137: 2013/04/13(土) 20:44:47.06 ID:9gYzgjlco
とにかく腹が減っていた。
俺は絶対能力進化実験の被験者となるべく、寮から遠く離れた馴染みのない学区に来ていたが
天候が指定の条件から外れたため実験は中止、全くの無駄足を食わされる事になった。

おまけに俺は道に迷っちまったらしい。
追い打ちをかけるように雨脚が強くなる。
能力による反射があるから濡れることはねェが、ウザいもンはウザい。

(まいったねェ…ここは一体どこだ?)
(…いや、焦るな。俺はただ腹が減ってるだけなンだよ)
(…腹が減って氏にそうだ)

いくら学園都市最強の能力者であろうと、飯を食わずに生きていく事は不可能に近い。
(無敵になることで腹が減らなくなるのなら、今すぐ無敵になりてェ…)

(…っと、行き止まりか。)
(しっかしよォ、どうなってンだこの学区は…GPSも役に立たねェし、同じような路地がずっと続いてやがると来たもンだ)

(クソッ…腹が減った)
(この際何でもいい、メシだ)
(メシ屋…メシ屋はねェか…)
とある魔術の禁書目録 33巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
138: 2013/04/13(土) 20:45:23.95 ID:9gYzgjlco
(!)
(随分とくたびれた店だな…)
(この際何でもいい、ここにするか)

ガラガラ
「っしゃあ~い」
「……」
ドサッ

(オイオイここは本当に学園都市か?)
(外観からしてレトロだとは思っちゃいたが、内装もこれまた輪を掛けてやがる…)
(メニューは…と。第七学区じゃまず見ねェ料理ばっかだなァ)

「豚肉炒めとライス」
「はい」
(俺はできるだけ物怖じせずハッキリという)
(注文を聞き返されンのは面倒だ)

「それとおしンこ」
「おしんこ何にします?」

139: 2013/04/13(土) 20:47:15.21 ID:9gYzgjlco
「何があるンだ?」
「えーと、ナスとキュウリとハクサイと…」
「ナスにしてくれ」
(いいねェ…この店員のおばちゃンといい、店の佇まいといい、作り物臭ェ感じがしねェ)
(こういう店の漬物ってのは恐らく自家製なンだろォな)

「あァ…あと豚汁ひとつ」

(注文しちまうとヒマだな…店の中の様子でも探ってみるか)

(運搬作業員…か?帽子をかぶった奴がヤケに多いな)
(そォいやこの学区は外壁に隣接してたか)
(恐らく大半は"外"の連中だろォな)
(成る程…それでこンな店があるわけだ)

「いらっしゃい、食べてくの?」
「持ち帰り。ライスと豚汁」

(ほォ…持ち帰り。ファミレスでもそれが出来れば世話ねェンだがな)

「おーい、豚汁2つとおしんこ2つ。えっと…ハクサイとキュウリね」
「はーい、お持ち帰りね」

(多いンだなァ持ち帰り…しかしライス無しってことは、自分の家ででも炊くのか?)

140: 2013/04/13(土) 20:48:07.17 ID:9gYzgjlco
「はーい、おまちどうさま」コト
(………)
(水じゃなくて麦茶か。なかなか気が効いてるじゃねェか)
(ライスの量が多いな)
(この豚肉炒めってヤツは野菜炒めみたいなもンかと思ってたが…)
(豚バラだけを炒めたものが山盛り、横に少量のキャベツの千切り…)
(皿に付いてるこのカラシはどォ使うのか謎だな)
(豚汁の具は豚肉と豆腐…シンプルだな。そしてこれも量が多い)
(このおしンこ、ナスまるまる一つ分はありそォだ)

(しかし…)
(豚肉炒めと豚汁でブタがダブっちまったなァ)
(それに豚汁のこの量…)
(成る程、この店は豚汁とライスで十分なンだな)

「なかなかイケるじゃねェか」ハフハフズズゥ
(このおしンこは正解だった)
(漬かり具合も丁度イイ)
(ブタづくしの中で爽やかな存在だ)

141: 2013/04/13(土) 20:49:29.95 ID:9gYzgjlco
「おばさん、ウインナ炒めとライス」
「はーい」

(ハッ…家族だの普通の暮らしだの、そンなもンとは一切な無縁な人生送ってきたが)
(こういうあったかい雰囲気も嫌いじゃねェな…)

(しかし結局、この中で食ってる客は)
(どっちかっつゥと酒を飲みに来てる連中が多いわけだ)
(ちっとばかし勿体ねェ気もするな)

「ふゥ…悪くは無かったなァ」

「勘定してくれ」
「はーい、えーと…800円です」
「ごちそォさま」

「ありがとうございましたー」
俺はゆったりと店を出る。腹ははちきれそうだ…いくら何でも食い過ぎた

スタスタ...クルッ
(店の軒先から店員と客が覗いてやがる…)



恐らく、俺はあの店に不釣り合いな客だったンだろォな…

142: 2013/04/13(土) 20:49:59.80 ID:9gYzgjlco
いつの間にか雨は止んでいた。

「おーい、ヤスさんいるかー」
(さっきの店で見た客だな)
(手に持ってる袋は"お持ち帰り"か)

「おう、ヤマさん」
「いっしょにメシ食うべえよぉ」



ようやく大きな通りに出た…GPSも使えそうだ。
タクシーでも拾うか。偶には能力を使わない日があってもいいだろう。
そう思った。
俺は得体の知れない奇妙な満足感を味わっていた。

143: 2013/04/13(土) 20:50:25.45 ID:9gYzgjlco
以上です
一方さんって一人で焼肉屋に行って淡々と食べてそうなイメージがある

引用: ▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-39冊目-【超電磁砲】