たり前よ、もう忘れかけてるんだから』
男「ずいぶん淡々としてるな。疑似とはいえ、恋人だったとは思えない」
女『ハーレム志望の男に、幻滅したのかもね』
男「それは心外だな。むしろ正直者だと褒めてほしいくらいなのに」
女『はいはいワロスワロス』
男「そういう言い方はやめろ」
女『馬鹿は笑いものにするに限る、それが女クオリティ』
男「お前が馬鹿みたいだぞ」
女『腐れ脳みそよりはマトモよ』

114: 2008/07/19(土) 17:35:17.41ID:7caNmGBaO
女『そろそろこの掛け合いも終わりの時間ね』
男「もうか?」
女『うん、元から明け方までのつもりだったし』
女『最後のあいさつは、これくらい軽い方がいいわよ』
男「最後のあいさつ……」
女『そう』
女『だって、忘れさせるだけなら、改めて会う必要もないじゃない?』
女『これでおしまいだから、あんたの顔だけでも見ておきたかったの』
男「………」
女『難しい顔しない!』
女『今度は、二人とも生まれ変わって、全くの他人として再開しましょう?』
男「…分かった。約束だ」
男「次に会う時は、新ジャンルの男と女じゃなく」
男「ただの男と女として出会うんだな」
女『その通り』

118: 2008/07/19(土) 17:47:26.18ID:7caNmGBaO
女『それじゃ、お別れしようか』
男「……おう」
女『目が覚めたら、あんたは私のことを忘れてる』
男「お前は、俺のことを思い出すことはない」
女『これにて、新ジャンルの全ては終わります』
男「なんか、あれみたいだな」
女『あれって?』
男「松尾芭蕉の俳句」
男「夏草や 兵者どもが 夢の後」
女『なるほど。新ジャンルのかつての栄華と、その衰退を表した
  言い得て妙な表現ね』
男「この会話も、忘れちまうのか?」
女『仕方ないけど、そうなるわ』

120: 2008/07/19(土) 17:58:19.99ID:7caNmGBaO
女『あ、そうだ』
男「まだなんかあるのか」
女『最後にひとつだけ、言いたいことがあった』
男「もう何言われても気にしないから、何でも言ってみろ」
女『うん、あのさ』
女『新ジャンルなんて言う遊びの中のことだったけど』
女『私、あんたのこと、結構本気で好きだったから』
男「おい!」
男「ここへ来てなんだその告白は!」
女『我ながらまたベタなことやっちゃったよ』
男「卑怯にも程があるだろ…」
女『まあ、相思相愛だったときもあったのだから』
女『許せ、男よ』

122: 2008/07/19(土) 18:15:43.19ID:7caNmGBaO
女『じゃあね、男』
男「ああ」
女『勉強、ちゃんとしろよ』
男「ああ」
女『ご飯食べたら、歯を磨くんだぞ』
男「ああ」
女『えっと、それからそれから……』
男「お前は俺の母親か」
---ビシッ
女『おぅ、ナイスツッコミ』
男「なんだかんだ言って、お前も別れがたいんじゃないか」
女『バレましたか』
女『でも、ほんとにコレが最後』
女『バイバイ男、また会おうな』
男「もちろんだ」
女『さようなら』
男「さようなら」

---------------------------------------------

123: 2008/07/19(土) 18:37:40.40ID:7caNmGBaO
---チュン、チュン
男「……う?」
男「いつの間にか寝てた」
男「…つうか、何してる間に寝てたんだっけ?」
男「うわ、キーボードに顔当たってデータ滅茶苦茶だ」
男「ま、いいや」
男「思い出せないくらいなら、そんな大したもんでもなかったんだろ」
男「二度寝しよ」

125: 2008/07/19(土) 18:56:06.56ID:7caNmGBaO
~十年後~
男「あれ?」
男友「ん?」
男「男友!」
男友「お前、男か!?」
男「久しぶりだなぁ!」
男友「高校の同窓会以来だから、七年ぶりか?」
男「老けたなぁ、男友」
男友「お互い様だろうが」
男友「どうだ。時間あったら、どっかで飲まないか?」
男「いいねー、再開を祝して乾杯するか」

133: 2008/07/19(土) 20:09:59.88ID:7caNmGBaO
男「結婚したぁ!?」
男友「そうなんだよ」
男「そいつぁ驚きだ」
男友「俺ももう二十七だからな。そろそろ身を固める時だろ」
男「確かに、意外だったが早すぎるってことはないんだよな」
男友「そういうお前は、浮いた話しのひとつもないのか?」
男「残念ながら、ないなぁ」
男友「なんだ、卒業してもつまらんままか?」
男「うるさいな」
男友「それともあれか、誰か忘れられない人でもいるのか」
男「違うよ」
男「単にタイミングが悪いだけだ」
男友「本当かぁ?」

138: 2008/07/19(土) 20:46:21.54ID:7caNmGBaO
男「いや、やっぱりお前の言う通りかもな」
男友「忘れられない人か?」
男「そうだなぁ」
男「なんとなくなんだが、どっかで俺を待ってる奴が
  いるような気がするんだ」
男友「お、ロマンチスト発見」
男友「息巻くのもいいが、なんとなくで婚期を逃すなよ?」
男「分かってるよ」

139: 2008/07/19(土) 21:05:26.93ID:7caNmGBaO
男「夏草や、兵者どもが夢の後」
男友「どうした?」
男「お前に忘れられない人とか言われたら、なんか思い出した」
男友「松尾芭蕉がどうした」
男「どうもしない」
男「昔、どこかで誰かに同じことを言ったような」
男友「ロマンチストのクセに、そんなことばっか口走ってるからモテないんだよ」
男「大きなお世話だ。お前のせいで酒を飲む気分じゃなくなった」
男「勘定済ませて、出るぞ」

140: 2008/07/19(土) 21:16:55.83ID:7caNmGBaO
男「うー…」
男友「唸るほど飲んでないだろ」
男「そうじゃない」
男「お前とのやりとりで、何か思い出せそうな気がしたんだ」
男友「気のせいだろ」
男「くそっ、酒のせいで頭が回らない…」
男友「あんまりフラフラするなよ?迷惑だから」
男「………」

143: 2008/07/19(土) 21:52:04.61ID:7caNmGBaO
男「………」
男友「押し黙るな、不気味だ」
男「悪いけど、ちょっと考えさせてくれないか」
男友「ったく、先に帰っちまうぞ?」
男「すまん」
男(一体俺は、誰のことを思い出そうとしてるんだ…?)
---スッ
男「え?」
男「おい、男友」
男友「お次はなんだ?」
男「今すれ違った女に、見覚えは?」
男友「女?」
男友「そんなにしっかり顔なんか見てねぇよ」
男「………」
男「男友、先に帰っててくれ」
男「俺は、あいつのことちょっと追っかけてみる」
男友「おい、男!」
男友「『あいつ』って、顔見知りか?」

147: 2008/07/19(土) 23:09:57.32ID:7caNmGBaO
男「すいません、すいませーん!」
女「はい?」
男「ハァ、ハァ……」
男「すいません、ちょっといいですか」
女「あなたは……」
女「…お久しぶりです」
男「久しぶり?」
女「え、あれ?」
女「ごめんなさい、初対面の方に意味不明なことを…」
男「初対面ですか」
男「本当に、そうですか?」
女「………」
女「実を言うと、私あなたと初めて会ったような気がしてないんです」
男「そうですよね」
男「俺も、さっきからそう思ってたところでした」

155: 2008/07/19(土) 23:47:58.83ID:7caNmGBaO
女「なんだか不思議ですね」
男「これがデジャヴって奴なんですかね」
女「かもしれません」
男「あの…お名前聞いても、いいですか?」
女「はい」
女「私、女って言います」
男「女さんですか。俺は男です」
女「男さん、ですね」
男「はい」
女「あの、男さん」
男「何でしょうか」
女「少しだけ、お話する時間はありませんか?」
男「俺も、同じことを思っていたところでした」
女「そうなんですか」
男「これも何かの縁です。どうせなら朝まで語り明かしましょう」
女「良かった!」
男「じゃあ、行きましょうか」
女「はい!」

157: 2008/07/19(土) 23:59:32.98ID:7caNmGBaO
二人がこの後、一体どうなったのかは誰にも分からない。

ひとつだけ言えることは
彼ら彼女らが恋に落ち、むつみあい、恋に破れることがあっても

それは、新ジャンルとは全く関係のない普通の男女の恋愛

ただそれだけの、話しである。

~おしまい~

引用: 新ジャンル「終わり、夢の後」