1:2014/12/10(水) 01:15:35.82
魔王「貴様は世界を救うと言ったが、我々魔族は侵略を目的としているわけではない」
勇者「は?お前城下町に攻撃仕掛けたりしてたろ!あれが侵略行為じゃなくてなんだよ!」
魔王「あの攻撃で人間の死傷者はいない」
勇者「それは俺達がたまたまそこにいたから……!」
魔王「違う。あの攻撃で魔族は人間を傷つけられない。そう命令した」
勇者「確かにあの攻撃で出た被害は食料や金銭などの物資だけだった……」
勇者「は?お前城下町に攻撃仕掛けたりしてたろ!あれが侵略行為じゃなくてなんだよ!」
魔王「あの攻撃で人間の死傷者はいない」
勇者「それは俺達がたまたまそこにいたから……!」
魔王「違う。あの攻撃で魔族は人間を傷つけられない。そう命令した」
勇者「確かにあの攻撃で出た被害は食料や金銭などの物資だけだった……」
4:2014/12/10(水) 01:19:06.60
魔王「我々は安定した生活を望んでいる。お前はそれをただ人間の王に伝えればいい」
勇者「……それでも、人を攻撃するのはダメだ」
魔王「ならば魔族は攻撃されてもよいと言うのか」
勇者「それは……ダメなことだ。理由がない限り」
魔王「魔族は見つかれば理由無く攻撃され、住処を追われて殺される。我らが望むのは生活のみであるというのに」
勇者「……それでも、人を攻撃するのはダメだ」
魔王「ならば魔族は攻撃されてもよいと言うのか」
勇者「それは……ダメなことだ。理由がない限り」
魔王「魔族は見つかれば理由無く攻撃され、住処を追われて殺される。我らが望むのは生活のみであるというのに」
5:2014/12/10(水) 01:21:24.46 ID:6VBK8uRn0.net
いや人様の物盗んじゃダメだろ
7:2014/12/10(水) 01:22:35.21
勇者「……なら、お前はどうして101人目までの勇者を殺したんだ」
魔王「正当な防衛行動だ。貴様らの法が言うところのな」
勇者「……攻撃されたから、やり返した」
魔王「違う。殺されそうになったから、殺したのだ」
勇者「今俺が生きているのも……」
魔王「そうだ。お前はまだ私に攻撃していないからだ」
勇者「魔王、お前は勇者を城に招き何をするつもりなんだ」
魔王「正当な防衛行動だ。貴様らの法が言うところのな」
勇者「……攻撃されたから、やり返した」
魔王「違う。殺されそうになったから、殺したのだ」
勇者「今俺が生きているのも……」
魔王「そうだ。お前はまだ私に攻撃していないからだ」
勇者「魔王、お前は勇者を城に招き何をするつもりなんだ」
8:2014/12/10(水) 01:26:05.80
魔王「謝罪をしたいのだ。それと和解を」
勇者「謝罪?」
魔王「生きるためとはいえ、我々がとった行動は許されるものではない」
勇者「そうだ。それが人であれ魔族であれ、お前たちはやってはいけないことをした」
魔王「我々魔族は、ただ和解したいのだ。そして、国を持つことを人間の王に許してほしい」
勇者「国だって?そうやって戦争でもする気なのか?」
魔王「国を持てば、我々が奪った物を返すこともできる。国ではなく自治権でもいいのだ」
勇者「謝罪?」
魔王「生きるためとはいえ、我々がとった行動は許されるものではない」
勇者「そうだ。それが人であれ魔族であれ、お前たちはやってはいけないことをした」
魔王「我々魔族は、ただ和解したいのだ。そして、国を持つことを人間の王に許してほしい」
勇者「国だって?そうやって戦争でもする気なのか?」
魔王「国を持てば、我々が奪った物を返すこともできる。国ではなく自治権でもいいのだ」
10:2014/12/10(水) 01:32:27.26
勇者「……ダメだ。信用できない」
魔王「仕方あるまい……。ならば戦うのか」
勇者「いや。お前を見極める」
魔王「……ほう。どのようにしてだ」
勇者「お前の側で、お前自身の振る舞いを見てだ」
魔王「……よかろう。しかし襲おうなどと考えるな」
勇者「……そっちもな」
魔王「仕方あるまい……。ならば戦うのか」
勇者「いや。お前を見極める」
魔王「……ほう。どのようにしてだ」
勇者「お前の側で、お前自身の振る舞いを見てだ」
魔王「……よかろう。しかし襲おうなどと考えるな」
勇者「……そっちもな」
12:2014/12/10(水) 01:36:42.63
魔王(ククククク……勇者というのは根が真っ直ぐな分、こういった話に弱いのだ……)
魔王「101人目も……この話を受けてくれた。しかしその晩に私を襲い、返り討ちだ」
勇者「俺はそうはならない。お前を襲うこともしないし、お前に襲われもしない」
魔王(これで寝込みを襲ってやれば……!)
魔王「101人目も……この話を受けてくれた。しかしその晩に私を襲い、返り討ちだ」
勇者「俺はそうはならない。お前を襲うこともしないし、お前に襲われもしない」
魔王(これで寝込みを襲ってやれば……!)
14:2014/12/10(水) 01:41:15.08
勇者「俺はどこで生活すればいい」
魔王「ああ、好きな部屋を選べ。私の部屋以外はどうせ空いている」
勇者(魔王の奸計に引っかかるわけなどない。卑怯なようで気が引けるが、やはり隙を見て魔王を倒す……)
勇者「なら外でテントを張ろう。外に仲間を待たせてある」
魔王(ちっ、勇者の居所を把握しづらくなったな……。まあいい、ゆっくり時間をかけて……)
魔王「わかった。外の廃墟も自由に使え」
魔王「ああ、好きな部屋を選べ。私の部屋以外はどうせ空いている」
勇者(魔王の奸計に引っかかるわけなどない。卑怯なようで気が引けるが、やはり隙を見て魔王を倒す……)
勇者「なら外でテントを張ろう。外に仲間を待たせてある」
魔王(ちっ、勇者の居所を把握しづらくなったな……。まあいい、ゆっくり時間をかけて……)
魔王「わかった。外の廃墟も自由に使え」
16:2014/12/10(水) 01:50:51.21
翌朝
魔族A「魔王様、城下郊外の魔族が8名処刑されたとの報告があります」
魔王「これで……残りの魔族は66名となったのだな……」
魔族A「はい……我々もやはり人への攻撃を……」
魔王「そうすれば人類との和解はなくなる。たえるのだ。そこの勇者も和解を望んでいる……」
勇者(魔王には隙が見当たらない…………部下もひっきりなしにやってくるし、正直ジリ貧になるな……)
魔族A「はっ。城下のような事件は二度と起こさないよう、部下に周知させます」
勇者(城下の事件?あの集団略奪のことか?)
魔王「ああ。我々の和平の為に……」
魔族A「魔王様、城下郊外の魔族が8名処刑されたとの報告があります」
魔王「これで……残りの魔族は66名となったのだな……」
魔族A「はい……我々もやはり人への攻撃を……」
魔王「そうすれば人類との和解はなくなる。たえるのだ。そこの勇者も和解を望んでいる……」
勇者(魔王には隙が見当たらない…………部下もひっきりなしにやってくるし、正直ジリ貧になるな……)
魔族A「はっ。城下のような事件は二度と起こさないよう、部下に周知させます」
勇者(城下の事件?あの集団略奪のことか?)
魔王「ああ。我々の和平の為に……」
17:2014/12/10(水) 01:57:37.59
勇者「城下の事件とは何だ」
魔王「貴様も知っているだろう。この前の城下攻撃のことだ」
勇者「……事件と言っていたな。さっきの魔族は」
魔王「違う。あれは私が命じたことだ。城下に展開した部隊に命令した。飢えを満たすために食料を奪えと」
勇者(どこまでが嘘なんだ……クソッ、嘘とはいえ見極めるなんて言いながら、全くわからない)
魔王(和平のために、か。…………和平が来ればどうなるのか……考えたことなどなかったな……)
勇者「魔王。質問がある」
魔王「内容次第だな」
魔王「貴様も知っているだろう。この前の城下攻撃のことだ」
勇者「……事件と言っていたな。さっきの魔族は」
魔王「違う。あれは私が命じたことだ。城下に展開した部隊に命令した。飢えを満たすために食料を奪えと」
勇者(どこまでが嘘なんだ……クソッ、嘘とはいえ見極めるなんて言いながら、全くわからない)
魔王(和平のために、か。…………和平が来ればどうなるのか……考えたことなどなかったな……)
勇者「魔王。質問がある」
魔王「内容次第だな」
18:2014/12/10(水) 02:04:44.55
勇者「貴様は人を殺さないというような言い方をしているが、ならば10年前の大虐殺は何だ?」
魔王「あれは、復讐だ。貴様ら人類への」
勇者「魔族戦争の報復か……」
魔王「10万を超える民が人類に虐殺された。我々は降伏していたというのに、貴様らが先代魔王の首を落とし、丁寧にもこの城の前に捨てたのだ」
勇者「だからあの10人を殺したのか。殺して満足したのか!」
魔王「まだ、殺し足りないさ。しかし、我が臣下達は安寧を求めている……」
魔王(和平……。実現すれば、臣下達は笑えるのだろうか……)
魔王「あれは、復讐だ。貴様ら人類への」
勇者「魔族戦争の報復か……」
魔王「10万を超える民が人類に虐殺された。我々は降伏していたというのに、貴様らが先代魔王の首を落とし、丁寧にもこの城の前に捨てたのだ」
勇者「だからあの10人を殺したのか。殺して満足したのか!」
魔王「まだ、殺し足りないさ。しかし、我が臣下達は安寧を求めている……」
魔王(和平……。実現すれば、臣下達は笑えるのだろうか……)
19:2014/12/10(水) 02:10:02.07
勇者「お前自身はどうなんだ」
魔王「まだ殺し足りぬ。殺したい!命を求めている!」ゴゴゴゴ……
勇者「……貴様」
魔王「しかし、いや、だからか。私は襲い来るもの以外を殺さぬと決めた」
魔王(……何故?命を欲するなら全て殺せばいい。私ならできるのに、何故しない……?)
勇者「臣下の望みを認めるから、必要以上には殺さないと」
魔王「ああ。そうだ」
魔王(考えるのはやめよう。今晩、この勇者を殺して終える……。和平など実現しない……わかりきっている)
魔王「まだ殺し足りぬ。殺したい!命を求めている!」ゴゴゴゴ……
勇者「……貴様」
魔王「しかし、いや、だからか。私は襲い来るもの以外を殺さぬと決めた」
魔王(……何故?命を欲するなら全て殺せばいい。私ならできるのに、何故しない……?)
勇者「臣下の望みを認めるから、必要以上には殺さないと」
魔王「ああ。そうだ」
魔王(考えるのはやめよう。今晩、この勇者を殺して終える……。和平など実現しない……わかりきっている)
20:2014/12/10(水) 02:15:10.74
勇者(この魔王、迷っている……。魔王として生きるのか、王として臣下の生活を守るのか……)
魔王「魔族戦争の復讐は続いている。しかし臣下を思えば和平の道を探りたい。私は……」
勇者(勇者の勤めは……そう、救うことだ。この魔王でさえ例外ではない……!)
魔王(今晩で終わる。終わらせる。魔王として生きる。人を全て……)
勇者(本当に長かったこの戦いを)
魔王(本当に長かったこの復讐を)
勇者・魔王(終わらせる……!!)
魔王「魔族戦争の復讐は続いている。しかし臣下を思えば和平の道を探りたい。私は……」
勇者(勇者の勤めは……そう、救うことだ。この魔王でさえ例外ではない……!)
魔王(今晩で終わる。終わらせる。魔王として生きる。人を全て……)
勇者(本当に長かったこの戦いを)
魔王(本当に長かったこの復讐を)
勇者・魔王(終わらせる……!!)
28:2014/12/10(水) 02:24:22.53
その夜
魔王(勇者の居所はわからない……。だが魔族と違って睡眠をとらなければならないはずだ)
魔王「殺す。勇者、殺す。復讐だ。いつまでも復讐をする。人類が滅ぶまでだ……」
魔王(長かった迷いだった。いや、まだ迷っている。だが決めた。人類は殺す)
魔王「殺す……」
魔王(思い出の中の臣下達、民たちが笑っている……。辛かったあの日々は、決して辛いことだけではなかった……)
魔王「だけど決めてしまった……。終わらせる。終わらせる……。復讐を」
魔王(勇者の居所はわからない……。だが魔族と違って睡眠をとらなければならないはずだ)
魔王「殺す。勇者、殺す。復讐だ。いつまでも復讐をする。人類が滅ぶまでだ……」
魔王(長かった迷いだった。いや、まだ迷っている。だが決めた。人類は殺す)
魔王「殺す……」
魔王(思い出の中の臣下達、民たちが笑っている……。辛かったあの日々は、決して辛いことだけではなかった……)
魔王「だけど決めてしまった……。終わらせる。終わらせる……。復讐を」
29:2014/12/10(水) 02:30:02.73
魔王の回想
臣下A「人類との共生を図るべきです!」
魔王「あり得ぬ。我らの民に!我が父に!命を捧げねば怒りが収まらん!」
臣下B「我々とて同じ気持ちです……!魔王様!」
魔王「魔王……。そうか、私はすでに王となったのだな……」
臣下A「先代のことは私も苦しい……しかし魔王様……。残された民の幸せを……どうか……」
魔王「わかった……。しかし、今から辛いのはお前たちになるのだぞ……」
臣下B「我々は辛くとも構いません。民の暮らしを守るのが王と臣の役割です」
魔王「では……和平に向けて動くとしよう……」
臣下A「人類との共生を図るべきです!」
魔王「あり得ぬ。我らの民に!我が父に!命を捧げねば怒りが収まらん!」
臣下B「我々とて同じ気持ちです……!魔王様!」
魔王「魔王……。そうか、私はすでに王となったのだな……」
臣下A「先代のことは私も苦しい……しかし魔王様……。残された民の幸せを……どうか……」
魔王「わかった……。しかし、今から辛いのはお前たちになるのだぞ……」
臣下B「我々は辛くとも構いません。民の暮らしを守るのが王と臣の役割です」
魔王「では……和平に向けて動くとしよう……」
30:2014/12/10(水) 02:33:32.81
魔王の回想2
臣下A「人類が和平交渉の席に着いてくれるとのことです!」
魔王「本当か!よくやった……!!」
臣下B「このことを国民に向けて周知しましょう!」
魔王「そのことは臣下B任せる。臣下Aよ。我々が人類に対して要求できることの整理をしよう。交渉できるカードを増やすのだ」
臣下A「はいっ!」
臣下A「人類が和平交渉の席に着いてくれるとのことです!」
魔王「本当か!よくやった……!!」
臣下B「このことを国民に向けて周知しましょう!」
魔王「そのことは臣下B任せる。臣下Aよ。我々が人類に対して要求できることの整理をしよう。交渉できるカードを増やすのだ」
臣下A「はいっ!」
31:2014/12/10(水) 02:39:07.92
魔王の回想3
魔王「我々魔族は人類と争う気はありません。ただ国を持ちたいだけなのです」
人の王「…………ふむ。国を持てば力を持つ。戦争が起きれば貴様らが悪となるぞ」
魔王「我々は防衛のみを司る軍事力のみを保有します。これは先ほどの条約の通りです」
人の王「ならば、よかろう。後ほど日を改めて調停を行うとしよう」
魔王「ありがとうございます!日にちは……」
魔王「我々魔族は人類と争う気はありません。ただ国を持ちたいだけなのです」
人の王「…………ふむ。国を持てば力を持つ。戦争が起きれば貴様らが悪となるぞ」
魔王「我々は防衛のみを司る軍事力のみを保有します。これは先ほどの条約の通りです」
人の王「ならば、よかろう。後ほど日を改めて調停を行うとしよう」
魔王「ありがとうございます!日にちは……」
32:2014/12/10(水) 02:44:07.87
魔王の回想4
魔王「ひと月後に和平の調停が行われる!人類との長い戦いは終わるのだ!」
国民「ワァァァァァ!!!!」
臣下A「先代魔王様……。私たちは、ついに……」
魔王「我々の領土、我々の文化、我々の暮らしを手に入れられる!人から隠れて生きる時はなくなる!」
魔王(復讐は、もうやめよう。国民の顔を見てみれば、和平がいかに崇高ですばらしいものか、私にもよくわかった……)
魔王「ひと月後に和平の調停が行われる!人類との長い戦いは終わるのだ!」
国民「ワァァァァァ!!!!」
臣下A「先代魔王様……。私たちは、ついに……」
魔王「我々の領土、我々の文化、我々の暮らしを手に入れられる!人から隠れて生きる時はなくなる!」
魔王(復讐は、もうやめよう。国民の顔を見てみれば、和平がいかに崇高ですばらしいものか、私にもよくわかった……)
33:2014/12/10(水) 02:48:53.77
魔王の回想5
和平調停の席にて
魔王「……魔族は今、魔王城前の広場に集まって、私の帰りを待っているでしょう」
人の王「先代のようにはならないようにしなければな」
魔王「……はい。では、こちらに名前を……」
人の王「否、だ。魔族の居場所が聞けたのだから、勇者に向かわせるまでよ」
魔王「何を!?」
人の王「魔族は魔王城前に集まり、人類への反撃の準備をしている。人類はそう考えている」
魔王「違います!私たちは!」
人の王「違わんのだよ。魔王。貴様はここで私を殺そうとして返り討ちに遭い、そして魔族は人類の敵となる」
和平調停の席にて
魔王「……魔族は今、魔王城前の広場に集まって、私の帰りを待っているでしょう」
人の王「先代のようにはならないようにしなければな」
魔王「……はい。では、こちらに名前を……」
人の王「否、だ。魔族の居場所が聞けたのだから、勇者に向かわせるまでよ」
魔王「何を!?」
人の王「魔族は魔王城前に集まり、人類への反撃の準備をしている。人類はそう考えている」
魔王「違います!私たちは!」
人の王「違わんのだよ。魔王。貴様はここで私を殺そうとして返り討ちに遭い、そして魔族は人類の敵となる」
37:2014/12/10(水) 03:00:30.19
魔王「クソッ!」ダッ
人の王「この書類に名前を書かなくてよいのか?和平調停はこの書類にて締結される。貴様がここから去れば、和平はなかったことになるぞ」
魔王「……書いて、すぐに帰らせていただく……!」
人の王「それがいい。どのみち貴様の民は勇者に殺されるのだから」
魔王「和平……こんなのが和平であってたまるか……」
魔王(ここから魔王城まで馬を走らせれば何時間もかからない……。すぐに帰れば助けられる……!)
人の王「この書類に名前を書かなくてよいのか?和平調停はこの書類にて締結される。貴様がここから去れば、和平はなかったことになるぞ」
魔王「……書いて、すぐに帰らせていただく……!」
人の王「それがいい。どのみち貴様の民は勇者に殺されるのだから」
魔王「和平……こんなのが和平であってたまるか……」
魔王(ここから魔王城まで馬を走らせれば何時間もかからない……。すぐに帰れば助けられる……!)
38:2014/12/10(水) 03:09:26.31
(現魔王の回想)
衛兵「ディヤアアァ!」ブンッ
魔王「クソッ……そこをどけ!」マホウッポイノー
衛兵「ぐわぁぁぁぁ!」
魔王「生きてはいるだろう。他の誰かがもうすぐ来る。助けてもらえ」ダッ
魔王(民は無事か……間に合え……)
~魔王城前の広場~
1番目の勇者「よぉ。魔王か?」
魔王「私の民はどうなった」
1番目の勇者「殺したよ。まだ条約は有効じゃない。殺したところで条約に抵触はしない」
魔王「そのようなことを聞いているのではない。私の民は、国はどうなったのだ!」
1番目の勇者「人々が魔族に困ってる。なら魔族を根絶やしにするのが一番速い解決だ。だから殺したさ。お前の国は、お前だけのものになった」
魔王「…………和平を夢見た民が……臣下が……なぜ殺された……」
1番目の勇者「人々の救いになるからだ。勇者の仕事は救うことなんでね」
衛兵「ディヤアアァ!」ブンッ
魔王「クソッ……そこをどけ!」マホウッポイノー
衛兵「ぐわぁぁぁぁ!」
魔王「生きてはいるだろう。他の誰かがもうすぐ来る。助けてもらえ」ダッ
魔王(民は無事か……間に合え……)
~魔王城前の広場~
1番目の勇者「よぉ。魔王か?」
魔王「私の民はどうなった」
1番目の勇者「殺したよ。まだ条約は有効じゃない。殺したところで条約に抵触はしない」
魔王「そのようなことを聞いているのではない。私の民は、国はどうなったのだ!」
1番目の勇者「人々が魔族に困ってる。なら魔族を根絶やしにするのが一番速い解決だ。だから殺したさ。お前の国は、お前だけのものになった」
魔王「…………和平を夢見た民が……臣下が……なぜ殺された……」
1番目の勇者「人々の救いになるからだ。勇者の仕事は救うことなんでね」
39:2014/12/10(水) 03:16:00.98
魔王「ガ……」
1番目の勇者「残った魔族はあんただけだ。だからこれで……終わりだっ!」ブンッ
魔王「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
1番目の勇者「えっ……おい……腕……無くなって……え?」
魔王「フゥー……!フゥー……ッッ!」
1番目の勇者「剣……腕と一緒に……死……」
魔王「シャァッ!」ヒュンッ
1番目の勇者「ぁ」
1番目の勇者「残った魔族はあんただけだ。だからこれで……終わりだっ!」ブンッ
魔王「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
1番目の勇者「えっ……おい……腕……無くなって……え?」
魔王「フゥー……!フゥー……ッッ!」
1番目の勇者「剣……腕と一緒に……死……」
魔王「シャァッ!」ヒュンッ
1番目の勇者「ぁ」
40:2014/12/10(水) 03:22:39.95
それからのことはよく覚えていない。
ただ向かい来る勇者を殺し続ける日々だった。
2番目の勇者「魔王!覚悟!」
魔王「ガアッ!」
2番目の勇者「ぐぅっ……パパ……あたし、だめだった……よ……」
あの和平が実っていればどうなっただろう?
そんなことすら考えられなかった。
あの日から1年経って尚赤々と染まった、王城前の広場。
民や臣下の無念が見えるそこを眺め、涙を流し、勇者を殺す。
私の心も無念に支配されていた。
人類に対する憎しみだけを持って生きる。しかし、自ら人類を襲うことはしなかった。
防衛のみを行い、その防衛で勇者の命を奪う。
虚しい日々であった。
ただ向かい来る勇者を殺し続ける日々だった。
2番目の勇者「魔王!覚悟!」
魔王「ガアッ!」
2番目の勇者「ぐぅっ……パパ……あたし、だめだった……よ……」
あの和平が実っていればどうなっただろう?
そんなことすら考えられなかった。
あの日から1年経って尚赤々と染まった、王城前の広場。
民や臣下の無念が見えるそこを眺め、涙を流し、勇者を殺す。
私の心も無念に支配されていた。
人類に対する憎しみだけを持って生きる。しかし、自ら人類を襲うことはしなかった。
防衛のみを行い、その防衛で勇者の命を奪う。
虚しい日々であった。
42:2014/12/10(水) 03:32:13.98
17番目の勇者が来る頃には、私も少しは落ち着いた。
人類に復讐をする。その手段を考え続けた。
人類ごとき私一人で駆逐してやることができたが、しかし何かが胸に引っかかっていた。
あの条約。もはや無効事実となっていてもおかしくはないが、我が民たちの求めた結晶だ。
魔族は人類という種への敵意を放棄し、防衛を除いた攻撃行動を行わない。そういった文がある。
私はこの条約を破ろうとは思わなかった……。
17番目の勇者「魔王、お前の目的はなんだ!」
魔王「知れたことを。復讐だ……」
17番目の勇者「そのために今までの勇者を……!許さん!食らえ!」
魔王「…………」シュッ
17番目の勇者「うっ……」バタン
人類に復讐をする。その手段を考え続けた。
人類ごとき私一人で駆逐してやることができたが、しかし何かが胸に引っかかっていた。
あの条約。もはや無効事実となっていてもおかしくはないが、我が民たちの求めた結晶だ。
魔族は人類という種への敵意を放棄し、防衛を除いた攻撃行動を行わない。そういった文がある。
私はこの条約を破ろうとは思わなかった……。
17番目の勇者「魔王、お前の目的はなんだ!」
魔王「知れたことを。復讐だ……」
17番目の勇者「そのために今までの勇者を……!許さん!食らえ!」
魔王「…………」シュッ
17番目の勇者「うっ……」バタン
44:2014/12/10(水) 03:44:18.22
30番目の勇者を殺した頃から、私の下に生き残った魔族達が集まりだした。
臣下達も何人か生き残っていたらしく、その事実が私を落涙に導くのは容易だった。
臣下A「魔王様……人類は……敵でございました」
魔王「ああ……そうだ。人類は……敵だった」
私達は城の中で静かに暮らすと決めた。
魔族は食べずとも1年は生きられる。
食に困れば近くの街に出向き、頭を下げた。
こうすれば少しは食料が貰えたからだ。
39番目の勇者「貴様、街の食料を奪うだけが目的か!」
魔王「目的は、復讐だ……」
39番目の勇者「今までの勇者達の思い、受けろぉぉ!」
勇者は毎度同じようなことを言う。
やってることは私と変わらないというのに、どうして人は勇者を英雄視するのだろう?
人の家に無断で上がり、物を略奪するなど魔族でもするまい。
行いは私達とほぼ変わらないというのに……。
臣下達も何人か生き残っていたらしく、その事実が私を落涙に導くのは容易だった。
臣下A「魔王様……人類は……敵でございました」
魔王「ああ……そうだ。人類は……敵だった」
私達は城の中で静かに暮らすと決めた。
魔族は食べずとも1年は生きられる。
食に困れば近くの街に出向き、頭を下げた。
こうすれば少しは食料が貰えたからだ。
39番目の勇者「貴様、街の食料を奪うだけが目的か!」
魔王「目的は、復讐だ……」
39番目の勇者「今までの勇者達の思い、受けろぉぉ!」
勇者は毎度同じようなことを言う。
やってることは私と変わらないというのに、どうして人は勇者を英雄視するのだろう?
人の家に無断で上がり、物を略奪するなど魔族でもするまい。
行いは私達とほぼ変わらないというのに……。
46:2014/12/10(水) 03:57:29.03
50人を越える勇者を殺し続け、考えるようになった。
城にいる500の魔族達。その幸せを。
こんな薄暗い城には彼らの幸せなどない。
しかし人類との共生が考えられない以上、彼らの幸せを作ることもままならない。
私は王なのだ。国の、人の幸せを作らねばならないのに、なんと情けないのか……。
61番目の勇者「何も言うな。魔王。すぐに楽にして……やるっ!」ダッ
魔王「……」フッ
61番目の勇者「ぐ……」バタリ
しかし、民を失った悲しみと怒りはまだ私の中にある。
復讐をする気持ちと、残された民の幸せを祈る気持ち……。
考えれば、どちらが大切かなど明白だったのだ。
城にいる500の魔族達。その幸せを。
こんな薄暗い城には彼らの幸せなどない。
しかし人類との共生が考えられない以上、彼らの幸せを作ることもままならない。
私は王なのだ。国の、人の幸せを作らねばならないのに、なんと情けないのか……。
61番目の勇者「何も言うな。魔王。すぐに楽にして……やるっ!」ダッ
魔王「……」フッ
61番目の勇者「ぐ……」バタリ
しかし、民を失った悲しみと怒りはまだ私の中にある。
復讐をする気持ちと、残された民の幸せを祈る気持ち……。
考えれば、どちらが大切かなど明白だったのだ。
47:2014/12/10(水) 04:07:51.24
……90人目の勇者が死んだ。
私の力量も上がり続けている。それは勇者の殺し方までを決められるほどにていた。
90人目は安直な殺し合いを望み、自らの剣で胸を貫かせて殺した。
このころから、和平についてまた考えるようになった。
和平……。復讐の始まりの言葉だ。
魔族も残り100人はいない。無駄な考えだが、何故かその考えを消せなかった。
魔王「和平など……」
臣下Aは何も言わない。何も言えない骸になった。
90人目の勇者とほぼ同時に攻めてきた91人目の勇者が、我が最良の臣を奪っていった。
91人目の勇者「部下がその程度なら魔王も知れてるってもんだ、なっ!」ブンッ
魔王「…………貴様!」ファイガ
91人目の勇者「う、そ……」
私の力量も上がり続けている。それは勇者の殺し方までを決められるほどにていた。
90人目は安直な殺し合いを望み、自らの剣で胸を貫かせて殺した。
このころから、和平についてまた考えるようになった。
和平……。復讐の始まりの言葉だ。
魔族も残り100人はいない。無駄な考えだが、何故かその考えを消せなかった。
魔王「和平など……」
臣下Aは何も言わない。何も言えない骸になった。
90人目の勇者とほぼ同時に攻めてきた91人目の勇者が、我が最良の臣を奪っていった。
91人目の勇者「部下がその程度なら魔王も知れてるってもんだ、なっ!」ブンッ
魔王「…………貴様!」ファイガ
91人目の勇者「う、そ……」
50:2014/12/10(水) 04:18:57.37
101人目の勇者を殺した。
殺し方は自殺。
情に訴えて色々言っただけで自殺した。気の弱いヤツだった。
勇者というには言葉も軽かったし、勇者のレベルが落ちてきている気もする。
102人目はどうなるのか……。
私達の行く末は……。
次の勇者は寝込みを襲って殺すことにしよう。
もう、和平条約なんてどうでもいい……。
次の勇者を殺したら、人類を滅ぼそう……。
私の1万の民の命に帳尻を合わせ、それから人類を滅ぼすんだ。
殺し方は自殺。
情に訴えて色々言っただけで自殺した。気の弱いヤツだった。
勇者というには言葉も軽かったし、勇者のレベルが落ちてきている気もする。
102人目はどうなるのか……。
私達の行く末は……。
次の勇者は寝込みを襲って殺すことにしよう。
もう、和平条約なんてどうでもいい……。
次の勇者を殺したら、人類を滅ぼそう……。
私の1万の民の命に帳尻を合わせ、それから人類を滅ぼすんだ。
52:2014/12/10(水) 04:22:55.99
102人目の勇者「魔王よ!話をしに来た!」
こう言って私の前に立ったのはこの勇者が最初だった。
102人目の勇者「貴様がまだ世界に混乱をもたらし続けるのなら、俺は貴様を倒し、世界を救う」
話がしたいと言っていたな……。
なら、最後の勇者にくらい、話をしてやるとしよう……。
こう言って私の前に立ったのはこの勇者が最初だった。
102人目の勇者「貴様がまだ世界に混乱をもたらし続けるのなら、俺は貴様を倒し、世界を救う」
話がしたいと言っていたな……。
なら、最後の勇者にくらい、話をしてやるとしよう……。
53:2014/12/10(水) 04:29:30.28
回想終わり
魔王「もう迷うのはやめた……勇者、殺す」
勇者「zzz……」
魔王(臣下達よ、民達よ。今人類の命をお前たちに捧げる……)
勇者「……zzz…………zzz……」
魔王(寝てる勇者を殺す……それだけで……。始まる……復讐……)
勇者「……zzz…………」
魔王「……………………」フッ
魔王(後は、振り下ろす……だけ)
魔王「………………………………………………………………………………………………」
勇者「……………………」
魔王「もう迷うのはやめた……勇者、殺す」
勇者「zzz……」
魔王(臣下達よ、民達よ。今人類の命をお前たちに捧げる……)
勇者「……zzz…………zzz……」
魔王(寝てる勇者を殺す……それだけで……。始まる……復讐……)
勇者「……zzz…………」
魔王「……………………」フッ
魔王(後は、振り下ろす……だけ)
魔王「………………………………………………………………………………………………」
勇者「……………………」
54:2014/12/10(水) 04:36:00.30
勇者「……………………殺さないのか、魔王」
魔王「…………殺す。勇者は……人間は……」
勇者「何がお前を迷わせるんだ。お前は魔王だろう。人類を滅ぼすものだ」
魔王「……迷ってなどいない」
勇者「その短刀を振り下ろせば俺は死ぬ。それでいいんじゃないのか?」
魔王「ああ……それで、いいんだ」
勇者「なら、振り下ろせ。俺は勇者だ。救うことが勤めだ。それでお前の迷いが晴れるなら、俺はお前に殺されよう」
魔王「…………」
魔王「…………殺す。勇者は……人間は……」
勇者「何がお前を迷わせるんだ。お前は魔王だろう。人類を滅ぼすものだ」
魔王「……迷ってなどいない」
勇者「その短刀を振り下ろせば俺は死ぬ。それでいいんじゃないのか?」
魔王「ああ……それで、いいんだ」
勇者「なら、振り下ろせ。俺は勇者だ。救うことが勤めだ。それでお前の迷いが晴れるなら、俺はお前に殺されよう」
魔王「…………」
56:2014/12/10(水) 04:44:10.77
魔王の握った短刀が、ゆっくりと動き出す。
俺の顔めがけて、確かに落ちてくる。
これでいい。人類も、まあ滅亡するだろう。この魔王はそれだけの力を持っている。
だから俺は実質的に人類を滅ぼした人間になるだろう。
魔王の迷いの源はわかっている。
和平をダシに魔王を騙し、民を殺した人類を信用できないんだ。
ならば魔王に必要な物はひとつ。人類への信用のみだ。
俺を殺すことでタガがはずれるのか、人類を信用してくれるのかはわからない。
9割方、タガが外れるだけに終わるだろうとは思う。だが、残りの1割は……。
この魔王は信頼に値する。
迷い、怒り、今は涙している。そんな意志を確かに信じられる。
本当に何かを真剣に考えないと表れない感情だ。この感情に嘘はない。
復讐より平和を願う心が僅かでも大きければ……!
俺の顔めがけて、確かに落ちてくる。
これでいい。人類も、まあ滅亡するだろう。この魔王はそれだけの力を持っている。
だから俺は実質的に人類を滅ぼした人間になるだろう。
魔王の迷いの源はわかっている。
和平をダシに魔王を騙し、民を殺した人類を信用できないんだ。
ならば魔王に必要な物はひとつ。人類への信用のみだ。
俺を殺すことでタガがはずれるのか、人類を信用してくれるのかはわからない。
9割方、タガが外れるだけに終わるだろうとは思う。だが、残りの1割は……。
この魔王は信頼に値する。
迷い、怒り、今は涙している。そんな意志を確かに信じられる。
本当に何かを真剣に考えないと表れない感情だ。この感情に嘘はない。
復讐より平和を願う心が僅かでも大きければ……!
58:2014/12/10(水) 04:55:47.35
短刀をゆっくりと振り下ろす。
頭蓋を割り、脳を刺す。それだけの動き。
隣にいる勇者の仲間……魔法使いもすでに起きている。
勇者を殺すならば最後のチャンスだろう。
しかし、頭から消えぬ。笑う民が、感涙する臣下達が!
毎晩、亡くなった彼らの影が語りかけてくる。
私達の敵を、仇を殺してくれと!
毎晩、亡くなった彼らの喜びようを思い出す。
和平がすぐそこなのだと!もう殺されない、平和な世界なのだと!
彼らの痛みは……彼らの喜びは……私の中からいつ消える!
私は王として、彼らにどうやって報いてやればいい!
彼らの命の帳尻を合わせればいいのか?
和平を確かなものとし、彼らの夢を叶えればいいのか?
私にはわからない……。
この勇者の、確かな勇気に答えることさえも……できないのか……。
頭蓋を割り、脳を刺す。それだけの動き。
隣にいる勇者の仲間……魔法使いもすでに起きている。
勇者を殺すならば最後のチャンスだろう。
しかし、頭から消えぬ。笑う民が、感涙する臣下達が!
毎晩、亡くなった彼らの影が語りかけてくる。
私達の敵を、仇を殺してくれと!
毎晩、亡くなった彼らの喜びようを思い出す。
和平がすぐそこなのだと!もう殺されない、平和な世界なのだと!
彼らの痛みは……彼らの喜びは……私の中からいつ消える!
私は王として、彼らにどうやって報いてやればいい!
彼らの命の帳尻を合わせればいいのか?
和平を確かなものとし、彼らの夢を叶えればいいのか?
私にはわからない……。
この勇者の、確かな勇気に答えることさえも……できないのか……。
60:2014/12/10(水) 05:03:30.01
目覚めた時、勇者の上に魔王が乗っているのが見えた。
魔王は短刀を振り上げ、勇者に振り下ろせば終わりという姿勢のまま動かない。
勇者から目配せを受けた。……手を出すなと。
魔王は、迷っているようだった。
何に迷っているのか、何故迷っているのかはわからない。
でもあれは……あの怒りと悲しみが混ざった……きっとそんな感情。
一目でわかるくらいに辛そうだったから、私は少しでも魔王を楽にしてあげたかった。
何をすれば楽になるのかなんてわからなかったから、私がされて一番暖かくなることをしてあげた。
魔王は短刀を振り上げ、勇者に振り下ろせば終わりという姿勢のまま動かない。
勇者から目配せを受けた。……手を出すなと。
魔王は、迷っているようだった。
何に迷っているのか、何故迷っているのかはわからない。
でもあれは……あの怒りと悲しみが混ざった……きっとそんな感情。
一目でわかるくらいに辛そうだったから、私は少しでも魔王を楽にしてあげたかった。
何をすれば楽になるのかなんてわからなかったから、私がされて一番暖かくなることをしてあげた。
61:2014/12/10(水) 05:10:38.50
魔王「……何を」
魔法使い「辛そうだったから……。見ていて、辛いくらい……」
魔王「ならなぜ抱きしめる」
魔法使い「暖かくなれば……いいかなって……」
魔王「……ふざけたことを…………」
勇者「…………魔王」
魔王「お前は、殺す。勇者よ」
勇者「ああ。お前のために俺は殺される」
魔王「だが……それは今じゃない……。帰れ」
勇者「……それでいいのか。お前の悲しみと怒りは……それで……」
魔王「お前」
魔法使い「え?」
魔王「私は、大切な物を失わずに済んだ。お前のおかげだ。礼を言う」
魔法使い「……よくわかんないけど、うん」
勇者「魔法使い、ありがとう。今は、王城に戻ろう。このことを報告するんだ」
魔法使い「辛そうだったから……。見ていて、辛いくらい……」
魔王「ならなぜ抱きしめる」
魔法使い「暖かくなれば……いいかなって……」
魔王「……ふざけたことを…………」
勇者「…………魔王」
魔王「お前は、殺す。勇者よ」
勇者「ああ。お前のために俺は殺される」
魔王「だが……それは今じゃない……。帰れ」
勇者「……それでいいのか。お前の悲しみと怒りは……それで……」
魔王「お前」
魔法使い「え?」
魔王「私は、大切な物を失わずに済んだ。お前のおかげだ。礼を言う」
魔法使い「……よくわかんないけど、うん」
勇者「魔法使い、ありがとう。今は、王城に戻ろう。このことを報告するんだ」
62:2014/12/10(水) 05:21:36.57
勇者と城に帰って、すぐに王様へ報告した。
魔王統制下の魔族が起こした事件や事故で、人命が喪われていたことは確かになかった。
魔族に反逆の意志なしとされるまでにそんなに時間はかからなかった。
私は勇者の言うことを信じるけれど、信じない人間も結構いる。
魔王が本当は和平を望んでいるっていうのは確かだと思う。
けれど、勇者を殺せなかったあの魔王の中には、確かに復讐の念が渦巻いているのも確かだと感じた。
あの夜、魔王が勇者を殺せなかったのは、和平条約の1文が引っかかってのことらしい。
「魔族から人類への、防衛を除いた全ての攻撃を禁ずる。」
この理不尽な1文を認めるくらい、当時の魔族は和平を求めていた。
魔王統制下の魔族は、確かにこれを守っていた。
彼らの方が、私達なんかよりずっと平和という物、命というものの重さを知っていたんだ。
魔王統制下の魔族が起こした事件や事故で、人命が喪われていたことは確かになかった。
魔族に反逆の意志なしとされるまでにそんなに時間はかからなかった。
私は勇者の言うことを信じるけれど、信じない人間も結構いる。
魔王が本当は和平を望んでいるっていうのは確かだと思う。
けれど、勇者を殺せなかったあの魔王の中には、確かに復讐の念が渦巻いているのも確かだと感じた。
あの夜、魔王が勇者を殺せなかったのは、和平条約の1文が引っかかってのことらしい。
「魔族から人類への、防衛を除いた全ての攻撃を禁ずる。」
この理不尽な1文を認めるくらい、当時の魔族は和平を求めていた。
魔王統制下の魔族は、確かにこれを守っていた。
彼らの方が、私達なんかよりずっと平和という物、命というものの重さを知っていたんだ。
64:2014/12/10(水) 05:35:39.36
王様は頑なに和平について認めようとしなかった。
私達は魔族への信用を訴えたが……ダメだった。
王子が魔族に怪我をさせられたことが原因らしい。
小さい人だなと思う。人間は魔族を根絶やしにする勢いで殺し続けてるんだから。
王様が言うにはこういうことだ。
「魔族が死に絶えれば争いは起こらぬ。その和平も成るではないか」
……とんだ屁理屈だ。それなら魔王と何も変わらない。
いや、まだ人間を殺さない魔王の方がマシだ。
勇者は自分の勤めと正面から向き合い、魔王を救う決心を少しずつ固くしていった。
私達は魔族への信用を訴えたが……ダメだった。
王子が魔族に怪我をさせられたことが原因らしい。
小さい人だなと思う。人間は魔族を根絶やしにする勢いで殺し続けてるんだから。
王様が言うにはこういうことだ。
「魔族が死に絶えれば争いは起こらぬ。その和平も成るではないか」
……とんだ屁理屈だ。それなら魔王と何も変わらない。
いや、まだ人間を殺さない魔王の方がマシだ。
勇者は自分の勤めと正面から向き合い、魔王を救う決心を少しずつ固くしていった。
65:2014/12/10(水) 05:45:35.65
勇者「すまない。魔王。今日も良い報せはない」
魔王「いや……。お前は私のために最大限やっているだろう。謝るな」
勇者「なら、魔王。俺をあの時殺さないでいてくれてありがとう」
魔王「あの魔法使いに言うのだな……」
勇者「その彼女が言うんだ。決めたのは魔王自身だって」
魔王「……その魔法使いはどこにいる?」
勇者「外だ。外の城下町は彼女の母が生まれた町らしい」
魔王「なら、彼女の母は魔族なのか?」
勇者「いや、彼女は人間と魔族のクォーターだ。母親はハーフだったらしい」
魔王「……彼女も、魔族に翻弄された一人なのだな」
勇者「ああ。旅立つ前は魔族への怒りが強かったよ」
魔法使い「ちょっ……ハァハァ……来た!」
勇者「ん?何が?」
魔法使い「王様の軍隊!」
魔王「いや……。お前は私のために最大限やっているだろう。謝るな」
勇者「なら、魔王。俺をあの時殺さないでいてくれてありがとう」
魔王「あの魔法使いに言うのだな……」
勇者「その彼女が言うんだ。決めたのは魔王自身だって」
魔王「……その魔法使いはどこにいる?」
勇者「外だ。外の城下町は彼女の母が生まれた町らしい」
魔王「なら、彼女の母は魔族なのか?」
勇者「いや、彼女は人間と魔族のクォーターだ。母親はハーフだったらしい」
魔王「……彼女も、魔族に翻弄された一人なのだな」
勇者「ああ。旅立つ前は魔族への怒りが強かったよ」
魔法使い「ちょっ……ハァハァ……来た!」
勇者「ん?何が?」
魔法使い「王様の軍隊!」
67:2014/12/10(水) 05:53:07.36
勇者「……軍隊かと思ったけど……女の人や子供もいる……」
部隊長「貴様が魔王か」
魔王「ああ。私を殺しにでも来たのか」
部隊長「いや。違う」
勇者・魔法使い「え?」
部隊長「私は……魔族との和平を求めている」
魔王「……だからどうした」
部隊長「私達の王は……魔族を嫌っている。この付近ではほとんど見られなくなった魔族に、未だに憎しみを隠せないでいるんだ」
魔王「……それで、お前は私に何を言いたいんだ」
部隊長「私、いや私達は……国を抜けてきた。あの国で、理不尽な差別政策や陰謀に付き合うのはゴメンだ」
魔王「で、この廃墟で暮らしたいと?はっ、好きにするがいい。元々貴様らが占拠した土地だろう」
部隊長「いや。この国は魔族の国だ。和平条約にはそうある」
魔王「和平条約だと?あの条約は事実上無効になっている」
部隊長「いや、そうじゃない。条約は生きている。条約を違反しているのは我ら人類の方だったんだ」
部隊長「貴様が魔王か」
魔王「ああ。私を殺しにでも来たのか」
部隊長「いや。違う」
勇者・魔法使い「え?」
部隊長「私は……魔族との和平を求めている」
魔王「……だからどうした」
部隊長「私達の王は……魔族を嫌っている。この付近ではほとんど見られなくなった魔族に、未だに憎しみを隠せないでいるんだ」
魔王「……それで、お前は私に何を言いたいんだ」
部隊長「私、いや私達は……国を抜けてきた。あの国で、理不尽な差別政策や陰謀に付き合うのはゴメンだ」
魔王「で、この廃墟で暮らしたいと?はっ、好きにするがいい。元々貴様らが占拠した土地だろう」
部隊長「いや。この国は魔族の国だ。和平条約にはそうある」
魔王「和平条約だと?あの条約は事実上無効になっている」
部隊長「いや、そうじゃない。条約は生きている。条約を違反しているのは我ら人類の方だったんだ」
68:2014/12/10(水) 05:57:21.56
魔王「履行されていない条約など、生きているとは言えまい」
勇者「あ!」
魔王「なんだ」
勇者「履行されていない条約など、生きているとは言えまい……。履行されていないなら死んでるけど、履行されてるなら……」
魔法使い「……!!そうだ!生きてるよこの条約!」
魔王「何を言っている。貴様らまで」
部隊長「いや。生きてるよ。そして、この条約は履行されている。今この時でさえ」
勇者「あ!」
魔王「なんだ」
勇者「履行されていない条約など、生きているとは言えまい……。履行されていないなら死んでるけど、履行されてるなら……」
魔法使い「……!!そうだ!生きてるよこの条約!」
魔王「何を言っている。貴様らまで」
部隊長「いや。生きてるよ。そして、この条約は履行されている。今この時でさえ」
69:2014/12/10(水) 06:04:42.17 ID:FO+E7xmea.net
魔王の行いがよかったのですね
70:2014/12/10(水) 06:05:07.81
勇者「魔王。お前はこの条約を破ったことがないんだ」
魔王「……そんなはずがない。私は人間を何度も殺している」
勇者「いや、魔王。お前のことだ、全て正当な防衛、もしくは反撃のはずだ」
魔王「…………証明できまい」
魔法使い「確かに物的に証明はできない……。でも、あなたの民達は?生き残った僅かな民達は、今もその条約を守ってる」
魔王「……そうか」
部隊長「条約が有効になってから今まで、魔族が関わった事件全てで人間は死んでない。怪我をした人間もごくごく僅かだ」
勇者「魔王。条約っていうのは守られて初めて価値がある。そして、条約に基づいた取り決めも、条約を守ってさえいれば有効だ」
魔法使い「ということは……、ここ、魔族の国?」
部隊長「魔族が条約を守り、条約に取り決められたものが確かなら、ここは魔族の国だ」
魔王「……そんなはずがない。私は人間を何度も殺している」
勇者「いや、魔王。お前のことだ、全て正当な防衛、もしくは反撃のはずだ」
魔王「…………証明できまい」
魔法使い「確かに物的に証明はできない……。でも、あなたの民達は?生き残った僅かな民達は、今もその条約を守ってる」
魔王「……そうか」
部隊長「条約が有効になってから今まで、魔族が関わった事件全てで人間は死んでない。怪我をした人間もごくごく僅かだ」
勇者「魔王。条約っていうのは守られて初めて価値がある。そして、条約に基づいた取り決めも、条約を守ってさえいれば有効だ」
魔法使い「ということは……、ここ、魔族の国?」
部隊長「魔族が条約を守り、条約に取り決められたものが確かなら、ここは魔族の国だ」
71:2014/12/10(水) 06:14:16.37
魔王「……私は」
勇者「ああ。お前は守っていた。国を。民の意志を」
魔王「お前たち……私は……守れていたのか……」
勇者「泣いているのか、魔王」
魔王「涙は流さぬ。私は、守り続けねばならんのだ」
部隊長「……その国に、私達を住まわせてもらいたい」
魔王「……よかろう。気付かせてくれた礼だ。廃墟しかないが、好きに使え」
部隊長「感謝する。この国の発展のために尽力するよ」
魔王「…………」
勇者「ああ。お前は守っていた。国を。民の意志を」
魔王「お前たち……私は……守れていたのか……」
勇者「泣いているのか、魔王」
魔王「涙は流さぬ。私は、守り続けねばならんのだ」
部隊長「……その国に、私達を住まわせてもらいたい」
魔王「……よかろう。気付かせてくれた礼だ。廃墟しかないが、好きに使え」
部隊長「感謝する。この国の発展のために尽力するよ」
魔王「…………」
72:2014/12/10(水) 06:18:18.16
翌日
廃墟街にて
女A「きゃあああ!」
男A「どうした!」
女A「資材が落ちてきて……怪我はないけど動けないの!」
男A「くそっ!待ってろ!助けを呼んでくる!」
魔王城・魔王の部屋
魔王「…………」
廃墟街にて
女A「きゃあああ!」
男A「どうした!」
女A「資材が落ちてきて……怪我はないけど動けないの!」
男A「くそっ!待ってろ!助けを呼んでくる!」
魔王城・魔王の部屋
魔王「…………」
74:2014/12/10(水) 06:22:51.64
魔王「大丈夫か……」
女A「え……ひっ……」
魔王「この資材が邪魔なのだな……」フンッ
女A「……あ、ありがとうございます……」
魔王「…………民の生活か……」
女A「………………あ、あの……」
魔王「なんだ。礼は聞いた。できることをしたまでだ」
女A「あの、殺さない……んですか…………?」
魔王「私は……王だ。民を殺す王などどこにいる」
女A「…………」
魔王「ではな」
女A「え……ひっ……」
魔王「この資材が邪魔なのだな……」フンッ
女A「……あ、ありがとうございます……」
魔王「…………民の生活か……」
女A「………………あ、あの……」
魔王「なんだ。礼は聞いた。できることをしたまでだ」
女A「あの、殺さない……んですか…………?」
魔王「私は……王だ。民を殺す王などどこにいる」
女A「…………」
魔王「ではな」
75:2014/12/10(水) 06:26:26.82
魔王「町に民がいるというだけで、こうまで明るくなるものなのか……」
勇者「魔王、どうした」
魔王「いや。少しな。お前は何をしている」
勇者「町の人が少しでも住みやすくなるように色々手伝ってた。お前もどうだ?」
魔王「…………いや。客がきた。少し席を外すことにする」
勇者「ん?客……?」
勇者「魔王、どうした」
魔王「いや。少しな。お前は何をしている」
勇者「町の人が少しでも住みやすくなるように色々手伝ってた。お前もどうだ?」
魔王「…………いや。客がきた。少し席を外すことにする」
勇者「ん?客……?」
77:2014/12/10(水) 06:34:40.41
魔王城・ホール
魔王「久しいな」
臣下C「はっ。魔王様」
魔王「今までどこにいたのだ?」
臣下C「先月までは北の漁師町近くの森に……それからはこちらへ向けて移動しておりました」
魔王「よく生きていてくれた……」
臣下C「魔王様……私のような者にそんな……」
魔王「……貴様、私に嘘が押し通ると思ってるのか?」
臣下C「えっ……!」
魔王「貴様は私と二人になってから姿を表した。勇者と二人の時には現れることもなく」
臣下C「お、お話の邪魔をしてはならないと思いまして……」
魔王「人の王に遣わされて来たのだろう?要件を言え」
魔王「久しいな」
臣下C「はっ。魔王様」
魔王「今までどこにいたのだ?」
臣下C「先月までは北の漁師町近くの森に……それからはこちらへ向けて移動しておりました」
魔王「よく生きていてくれた……」
臣下C「魔王様……私のような者にそんな……」
魔王「……貴様、私に嘘が押し通ると思ってるのか?」
臣下C「えっ……!」
魔王「貴様は私と二人になってから姿を表した。勇者と二人の時には現れることもなく」
臣下C「お、お話の邪魔をしてはならないと思いまして……」
魔王「人の王に遣わされて来たのだろう?要件を言え」
78:2014/12/10(水) 06:41:21.61
臣下C「……では申し上げます。魔王様。私は今、屈辱ながら人の王の下で間者をさせていただいております」
魔王「貴様は隠密能力に長ける。間者には向いていような」
臣下C「人の王は私に言いました。我が軍隊が魔王城近くの廃墟へ亡命したと」
魔王「ああ。確かに来た」
臣下C「その軍隊の返却要請を伝えに参りました。魔王様。どうかお願い申し上げます」
魔王「……彼らに相談しよう」
魔王「貴様は隠密能力に長ける。間者には向いていような」
臣下C「人の王は私に言いました。我が軍隊が魔王城近くの廃墟へ亡命したと」
魔王「ああ。確かに来た」
臣下C「その軍隊の返却要請を伝えに参りました。魔王様。どうかお願い申し上げます」
魔王「……彼らに相談しよう」
79:2014/12/10(水) 06:51:45.46
魔王「……というわけだ。貴様らは王に従う気などありはしないのだろう?」
部隊長「ああ。みんなそのように言っている」
魔王「……わかった。私が何とかしよう」
部隊長「しかし、申し訳が立たない!匿ってもらったばかりか、そんなこと」
魔王「国を求める民がある。ならば守るのが王の勤めだ……」
部隊長「……しかし!」
勇者「……魔王。策はあるのか?」
魔王「ある。なければこのようなことは言わぬ」
部隊長「……あなたは、私の知る王とはずいぶん違うんだな」
部隊長「ああ。みんなそのように言っている」
魔王「……わかった。私が何とかしよう」
部隊長「しかし、申し訳が立たない!匿ってもらったばかりか、そんなこと」
魔王「国を求める民がある。ならば守るのが王の勤めだ……」
部隊長「……しかし!」
勇者「……魔王。策はあるのか?」
魔王「ある。なければこのようなことは言わぬ」
部隊長「……あなたは、私の知る王とはずいぶん違うんだな」
83:2014/12/10(水) 07:02:47.76
魔王城・会談の席
参謀「我が王は魔族と会うことを嫌う。よって今回は来ることができない」
魔王「ああ。わかっている」
参謀「ではこちらの要求を伝える。亡命した我が国民を返却せよ」
魔王「彼らにその意志があればな」
参謀「はっ、ないはずなかろう。魔族の国など……」
魔王「それは直接聞いてみることだ。この城のホールに彼らを呼んでいる」
参謀「……聞かなくてもわかることだ。返却せよ。さもなくばこの廃墟に攻撃を仕掛ける」
魔王「元々貴様らのものだろう。魔族の国など認めてもいないのだから」
参謀「ちっ……賢しいヤツが……」
魔王「亡命自体、彼らの意志によるものだ。貴様の王は、民に自らの国を決めさせる度量さえ持ち合わせていないのか」
参謀「我が王は魔族と会うことを嫌う。よって今回は来ることができない」
魔王「ああ。わかっている」
参謀「ではこちらの要求を伝える。亡命した我が国民を返却せよ」
魔王「彼らにその意志があればな」
参謀「はっ、ないはずなかろう。魔族の国など……」
魔王「それは直接聞いてみることだ。この城のホールに彼らを呼んでいる」
参謀「……聞かなくてもわかることだ。返却せよ。さもなくばこの廃墟に攻撃を仕掛ける」
魔王「元々貴様らのものだろう。魔族の国など認めてもいないのだから」
参謀「ちっ……賢しいヤツが……」
魔王「亡命自体、彼らの意志によるものだ。貴様の王は、民に自らの国を決めさせる度量さえ持ち合わせていないのか」
85:2014/12/10(水) 07:08:45.94
参謀「……我が国の労働力を奪っただけでは飽きたらず、我が王まで侮辱するか」
魔王「その発言は、いや、亡命したという事実を認めるということでいいのか?貴様」
参謀「……いや、口が滑った。亡命したのではない」
魔王「ならば返却もなにもなかろう。貴様の国の住民が、短期間かつ大量に旅行に出たというだけのことではないか」
参謀「…………貴様」
魔王「気付いたか。遅いぞ下郎。どちらにしても、私に話をするのは筋違いなのだ。わかったら早く民に話を聞いてこい」
参謀「くっ……」
魔王「その発言は、いや、亡命したという事実を認めるということでいいのか?貴様」
参謀「……いや、口が滑った。亡命したのではない」
魔王「ならば返却もなにもなかろう。貴様の国の住民が、短期間かつ大量に旅行に出たというだけのことではないか」
参謀「…………貴様」
魔王「気付いたか。遅いぞ下郎。どちらにしても、私に話をするのは筋違いなのだ。わかったら早く民に話を聞いてこい」
参謀「くっ……」
86:2014/12/10(水) 07:12:44.12
勇者「どういうことだ?」
魔王「奴は亡命という形を取ったと主張したな」
勇者「ああ」
魔王「亡命するには、国が最低でも2つなければならない。亡命先と、元いた国だ」
勇者「ああ!亡命と認めてしまったら、魔族の国の存在を公式に認めることになる」
魔王「ああ。彼らが亡命と認めたなら、私も王として彼らを守ったが、今回は彼ら自身の意志で自らを守ってもらう」
勇者「策って言うより屁理屈だな」
魔王「守ると言っておきながら情けないが、平和に解決をするならばこういう手法が一番だ……」
魔王「奴は亡命という形を取ったと主張したな」
勇者「ああ」
魔王「亡命するには、国が最低でも2つなければならない。亡命先と、元いた国だ」
勇者「ああ!亡命と認めてしまったら、魔族の国の存在を公式に認めることになる」
魔王「ああ。彼らが亡命と認めたなら、私も王として彼らを守ったが、今回は彼ら自身の意志で自らを守ってもらう」
勇者「策って言うより屁理屈だな」
魔王「守ると言っておきながら情けないが、平和に解決をするならばこういう手法が一番だ……」
87:2014/12/10(水) 07:17:18.19
部隊長「いえ。私達はここで生きていきます」
女A「私も、この国で生きていたい」
亡命者A「あの窮屈な暮らしはごめんだ」
亡命者B「俺もここで暮らす」
亡命者C「……亡命ってそういうことだから」
参謀「みなさん。この場所は国ではありません。しかし我が国の外なのです。受け入れ先のない亡命などお止めなさい」
部隊長「ならここは誰も支配していない土地なのですか?」
参謀「ええ。そうなります」
部隊長「なら、私達はここに国を興します」
女A「私も、この国で生きていたい」
亡命者A「あの窮屈な暮らしはごめんだ」
亡命者B「俺もここで暮らす」
亡命者C「……亡命ってそういうことだから」
参謀「みなさん。この場所は国ではありません。しかし我が国の外なのです。受け入れ先のない亡命などお止めなさい」
部隊長「ならここは誰も支配していない土地なのですか?」
参謀「ええ。そうなります」
部隊長「なら、私達はここに国を興します」
89:2014/12/10(水) 07:23:25.97
参謀「え?」
部隊長「だってこの廃墟はあなたの国のものではない。そしてここは国ではない」
女A「どの国もこの土地を所有してないってこと?」
部隊長「そうなる」
参謀「いやいやいや……国って……あなた方ねぇ、そんなこと簡単にできませんよ」
部隊長「亡命だって簡単にできることではありません」
参謀「我が国の1割の民が亡命……じゃない。国を興すなど……。無謀にも程がある。今なら間に合う。帰ってきなさい」
女A「王は誰にしましょうか?」
部隊長「……あの人だ。あの人以外に考えつかない」
女A「奇遇ですね。私もです」
参謀「…………」
部隊長「だってこの廃墟はあなたの国のものではない。そしてここは国ではない」
女A「どの国もこの土地を所有してないってこと?」
部隊長「そうなる」
参謀「いやいやいや……国って……あなた方ねぇ、そんなこと簡単にできませんよ」
部隊長「亡命だって簡単にできることではありません」
参謀「我が国の1割の民が亡命……じゃない。国を興すなど……。無謀にも程がある。今なら間に合う。帰ってきなさい」
女A「王は誰にしましょうか?」
部隊長「……あの人だ。あの人以外に考えつかない」
女A「奇遇ですね。私もです」
参謀「…………」
92:2014/12/10(水) 07:28:58.40
人の王「貴様っ!それでのこのこ帰ってきたのか!」
参謀「申し訳ございません、王」
人の王「無能めが。あの魔族め……」
参謀「王。申し上げたいことがございます」
人の王「なんだ、無能」
参謀「魔族の王を自称する奴を暗殺致しましょう」
人の王「できるならやっている」
参謀「いえ、今だからできる手段があるのです」
人の王「……ほう。聞こうではないか」
参謀「勇者です。彼はあの魔族とどうやら親しい模様。彼にやらせましょう」
人の王「……勇者は王に逆らえない。無能なりになかなかよい手段が出たではないか」
参謀「申し訳ございません、王」
人の王「無能めが。あの魔族め……」
参謀「王。申し上げたいことがございます」
人の王「なんだ、無能」
参謀「魔族の王を自称する奴を暗殺致しましょう」
人の王「できるならやっている」
参謀「いえ、今だからできる手段があるのです」
人の王「……ほう。聞こうではないか」
参謀「勇者です。彼はあの魔族とどうやら親しい模様。彼にやらせましょう」
人の王「……勇者は王に逆らえない。無能なりになかなかよい手段が出たではないか」
93:2014/12/10(水) 07:31:16.12 ID:FO+E7xmea.net
王には逆らえない
・・・ふむ
・・・ふむ
94:2014/12/10(水) 07:34:25.10 ID:+WLoBogo0.net
せやな
95:2014/12/10(水) 07:38:32.56
勇者「え……!」
人の王「勇者よ。やってくれるな」
勇者「……勇者である以上、国の総意を代表する王には従わなければならない……」
人の王「その通りだ。102人目の勇者よ、頼めるか?」
勇者「……よし」
人の王「やってくれるか。そうか……!」
勇者「勇者やめます」
人の王「勇者をやめると貴様のその力や英知は失われるのだぞ。よいのか?」
勇者「ええ。私の王はあなたではない。ならばあなたの勇者である必要もない」
人の王「……よいのだな?どうなるかもわかった上で、そう言っているのだな?」
勇者「ええ。ですが、少なくとも今死ぬ気はありません……」ダッ
人の王「逃げたぞ、衛兵!あの元勇者を追って捕らえろ!」
人の王「勇者よ。やってくれるな」
勇者「……勇者である以上、国の総意を代表する王には従わなければならない……」
人の王「その通りだ。102人目の勇者よ、頼めるか?」
勇者「……よし」
人の王「やってくれるか。そうか……!」
勇者「勇者やめます」
人の王「勇者をやめると貴様のその力や英知は失われるのだぞ。よいのか?」
勇者「ええ。私の王はあなたではない。ならばあなたの勇者である必要もない」
人の王「……よいのだな?どうなるかもわかった上で、そう言っているのだな?」
勇者「ええ。ですが、少なくとも今死ぬ気はありません……」ダッ
人の王「逃げたぞ、衛兵!あの元勇者を追って捕らえろ!」
96:2014/12/10(水) 07:44:08.67
勇者「危なかった……。勇者やめるなって言われたら終わりだった……!」
魔法使い「勇者!こっち!」
勇者「ありがとう!」
魔法使い「この先に馬を止めた。一緒に魔王城まで行くよ」
勇者「ああ……。今はあの国の先行きが気になる。勇者なんて、元々やってる場合じゃないんだ」
魔法使い「……そうね。勇者の力は無くなったの?」
勇者「試してみる」ホイミ
魔法使い「すごく弱い……もう無くなりかけてるね」
勇者「いや。もう無くなったよ。これは俺自身が持ってる力だ」
魔法使い「そう……。飛ばすよ。捕まってて……!」
魔法使い「勇者!こっち!」
勇者「ありがとう!」
魔法使い「この先に馬を止めた。一緒に魔王城まで行くよ」
勇者「ああ……。今はあの国の先行きが気になる。勇者なんて、元々やってる場合じゃないんだ」
魔法使い「……そうね。勇者の力は無くなったの?」
勇者「試してみる」ホイミ
魔法使い「すごく弱い……もう無くなりかけてるね」
勇者「いや。もう無くなったよ。これは俺自身が持ってる力だ」
魔法使い「そう……。飛ばすよ。捕まってて……!」
97:2014/12/10(水) 07:50:46.14
2日後・魔王城
魔法使い「魔王!」
魔王「……どうした」
勇者「ま、魔王……」
魔王「勇者、か?どうした。……いや。わかった」
勇者「やっぱり、さすがだな。お前……。すまん、今日は寝かせてくれ……」
魔王「ああ、寝ろ。起きたらまた話を聞かせてくれ……」
魔法使い「……説明、いる?」
魔王「勇者を辞めてきたのだろう」
魔法使い「ほんとにわかってる……」
魔王「人の王に何か言われたのだろう。あいつが起きたら話を聞こう」
魔法使い「うん……」
魔法使い「魔王!」
魔王「……どうした」
勇者「ま、魔王……」
魔王「勇者、か?どうした。……いや。わかった」
勇者「やっぱり、さすがだな。お前……。すまん、今日は寝かせてくれ……」
魔王「ああ、寝ろ。起きたらまた話を聞かせてくれ……」
魔法使い「……説明、いる?」
魔王「勇者を辞めてきたのだろう」
魔法使い「ほんとにわかってる……」
魔王「人の王に何か言われたのだろう。あいつが起きたら話を聞こう」
魔法使い「うん……」
98:2014/12/10(水) 07:55:26.11
数時間後・魔王城会議室
部隊長「魔王。提案がある」
魔王「私を呼んだのはその提案のためか」
魔族A「……俺たちはなぜ呼ばれたんだ。人間」
魔王「やめろ。少なくともこの人間は私達を悪く思ってはいないことを知っているだろう」
魔族A「はっ。幸運だな。人間」
魔王「して、私たちを呼んだ理由は」
部隊長「私達は、あなたの国の国民になりたい」
部隊長「魔王。提案がある」
魔王「私を呼んだのはその提案のためか」
魔族A「……俺たちはなぜ呼ばれたんだ。人間」
魔王「やめろ。少なくともこの人間は私達を悪く思ってはいないことを知っているだろう」
魔族A「はっ。幸運だな。人間」
魔王「して、私たちを呼んだ理由は」
部隊長「私達は、あなたの国の国民になりたい」
99:2014/12/10(水) 08:01:34.43
魔王「……私を王とし、この国を公式に認めさせると言うことだな」
部隊長「そうなる。我々を受け入れてくれたあなたは、紛れもなく王の風格を持ち、王の対応を見せてくれた」
魔族A「……魔王様」
部隊長「あなたは古い、それも事実上無効と言われていた条約を守り続ける程に誠実で、知り合いですらない私達の前に立ち、我々を守った」
魔法使い「…………」
部隊長「その私達が、守られた私達が、あなたを王としない道理がない」
魔王「……と、なるとだ。私は王だが……人と魔の王になるわけだな……」
部隊長「そうなる。いえ、そうなります」
魔族A「魔王様が人を治めるのか?」
部隊長「そうなる。そして同時に、魔族をも治める」
魔族A「俺は……魔族の民は……正直わからない。魔王様の決定に従う」
魔王「………………」
部隊長「そうなる。我々を受け入れてくれたあなたは、紛れもなく王の風格を持ち、王の対応を見せてくれた」
魔族A「……魔王様」
部隊長「あなたは古い、それも事実上無効と言われていた条約を守り続ける程に誠実で、知り合いですらない私達の前に立ち、我々を守った」
魔法使い「…………」
部隊長「その私達が、守られた私達が、あなたを王としない道理がない」
魔王「……と、なるとだ。私は王だが……人と魔の王になるわけだな……」
部隊長「そうなる。いえ、そうなります」
魔族A「魔王様が人を治めるのか?」
部隊長「そうなる。そして同時に、魔族をも治める」
魔族A「俺は……魔族の民は……正直わからない。魔王様の決定に従う」
魔王「………………」
101:2014/12/10(水) 08:06:28.63
魔王「今この場では決めかねる。時間をくれ」
部隊長「畏まりました。期日は1週間でよろしいでしょうか」
魔王「感謝する」
魔法使い「……賛成、じゃないんだね」
魔王「……ああ。人類であれ我が民になるという者をはねのける気はないが……しかし魔族の民と人間の民は大きく違う……」
魔法使い「知識、足りない?」
魔王「足りないな。私は人を知らない。何をすれば喜び、悲しむのかさえ」
魔法使い「あなたと変わらないよ」
部隊長「畏まりました。期日は1週間でよろしいでしょうか」
魔王「感謝する」
魔法使い「……賛成、じゃないんだね」
魔王「……ああ。人類であれ我が民になるという者をはねのける気はないが……しかし魔族の民と人間の民は大きく違う……」
魔法使い「知識、足りない?」
魔王「足りないな。私は人を知らない。何をすれば喜び、悲しむのかさえ」
魔法使い「あなたと変わらないよ」
102:2014/12/10(水) 08:08:43.20
魔法使い「手に入れば喜んで、失ったら悲しむ。あなたと何も変わらない」
魔王「……変わらぬ、か」
魔法使い「とにかく、1週間考えればいいよ。廃墟を住居にする手伝いでもしながら、ね?」
魔王「そうだな……」
魔王「……変わらぬ、か」
魔法使い「とにかく、1週間考えればいいよ。廃墟を住居にする手伝いでもしながら、ね?」
魔王「そうだな……」
103:2014/12/10(水) 08:11:34.41
2日後・魔王城
勇者「はっ!」
魔法使い「うわっ!」
勇者「あ、ああごめん!魔王は!」
魔法使い「外にいるけど……手伝いしに……」
勇者「ありがとう!」ダッ
魔法使い「あ……行っちゃった。話くらい聞かせてよーもー!」プンスカ
勇者(魔王……人の軍隊が来る前に話せればいいんだけど……)
勇者「はっ!」
魔法使い「うわっ!」
勇者「あ、ああごめん!魔王は!」
魔法使い「外にいるけど……手伝いしに……」
勇者「ありがとう!」ダッ
魔法使い「あ……行っちゃった。話くらい聞かせてよーもー!」プンスカ
勇者(魔王……人の軍隊が来る前に話せればいいんだけど……)
106:2014/12/10(水) 08:15:33.67
魔王「これはどこだ」
子供A「あ、ええとね。こっち!」
魔王「ふむ」
子供B「違うよー!こっちだよー!」
魔王「……ふむ」
子供A「だってベッドだよ、形がこうだから、こっちの方がいい!」
子供B「かどっこ!」
魔王「窓際ではダメなのか」
子供A・B「そこ!」
魔王「……すまない。今日は用ができた。また来る」
子供たち「ばいばーい」
子供A「あ、ええとね。こっち!」
魔王「ふむ」
子供B「違うよー!こっちだよー!」
魔王「……ふむ」
子供A「だってベッドだよ、形がこうだから、こっちの方がいい!」
子供B「かどっこ!」
魔王「窓際ではダメなのか」
子供A・B「そこ!」
魔王「……すまない。今日は用ができた。また来る」
子供たち「ばいばーい」
108:2014/12/10(水) 08:30:58.34
魔王(刺客だ。数百メートル先にいるが……軍勢?数が多い……)
魔王「間に合うか……」
魔王(間違いなく人の軍勢……勇者が目当てか……民か……私か……)
数分後
魔族の国・廃墟街近郊
魔王「貴様らは人の国の手の者か」
?A「ゲェヘヘヘヘヘ」
魔王「……この気配の強さ……勇者か」
勇者A「よくわかったな……魔王……しねぇ!」シュッ!
魔王「……遅すぎる」
勇者B「隙だらけだぜぇ!」
魔王「……勇者の指名権は王にあるとはいえ……この数は……」ヒラリ
勇者A「この300人の勇者……全員に立ち向かえるはずがないよなァ?」
魔王「……ここで一人でも殺してしまえば……亡命してきた者達の立場を悪くする」
魔王(殺さずにこの人数を無力化……難しいな……)
魔王「間に合うか……」
魔王(間違いなく人の軍勢……勇者が目当てか……民か……私か……)
数分後
魔族の国・廃墟街近郊
魔王「貴様らは人の国の手の者か」
?A「ゲェヘヘヘヘヘ」
魔王「……この気配の強さ……勇者か」
勇者A「よくわかったな……魔王……しねぇ!」シュッ!
魔王「……遅すぎる」
勇者B「隙だらけだぜぇ!」
魔王「……勇者の指名権は王にあるとはいえ……この数は……」ヒラリ
勇者A「この300人の勇者……全員に立ち向かえるはずがないよなァ?」
魔王「……ここで一人でも殺してしまえば……亡命してきた者達の立場を悪くする」
魔王(殺さずにこの人数を無力化……難しいな……)
110:2014/12/10(水) 08:36:27.61
勇者「遅かったか!」
魔王「……ああ」
勇者「……襲われたのはわかる。何をされた」
魔王「何もなかった」
勇者「何もなかったわけあるか!その怪我……」ホイミ
魔王「何も、しなかった」
勇者「……やられるがまま、受け入れたのか」
魔王「彼らも、国を拠り所としたのだ……。ならば、これは王の責務だ」
勇者「くっ……バカだよ、お前。やり返すこともできたろう……」
魔王「やりかえして、魔族に罪を被せられるのも、亡命してきた者達に罪を被せられるのもだめだ」
魔王「……ああ」
勇者「……襲われたのはわかる。何をされた」
魔王「何もなかった」
勇者「何もなかったわけあるか!その怪我……」ホイミ
魔王「何も、しなかった」
勇者「……やられるがまま、受け入れたのか」
魔王「彼らも、国を拠り所としたのだ……。ならば、これは王の責務だ」
勇者「くっ……バカだよ、お前。やり返すこともできたろう……」
魔王「やりかえして、魔族に罪を被せられるのも、亡命してきた者達に罪を被せられるのもだめだ」
113:2014/12/10(水) 08:43:08.20
魔王「放っておけば治る。私はそういう魔族なのだ」
勇者「魔王。お前は彼らの王じゃない」
魔王「だが、私は王としての振る舞いを求められている」
勇者「ならば王になるんだ。王になれば、少なくとも国として体裁は整う。人の国がどう思おうと、魔族の国は成り立つんだ」
魔王「……そうだな。私は、王になろう」
勇者「ああ……」
魔王「人魔の国……その王に」
勇者「魔王。お前は彼らの王じゃない」
魔王「だが、私は王としての振る舞いを求められている」
勇者「ならば王になるんだ。王になれば、少なくとも国として体裁は整う。人の国がどう思おうと、魔族の国は成り立つんだ」
魔王「……そうだな。私は、王になろう」
勇者「ああ……」
魔王「人魔の国……その王に」
114:2014/12/10(水) 08:48:24.63
部隊長「本当ですか!」
魔王「ああ。国を作ろう。私達の、人魔の国だ」
魔族A「……魔王様。わかりました。我々も、国の発展のために頑張りましょう」
魔王「そうか……感謝する。さすがは、我が民だ」
魔族A「ありがたき幸せ……!」
部隊長「ではこのことを周知します。よろしいでしょうか、王」
魔王「ああ。任せる」
勇者「……よし、建国までだ……それまでここに……」
魔王「ああ。国を作ろう。私達の、人魔の国だ」
魔族A「……魔王様。わかりました。我々も、国の発展のために頑張りましょう」
魔王「そうか……感謝する。さすがは、我が民だ」
魔族A「ありがたき幸せ……!」
部隊長「ではこのことを周知します。よろしいでしょうか、王」
魔王「ああ。任せる」
勇者「……よし、建国までだ……それまでここに……」
116:2014/12/10(水) 08:58:09.57
ひと月後
開国の日
魔王城前広場
部隊長「内政に関して、王より伝達がございます」
魔王「私は……王ではあるが、未熟だ。皆のために体を張ることしかできぬ」
魔王城前広場・その一角にて
勇者「……魔王。お前にもう迷いはないんだな」
魔法使い「勇者、大丈夫?」
勇者「ああ。元々こういう体なんだ……勇者の力で生き長らえてたんだし、よく保った方だよ……」
魔法使い「勇者……まだ死んじゃダメだよ。魔王は、まだ……」
開国の日
魔王城前広場
部隊長「内政に関して、王より伝達がございます」
魔王「私は……王ではあるが、未熟だ。皆のために体を張ることしかできぬ」
魔王城前広場・その一角にて
勇者「……魔王。お前にもう迷いはないんだな」
魔法使い「勇者、大丈夫?」
勇者「ああ。元々こういう体なんだ……勇者の力で生き長らえてたんだし、よく保った方だよ……」
魔法使い「勇者……まだ死んじゃダメだよ。魔王は、まだ……」
118:2014/12/10(水) 09:14:37.68
建国より二日
勇者「はぁ……はぁ……」
魔王「……勇者」
魔法使い「助からないの?」
勇者「……魔王。俺は言ったな。お前のために殺されると」
魔王「あの夜のことだな……忘れもしない……」
勇者「あれは……済まない。果たしてやれない」
魔王「ああ。だがな、勇者。お前の勇気は、忘れない」
勇者「お前は敵だ。勇者にとって……魔王は永遠に敵なんだ……。だから、敵が死ぬだけだ」
魔王「お前は……勇者をやめてなお崇高だ」
勇者「はっ……死ぬ人間に何を言ってる」
魔王「お前に会えたことを感謝する。お前に会えたおかげで、私は王となれた。亡き民達の意志を形にすることができた」
勇者「はぁ……はぁ……」
魔王「……勇者」
魔法使い「助からないの?」
勇者「……魔王。俺は言ったな。お前のために殺されると」
魔王「あの夜のことだな……忘れもしない……」
勇者「あれは……済まない。果たしてやれない」
魔王「ああ。だがな、勇者。お前の勇気は、忘れない」
勇者「お前は敵だ。勇者にとって……魔王は永遠に敵なんだ……。だから、敵が死ぬだけだ」
魔王「お前は……勇者をやめてなお崇高だ」
勇者「はっ……死ぬ人間に何を言ってる」
魔王「お前に会えたことを感謝する。お前に会えたおかげで、私は王となれた。亡き民達の意志を形にすることができた」
122:2014/12/10(水) 09:22:02.71
魔法使い「助からないの?ほんとに……」
勇者「俺の体は元々病弱だった。勇者の力を得て生き長らえてたところを、急に変化させられて、体が保たなくなってる」
魔王「人の王にもなった私に、勇者を指名できればよいのだが……」
勇者「残念ながら、この国はまだ国として認められていない。勇者を指名できるほどに力がないんだ……」
魔法使い「……勇者」
勇者「もう、ダメっぽい。すまんな……」
魔王「……勇者よ。最後に一つ聞かせてくれ」
勇者「何だよ……もう、目がかすんでるんだ。はやくしてくれ……」
魔王「なぜ、私を助けた」
勇者「決まってんだろ……勇者は、誰かを……助ける………………」
勇者「俺の体は元々病弱だった。勇者の力を得て生き長らえてたところを、急に変化させられて、体が保たなくなってる」
魔王「人の王にもなった私に、勇者を指名できればよいのだが……」
勇者「残念ながら、この国はまだ国として認められていない。勇者を指名できるほどに力がないんだ……」
魔法使い「……勇者」
勇者「もう、ダメっぽい。すまんな……」
魔王「……勇者よ。最後に一つ聞かせてくれ」
勇者「何だよ……もう、目がかすんでるんだ。はやくしてくれ……」
魔王「なぜ、私を助けた」
勇者「決まってんだろ……勇者は、誰かを……助ける………………」
123:2014/12/10(水) 09:28:15.82
勇者の死からひと月
魔王「敵の墓にしては随分小さな物になったな」
魔法使い「そうね。こんなのでいいのかな」
魔王「……もっと大きくしてもらうべきだったか。その方が声を上げて馬鹿にできるというものだ」
魔法使い「そんなことする気がないくせに」
魔王「そうだな。言ってみただけだ」
魔法使い「驚いた。ほんとに冗談だったんだ」
魔王「冗談……そうだな。そうなるか。ククク……」
魔法使い「うわ。その笑いすごく魔王っぽい」
魔王「元は魔王だからな。さあ、将軍が呼んでる。行くぞ」
魔法使い「はぁーい。……ばいばい。勇者」
魔王「さらばだ。宿敵」
魔王「敵の墓にしては随分小さな物になったな」
魔法使い「そうね。こんなのでいいのかな」
魔王「……もっと大きくしてもらうべきだったか。その方が声を上げて馬鹿にできるというものだ」
魔法使い「そんなことする気がないくせに」
魔王「そうだな。言ってみただけだ」
魔法使い「驚いた。ほんとに冗談だったんだ」
魔王「冗談……そうだな。そうなるか。ククク……」
魔法使い「うわ。その笑いすごく魔王っぽい」
魔王「元は魔王だからな。さあ、将軍が呼んでる。行くぞ」
魔法使い「はぁーい。……ばいばい。勇者」
魔王「さらばだ。宿敵」
126:2014/12/10(水) 09:39:28.09
人の国・王城
人の王「……で?あの廃墟の群はどうやって潰すんだと聞いてる。無能達よ」
参謀「……」
軍団長「……」
大臣「……」
親衛隊長「……」
人の王「はぁ……。これではまるで朕が無能のようではないか。……ならば戦争だ」
軍団長「戦争ですと!」
参謀「恐れながらかの国は建国にあたり、人間の法を犯すことなく尊守しております。正当性がない攻撃はこちらの首を絞めることに」
人の王「また集団亡命が起こる。亡命した者には何らかの罰を与えねばな」
親衛隊長「よろしいのではありませんか」
人の王「おお、そう言ってくれたか!さすがは親衛隊長よ」
臣下C「……魔王様に伝えねば……!戦争が起こると……」
人の王「……で?あの廃墟の群はどうやって潰すんだと聞いてる。無能達よ」
参謀「……」
軍団長「……」
大臣「……」
親衛隊長「……」
人の王「はぁ……。これではまるで朕が無能のようではないか。……ならば戦争だ」
軍団長「戦争ですと!」
参謀「恐れながらかの国は建国にあたり、人間の法を犯すことなく尊守しております。正当性がない攻撃はこちらの首を絞めることに」
人の王「また集団亡命が起こる。亡命した者には何らかの罰を与えねばな」
親衛隊長「よろしいのではありませんか」
人の王「おお、そう言ってくれたか!さすがは親衛隊長よ」
臣下C「……魔王様に伝えねば……!戦争が起こると……」
130:2014/12/10(水) 09:47:11.38
人魔の国・魔王城会議室
臣下C「……とのことでございます」
魔王「ふむ……そうか。戦争、か」
部隊長「将軍として見逃しはできませんな」
魔王「未然に防ぐ」
魔法使い「それが一番ね。ベスト。でもベストが必ずしも成功するわけではないわ。ベターも実行する覚悟はしてね」
魔王「ああ。助言、感謝する」
魔法使い「……うん。わかってるなら、いい」
バタン!
衛兵「た、大変です!人の国から大量の亡命民が……!」
臣下C「……とのことでございます」
魔王「ふむ……そうか。戦争、か」
部隊長「将軍として見逃しはできませんな」
魔王「未然に防ぐ」
魔法使い「それが一番ね。ベスト。でもベストが必ずしも成功するわけではないわ。ベターも実行する覚悟はしてね」
魔王「ああ。助言、感謝する」
魔法使い「……うん。わかってるなら、いい」
バタン!
衛兵「た、大変です!人の国から大量の亡命民が……!」
135:2014/12/10(水) 09:58:12.88
魔王「私は亡命民の誘導に向かう。将軍、戦争を未然に防ぐ策、任せてもよいか」
部隊長「はっ!おまかせくださいっ!」
魔王「では行くぞ。魔法使い……」
魔法使い「はいっ!」
臣下C「……魔王様は……王として立派になられたな……」
部隊長「……ああ。彼は出会った時から既に王としての風格があった。近頃はそれに磨きが掛かったようだ」
臣下C「人の国は……ひどいものです」
部隊長「まだあの政治は続いているのか?」
臣下C「ああ。税は増える一方だ。お前たちの亡命が決め手になって、先日もまた増えたところだ」
部隊長「そうか……。あの王は変わらんのだな」
臣下C「……ええ」
部隊長「はっ!おまかせくださいっ!」
魔王「では行くぞ。魔法使い……」
魔法使い「はいっ!」
臣下C「……魔王様は……王として立派になられたな……」
部隊長「……ああ。彼は出会った時から既に王としての風格があった。近頃はそれに磨きが掛かったようだ」
臣下C「人の国は……ひどいものです」
部隊長「まだあの政治は続いているのか?」
臣下C「ああ。税は増える一方だ。お前たちの亡命が決め手になって、先日もまた増えたところだ」
部隊長「そうか……。あの王は変わらんのだな」
臣下C「……ええ」
137:2014/12/10(水) 10:09:21.56
亡命民D「………………」
亡命民E「…………………ツクツクツクツクツクツクツクツ」
亡命民F「あ…………ァア……」
魔王「薬物か」
魔法使い「みたいね。魔法である程度解毒するわ」エスナガ
魔王「おい、大丈夫か」
亡命民D「あ、……水……水ゥ……」
魔法使い「はい」
亡命民D「ああ、ありがとう……。くそっ、何だったんだ……」
魔王「詳しく話を聞かせてもらえるか?」
亡命民D「まっ、魔族……!」
魔法使い「心配しないで、こちらは魔族の王であり人の王よ。あなたが望めば味方になるわ」
亡命民D「……少なくともあんたは味方っぽいな。なら聞いてくれ」
魔法使い「ええ」
亡命民D「俺らはみんなスラム街の住人だった……。ある日、普段じゃあり得ないことだが、騎士団に呼ばれたんだ……」
亡命民E「…………………ツクツクツクツクツクツクツクツ」
亡命民F「あ…………ァア……」
魔王「薬物か」
魔法使い「みたいね。魔法である程度解毒するわ」エスナガ
魔王「おい、大丈夫か」
亡命民D「あ、……水……水ゥ……」
魔法使い「はい」
亡命民D「ああ、ありがとう……。くそっ、何だったんだ……」
魔王「詳しく話を聞かせてもらえるか?」
亡命民D「まっ、魔族……!」
魔法使い「心配しないで、こちらは魔族の王であり人の王よ。あなたが望めば味方になるわ」
亡命民D「……少なくともあんたは味方っぽいな。なら聞いてくれ」
魔法使い「ええ」
亡命民D「俺らはみんなスラム街の住人だった……。ある日、普段じゃあり得ないことだが、騎士団に呼ばれたんだ……」
139:2014/12/10(水) 10:18:32.12
亡命民D「そこで……金をやるから試験薬の実験体になれと言われた……」
亡命民E「ああ、俺もだ……」
亡命民D「それで……薬を飲んでからは記憶がない……なぜかここにいたんだ」
魔法使い「騎士団……公権力……。なぜ……どういう目的がある……?」
魔王「戦争と関係ないとは……言えまい」
魔法使い「ええ……。それか、混乱を招きたかった?」
魔王「可能性はある。薬物を町にばらまきたかったのかもしれん……もう阻止はしたが」
魔法使い「え?なにかしたの?」
魔王「お前が解毒できるのなら、流行ったとしても問題なかろう。頼りにしている」
魔法使い「……あ、ありがと……」
亡命民E「ああ、俺もだ……」
亡命民D「それで……薬を飲んでからは記憶がない……なぜかここにいたんだ」
魔法使い「騎士団……公権力……。なぜ……どういう目的がある……?」
魔王「戦争と関係ないとは……言えまい」
魔法使い「ええ……。それか、混乱を招きたかった?」
魔王「可能性はある。薬物を町にばらまきたかったのかもしれん……もう阻止はしたが」
魔法使い「え?なにかしたの?」
魔王「お前が解毒できるのなら、流行ったとしても問題なかろう。頼りにしている」
魔法使い「……あ、ありがと……」
141:2014/12/10(水) 10:28:02.01
魔王「それに、いざとなれば刺客の探知など造作もない」
魔法使い「そうね。……私は町へ行ってくる。薬物についてきちんと調べなきゃ」
魔王「任せたぞ。あと……」
魔法使い「なに?」
魔王「気をつけるのだぞ。町でさえ危険かも知れぬ」
魔法使い「……驚いた」
魔王「何にだ。私は将軍と話をせねばならん。行っても良いか」
魔法使い「ちゃんと人の心配もできるんだ。そっちも、頑張って」
魔王「ああ」シュンッ
魔法使い「そうね。……私は町へ行ってくる。薬物についてきちんと調べなきゃ」
魔王「任せたぞ。あと……」
魔法使い「なに?」
魔王「気をつけるのだぞ。町でさえ危険かも知れぬ」
魔法使い「……驚いた」
魔王「何にだ。私は将軍と話をせねばならん。行っても良いか」
魔法使い「ちゃんと人の心配もできるんだ。そっちも、頑張って」
魔王「ああ」シュンッ
144:2014/12/10(水) 10:36:59.62
魔王「どうだ。将軍よ」
部隊長「いやー。難しいかと。向こうはこちらを国と認めてません。従って、これは戦争ですらないのです」
魔王「ふむ……。そうか……。ならば国にしてしまおうではないか」
部隊長「王。どうするのですか?」
魔王「亡命してきた者をすべて人の国に帰し、正規の手順にてこちらに引っ越しさせる」
部隊長「どういうことですか?」
魔王「引っ越しという言い方が良くなかったな。国籍を変えさせるのだ。正規の手順でな」
部隊長「リスキーですね。あの国に帰ったら最後、もう外に出られるとは思いません」
魔王「そうだな。1度試してみる必要があるか……」
部隊長「いやー。難しいかと。向こうはこちらを国と認めてません。従って、これは戦争ですらないのです」
魔王「ふむ……。そうか……。ならば国にしてしまおうではないか」
部隊長「王。どうするのですか?」
魔王「亡命してきた者をすべて人の国に帰し、正規の手順にてこちらに引っ越しさせる」
部隊長「どういうことですか?」
魔王「引っ越しという言い方が良くなかったな。国籍を変えさせるのだ。正規の手順でな」
部隊長「リスキーですね。あの国に帰ったら最後、もう外に出られるとは思いません」
魔王「そうだな。1度試してみる必要があるか……」
146:2014/12/10(水) 10:43:00.24
翌日
魔王「……というわけだ。魔法使いよ。協力してくれるか?」
魔法使い「私に国を捨てろって?」
魔王「この国が気に入らないのであれば構わない。だが、そうでないというのなら、どうか」
魔法使い「…………」ムー
魔王「どうした。やはり、だめなのか」
魔法使い「それって、プロポーズ?」
魔王「……は?」
魔法使い「だからー、国を捨てろ!俺と来いよ!ってことでしょ?」
魔王「確かにその通りではあるが……」
魔法使い「うん、いいよ。乗った!」
魔王「よいのか?私などで」
魔法使い「実はね、割と一目惚れしてたから」
魔王「……というわけだ。魔法使いよ。協力してくれるか?」
魔法使い「私に国を捨てろって?」
魔王「この国が気に入らないのであれば構わない。だが、そうでないというのなら、どうか」
魔法使い「…………」ムー
魔王「どうした。やはり、だめなのか」
魔法使い「それって、プロポーズ?」
魔王「……は?」
魔法使い「だからー、国を捨てろ!俺と来いよ!ってことでしょ?」
魔王「確かにその通りではあるが……」
魔法使い「うん、いいよ。乗った!」
魔王「よいのか?私などで」
魔法使い「実はね、割と一目惚れしてたから」
151:2014/12/10(水) 10:58:36.70
魔法使い「じゃあ基本的にはこういうことね」
・人魔の国で国籍取得
・人の国の国籍を破棄、変更
・人の国からの退去手続き
魔王「そういうことだ。一つ目に関しては終わっているな」
魔法使い「問題は二つ目ね。あの国は国籍破棄にもお金が必要。その資金をどうするのか」
魔王「国庫から出そう。しばらくは内政が手薄になるが……戦争よりはマシだろう」
魔法使い「ちょっとまった。国籍を変更することがどうして戦争の抑止に繋がるのか、教えてくれる?」
魔王「……認識とは、公と実質に分かれる。公に人魔の国を認めていない人の国にから、大量に人魔の国なる国に移住した人が現れたとしよう」
魔法使い「うんうん」
魔王「そもそもこの土地は、人の国が公に“どの国も保有していない土地”だと言っている。しかるに、この国を領土とすることに問題はない」
魔法使い「そこに大量の移住者が現れた」
魔王「つまりその大量の移住者達は、人魔の国を認めていることになる。この国に移住した人は人の国の総人口の内約1割」
魔法使い「あーなるほど。それだけ多くの人が無いはずのものを認めちゃえば、無いものも輪郭は浮かんでくる」
魔王「そうだ。そこに和平の条文だ。あの文章には領土について明記されてある」
魔法使い「しかもその条文は人の国の宮殿から出てくるわけだ。だから初めに私に行かせるんだね」
・人魔の国で国籍取得
・人の国の国籍を破棄、変更
・人の国からの退去手続き
魔王「そういうことだ。一つ目に関しては終わっているな」
魔法使い「問題は二つ目ね。あの国は国籍破棄にもお金が必要。その資金をどうするのか」
魔王「国庫から出そう。しばらくは内政が手薄になるが……戦争よりはマシだろう」
魔法使い「ちょっとまった。国籍を変更することがどうして戦争の抑止に繋がるのか、教えてくれる?」
魔王「……認識とは、公と実質に分かれる。公に人魔の国を認めていない人の国にから、大量に人魔の国なる国に移住した人が現れたとしよう」
魔法使い「うんうん」
魔王「そもそもこの土地は、人の国が公に“どの国も保有していない土地”だと言っている。しかるに、この国を領土とすることに問題はない」
魔法使い「そこに大量の移住者が現れた」
魔王「つまりその大量の移住者達は、人魔の国を認めていることになる。この国に移住した人は人の国の総人口の内約1割」
魔法使い「あーなるほど。それだけ多くの人が無いはずのものを認めちゃえば、無いものも輪郭は浮かんでくる」
魔王「そうだ。そこに和平の条文だ。あの文章には領土について明記されてある」
魔法使い「しかもその条文は人の国の宮殿から出てくるわけだ。だから初めに私に行かせるんだね」
154:2014/12/10(水) 11:10:31.29
魔王「輪郭が浮かんだところに、中身だけが存在する条文……。それもパズルのピースのように綺麗にはまるもの」
魔法使い「人の国の人達はその存在を意識せざるを得ない……。躍起になって否定する公的認識」
魔王「実質的認識、つまり国民の総意だな。これは少しずつ傾いてくる。この少しずつ、というところを、今回は金を使って加速させる」
魔法使い「金は起爆剤ね。私が導火線で、民達が火種……」
魔王「そうだ。短期間に大量の移住者が現れる。情報を統制しても、必ず気付く違和感。その違和感が強いほど、この国の存在は公に浮き彫りとなってしまう」
魔法使い「勇者の元付き人の私が国籍を破棄。それだけでもそこそこに話題になるはず。行き先を聞かれたら必ず答える。もちろん条文の開示も忘れない」
魔王「次いで国民が大量に移住。条文の内容が本物だという確信を与えるには十分すぎる」
魔法使い「実質的認識が“人魔の国は存在する”になるわけね。王がいくら否定しても国民は消えたし、国籍は破棄された、と」
魔王「そうだ。その先駆者として、頼めるか?」
魔法使い「もちろん。旦那様のためならね」
魔王「……で、では頼む。無事に帰って来るんだ」
魔法使い「人の国の人達はその存在を意識せざるを得ない……。躍起になって否定する公的認識」
魔王「実質的認識、つまり国民の総意だな。これは少しずつ傾いてくる。この少しずつ、というところを、今回は金を使って加速させる」
魔法使い「金は起爆剤ね。私が導火線で、民達が火種……」
魔王「そうだ。短期間に大量の移住者が現れる。情報を統制しても、必ず気付く違和感。その違和感が強いほど、この国の存在は公に浮き彫りとなってしまう」
魔法使い「勇者の元付き人の私が国籍を破棄。それだけでもそこそこに話題になるはず。行き先を聞かれたら必ず答える。もちろん条文の開示も忘れない」
魔王「次いで国民が大量に移住。条文の内容が本物だという確信を与えるには十分すぎる」
魔法使い「実質的認識が“人魔の国は存在する”になるわけね。王がいくら否定しても国民は消えたし、国籍は破棄された、と」
魔王「そうだ。その先駆者として、頼めるか?」
魔法使い「もちろん。旦那様のためならね」
魔王「……で、では頼む。無事に帰って来るんだ」
155:2014/12/10(水) 11:17:27.49
魔法使い「……籍に関する取り扱いはここでいいのかしら」
役員「ええ。どうされました?魔法使い様」
魔法使い「この国の籍を破棄したいんだけど……」
役員「……かしこまりました。本国での籍取得は二度と行えませんがかまいませんか?」
魔法使い「ご忠告ありがとう。でも、いい国を見つけてね」
役員「まぁ。どこなんですか?」
魔法使い「この国から西の方にある、おっきなお城が目印の国よ。みんな楽しくやってるよ」
役員「なるほど……最近すこし聞いたことがあります。魔族と人間が暮らしているという……」
魔法使い「そうよ。……これでいい?」
役員「承ります。……はい。結構です。では国籍破棄のため、こちらの金額をお支払いくださいませ」
魔法使い「はいっ」ドン
役員「…………確かに。お預かりいたしました。すぐに退去なされますか?」
役員「ええ。どうされました?魔法使い様」
魔法使い「この国の籍を破棄したいんだけど……」
役員「……かしこまりました。本国での籍取得は二度と行えませんがかまいませんか?」
魔法使い「ご忠告ありがとう。でも、いい国を見つけてね」
役員「まぁ。どこなんですか?」
魔法使い「この国から西の方にある、おっきなお城が目印の国よ。みんな楽しくやってるよ」
役員「なるほど……最近すこし聞いたことがあります。魔族と人間が暮らしているという……」
魔法使い「そうよ。……これでいい?」
役員「承ります。……はい。結構です。では国籍破棄のため、こちらの金額をお支払いくださいませ」
魔法使い「はいっ」ドン
役員「…………確かに。お預かりいたしました。すぐに退去なされますか?」
156:2014/12/10(水) 11:21:39.82
魔法使い「ええ。退去手続きの項目も埋めてあるはずだけど……」
役員「あ、ホントですね。失礼いたしました。……あの……」
魔法使い「ん?」
役員「魔族は怖くないんですか?」
魔法使い「んー……国民を守るために300人の勇者相手に体を張ってくれる王を怖ろしいと言うのなら、確かに怖いかな」
役員「……魔族が王なのですね」
魔法使い「少なくとも国民の死には泣けるし、国民の喜びを目標とはしてるよ」
役員「……立派な王ですね。羨ましいです」
魔法使い「ありがと。よかったら来るといいよ。街道沿いにずっと進んだらその内見えるから」
役員「ありがとうございます……」
役員「あ、ホントですね。失礼いたしました。……あの……」
魔法使い「ん?」
役員「魔族は怖くないんですか?」
魔法使い「んー……国民を守るために300人の勇者相手に体を張ってくれる王を怖ろしいと言うのなら、確かに怖いかな」
役員「……魔族が王なのですね」
魔法使い「少なくとも国民の死には泣けるし、国民の喜びを目標とはしてるよ」
役員「……立派な王ですね。羨ましいです」
魔法使い「ありがと。よかったら来るといいよ。街道沿いにずっと進んだらその内見えるから」
役員「ありがとうございます……」
159:2014/12/10(水) 11:27:24.70
3日後
魔法使い「ただいまー!」
魔王「無事だったか……!」
魔法使い「うん。さあ、これで私はあなたのハニーだね」
魔王「言葉が古すぎる……。それで、どうだった?」
魔法使い「それが、あっさりいけちゃった」
魔王「妨害があると思っていたのだが……。意外だな」
魔法使い「……役員の人がね、不思議だったよ」
魔王「というと?」
魔法使い「王様のことをね、なんか……侮蔑するような感じだった」
魔王「……向こうの国では……どのような政治が行われているのか、聞いてみる必要がありそうだ」
魔法使い「ハニー、だめかー」
魔法使い「ただいまー!」
魔王「無事だったか……!」
魔法使い「うん。さあ、これで私はあなたのハニーだね」
魔王「言葉が古すぎる……。それで、どうだった?」
魔法使い「それが、あっさりいけちゃった」
魔王「妨害があると思っていたのだが……。意外だな」
魔法使い「……役員の人がね、不思議だったよ」
魔王「というと?」
魔法使い「王様のことをね、なんか……侮蔑するような感じだった」
魔王「……向こうの国では……どのような政治が行われているのか、聞いてみる必要がありそうだ」
魔法使い「ハニー、だめかー」
161:2014/12/10(水) 11:39:45.74
部隊長「確かに、向こうの暮らしは安定していました。ですが……充実はしていません」
魔王「詳しく話してくれ」
部隊長「まず、勤労についてですが……。共産国家なのです」
魔王「それ自体は悪くはないだろう。国政を安定させるためにもっとも短絡的な手段だ」
部隊長「ええ。それはそうですが、私には我慢できなかった。どれほど働こうとももらえる賃金は変わらない。更に課税に次ぐ課税……趣味なども持てない日々でした」
魔王「税の使い道は明らかになっていたのか?」
部隊長「ええ。ある程度は。ですが年に3割ほど、その他という項目がありました。つまり税金の3割が、その使い道を明らかにされてないのです」
魔王「3割か……」
部隊長「まず税金の内容もよくわかりませんでした。食料にかかる食料税、それに消費税がかかり、最後には第一種産業税という税金もかかり、商品価格の4割が課税されるのが普通です」
魔王「この国では消費税を導入していないが、代わりに所得税がかなり割高だ。だが非難が少ないということは」
部隊長「ええ。所得税はこの国より安かったですが、誤差のレベルです。基本的には毎日食べるのに使うお金しか残りません」
魔王「……よく内乱や革命が起きなかったものだ」
部隊長「騎士団です」
魔王「詳しく話してくれ」
部隊長「まず、勤労についてですが……。共産国家なのです」
魔王「それ自体は悪くはないだろう。国政を安定させるためにもっとも短絡的な手段だ」
部隊長「ええ。それはそうですが、私には我慢できなかった。どれほど働こうとももらえる賃金は変わらない。更に課税に次ぐ課税……趣味なども持てない日々でした」
魔王「税の使い道は明らかになっていたのか?」
部隊長「ええ。ある程度は。ですが年に3割ほど、その他という項目がありました。つまり税金の3割が、その使い道を明らかにされてないのです」
魔王「3割か……」
部隊長「まず税金の内容もよくわかりませんでした。食料にかかる食料税、それに消費税がかかり、最後には第一種産業税という税金もかかり、商品価格の4割が課税されるのが普通です」
魔王「この国では消費税を導入していないが、代わりに所得税がかなり割高だ。だが非難が少ないということは」
部隊長「ええ。所得税はこの国より安かったですが、誤差のレベルです。基本的には毎日食べるのに使うお金しか残りません」
魔王「……よく内乱や革命が起きなかったものだ」
部隊長「騎士団です」
164:2014/12/10(水) 11:51:51.70
魔王「待て。騎士団の話の前に聞きたいことがある」
部隊長「はい。なんでしょうか」
魔王「我が国も共産制に近いところはある。基本的には各自で管理をし、商売を行わせているが、現状、公的に資源を管理しなければならない状態にある」
部隊長「ええ。確かにそうです」
魔王「ならば将軍。お前の言ったことに整合性が取れない。お前は共産制であることを非難したがそれならばこの国の今のあり方をも否定しなければ、理屈の辻褄が合わない」
部隊長「確かにそうですが、程度の違いが問題なのです。我が国は基本的には国民の自主性を重んじる方向で経済が機能しています」
魔王「ああ。話し合って決めたことだ」
部隊長「はい。そしてこの国の場合、公的な力が関与するのは、国政や食料が危機に陥ったときのみです」
魔王「うむ」
部隊長「人の国では、在庫の量、出荷量、入荷量、生産量から販売量までが調整されていました。誰がどの商売をしても、結果が同じなのです」
魔王「ふむ。子供が店番をしようとも変わらぬというわけか」
部隊長「ええ。その徹底統制された管理社会を嫌った者のみを募って、こうして国を立てたわけです」
魔王「なるほど。話の腰を折って済まない。騎士団の話をしてくれるか?」
部隊長「はい。なんでしょうか」
魔王「我が国も共産制に近いところはある。基本的には各自で管理をし、商売を行わせているが、現状、公的に資源を管理しなければならない状態にある」
部隊長「ええ。確かにそうです」
魔王「ならば将軍。お前の言ったことに整合性が取れない。お前は共産制であることを非難したがそれならばこの国の今のあり方をも否定しなければ、理屈の辻褄が合わない」
部隊長「確かにそうですが、程度の違いが問題なのです。我が国は基本的には国民の自主性を重んじる方向で経済が機能しています」
魔王「ああ。話し合って決めたことだ」
部隊長「はい。そしてこの国の場合、公的な力が関与するのは、国政や食料が危機に陥ったときのみです」
魔王「うむ」
部隊長「人の国では、在庫の量、出荷量、入荷量、生産量から販売量までが調整されていました。誰がどの商売をしても、結果が同じなのです」
魔王「ふむ。子供が店番をしようとも変わらぬというわけか」
部隊長「ええ。その徹底統制された管理社会を嫌った者のみを募って、こうして国を立てたわけです」
魔王「なるほど。話の腰を折って済まない。騎士団の話をしてくれるか?」
165:2014/12/10(水) 12:00:13.95
部隊長「騎士団……革命や内乱が起ころうとしたこともありました。しかし、その都度彼らが鎮圧するのです」
魔王「公権力であることは間違いなさそうだな」
部隊長「はい。その通りです。騎士団は国の軍であるところの軍団とは別の組織で、基本的には治安維持の為に動きます」
魔王「警察機構のようなものか」
部隊長「はい。ですが、警察には無いものを持っています。というのも、彼らは疑わしきを罰する権限があるのです」
魔王「現行犯でなくともか?」
部隊長「現行犯の場合もありますが、大概は疑わしいという理由で逮捕されます。逮捕された人間は強制就労施設に入れられ、一定の期間労働を強いられます」
魔王「逮捕と強制就労は同義であると」
部隊長「はい。それは厳しいものであることが有名で、死人も出るほどのものといいます」
魔王「反乱や革命が起きないのには、騎士団の理不尽とも言える権力が大きく関わっているのだな」
魔王「公権力であることは間違いなさそうだな」
部隊長「はい。その通りです。騎士団は国の軍であるところの軍団とは別の組織で、基本的には治安維持の為に動きます」
魔王「警察機構のようなものか」
部隊長「はい。ですが、警察には無いものを持っています。というのも、彼らは疑わしきを罰する権限があるのです」
魔王「現行犯でなくともか?」
部隊長「現行犯の場合もありますが、大概は疑わしいという理由で逮捕されます。逮捕された人間は強制就労施設に入れられ、一定の期間労働を強いられます」
魔王「逮捕と強制就労は同義であると」
部隊長「はい。それは厳しいものであることが有名で、死人も出るほどのものといいます」
魔王「反乱や革命が起きないのには、騎士団の理不尽とも言える権力が大きく関わっているのだな」
168:2014/12/10(水) 12:10:42.93
魔王「ちょうどいいから他の公的な組織について教えてくれるか」
部隊長「はい。では軍団から。……軍団はその名の通り、軍です。外敵への備えとして、あるいは内部の軍事的火力が必要となった際に動きます」
魔王「我が国と変わりないな」
部隊長「次に参謀団です。王に代わって政治を行う他、裁判や弁護も司ります。立法と司法が同じ組織で管理され、国にとって都合のよい法律しかできないのも、我々が人の国を抜けた原因です」
魔王「最高決定権を持つのは、当然王なのだな?」
部隊長「王はこの組織の2番目の地位に所属しています。これは自信が法律を提案できるようにするためかと思われますが、そのせいで人の国は法が安定しない傾向にあります」
魔王「つまり経済も安定しないということか?」
部隊長「経済は安定していたように思います。税金をクッションにして無理に安定させたのでしょう」
魔王「なるほど。金の使い方はやはり人の方が上手いな……。感心するばかりだ」
部隊長「次に親衛隊です。親衛隊は王の勅命のみで動き、あらゆる事態に対応します。騎士団が対応しきれない場合、犯罪の鎮圧に当たる場合もありますね」
魔王「聞いてみた印象だが……」
部隊長「はい。では軍団から。……軍団はその名の通り、軍です。外敵への備えとして、あるいは内部の軍事的火力が必要となった際に動きます」
魔王「我が国と変わりないな」
部隊長「次に参謀団です。王に代わって政治を行う他、裁判や弁護も司ります。立法と司法が同じ組織で管理され、国にとって都合のよい法律しかできないのも、我々が人の国を抜けた原因です」
魔王「最高決定権を持つのは、当然王なのだな?」
部隊長「王はこの組織の2番目の地位に所属しています。これは自信が法律を提案できるようにするためかと思われますが、そのせいで人の国は法が安定しない傾向にあります」
魔王「つまり経済も安定しないということか?」
部隊長「経済は安定していたように思います。税金をクッションにして無理に安定させたのでしょう」
魔王「なるほど。金の使い方はやはり人の方が上手いな……。感心するばかりだ」
部隊長「次に親衛隊です。親衛隊は王の勅命のみで動き、あらゆる事態に対応します。騎士団が対応しきれない場合、犯罪の鎮圧に当たる場合もありますね」
魔王「聞いてみた印象だが……」
171:2014/12/10(水) 12:19:14.77
魔王「まず、参謀団だ」
部隊長「やはりそこですか」
魔王「法律を取り決める組織が、その法律を用いて人を裁く……これはあってはならない」
部隊長「……ええ。国として、避けねばならない姿です」
魔王「次に騎士団だが……。やはり力を持ちすぎだ。真っ先に改革が必要だろう」
部隊長「しかし……なぜ急にこのようなことを聞いたのです?」
魔王「先の実験作戦でな……」
部隊長「ああ、国籍破棄の」
魔王「そうだ。国民が王を侮蔑するような感じを受けたという。それで、どんな王が政治をしているのか興味を持った」
部隊長「どうでしたか?」
魔王「私は魔王だ。人間の政治についてはよくわからぬが……。こうはならないようにしようと、改めて気をつける思いだ」
部隊長「参考になって何よりです」
部隊長「やはりそこですか」
魔王「法律を取り決める組織が、その法律を用いて人を裁く……これはあってはならない」
部隊長「……ええ。国として、避けねばならない姿です」
魔王「次に騎士団だが……。やはり力を持ちすぎだ。真っ先に改革が必要だろう」
部隊長「しかし……なぜ急にこのようなことを聞いたのです?」
魔王「先の実験作戦でな……」
部隊長「ああ、国籍破棄の」
魔王「そうだ。国民が王を侮蔑するような感じを受けたという。それで、どんな王が政治をしているのか興味を持った」
部隊長「どうでしたか?」
魔王「私は魔王だ。人間の政治についてはよくわからぬが……。こうはならないようにしようと、改めて気をつける思いだ」
部隊長「参考になって何よりです」
173:2014/12/10(水) 12:29:47.04
数日後・人魔の国
魔王「それでは皆。幸運を祈る。無事で……」
国籍破棄作戦の開始だ。
この作戦の目的は2つある。
まずはこの国の存在を、人の国の国民が総意として認めること。つまり多数決で過半数が認めればいい。
もう一つはこれの延長線上にある。
ぼんやりと見えた人魔の国の土地について書かれた和平の条文を周知し、その効果を訴えること。
国の存在と、条文の効果。
二つが浮き彫りになれば、軍を動かす自国と、人魔の国なる外国に戦争という意識が芽生える。
しかも宣戦を布告するのは人の国だ。戦争のメリットが見えないまま、国民に隠して進軍はできない。
ただでさえ危うい感情が渦巻いている国内なのだ。反戦感情が爆発して暴動が起きかねない。
迂闊に進軍することはできなくなるはずだ。
魔王「それでは皆。幸運を祈る。無事で……」
国籍破棄作戦の開始だ。
この作戦の目的は2つある。
まずはこの国の存在を、人の国の国民が総意として認めること。つまり多数決で過半数が認めればいい。
もう一つはこれの延長線上にある。
ぼんやりと見えた人魔の国の土地について書かれた和平の条文を周知し、その効果を訴えること。
国の存在と、条文の効果。
二つが浮き彫りになれば、軍を動かす自国と、人魔の国なる外国に戦争という意識が芽生える。
しかも宣戦を布告するのは人の国だ。戦争のメリットが見えないまま、国民に隠して進軍はできない。
ただでさえ危うい感情が渦巻いている国内なのだ。反戦感情が爆発して暴動が起きかねない。
迂闊に進軍することはできなくなるはずだ。
174:2014/12/10(水) 12:37:27.65
1週間後
魔王「…………民たちよ。帰ってくるならそろそろか……」
部隊長「ただいま戻りました……。王」
魔王「将軍。戻ったか!」
魔法使い「おかえりー」
部隊長「しかし、奴ら途中から作戦に気がつきました。帰ってくる予定の国民の内約300名が捕らわれています」
魔王「……救出したいが、厳しいか…………」
部隊長「ご安心を。私の部下を2部隊残しております。彼らなりにやるでしょう」
魔王「ふむ。いや、やはり迎えにいこう」
部隊長「ま、まさか王直々に?」
魔王「これでも魔王だ。すぐ戻るさ。内政は任せたぞ」
魔王「…………民たちよ。帰ってくるならそろそろか……」
部隊長「ただいま戻りました……。王」
魔王「将軍。戻ったか!」
魔法使い「おかえりー」
部隊長「しかし、奴ら途中から作戦に気がつきました。帰ってくる予定の国民の内約300名が捕らわれています」
魔王「……救出したいが、厳しいか…………」
部隊長「ご安心を。私の部下を2部隊残しております。彼らなりにやるでしょう」
魔王「ふむ。いや、やはり迎えにいこう」
部隊長「ま、まさか王直々に?」
魔王「これでも魔王だ。すぐ戻るさ。内政は任せたぞ」
175:2014/12/10(水) 12:44:02.11
魔法使い「ねぇ、大丈夫?」
魔王「心配するな。無事帰るさ」
魔法使い「信じてるよ。ちゃんと私をお嫁にしてね」
魔王「ああ。帰ったらその旨を発表しよう」
魔法使い「……うん。絶対帰ってきてね」
魔王「すぐに戻るさ。行ってくる」
1週間後。
救出された民は全て帰ってきた。
でも、魔王は帰ってこない。どうしたのかと尋ねてみると、魔王は拘束されたらしい。
自分たちを逃がすために……。そう言うと彼らは無念の涙を流した。
私は、まだ信じない。あの人は魔王だ。人間の拘束くらい解いて帰ってくる。
しかしまた2日。彼は帰らない。
将軍が救出部隊を編成していた。私はその中に入り、彼の救出に向かう……。
魔王「心配するな。無事帰るさ」
魔法使い「信じてるよ。ちゃんと私をお嫁にしてね」
魔王「ああ。帰ったらその旨を発表しよう」
魔法使い「……うん。絶対帰ってきてね」
魔王「すぐに戻るさ。行ってくる」
1週間後。
救出された民は全て帰ってきた。
でも、魔王は帰ってこない。どうしたのかと尋ねてみると、魔王は拘束されたらしい。
自分たちを逃がすために……。そう言うと彼らは無念の涙を流した。
私は、まだ信じない。あの人は魔王だ。人間の拘束くらい解いて帰ってくる。
しかしまた2日。彼は帰らない。
将軍が救出部隊を編成していた。私はその中に入り、彼の救出に向かう……。
176:2014/12/10(水) 12:48:00.87
人の国・牢獄
部隊長「王!」
魔王「ァ……ァ……ァ……ァァァ……」
魔法使い「ど、どうしたの……」
部隊長「薬物だ……。しかもかなりの量……。何が目的で……」
魔法使い「……前に薬物中毒の亡命者がきたことあったよね。これ、そのときの症状に似てる」
部隊長「ならば魔法使い殿。これを解毒してください」
魔法使い「お願い……治って……」エスナ
部隊長「王!」
魔王「ァ……ァ……ァ……ァァァ……」
魔法使い「ど、どうしたの……」
部隊長「薬物だ……。しかもかなりの量……。何が目的で……」
魔法使い「……前に薬物中毒の亡命者がきたことあったよね。これ、そのときの症状に似てる」
部隊長「ならば魔法使い殿。これを解毒してください」
魔法使い「お願い……治って……」エスナ
177:2014/12/10(水) 12:53:40.12
魔王の症状は収まらなかった。
私達は魔王を連れ帰り、大魔法で魔王を治すことにした。
魔族の医者が言うには、生き延びているのは魔王自信の特性ゆえらしい。
自分を治し続ける呪い。しかし、治すよりも薬物が魔王を侵す方が速い。
魔王は少しずつその状態を悪化させていった。
大魔法の準備が整った、その朝……。
魔王が消えてしまった。
私達は魔王を連れ帰り、大魔法で魔王を治すことにした。
魔族の医者が言うには、生き延びているのは魔王自信の特性ゆえらしい。
自分を治し続ける呪い。しかし、治すよりも薬物が魔王を侵す方が速い。
魔王は少しずつその状態を悪化させていった。
大魔法の準備が整った、その朝……。
魔王が消えてしまった。
178:2014/12/10(水) 12:55:27.20
なんだと
179:2014/12/10(水) 13:01:56.26
人魔の国・近郊の草原
魔法使い「こんなところにいたんだ」
魔王「…………ァ」
魔法使い「敵、来るの?」
魔王「…………ケテケテケテケテ」
魔法使い「そっか……。なら、守らないとね……。私達、王と王妃なんだから……」
人の国側の完璧な作戦だった。
魔王を普通の人では殺せない。勇者が必要だ。
その勇者でさえ、魔王は倒せなかった。
勇者の与える傷は、もはや魔王に何の効果もない。
なら、魔王が守ろうとしているものを壊せばいい。
人の国は、魔王が薬物中毒に苦しむ期間さえ想定して、彼の国を、民を、財産を壊そうとしている。
しかし彼らには誤算があった。
魔王は、それでも身を賭して立ち上がった。
魔法使い「こんなところにいたんだ」
魔王「…………ァ」
魔法使い「敵、来るの?」
魔王「…………ケテケテケテケテ」
魔法使い「そっか……。なら、守らないとね……。私達、王と王妃なんだから……」
人の国側の完璧な作戦だった。
魔王を普通の人では殺せない。勇者が必要だ。
その勇者でさえ、魔王は倒せなかった。
勇者の与える傷は、もはや魔王に何の効果もない。
なら、魔王が守ろうとしているものを壊せばいい。
人の国は、魔王が薬物中毒に苦しむ期間さえ想定して、彼の国を、民を、財産を壊そうとしている。
しかし彼らには誤算があった。
魔王は、それでも身を賭して立ち上がった。
183:2014/12/10(水) 13:16:27.94
人の国の軍は、すぐ目の前。
身がすくむ。足が震える。歯ががちがち鳴って、寒気がする。
何人いるんだろう。1000は軽いよね。
私一人で相手にできるのなんて精々3人がいいところ。
魔王は……平常時なら1000人は余裕だろうけど、今はこの状態だ。1人も相手にできないだろう。
でも、やれるだけ、やるんだ。
味方を呼びに行く時間はない。ここでくい止める。
よし、よし、よし、よし……!やるんだ……やらなきゃ。
やらなきゃ、あの夜に至るまでまた繰り返す。
魔王はまた勇者を迎え撃つだけの日々になる……。
魔法使い「………………」
魔王「ギェ……」
震えは、なぜかぴったりと止んだ。
彼が一歩だけ前に出た。それだけのこと。
事態はまるで変わらないのに、勇気が沸いた。
魔法使い「……やるんだ」
人の国の軍は、100メートルの距離まで近づいていた。
身がすくむ。足が震える。歯ががちがち鳴って、寒気がする。
何人いるんだろう。1000は軽いよね。
私一人で相手にできるのなんて精々3人がいいところ。
魔王は……平常時なら1000人は余裕だろうけど、今はこの状態だ。1人も相手にできないだろう。
でも、やれるだけ、やるんだ。
味方を呼びに行く時間はない。ここでくい止める。
よし、よし、よし、よし……!やるんだ……やらなきゃ。
やらなきゃ、あの夜に至るまでまた繰り返す。
魔王はまた勇者を迎え撃つだけの日々になる……。
魔法使い「………………」
魔王「ギェ……」
震えは、なぜかぴったりと止んだ。
彼が一歩だけ前に出た。それだけのこと。
事態はまるで変わらないのに、勇気が沸いた。
魔法使い「……やるんだ」
人の国の軍は、100メートルの距離まで近づいていた。
184:2014/12/10(水) 13:27:26.25
鬨の声がする。
地鳴りのような、前から後ろから聞こえてくるのかわからない声。
負けない。立ち向かうんだ。
魔法使い「うわぁぁぁぁぁ!!!」
駆け出す。二人一緒に。
本当なら彼の方がずっとずっと速いのに、今では私より遅い。
騎馬隊が見える。魔法の詠唱。間に合う。
今使えるもので一番強いそれは、確かに敵の最前列を薙払った。だが、まだ足りない。
二列目。これも薙払う。三列目。肩に剣がかすった。四列目。馬にはね飛ばされる。
あとは踏まれて、死ぬだけだ。
くそう……。頑張ったんだけどな……。
魔王「キェェェ!!!」
彼がいた。私は一人じゃなかったんだ。
魔王は腕の一振りで敵の騎馬を20は薙ぎ倒した。
私も立ち上がってすかさず魔法を唱える。
しかし。やはり多勢に無勢。
合計100人も倒した頃、魔王が動けなくなってしまった。
私ももう魔力がない。もう。諦めるしか。
地鳴りのような、前から後ろから聞こえてくるのかわからない声。
負けない。立ち向かうんだ。
魔法使い「うわぁぁぁぁぁ!!!」
駆け出す。二人一緒に。
本当なら彼の方がずっとずっと速いのに、今では私より遅い。
騎馬隊が見える。魔法の詠唱。間に合う。
今使えるもので一番強いそれは、確かに敵の最前列を薙払った。だが、まだ足りない。
二列目。これも薙払う。三列目。肩に剣がかすった。四列目。馬にはね飛ばされる。
あとは踏まれて、死ぬだけだ。
くそう……。頑張ったんだけどな……。
魔王「キェェェ!!!」
彼がいた。私は一人じゃなかったんだ。
魔王は腕の一振りで敵の騎馬を20は薙ぎ倒した。
私も立ち上がってすかさず魔法を唱える。
しかし。やはり多勢に無勢。
合計100人も倒した頃、魔王が動けなくなってしまった。
私ももう魔力がない。もう。諦めるしか。
185:2014/12/10(水) 13:36:41.85
魔法使い「ごめんね。あの時私も一緒に行けばよかったんだ……」
魔王「ツクツクツクツク」
彼の目からは涙が出ていた。
辛くて、苦しそうで。
今ならその理由がわかる。
それでも彼の望むことはしてあげられないから、私がされて一番暖かくなることをしてあげた。
魔法使い「あなたは死なないと思うけど、私はほぼ人間だから。多分死んじゃうね」
1秒後の死。確かに予感しながらも、その死はまやかしであって欲しいと思う。
何故なら。その死が止まったからだ。
そのまま進めば私を踏みにじる蹄鉄は、今になって何故か停止していた。
彼を抱きしめたまま、私は何が起こったか理解できなかった。
魔王「ツクツクツクツク」
彼の目からは涙が出ていた。
辛くて、苦しそうで。
今ならその理由がわかる。
それでも彼の望むことはしてあげられないから、私がされて一番暖かくなることをしてあげた。
魔法使い「あなたは死なないと思うけど、私はほぼ人間だから。多分死んじゃうね」
1秒後の死。確かに予感しながらも、その死はまやかしであって欲しいと思う。
何故なら。その死が止まったからだ。
そのまま進めば私を踏みにじる蹄鉄は、今になって何故か停止していた。
彼を抱きしめたまま、私は何が起こったか理解できなかった。
187:2014/12/10(水) 13:42:24.96
声が聞こえる。
鬨の声。馬の足音。地鳴り。
今までと違うのは、方向。
後ろから……。確かに来る何か。
挟み撃ち。嫌な言葉が頭をよぎる。
だが、それを否定するように目の前の騎馬隊が去っていく。
ああ。夢なんだと思った。これは夢で、私が見た都合のいい未来。
本当はあの蹄鉄に踏まれて、私は……。
部隊長「ご無事ですか!!」
鬨の声。馬の足音。地鳴り。
今までと違うのは、方向。
後ろから……。確かに来る何か。
挟み撃ち。嫌な言葉が頭をよぎる。
だが、それを否定するように目の前の騎馬隊が去っていく。
ああ。夢なんだと思った。これは夢で、私が見た都合のいい未来。
本当はあの蹄鉄に踏まれて、私は……。
部隊長「ご無事ですか!!」
188:2014/12/10(水) 13:49:34.21
数時間後
人魔の国・魔王城
魔法使い「はっ……」
目覚めると、城内にあてがわれた私の部屋だった。
肩が痛い。そういえば、剣が掠ったんだっけ。なんだかジーンってする感じ。
魔王はどこだろう。あの草原で何があったのかも知りたい。
でもとりあえずは魔王だ。
魔王は……大魔法の陣にいるのかな。
人魔の国・魔王城
魔法使い「はっ……」
目覚めると、城内にあてがわれた私の部屋だった。
肩が痛い。そういえば、剣が掠ったんだっけ。なんだかジーンってする感じ。
魔王はどこだろう。あの草原で何があったのかも知りたい。
でもとりあえずは魔王だ。
魔王は……大魔法の陣にいるのかな。
190:2014/12/10(水) 13:56:40.71
魔王城・大魔法の陣
魔法使い「いた。寝てる……のかな」
魔王「………………………………」
魔法使い「起きて欲しいな。でも大魔法は魔法使いが揃うまで待たないとね」
魔王「…………………………………………」
魔法使い「王子様のキスで起きたりしないかな」
魔王「…………………………………………」
魔法使い「あ、私女だ……おばか……」
魔王「………………………………」
魔法使い「んー……しちゃおう」ンー
魔導師A「あ、魔法使い様?」
魔法使い「ひゃい!」
魔導師A「起きていて大丈夫なのですか?」
魔法使い「だだだ大丈夫!今すぐ大魔法始めたいくらい!」
魔導師A「それはよかった!では始めましょうか」
魔法使い「いた。寝てる……のかな」
魔王「………………………………」
魔法使い「起きて欲しいな。でも大魔法は魔法使いが揃うまで待たないとね」
魔王「…………………………………………」
魔法使い「王子様のキスで起きたりしないかな」
魔王「…………………………………………」
魔法使い「あ、私女だ……おばか……」
魔王「………………………………」
魔法使い「んー……しちゃおう」ンー
魔導師A「あ、魔法使い様?」
魔法使い「ひゃい!」
魔導師A「起きていて大丈夫なのですか?」
魔法使い「だだだ大丈夫!今すぐ大魔法始めたいくらい!」
魔導師A「それはよかった!では始めましょうか」
192:2014/12/10(水) 14:03:48.91
魔導師A「では始めます」
魔法使い「うん、やるよ」
大魔法は実に順調に進み、そして終えた。
魔王「ん……ん?」
魔法使い「起きた?」
魔王「ああ……」
魔法使い「何があったか、覚えてる?」
魔王「世話を……かけたな。いや。助けてくれてありがとう」
魔法使い「心配、したよ」
魔王「すまない」
魔法使い「暖かくしてほしい」
魔王「わかった」
魔法使い「うん、やるよ」
大魔法は実に順調に進み、そして終えた。
魔王「ん……ん?」
魔法使い「起きた?」
魔王「ああ……」
魔法使い「何があったか、覚えてる?」
魔王「世話を……かけたな。いや。助けてくれてありがとう」
魔法使い「心配、したよ」
魔王「すまない」
魔法使い「暖かくしてほしい」
魔王「わかった」
193:2014/12/10(水) 14:08:48.27
魔王「明日、お前との婚約を発表する」
魔法使い「うん」
魔王「国民の皆は、祝福してくれるだろうか」
魔法使い「作戦もうまくいって、人の国はもう侵攻する機会を持ってない。大丈夫だよ」
魔王「ああ。ようやく平和が見えてきた」
魔法使い「復讐は、もういいの?」
魔王「復讐をしたい心も、まだあるんだ」
魔法使い「そう……」
魔王「だが、その心を今は封印する。まだ不要だからな」
魔法使い「そうだね。私もそれが良いと思う」
魔法使い「うん」
魔王「国民の皆は、祝福してくれるだろうか」
魔法使い「作戦もうまくいって、人の国はもう侵攻する機会を持ってない。大丈夫だよ」
魔王「ああ。ようやく平和が見えてきた」
魔法使い「復讐は、もういいの?」
魔王「復讐をしたい心も、まだあるんだ」
魔法使い「そう……」
魔王「だが、その心を今は封印する。まだ不要だからな」
魔法使い「そうだね。私もそれが良いと思う」
195:2014/12/10(水) 14:16:12.16
翌日
魔王城前の広場
魔王「先の作戦は成功し、間者より我が国を認知する動きがあるとの報を得た!国民よ!我々はついに国として認められる!」
国民達「うぉおおおおおお!」
魔王「本来はここで終わるつもりだが、今日はもう一つ発表がある」
国民達「ざわざわ」
魔王「私の婚約者を紹介する」
魔王城前の広場
魔王「先の作戦は成功し、間者より我が国を認知する動きがあるとの報を得た!国民よ!我々はついに国として認められる!」
国民達「うぉおおおおおお!」
魔王「本来はここで終わるつもりだが、今日はもう一つ発表がある」
国民達「ざわざわ」
魔王「私の婚約者を紹介する」
196:2014/12/10(水) 14:21:36.44
その夜
魔王城・魔王の部屋
魔法使い「あー恥ずかしかった。あんな感じなんて聞いてないよ」
魔王「だが、喜んでもらえた。臣たちにも、世継ぎの心配をされることはないと言われた」
魔法使い「これで、この国を巡る争乱は収まった?」
魔王「人の国に怪しい動きはあるが、当面は安泰だろう……」
魔法使い「なら、ね。婚約発表したんだし、ね?」
魔王「まだ早かろう。私とてやらねばならぬことが……んっ」ンゥゥゥ
魔法使い「理屈は後。ね?」
魔王城・魔王の部屋
魔法使い「あー恥ずかしかった。あんな感じなんて聞いてないよ」
魔王「だが、喜んでもらえた。臣たちにも、世継ぎの心配をされることはないと言われた」
魔法使い「これで、この国を巡る争乱は収まった?」
魔王「人の国に怪しい動きはあるが、当面は安泰だろう……」
魔法使い「なら、ね。婚約発表したんだし、ね?」
魔王「まだ早かろう。私とてやらねばならぬことが……んっ」ンゥゥゥ
魔法使い「理屈は後。ね?」
200:2014/12/10(水) 14:30:36.65
10年後
魔王「では、海の国との和議も続けてということになりますが」
山の国の王「そうなりますな。何、あなたほどの名君であれば、偏屈な人の国以外では受け入れられましょう」
魔王「それにしても驚きました。人と魔族が共生している国が他にもあるとは」
山の国の王「我が国の場合は、環境のおかげで棲み分けが出来たのでしょうな……。人は公益や牧畜を、魔族は狩や釣りを……。役割がはっきりしていたのです」
魔王「我が国ではそういったものはまだありませんから、是非参考にさせていただきたいと思います」
山の国の王「カッカッカッ!そう肩肘を張るものではないでしょう。あなたはあなたの政治を、統治をすればよいのです」
魔王「ありがとうございます。では、次は海の国の和議の時にお会いいたしましょう」
山の国の王「ええ。是非また会いましょう。次は我が国の山の幸を披露しましょう」
魔王「では、海の国との和議も続けてということになりますが」
山の国の王「そうなりますな。何、あなたほどの名君であれば、偏屈な人の国以外では受け入れられましょう」
魔王「それにしても驚きました。人と魔族が共生している国が他にもあるとは」
山の国の王「我が国の場合は、環境のおかげで棲み分けが出来たのでしょうな……。人は公益や牧畜を、魔族は狩や釣りを……。役割がはっきりしていたのです」
魔王「我が国ではそういったものはまだありませんから、是非参考にさせていただきたいと思います」
山の国の王「カッカッカッ!そう肩肘を張るものではないでしょう。あなたはあなたの政治を、統治をすればよいのです」
魔王「ありがとうございます。では、次は海の国の和議の時にお会いいたしましょう」
山の国の王「ええ。是非また会いましょう。次は我が国の山の幸を披露しましょう」
202:2014/12/10(水) 14:35:05.33 ID:B3ScsdBa0.net
ミリオンアーサー的なネタスレかと思ったら読んでてよかった
204:2014/12/10(水) 14:44:03.42
人魔の国
人魔王城・王女の部屋
王女「とうさまは傷だらけだね」
魔王「そんなことはない。私の傷よりも母の傷の方がひどいのだ」
王女「そうなの?かあさま」
魔法使い「ええ。あなたも女の子なのだから、気をつけてね?」
王女「はぁーい。とうさま、今日学校で聞いた話でね、山の国と“わぎ”をするって言ってたの。“わぎ”ってなーに?」
魔王「和議っていうのは……そうだね。国と国が喧嘩したら、お互いのことを嫌いになるだろう?」
王女「せんそう?」
魔王「そう。戦争だ。それが起こらないようにね、仲良くしようっていう約束をするんだ」
王女「みーんな、“わぎ”やればいいのにね」
人魔王城・王女の部屋
王女「とうさまは傷だらけだね」
魔王「そんなことはない。私の傷よりも母の傷の方がひどいのだ」
王女「そうなの?かあさま」
魔法使い「ええ。あなたも女の子なのだから、気をつけてね?」
王女「はぁーい。とうさま、今日学校で聞いた話でね、山の国と“わぎ”をするって言ってたの。“わぎ”ってなーに?」
魔王「和議っていうのは……そうだね。国と国が喧嘩したら、お互いのことを嫌いになるだろう?」
王女「せんそう?」
魔王「そう。戦争だ。それが起こらないようにね、仲良くしようっていう約束をするんだ」
王女「みーんな、“わぎ”やればいいのにね」
207:2014/12/10(水) 14:58:38.32
人魔の国・102番目の勇者の墓
魔王「久しいな……」
王女「ねー!とうさま、誰と話してるの?」
魔王「お墓に眠る魂だよ」
王女「魂?ってそれ?」
魔王「……見えているのか?私には何も見えないが……」
王女「なんかねー、男の人!すっごいうれしそう!」
魔王「……そうか。おまえはそういう魔族なのだな。娘よ」
王女「んー?何か言ってるよ」
魔王「何て言ってるのか、教えてくれるか?」
王女「えっとねー……」
おしまい
魔王「久しいな……」
王女「ねー!とうさま、誰と話してるの?」
魔王「お墓に眠る魂だよ」
王女「魂?ってそれ?」
魔王「……見えているのか?私には何も見えないが……」
王女「なんかねー、男の人!すっごいうれしそう!」
魔王「……そうか。おまえはそういう魔族なのだな。娘よ」
王女「んー?何か言ってるよ」
魔王「何て言ってるのか、教えてくれるか?」
王女「えっとねー……」
おしまい
209:2014/12/10(水) 15:05:07.12
長々ごめんね
暇つぶし程度になってくれたなら嬉しい
原案からはかなり離れたけど
暇つぶし程度になってくれたなら嬉しい
原案からはかなり離れたけど
210:2014/12/10(水) 15:07:27.81
(´・ω・`)お疲れさん
211:2014/12/10(水) 15:08:09.47
おつ!
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります