632: 2013/02/23(土) 01:06:40.62ID:ohZC+7Fz
「猫カフェに行きましょう」

 霧切さんが唐突に言い出した。僕は驚いて彼女の方を見る。わずかに頬を上気させている彼女の手には、何やらパンフレットのようなものが握られていた。

「猫カフェに行きましょう」

 繰り返し言う霧切さん。大事なことなんだねわかります。僕は立ち上がって彼女に近づくと、その手に握られていたパンフレットをえいやっと抜き取った。

「三毛猫アメショシャム猫、オスメス子猫成猫みんなが振り向くあの子まで! どんなご要望にもお答えします!」

 紙面いっぱいにひしめくねこネコ猫。上部にはポップな字体でそんな謳い文句が印刷されている。
 僕は紙面から目を上げ、霧切さんを見た。目線がぶつかる。霧切さんは少し恥ずかしそうに目をそらす。

「……部室のポストに入れられていたのよ」
「そうなんだ……?」

 納得しかけて、首を傾げ、もう一度紙面に目を通す。
 猫カフェ。場所は希望ヶ峰学園の部活棟の一室だった。主催は生物部と料理研究会で、要するにちょっとした身内だけのお祭り? みたいなもののようだ。
 再び霧切さんを見ると、さっきよりは顔色が落ちつた様子で、しかし若干鼻息荒く、

「この時間ならまたたびサービスが有るはず。苗木君、ここまで言えばわかるわね?」
「あー、えーっと、うん、まあ……」

 頷くや否や、霧切さんに手を掴まれ、引きづられるようにして部室を出た。僕、助手。彼女、所長。また日頃の関係からも、僕が霧切さんを止められるはずもなく。
 結局、そのまま猫カフェという名の生物部の部室へと赴くこととなった。……因みに、僕は犬派だ。



 30分500円から。もちろんメニューは別料金。
 僕はこういったお店に来たことがないから適正価格か否かはわからない。けれど、

「霧切さん、後から延長もできるんだから最初に諭吉さん出すのやめよう?」

 どう考えても十時間後には閉まってるから。ほら、従業員さんの顔も引きつってるし。
 渋る霧切さんに変わって千円札を一枚財布から取り出し、鍵札をもらい、樋口さんを叩きつけようとする霧切さんの手を引いて宛てがわれた部屋へと向かう。
 生物部の部室でこぢんまりとやっているものだと思ったら、どうやら猫派の影響力はあらゆる部活に波及しているようで、このためだけのプレハブ家屋が幾つか作られていた。
 部屋の前に立っていた従業員さんに鍵札を渡し、部屋に入る。部屋の真ん中にテーブルと椅子、床には猫用のおもちゃ、それからキャットタワーなんかも設置されていて、随分と立派な作りだった。
 そして、猫。アチラコチラにねこネコ猫。チラシの謳い文句通り、三毛猫アメリカンショートシャム猫ほか。全部で7,8匹の猫がそこいらで好き勝手に戯れていた。

963: 2013/03/19(火) 22:22:02.44ID:mCM42HaB
ちょっと前に出てた霧切さんのゲームネタでSS投下します。
アルターエゴのアプリのネタもちょっとだけ。


「よっしゃあ!討伐ゥ~!!」
「乙ですぞ~」
食堂に、桑田君と山田君の声が鳴り響いた。
私がここに入ってきてからずっと、その2人と苗木君・不二咲君は食堂の隅っこのほうに集まり、何かをしていた。
「強かったけど、倒せてよかったよ。でも、まさか不二咲クンがあんなに上手だとは思わなかったな」
「えへへぇ…僕、強かった?嬉しいなぁ…」
「むむっ…可憐な見た目とは裏腹の強さで、バッタバッタとエイリアンを薙ぎ倒していくその姿…アリだなッ!」
「ねーよ!そもそも、不二咲は男だろーが!」
「その程度…障害と呼ぶのもおこがましい!」
「え…えっとぉ…10分くらい休憩挟んでもいいかなぁ?僕、ちょっと疲れちゃったぁ」
馬鹿2人はさておいて彼らの会話の内容から推測するに、どうやら彼らはエイリアンを討伐するゲームをやっているようだ。
おおかた、苗木君があのガチャガチャで当てた携帯ゲーム機を皆にプレゼントして、それで協力プレイを楽しんでいるってところだろう。
…でも、何であのメンバーなのだろう?
電子機器と言ったら不二咲君。その発想は分かる。問題は、桑田君・山田君だ。
彼らにはゲーム機をプレゼントして、あまつさえ協力プレイまで楽しんでいるのに…どうして、私にはくれないの?
丁度いい。ハンティングが一段落ついて彼らも休憩していることだし、本人に問いただしてみるのが一番ね。
ダンガンロンパ1・2 Reload 超高校級の公式設定資料集 ‐再装填‐ (ファミ通の攻略本)

633: 2013/02/23(土) 01:08:19.03ID:ohZC+7Fz
「可愛いわね」

 早速丸くなっていた一匹に近寄り、霧切さんは手を伸ばした。
 指先が触れ、猫は少し顔を上げて霧切さんを見たけど、大して興味無さそうに尻尾をふりふり。触るなら触れ、と言わんばかりの様子。
 霧切さんは膝を抱えるように屈みながら、少しうっとりした様子で猫の背中を撫でている。
 僕はそんな霧切さんを見ながら、椅子の上で香箱座りをしていた猫を、

「ごめんね」

 とどかし、テーブルの上にあったメニューを見た。流石にうちの料理研究会と共同出店(?)なだけあって豊富なメニュー。値段もそこまで高くない。

「コーヒーでいいかな?」
「苗木君、猫はコーヒーを飲まないわ。ミルクよ。それもちゃんと猫用。人が飲むミルクだとお腹を壊す事があるから注意が必要なの」
「そうなんださすがきりぎりさんはくしきだね。ところで霧切さん、コーヒー飲む?」
「ええ、いただくわ」

 こちらを一顧だにしない霧切さんにちょっと不安を覚えながら、備え付けのベルでウェイターさんを呼び、注文をした。
 飲み物だけだったからだろう、注文はすぐにやってきた。お盆には一緒に小さな袋が乗っていて、そこにまたたびが入っているらしい。ほんの少しだけお使いください、とウェイターさんは言い残していった。

「霧切さん、飲み物来たよ」
「ありがとう、苗木君」

 ひたすら猫を撫で回していた霧切さんは、ようやく立ち上がり、テーブルに寄って……ミルクの入った平皿を持って、再び猫達の方へ。
 床に置かれた更に鼻を鳴らしながら猫が群がる。霧切さんは少し離れた位置でうっとりとそれを眺めている。

「霧切さん猫好きなんだね」
「ちがうわなえぎくんそれはごかいよわたしはただこんごねこのそうさくとかあったときのためにこのこたちのしゅうせいをしらべているの」
「うん、うん、そうだね」

 ものっすごい早口かつ棒読みで、平素の彼女はどこへ行ったのだろうか。

634: 2013/02/23(土) 01:09:20.01ID:ohZC+7Fz
 そのまましばし。霧切さんは猫達を構い続け、僕はそんな霧切さんを見ながらコーヒーを飲み。
 ふと下を見やると、一匹の猫が僕を見上げていた。

「どうしたの?」

 そう尋ねると、彼(彼女?)は一声にゃーと鳴き、僕の膝へと飛び乗った。
 ずっしりとした重み。少し顔をしかめる僕など気にする様子もなく、その猫は自身の毛を繕った後あくびを一つしてくるりと丸くなった。

「……気ままだなぁ」

 苦笑しながら背中を撫でると、猫はごろごろと喉を鳴らした。ふわふわの毛。良い環境で、しっかりと面倒を見られているのだろうなぁ。

「……苗木君のくせに生意気よ」

 呪詛を吐くような響きに、思わずぎょっとして顔を上げると、手袋にいくつかの引っかき傷を作った霧切さんがいた。
 不機嫌さを隠そうともせずに椅子に座り、冷め切ったコーヒーを一口で飲み干すと、彼女は鋭い視線で僕を見て、

「苗木君のくせに、生意気よ……!」
「……構い過ぎるから嫌がられるんじゃないかなぁ」

 僕の言葉に、霧切さんはつん、と唇を尖らせた。
 苦笑しながらも、珍しく彼女が見せる歳相応の表情に、僕の心は少し浮き立つ。実はほんの少し猫に嫉妬していた。けれど、こういった副産物があるなら、まあいいかな、なんて思った。

「ほら、またたびもあるし、もう一回挑戦してみたら?」

 注文と一緒にやってきたまたたび袋を霧切さんに手渡す。
 彼女はしばし袋を見つめた後、袋の口を開け。
 なにを思ったか。
 中身全部を頭からふりかけ。

「ちょっと霧切さん!?」
「これなら……っ」

 猫達の輪に飛び込み、慌てた係員の人が来るまで、猫の生る木となった。



 出禁になりました。

635: 2013/02/23(土) 01:10:41.63ID:ohZC+7Fz
少し遅れた猫の日なえぎり。
お粗末でした。

964: 2013/03/19(火) 22:22:56.48ID:mCM42HaB
「苗木君、ちょっといいかしら」
「何、霧切さん?」
「…ねぇ、どうして私には携帯ゲーム機、くれなかったの?」
「え?何でそんなこと?」
「…ただ、ちょっと気になっただけよ。桑田君とか、山田君とかにはあげてるのに、って」
「だって、あの2人はゲーム好きそうじゃない?…あ、もしかして、霧切さんもゲーム好きだったりする?」
ゲーム。そんなもの、今までの人生の中で一回も触ったこともない。ゲーム機なんて、ゲームボーイ位しか知らない。
…でも、さっきの苗木君達…楽しそうだった…。私もゲームができれば、苗木君と一緒に盛り上がれるのかしら…?
「そうね…人並みには、興味があるつもりよ」
「そうなんだ…ゴメンね。次当てたら、絶対あげるからさ!」
「フフッ…期待しておくわ。ところで苗木君。あなた達、何ていうゲームをしているの?」
「『エイリアンハンター』だよ。知ってる?」
「えいりあんはんたー…?聞いたことないわ」
「そっか。結構メジャーなソフトだと思うけど…そうだ。霧切さん、一回やってみる?ボクの使ってさ」
「是非…って言いたいところだけど、私は操作方法さえ知らないのよ?流石に無理なんじゃないかしら」
「う~ん。じゃあ、分からないところはボクがサポートしてあげるから、何か分からないことがあったら遠慮しないで言ってよ」
なら、お言葉に甘えさせていただこう。何だか話が良い方に向かっていることだし。

965: 2013/03/19(火) 22:23:29.76ID:mCM42HaB
「えっと…まずは、歩く時はアナログパッドを使って、攻撃は○ボタンで、☓ボタンでしゃがんで…」
「…あ、あなろぐ…ぱっど?」
サポートは有難いのだけれど、私には苗木君が何を言っているのか、さっぱり分からない。
第一、この妙にリアルな映像は何なの。こんな画質でエイリアンが襲ってくるゲームをよく不二咲君がプレイできたものね…
「あの…霧切さん。もしかして、PSP持ってないの?」
「ぴー、えす…?このハードのことかしら?」
「おやおや、霧切響子殿はそんな初歩的なことも知らないのですかな?」
「う、うるさいわよ!仕方ないでしょっ」
「な、何が仕方ないんだろぉ…」
ある程度、自分がこういった『普通の高校生らしいもの』に疎いことを自覚はしていたつもりだった。
でも、まさかここまでのギャップがあろうとは。そんなことを考えていると、桑田君の声がした。
「あ、霧切ぃ、そっちにエイリアンのボスが行ったぞ!」
「え!?ちょ、ちょっと待っ…」
氏んだ。ボスの攻撃が直撃した。
「き、霧切さん…あのさ、もしかして…ゲーム下手…とか?」
「くっ…!」
集中しないと。ただでさえゲームなんて初体験なんだから、違うことを考えてる余裕はない!
「次こそは、目にもの見せてあげるわ…!」

966: 2013/03/19(火) 22:24:51.95ID:mCM42HaB
「いや~倒したなぁ~!不二咲、相変わらずナイスアシだぜ!」
「えへっ…ありがとぉ…」
「その微笑み…プライスレスですな。まぁしかし…」
「霧切さんがここまでゲーム音痴だとは…」
「もうちょっと包み隠す言い方もあるでしょう…苗木君のクセに、生意気よ」
まぁ、そう言われても文句は言えない。それくらい、私のプレイヤースキルは低かった。
不二咲君が援護をして、桑田君と山田君が2人でボスにダメージを与えている間、私が何をしていたか、と言うと…その辺にいた雑魚エイリアンに大苦戦していた。
やたらとすばしっこい上、すぐに画面カメラの中から消えてしまうのだから、私の手にはとても負えなかった。
そんなことを考えている私に向かって、不二咲君が言葉を投げかけてきた。
「あ、でもゲームやってる時の霧切さんさ、普通の女の子っぽくて可愛かったよねぇ!」
「…え?」
「あー、そうそう!いつものツンケンした部分がなかったっつーか」
「フ…ギャップ萌え、ここに極まれり。ですな!」
「う、嘘…!?私が…?」
「うん。霧切さん、ゲームに熱中しすぎて、気付いてなかった?」
気付くわけがない。あれだけ必氏にやっていたのだから。あのエイリアンの触手なんてもう思い出すだけで…
と、まぁそれは置いておいて。私が…可愛い…?!
「もしかして、さっきのが霧切さんの『素』なのかなぁ?やっぱり、何だかんだで霧切さんも女の子だねぇ…」
「だよな!これでもう少し霧切にこう…バストの方があってくれたら、言う事ナシなんだけどなァ~!」
「何も分かってない!桑田怜恩殿!!霧切響子殿は、この自己主張の控え目なサイズがBESTなのですよ!」
「ちょ、ちょっと二人とも…!本人の前でそんな話はダメだって…」
マズい。顔が紅潮している。…照れているのだろうか。こんな表情、彼らには見せられない。
席を立つ。慌てて呼び止める苗木君の声が後ろから聞こえてきたけど、今の私には構っている余裕などない。
部屋に帰り、ドアを閉じて、ベッドにダイブする。その時、丁度苗木君の足音が、部屋の前で止まった気配がした。

967: 2013/03/19(火) 22:26:23.39ID:mCM42HaB
廊下から声が聞こえた。苗木君の声だ。
「あ、あの…霧切さん…何か、ゴメンね」
「あなたが謝ることはないわ…」
「でも皆、本当のこと言ってるんだよ。ホントにさっきの霧切さん、いつもより雰囲気が穏やかで…可愛かったんだよ…?」
「うるさいわよ…」
ギュッ、と枕を握り締める。恥ずかしさで氏にそうになる。
探偵が弱みを見せるなんて、本当ならあってはならないことだ。だから私もこの一年、ずっと強く振舞ってきた。クラスメートにだって、弱さは見せたくなかった。
「本当の自分」なんて、誰にも見せたこと無かった。もしかしたら自分にさえ、見せてなかったのかもしれない。
…でも、どうしてだろう?見せたくなかったハズの本当の自分を見られたのに…
どうしてだろう。彼らと一緒にいることが―本当の自分をさらけ出すことが―とても心地良くて、楽しいのは。
気がつけば、私は恥ずかしさの中に、一抹の嬉しさも感じていた。
初めて、皆と一緒にゲームをした。その中で、些細な事でも盛り上がって…いつもの私なら、考えられないことだ。
それに今まで感じることのなかった、年頃の女の子が抱く「恥じらい」の気持ち…それを私も、感じることが出来た。
私も、普通の女の子みたいになれる―強く生きることを宿命付けられた探偵一家『霧切』の性を持つ私には、それが堪らなく嬉しかったのだろう。
だから…
「ね…ねぇ、苗木君…」
「何?」
「次やるとき…私も、い…入れてくれる…?私、ちゃんと練習するから…ゲーム、上手になるから…」
「うん!霧切さんがその気なら、大歓迎だよ!」
「…ありがとう…」
いいかもしれない。【超高校級の探偵】の称号も、『探偵一家霧切』の名も忘れて、ただの1人の女の子『霧切響子』として過ごせる…こんな場所も。

以上です。スレ汚し失礼しました!

968: 2013/03/19(火) 23:10:09.85ID:9j+zbDAp
>>967
GJだべ!確か本編もゲーム機あげたら喜ぶんだっけな
実際にゲームは出来るのかな 微笑ましかったです
久々の超高校級のSS職人 感謝です

引用: 【ダンガンロンパ】霧切響子はクーデレかわいい【FILE.13】