1: 2008/04/07(月) 18:09:22.37ID:EmQyoVqB0
そこは、幽霊の声が聞こえるお屋敷。
テープレコーダーを持参して録音スタート。

「お邪魔します」
「きれいな家ですね」
「トイレ借ります」
「お邪魔しました」

テープを再生すると・・・。

「お邪魔します」「どうぞ」
「きれいな家ですね」「そうですか」
「トイレ借ります」「どうぞ」
「お邪魔しました」「ちょっと待て!」

びびりまっくて、家に帰ると母親が「変な電話あったわよ。必ず連れ戻すって」

うちの電話は着信が見れるタイプなので即かけ直した。




「OK、一緒に暮らそう」「え・・・」

そしてサリーちゃんとの共同生活が始まった・・・。
艦隊これくしょん -艦これ- 4コマコミック 吹雪、がんばります!(1) (ファミ通クリアコミックス)

3: 2008/04/07(月) 18:18:49.77ID:EmQyoVqB0
本当は怖かった。ぶるってた。正直20ccほどちびった。
でもどうせ連れて行かれるなら前向きに検討すべきだ。
昔から言うじゃないか。
赤信号、皆で渡れば恐くない。

男「というわけで、家族ごと引っ越してきました」(長男:ニート)
父「おー、思ったよか上等な屋敷ばい」(父:エセ九州人)
母「不束者ですが…」(母:パート)
妹「引越してきたZE☆」(妹:ラッパー)

しかし屋敷には誰もいない。
待ちぼうけしていると携帯が鳴った。

男「もしもし?」

サ『私、サリーちゃん、今あなたの後ろにいるの』

男「それ話が違いますよ」
サ「え・・・」

振り返ると銀様みたいな美少女が顔を真っ赤にしてうつむいてた。

4: 2008/04/07(月) 18:35:46.84ID:EmQyoVqB0
すぐにサリーちゃんは消えてしまった。
とりあえず屋敷に家具を運び込んでから今後の相談をする。
サリーちゃんとはテープレコーダーで会話することにした。

男「とりあえず部屋割りを決めよう」
妹「二階はあたしのもんだYO☆」

妹が二階にダッシュしていった。
俺はテープレコーダーを再生した。

男「とりあえず部屋割りを決めよう」「そうね」
妹「二階はあたしのもんだYO☆」「床が腐ってるから気をつけてね」

妹が落ちてきた。
お尻をしたたかに打って「うにゅう」とか言ってる。キショイ。

5: 2008/04/07(月) 18:41:16.57ID:EmQyoVqB0
男「とりあえずサリーちゃんの話をちゃんと聞け」
妹「OK☆」
父「部屋は後からでよかけん飯ば食わんか」
母「キッチン借りますね」

母がキッチンに行った。
テープレコーダーを再生した。

男「とりあえずサリーちゃんの話をちゃんと聞け」「それがいいわ」
妹「OK☆」「ほんにわかってるの?」
父「部屋は後からでよかけん飯ば食わんか」「いいわね」
母「キッチン借りますね」「ヤクルトしかないわよ」

母がヤクルトを両手一杯もってきた。

母「晩御飯ですよ」
男「当然のように受け入れるなババア」

8: 2008/04/07(月) 19:08:47.61ID:EmQyoVqB0
男「だめだこいつら、早くなんとかしないと…」

そう思いながらも今日は寝ることにした。



翌日、ヤクルトを飲みながら家族を見送った。
妹は学校へ、父は仕事へ、母はパートへ出かけた。

妹「スクールでホーミーとエンジョイだZE☆」
父「車で送ったげるばい」
母「私はバスで行きますね」

再生ボタンを押した。

妹「スクールでホーミーとエンジョイだZE☆」「楽しそうでいいわね」
父「車で送ったげるばい」「優しいのね」
母「私はバスで行きますね」「近くにバス亭ないわよ」

母だけ帰ってきた。

母「財布を忘れたわ」
男「そっちかYO☆」

関係ないけど妹の口調うぜぇ。

9: 2008/04/07(月) 19:13:19.61ID:EmQyoVqB0
仕方ないので母はパートをやめて狩りをすることになった。
毎日のように猪や鹿やよくわからん肉が食卓に出るようになった。

妹「今日はまたご馳走だZE☆」
父「ほほぅ、これはまた乙なもんばい」
母「なんの肉かは秘密です」

再生ボタンを押した。

妹「今日はまたご馳走だZE☆」「あら、ポチが見当たらないわ?」
父「ほほぅ、これはまた乙なもんばい」「ポチー?ポチー?」
母「なんの肉かは秘密です」「…あら?キッチンにポチの首輪が…」

俺はそっと箸を置いた。

11: 2008/04/07(月) 19:22:01.37ID:EmQyoVqB0
ついにインターネットが開通した。
2chをしながらサリーちゃんとおしゃべり。

男「痴漢男おもすれー」
男「新ジャンル増えてないかなー」
男「野菜レイパーktkr」

再生ボタンを押した。

男「痴漢男おもすれー」「口リ巨Oうざいわね」「わんわん!」
男「新ジャンル増えてないかなー」「私の名前があるわね」「わん!」
男「野菜レイパーktkr」「ば、ばか…!そんなとこ開かないでよ…!///」「くぅんくぅん」

なんか増えてた。

13: 2008/04/07(月) 19:31:59.27ID:EmQyoVqB0
夜寝る時にこっそり録音ボタンを押しておいた。

朝。

起床してすぐに再生ボタンを押した。

「……もう寝てるかな?」

「もしもーし、本当に寝てるー?」

「ふふ、ほんと、ぶちゃいくな寝顔」

「…………」

「ちゅ」

「…あは、またしちゃった」


ふと鏡を見ると、顔を真っ赤にしたサリーちゃんがなにか大声でまくしたててた。

このときのメモリディスクは今でも大事にしまってある。

15: 2008/04/07(月) 19:45:50.98ID:EmQyoVqB0
元同級生の女が遊びにきた。
ちょっとヤンキー入ってるが基本的には良い奴だ。

女「へー、ここが男の新しい家かー」
男「まあゆっくりしてけよ。また泊まってってもいいし」
女「助かる!ここからのが会社近いからな!」
男「あれ…扉が開かない…」

再生ボタンを押した。

女「へー、ここが男の新しい家かー」「あなたが男の古い彼女ね?」
男「まあゆっくりしてけよ。また泊まってってもいいし」「え……」
女「助かる!ここからのが会社近いからな!」「だ、ダメ!絶対にダメだからね!」
男「あれ…扉が開かない…」「らめぇ!そんなとこ開けちゃ、らめぇ…!ここは通さないもん!」

どうみても確信犯です。どうもありがとうございました。

17: 2008/04/07(月) 19:53:02.09ID:azTOtO780
サリーちゃんが拗ねてしまった。
さっきからテープレコーダーをカチカチしてるが馬鹿犬の声しか入ってこない。

女「さっきから何してんの?」
男「いやさ、ここ幽霊がいるんだよ」
女「……おいおい、やめてくれよそういうの」
男「あれ? 涙目? ひょっとして涙目ですか?」
女「う、うるせーな! こえーもんはこえーんだよ!」

再生ボタンを押した。

男「あれ? 涙目? ひょっとして涙目ですか?」
女「う、うるせーな! こえーもんはこえーんだよ!」

やっぱりダメか…と、スイッチを切ろうとしたその時。

サ「うーらーめーしーやー」

女「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!?」(男に抱きつく)

サ「きゃああぁぁ!?私の男になにしてんのよぉーー!?」

女「うわぎゃあmふぁpwだmなんをい」
男「ぐええええ!首が!首がああぁぁぁ!」

阿鼻叫喚。

18: 2008/04/07(月) 20:00:12.25ID:azTOtO780
女が涙目のまま帰っていった。

俺は正座させられ、実体化したサリーちゃんにお説教されている。

サ「あのね、家主はあくまで私なんだからね。勘違いしないでよね」
男「はい、すいません。もう二度と悪ふざけしません」
サ「本当に反省してるの?」
男「はい、本当の本当に反省してます。浮気しないから許してください」
サ「う、浮気ってなによ! 勘違いしないでよね! あれはたんに家主として風紀が乱れないように――」

再生ボタンを押した。

サ『きゃああぁぁ!?私の男になにしてんのよぉーー!?』

男「俺、サリーちゃんの男だから」

サ「……ば、ばかっ!///」


俺はおおむね幸せです。

19: 2008/04/07(月) 20:11:19.27ID:azTOtO780
妹が風邪をひいた。

妹「YOッ!YOッ!YOッ!」
男「くしゃみもそれかよ、うぜぇ」
父「風邪薬ば飲みんしゃい」
母「薬をかってくるわね」

母が血相を変えて外に飛び出した。

再生ボタンを押した。

妹「YOッ!YOッ!YOッ!」「わんッ!わんッ!わんッ!」
男「くしゃみもそれかよ、うぜぇ」「わぉぉぉん!」
父「風邪薬ば飲みんしゃい」「わぅ?」
母「薬局に行ってくるわね」「ただいまー、そういえば風邪をひきやすい時期ね。薬は居間の戸棚にあるから」

母が帰ってきた。

母「太陽草とアオキノコとってきた」
男「ちょwwwモンスターハンターwwwうぇwww」

×薬を買ってくる ○薬を狩ってくる

20: 2008/04/07(月) 20:17:37.51ID:azTOtO780
サリーちゃんの様子がおかしい。
やけに人の出入りを気にしている。

サ『……あれがくるわ』

サ『どうしよう』

サ『私、男と離れたくないのに…』

屋敷中にしかけたレコーダーからそんな声が聞こえる。
俺は不安になった。

妹『シャワーが気持ちいぃ~♪ お兄ちゃんのためにも綺麗綺麗しなきゃね♪』

風呂場にしかけたレコーダーからそんな声が聞こえる。
不覚にもおkk(ry




そして、サリーちゃんとの別れの日が近づいていた。

21: 2008/04/07(月) 20:20:15.91ID:azTOtO780
支援thx
楽しんでもらえてると嬉しい

ちょっと飯作ってくるノシ


25: 2008/04/07(月) 21:08:17.24ID:azTOtO780
一ヶ月という時間は、はたして短いのだろうか。
それは見ず知らずの他人が友人になるには十分すぎる時間だが。
家族になるには短すぎる時間だ。
もちろん、それも人によるのだろうが……。

さて、俺達の場合はどうだろう――

26: 2008/04/07(月) 21:14:13.12ID:azTOtO780
幽霊屋敷は今日も賑やかだ。
ラッパーの妹はいつにもましてうざい。
天然の母は、あいかわらず狩りに励み、こちらの斜め上をいく。
あと馬鹿犬と父。このへんは同列。

俺は、サリーちゃんをからかって毎日を楽しく過ごしている。
しかしどうも最近、サリーちゃんの様子がおかしい。

どうしたのと聞いても答えてくれない。
何か脅えているようだ。

ここは一発はげましてやろう。

男「あー…サリーちゃんの顔が見たいなー」
男「笑うと可愛いんだよなーほんと」
男「最近はめったに見れないけどさー」

彼女の真っ赤な顔を想像しながらそんなことを呟く。

そして、いつものようにニヨニヨしながら再生ボタンを押した。





カチリ

27: 2008/04/07(月) 21:22:35.62ID:azTOtO780
男『あー…サリーちゃんの顔が見たいなー』

         サ『きゃああああぁぁぁ…っ!』
男『笑うと可愛いんだよなーほんと』


  サ『やめ…て!出ていきなさい!私の…私達の家から…ッ!』

男『最近はめったに見れないけどさー』

         サ『……男…ごめんね…もう顔を見せることができないの…』


男「サリーちゃん!?」

俺はありったけの力で叫んだ。
ゾクゾクと背筋に悪寒がはしる。
あたりに視線をめぐらすが、屋敷は静かなものだ。

男「サリー!なんだよ!俺をからかってんのか!?」

レコーダーをもつ手が震える。

男「なにが起きてんだ!この屋敷になにがいるってんだ!」

再生ボタンを押し込む。

29: 2008/04/07(月) 21:31:40.47ID:azTOtO780
サ『……冥府の番犬に見つかったわ』

サ『実体化したせいで、気配を悟られたみたい』

サ『あれは私みたいな自縛霊を狩っていくの……ポチは逃がせたけれど』

サ『バカみたいね…せっかく屋敷に隠れていたのに…いまさら見つかるなんて…』

サ『で、でも、楽しかったんだからね。男が一緒に暮らそうって言ってくれて』

サ『…本当にありが



カチッ




空気を読めないレコーダーが不意に止まった。
メモリが一杯になったことを告げるランプがちかちかと明滅する。

俺は呆然と立ちすくんだ。
こんな別れ方でいいのかと、天井を睨んだ。


男「俺は、どうしたらいい?」

30: 2008/04/07(月) 21:39:01.02ID:azTOtO780
すべて、俺のせいだ。
彼女をこの世に引きずり出した俺のせいだ。

だというのに俺にはサリーを救う手立てがない。
恐らくは、サリーにだって。

だからこその決別の言葉。別れの挨拶。あれはそういう意味。

『本当にありがとう』

男「ふざけんなよなぁ…今時そんな台詞でしめるなんてさぁ…」

ぼろぼろと涙がこぼれる。

男「どこの三文小説だよ。今時のドラマだって、もっとビビットな捨て台詞を残すんだぞ…?」

彼女は知らないだろうけど。

男「この世にはなぁ、他に良い言葉がたくさんあるんだぞ…」

それはテレビにだって、マンガにだって、2chにだって溢れてる。

男「例えば…さ……――」

俺はからからになった喉をふりしぼって叫んだ。
彼女に相応しいのは、きっとこの言葉だ。

男「――助けてくれ!!!」

31: 2008/04/07(月) 21:43:48.44ID:azTOtO780

 ――さて、俺達の場合はどうだろう――




 不意に玄関の扉が開かれる。

 
 夕日を背にして黒い影が現れる。



 そして、影は言った。





母「今日の晩御飯は――地獄の番犬ね」

35: 2008/04/07(月) 21:51:58.49ID:azTOtO780
男「珍しく空気を読んだなババア!」

母「ポチが教えてくれました。サリーちゃんの危機だと」

ベタベタなことを言いながら母は跳躍した。

3mほど上にある天井に足をつけて槍を振り絞り――

母「刺し穿つ――氏棘の槍!」

赤い閃光を伴って槍が投擲される。
槍の光跡は爆音をたててホールの地面中央に突き刺さると、そこから黒い煙が吹き上がった。

いや、それはもうすでに爆発だった。

ゆっくりと煙が晴れると、そこにいたのは――

男「サリー!」

サ「……男…?」




妹「あたしもいるYO!」

男「お前はいらん」

40: 2008/04/07(月) 22:00:41.70ID:azTOtO780
俺は涙でくしゃくしゃになった顔を隠すことも忘れて、

男「サリー…! サリーッ!」

何度も躓きながらサリーに駆け寄る。

しかし

サ「こないで!」


サリーに突き飛ばされた。

尻餅をつく俺の背後で、母がぼそりと呟いた。

あたりを見回しながら、珍しく焦燥感を露にした声で。



母「……この数、私達だけで食べきれるかしら」

そこには無数の黒い番犬がいた。

45: 2008/04/07(月) 22:17:20.66ID:azTOtO780
サ「……もういいの。冥府の番犬は無限にいるのよ。そのまま元の生活に戻りなさい」

サリーは弱弱しい笑みを浮かべて俺を見つめた。
あちこちから獣たちの歯軋る音がする。
奴らは笑っていた。肉食獣がそうするように。攻撃的に笑っていた。
俺は「そうじゃないだろ」と小さく呟いた。

サ「え……?」

メモリースティックを差し替え、レコーダーの再生ボタンを押す。
サ『きゃああぁぁ!?私の男になにしてんのよぉーー!?』
そして、言ってやるんだ。

男「俺、サリーちゃんの男だから。だから。諦めるなんて……絶対にできねぇ!」

サ「…ば……ばかぁ……っ…」

46: 2008/04/07(月) 22:19:37.78ID:azTOtO780
お互いに涙を尽くした。

お互いに言葉を尽くした。

さあ、これで足りるだろうか。

俺達が家族と呼び合える仲になる程度には、足りるだろうか。

きっと、絶対に、足りるんだ。

男「…番犬ども、俺らの父の異名を教えてやるよ…」

母「私との結婚生活を生き抜いた稀有な存在のあり方を……」

妹「ようやく登場だZE☆」

俺はニヤリと笑って、母は肩すくめて、妹はラップ調で呟いた。

「空気父(エアーダディ)又の名を――


 ――九州・ザ・サイレントキラー」

51: 2008/04/07(月) 22:29:44.58ID:azTOtO780
それは突風だった。

扉の隙間から、ひゅうと音をたてて何かが室内に滑り込んだかと思うと。

それは突風から旋風となって、あたりを蹂躙した。

まるで爆竹のように黒い番犬どもが連鎖的に破裂していく。


パパパパパパパパパパ――パパンッ!


妹「あれ、父(パパ)とかけてんだZE☆」
男「……氏ぬほどどうでもいい…」

最低のオヤジギャグをのせて、黒い霧を振り払いながら父はサリーのそばに降り立った。

父「ふぅ、戦場を思い出すわい」
母「それを言うなら結婚初夜でしょ、あなた」
父「アフガニスタンの初夜…か。あれは熱い夜だった」
妹「まだまだくるZE☆ どうするのだZE☆」
男「無理やりZEをつけるな。しかし、くそ、これじゃ埒があかない…!」

増殖し続ける黒い犬を、俺達は静かに睨んだ。


サ「……みんな……」

64: 2008/04/07(月) 22:48:36.88ID:azTOtO780
自慢じゃないが、俺は霊感が強いほうだ。
かなり特殊な方向に特化しているとはいえ、それは日常で役立つレベルのものだ。

そもそも、なぜテープレコーダーを持ち歩いているのか。
この時代にMDやMP3でなく、あえてテープレコーダーを選んだ理由…。

それこそが、この状況を打破するキッカケになる。

メモリスティックと互換できるように魔改造したテープレコーダー「聞きとりくん」を

高々と掲げて録音ボタンを押した




男「どこの浮遊霊でもいい!守護霊でもいい!この番犬どもを追っ払う方法を教えてくれ!」


そして、マークのすりきれた再生ボタンを押した。

65: 2008/04/07(月) 22:51:52.51ID:azTOtO780
俺の能力とは、すなわち霊の声を聞く力だ。

ただし、テープでしか霊の声を封印することができない。

この力のせいでよく気味悪がられたりもした。

でも、そういう時は決まって霊が慰めてくれていた。

だからだろうか。


サリーちゃんを放っておけなかったのは――

66: 2008/04/07(月) 22:56:51.10ID:azTOtO780
声だ。無数の声が響きだした。
仲間を救うために、自分たちが消されることもいとわぬ英雄達の声だ。

『ハーデースを殺せ。やつこそ冥府の主だ――』

    『冥府を滅ぼせ。あそこは霊の墓場だ。消されたくない――』

  『彼女を助けてやってくれ。心優しい彼女をどうか――』

            『我らの力でハデスを誘き出そう――あとは任せた――』


その時だ。

冥府の番犬がいっせいに渦を巻きながら天井を貫いた。

天井を闇が覆い、その闇から――冥府の主ハーデースが姿を現した。

それはまさに冥王。漆黒の仮面を歪に歪ませて、俺達を睨みつけている。

ハ『――オロカモノドモメ――』




地鳴りのような声に、心臓を鷲掴みにされた気がした。

68: 2008/04/07(月) 23:02:45.67ID:azTOtO780
震える足をおさえつける。
止まれ、止まれ、と心の中で念じながら歯を食いしばる。
背後からは家族の声が、

妹「あたしたちがついてるZE☆」
母「あなたは、私達の息子ですよ。見せつけてあげなさい」
父「男ならぶちかましたるんじゃ」

顔をあげればサリーがいる。
彼女もまた震えている。

サ「……男ぉ……」

泣き出しそうな顔で、それでもギリギリで涙をこらえて。
ついにこらえ切れなかったものが、言葉として漏れていた。

サ「助けて…男ぉ…私、あんたと…離れたくない…」


それで心は決まった。

悲しい結末になることには、すぐに気づいたけど。

不思議と、恐さはなかった。



さあ、家族の別れに相応しき一幕を、開こうじゃないか。

69: 2008/04/07(月) 23:07:54.00ID:azTOtO780
男「やっぱりさ、なんだかんだ言っても…」

俺は頭をかきながらハデスを見上げた。

男「最後には、ありがとう、って言われたいよな…」

だが、悲しいことに、ずっと昔から別れの言葉は決まっているものだ。
どんな小説にだって漫画にだって2chにだって溢れている、ありふれた言葉。


男「さよなら、サリーちゃん」


俺はありったけの力をテープレコーダーにこめて。

そして、ハデスに向けて投げ放った。

レコーダーが閃光を放つ。

世界が白く塗り潰されて。

俺達の不思議な共同生活は、終わりを告げた。

72: 2008/04/07(月) 23:13:33.31ID:azTOtO780
――半年後――

『……もう寝てるかな?』
『もしもーし、本当に寝てるー?』
『ふふ、ほんと、ぶちゃいくな寝顔』
『…………』
『ちゅ』
『…あは、またしちゃ

カチリ

朝。俺は築四十年の一軒家で目を覚ました。
目覚まし時計を頭から押さえつけたまま、ぼんやりと頭をかく。

男「やっぱり、すげぇ効き目だなこの目覚ましコール」

今日もまたサリーちゃんの気配で目を覚ました。
すわ本物かと、ついつい手を伸ばしてしまう習性を利用した見事なトラップだ。
ちなみに作ったのは妹である。ほんとうぜぇ。

男「さーて…2chすっかなぁ…」

俺はパソコンに向かい、キーボードを打ち始めた。

73: 2008/04/07(月) 23:20:22.02ID:azTOtO780
 あの出来事があってから、俺は霊感を失っていた。
 さすが俺式メガンテというべきか、見事にハデスを滅ぼしたものの。
 その代償として全ての力を失ってしまったのだ。
 サリーちゃんの屋敷は、まだあの場所に悠然と建っている。

 恐らくは彼女もそこに――

 もう二度とサリーちゃんの声を聞くことはないだろう。
 聞こえるのは、持ち帰ったメモリースティックの無機質な電子音声だけで。
 そのことに後悔はないが、たまに泣き出したいほど寂しくなる。

男「それでも、そこにいるなら」

 今日もまた2chの面白い話を聞かせに行こう。
 一方通行でもいいのだ。



 昔から「初恋は片想い」と相場は決まっているのだから

74: 2008/04/07(月) 23:21:58.27ID:azTOtO780



      ――しかし、さて、俺達の場合はどうだろうか――



                             ―おわり―

77: 2008/04/07(月) 23:24:07.98ID:azTOtO780
というわけでgdgdのまま終わってみるテスト

喉が渇いたんでちょっと飲み物買ってくるノシ

引用: 新ジャンル「サリーちゃん」