715: 2014/06/14(土) 23:32:33.64 ID:dcz73B8xo
【7月1週】
腕を振った。
構えたミットに、ボールが吸い込まれるように収まった。
青葉「………はえー…」
青葉「…不知火さん、手、大丈夫ですか?」
不知火「……ええ」
提督「…ど、どっすか?」
不知火「…完璧、だと思いますよ」
青葉「はい、青葉絶対打てません!」
マスクを被ったままの不知火さんに合わせるように、バッターボックスの青葉さんが言う。
不知火「青葉…」
青葉「いやいや本当の事ですって!絶対150くらい出てますよこれ!」
提督「……あはは…」
…今度こそ。
今度こそ俺はあいつを倒そう。
甲子園に行くんだ。
上位指名を勝ち取って、金を貰って、阿武隈の手術を―――
青葉「て、提督くん!」
提督「へ?」
ごん、と鈍い音がして、ボールが頭に当たる。
不知火「………ごめんなさい」
提督「あー…いえ……こっちこそすいません、ぼーっとしてて…」
どうやら返球に全く気づかなかったようだ。
…何とも締まらん。
コミュ対象>>+4
球磨 *98/500
阿武隈 167/500
間宮 **5/500
那珂 368/500
雷 139/500
742: 2014/06/15(日) 22:52:25.05 ID:xlagKVgNo
沈黙は肯定(至言)
――教室
雷「……」
なんだこいつ。
そんな驚きの表情で俺と数学の小テストとを交互に見つめるのは雷。
おいおい、じっと見るなよ、照れるだろ。
雷「…私のノート、ちゃんと見てる?」
提督「ああ、うん、一応は」
雷「………おっかしいわねー」
私のノートの取り方が間違ってたのかなー…とぶつぶつ呟く。
別に何もおかしくないしわかりやすいと思うのだが。
現に俺は数学の小テストで自己最高点の12点(100点満点)をゲットした。
念願の2桁突入である。
阿武隈、俺は遂にやったぞ。
雷「……よし」
と、そんな俺の充足感など全く雷は気に留めていないようで。
しばらく思案した後、顔を上げて俺に向き直った。
雷「提督くん…昼休み、勉強しましょう!」
提督「……Who?」
雷「…Whyって言いたいのかしら」
提督「…いやそれはともかくとしてだな、何で勉強?」
雷「んー…その、ね?私も提督くんが忙しいのはすっごく知ってるんだけどね」
雷「…これはー…ちょっと、その、なんていうか…もうちょっと頑張れるかなーって」
雷「だからね、うん、私も手伝うから、頑張ろ?」
提督「…ふーむ」
…どうせ昼休みは寝ているだけだが…。
別にそこまで真面目に勉強する必要性など感じない。
数学は将来使わないと断言できるし。
しかし雷はえらく気合入ってるしなぁ――――
>>+4
A.受ける。
B.とりあえず断る。
C.そういうのは必要ない。
――教室
雷「……」
なんだこいつ。
そんな驚きの表情で俺と数学の小テストとを交互に見つめるのは雷。
おいおい、じっと見るなよ、照れるだろ。
雷「…私のノート、ちゃんと見てる?」
提督「ああ、うん、一応は」
雷「………おっかしいわねー」
私のノートの取り方が間違ってたのかなー…とぶつぶつ呟く。
別に何もおかしくないしわかりやすいと思うのだが。
現に俺は数学の小テストで自己最高点の12点(100点満点)をゲットした。
念願の2桁突入である。
阿武隈、俺は遂にやったぞ。
雷「……よし」
と、そんな俺の充足感など全く雷は気に留めていないようで。
しばらく思案した後、顔を上げて俺に向き直った。
雷「提督くん…昼休み、勉強しましょう!」
提督「……Who?」
雷「…Whyって言いたいのかしら」
提督「…いやそれはともかくとしてだな、何で勉強?」
雷「んー…その、ね?私も提督くんが忙しいのはすっごく知ってるんだけどね」
雷「…これはー…ちょっと、その、なんていうか…もうちょっと頑張れるかなーって」
雷「だからね、うん、私も手伝うから、頑張ろ?」
提督「…ふーむ」
…どうせ昼休みは寝ているだけだが…。
別にそこまで真面目に勉強する必要性など感じない。
数学は将来使わないと断言できるし。
しかし雷はえらく気合入ってるしなぁ――――
>>+4
A.受ける。
B.とりあえず断る。
C.そういうのは必要ない。
747: 2014/06/15(日) 23:02:54.43 ID:xlagKVgNo
C.そういうのは必要ない。(*0.5)
提督「…いや、悪いが」
提督「そういうのは必要ないよ」
ここで下手に引き受けてやる気なくダラダラと続けるのも雷に悪い。
それでもきっと彼女は丁寧にやってくれるのだろうが。
ただ、俺がそれでは納得出来ない。
だから、ちゃんと断っておこう。
雷「…そう」
提督「気持ちは嬉しいよ、ただ、今は色々忙しいんだ」
雷「ううん、私こそごめんね、勝手に話進めちゃって」
提督「謝る事は無いって、むしろノートくれる恩人の頼みを簡単に断る俺を責めてくれても良いくらいだ」
雷「あら、じゃあ責めようかしら?」
提督「お手柔らかに頼む」
雷「ふふっ」
雷→ 150/500
提督「…いや、悪いが」
提督「そういうのは必要ないよ」
ここで下手に引き受けてやる気なくダラダラと続けるのも雷に悪い。
それでもきっと彼女は丁寧にやってくれるのだろうが。
ただ、俺がそれでは納得出来ない。
だから、ちゃんと断っておこう。
雷「…そう」
提督「気持ちは嬉しいよ、ただ、今は色々忙しいんだ」
雷「ううん、私こそごめんね、勝手に話進めちゃって」
提督「謝る事は無いって、むしろノートくれる恩人の頼みを簡単に断る俺を責めてくれても良いくらいだ」
雷「あら、じゃあ責めようかしら?」
提督「お手柔らかに頼む」
雷「ふふっ」
雷→ 150/500
748: 2014/06/15(日) 23:09:47.26 ID:xlagKVgNo
【7月8日】
阿武隈「………」
お兄のくれたボールを眺める。
…確か、これは中学の時のだったはずだ。
『ほら、阿武隈』
『カッコ良かったろ?』
…家族で観戦していた試合で。
その言に違わず、お兄はとてもカッコ良くて。
阿武隈「………はぁ」
やることのない入院生活。
そんな、過去の幸せを振り返る事くらいしか、あたしには出来ない。
…お兄、早く来ないかなぁ。
「やっほー、阿武隈っちー!」
阿武隈「うえっ!?き、北上さん!?」
「……甲斐甲斐しく御見舞をする親友に対する態度がそれかー…」
阿武隈「そんな事言いながら髪の毛弄るのやめてよ!」
「…うえっへっへっへ、いやぁ嬢ちゃん、可愛いねえ」
……あたしが学校に通えなくなって1年以上経つのに。
物好きだなあ、北上さんも。
コミュ対象>>+4
球磨 *98/500
阿武隈 167/500
間宮 **5/500
那珂 368/500
雷 150/500
762: 2014/06/15(日) 23:27:00.89 ID:xlagKVgNo
――喫茶店
那珂「で、どうだった、那珂ちゃんのライブ!」
提督「………」
あのライブ以来初めてこいつに会った。
というのもアレは全国ツアーで、その後各地を行脚していた為であるのだが。
那珂「……おーい、てーいーとーくーくーん」
ねぇねぇ、と身体を突いてくる那珂。
……うーむ。
提督「……」
那珂「ひゃっ!?は、はひふふの!?」
ほっぺたを抓ってみる。いや特に意味は無いが。
…こいつ、本当にあのステージで踊ってた那珂と同一人物か?
違うだろ、どう考えても。
提督「那珂」
那珂「なに?」
提督「…替え玉使うのは卑怯だろ」
那珂「何で!?」
…正直そう言われた方が個人的にはいくらか納得できるのである。
どうしてもこいつとあのアイドルを結び付けられない。
那珂「…もー、提督くん、来てくれたんだからちゃんと感想くらい言ってよー」
提督「…………」
那珂「…だんまりかーい、那珂ちゃんショックだなー、横須賀でのライブはすっごく――」
提督「……見惚れた」
那珂「はへ?」
提督「…目が、離せなかったよ…瞬きも忘れるくらいに、お前を見てた」
那珂「え?え?なになに、ドッキリ?」
提督「お前は凄い、掛け値なしに」
提督「誰よりも輝くアイドルだ」
那珂「にゃ、…う、あー…あ、ありが、とー…」
那珂「……ちょっと反則だよー…」
提督「…反則?」
那珂「い、いやいや、何でもないよー!こっちの話、こっちの話!」
提督「……ならいいが」
ここまでべた褒めすると、微妙に対抗心が湧く。
―俺の試合日程を、那珂に教えてみようか。…もしかしたら、彼女が来てくれるかもしれない。
…お返し、というわけではないが―あいつにも俺の凄い所を…いやいや、何言ってんだ俺は――
>>+4(重要かもしれない)
A.教えよう。
B.教えない。
773: 2014/06/15(日) 23:44:45.33 ID:xlagKVgNo
ルート分岐の1つ目でした
B.教えない。(*1.5 最低401)
…いやいや。
教えてどうする。こいつは忙しいし。
そもそもこいつと俺はめちゃくちゃ気軽に話しかけているけども。
大人気アイドルをまさにそのヒット層である高校生の集まる場に呼ぶとかアホじゃないのか。
俺の都合で勝手な事に巻き込んでしまう所だったな、危ない危ない。
提督「……まー、なんだ」
提督「凄かったよ、那珂」
提督「…うん、凄かった」
提督「他には……あー……悪い、語彙が少なくて」
那珂は、俺の言葉に何度か頷いて。
ニパッと、華が咲くような笑みを浮かべた。
那珂「ううん」
那珂「…嬉しいよ」
那珂「提督くんのその言葉だけで、嬉しい」
那珂「…ふふん、那珂ちゃん大満足っ!」
提督「……この程度で満足するとは、な」
那珂「なにそれ!?いい話で終わらせようよっ!?」
提督「ははっ、いや――うん、なぁ、那珂」
那珂「?」
提督「…俺は――」
那珂「………提督くんは?」
提督「……いや、何でもない」
那珂「……?」
俺は。
どうにもお前のファンになってしまったようだよ、那珂。
那珂→ 427/500
B.教えない。(*1.5 最低401)
…いやいや。
教えてどうする。こいつは忙しいし。
そもそもこいつと俺はめちゃくちゃ気軽に話しかけているけども。
大人気アイドルをまさにそのヒット層である高校生の集まる場に呼ぶとかアホじゃないのか。
俺の都合で勝手な事に巻き込んでしまう所だったな、危ない危ない。
提督「……まー、なんだ」
提督「凄かったよ、那珂」
提督「…うん、凄かった」
提督「他には……あー……悪い、語彙が少なくて」
那珂は、俺の言葉に何度か頷いて。
ニパッと、華が咲くような笑みを浮かべた。
那珂「ううん」
那珂「…嬉しいよ」
那珂「提督くんのその言葉だけで、嬉しい」
那珂「…ふふん、那珂ちゃん大満足っ!」
提督「……この程度で満足するとは、な」
那珂「なにそれ!?いい話で終わらせようよっ!?」
提督「ははっ、いや――うん、なぁ、那珂」
那珂「?」
提督「…俺は――」
那珂「………提督くんは?」
提督「……いや、何でもない」
那珂「……?」
俺は。
どうにもお前のファンになってしまったようだよ、那珂。
那珂→ 427/500
787: 2014/06/16(月) 00:32:29.24 ID:sq/GaCMTo
別にそこまで酷いルートにはならんよ、那珂ちゃん1人を選ぶならばちょっと進行が変わるだけ
【那珂―その3】
『…目が、離せなかったよ…瞬きも忘れるくらいに、お前を見てた』
『お前は誰よりも輝くアイドルだ』
「………うー…」
まだ、きっと顔が赤い。
彼の前ではきっと上手く隠せていた…はず、だけど。
凄かったとか、誰よりも輝いてるとか。
色んな人に言われた事がある。
その時は別に、こんな感情を抱いたりしなかったのに。
だって、アイドルとしては、ファンにそう思わせるのは当然だって思ってたから。
嬉しいとは思ったけど、こんな…こんな、気持ちにはならなかった。
…だから。
その原因は、わかってるんだ。
那珂ちゃんは、彼の前ではアイドルでは居られないから。
那珂ちゃんは、彼の前ではアイドルじゃなくて――
「…ただの、女の子なんだよね」
ただそれだけ。
それだけの理由。
「……そういえば…夏の予選、そろそろだ」
雑誌に載っていた彼の写真を思い出す。
…かっこよかったなぁ。
「……じゃないよ!」
…予定、ちょっと調べとこう。
【那珂―その3】
『…目が、離せなかったよ…瞬きも忘れるくらいに、お前を見てた』
『お前は誰よりも輝くアイドルだ』
「………うー…」
まだ、きっと顔が赤い。
彼の前ではきっと上手く隠せていた…はず、だけど。
凄かったとか、誰よりも輝いてるとか。
色んな人に言われた事がある。
その時は別に、こんな感情を抱いたりしなかったのに。
だって、アイドルとしては、ファンにそう思わせるのは当然だって思ってたから。
嬉しいとは思ったけど、こんな…こんな、気持ちにはならなかった。
…だから。
その原因は、わかってるんだ。
那珂ちゃんは、彼の前ではアイドルでは居られないから。
那珂ちゃんは、彼の前ではアイドルじゃなくて――
「…ただの、女の子なんだよね」
ただそれだけ。
それだけの理由。
「……そういえば…夏の予選、そろそろだ」
雑誌に載っていた彼の写真を思い出す。
…かっこよかったなぁ。
「……じゃないよ!」
…予定、ちょっと調べとこう。
788: 2014/06/16(月) 00:41:58.33 ID:sq/GaCMTo
ちなみに選んだコミュによっては時間が一気に飛ぶ可能性があります
【7月9日】
提督「……」
間宮さんに暇を出されてしまった。
…しかも有給休暇である。
間宮『今から、提督くんにとって大事な時期になるんですから』
間宮『バイトなんてしてる場合じゃないです』
間宮『…たまには、言う事を聞いてください』
…とな。
有り難い、有り難いが…。
…どうにも、悪い気がする。
どれだけあの人のお世話になれば気が済むのか、俺は。
でも、折角くれたんだから、その気持ちに応えよう。
提督「…よっしゃあ!」
気合、入れて、行きます!
「……珍しいな、提督…解けたのか、よしよし、良いぞ良いぞ、ほら、前に書いてくれ」
提督「………?」
…黒板には。
問4、と書かれている。
「……提督?」
提督「………い、雷!」
雷「……はいはい」
コミュ対象>>+4
球磨 *98/500
阿武隈 167/500
間宮 **5/500
那珂 427/500
雷 150/500
【7月9日】
提督「……」
間宮さんに暇を出されてしまった。
…しかも有給休暇である。
間宮『今から、提督くんにとって大事な時期になるんですから』
間宮『バイトなんてしてる場合じゃないです』
間宮『…たまには、言う事を聞いてください』
…とな。
有り難い、有り難いが…。
…どうにも、悪い気がする。
どれだけあの人のお世話になれば気が済むのか、俺は。
でも、折角くれたんだから、その気持ちに応えよう。
提督「…よっしゃあ!」
気合、入れて、行きます!
「……珍しいな、提督…解けたのか、よしよし、良いぞ良いぞ、ほら、前に書いてくれ」
提督「………?」
…黒板には。
問4、と書かれている。
「……提督?」
提督「………い、雷!」
雷「……はいはい」
コミュ対象>>+4
球磨 *98/500
阿武隈 167/500
間宮 **5/500
那珂 427/500
雷 150/500
804: 2014/06/16(月) 21:43:55.95 ID:sq/GaCMTo
――帰り道
雷「あれ?提督くん?」
提督「雷」
野球の練習を早めに切り上げ、阿武隈を見舞いに行く日。
どれだけ練習が大変でも、1週間に最低1度はそんな日を設けるようにしている。
さて、今日も丁度その日で、病院へ行く途中―雷に出会った。
雷「今日は早いのね」
提督「…ちょっと、事情がな」
雷「事情……?」
と、首を傾げて、俺の進行方向へ目を向ける。
その先には、遠くからでも見える、大きな建物。
雷「…もしかして、病院?」
提督「ん、まぁ」
雷「……妹さん?」
提督「…ああ」
雷「…ん、そっか…」
雷「……ごめんね、聞いちゃって」
提督「いや、気にすんな」
沈黙が流れる。
このまま雷の隣を通り抜けて病院へ向えばいいのだろうが…雷がまだ何か言いたげなのである。
律儀に突っ立って雷の言葉を待っていると、やはり彼女は口を開いた。
雷「……御見舞い、私も付いて行っちゃダメ…かな?」
提督「…は?」
雷「…ほら、病院暮らしって暇だから…その、少しでも…」
提督「…つってもなぁ」
これが雷じゃなかったら好奇心でそんな事言うんじゃねぇよ馬鹿と一口で切り捨てる所なのだが…。
彼女はおそらく本気で何か妹の助けになりたいと思っている、ような気がする。
ノートの件でもそうなのだが、彼女はそういう人なのだ。
…うーむ――
>>+4
A.ま、阿武隈もたまには俺以外に会いたいだろ。
B.ダメだ。
C.気持ちは有り難いが―気持ちだけで十分だ。
811: 2014/06/16(月) 21:56:52.49 ID:sq/GaCMTo
A.ま、阿武隈もたまには俺以外に会いたいだろ。(*1.5)
ふむ。
そうだな、あいつもいつも暇してるだろうし、それも悪くないかもしれん。
俺とばかり話しているのもな。
提督「…ああ、良いぞ」
雷「ホント?」
提督「おう、雷の言う通り、暇だ暇だって言ってたし丁度良いさ」
雷「…良かった」
雷「ごめんね、無理に頼んだみたいで」
提督「んなことないさ」
雷「…ありがと」
雷「あ、だったら、何か買っていかなきゃね!」
雷「提督くん、妹さんの好きな物とか――」
提督「んー、今食える好きな物ってーと…」
…それから。
阿武隈は大層(お見舞い品を)喜んだ。
そして雷と会話して、久々にまともな人と話したと喜んだ。
…うん?
何かおかしくないか、妹よ。
雷→ 178/500
ふむ。
そうだな、あいつもいつも暇してるだろうし、それも悪くないかもしれん。
俺とばかり話しているのもな。
提督「…ああ、良いぞ」
雷「ホント?」
提督「おう、雷の言う通り、暇だ暇だって言ってたし丁度良いさ」
雷「…良かった」
雷「ごめんね、無理に頼んだみたいで」
提督「んなことないさ」
雷「…ありがと」
雷「あ、だったら、何か買っていかなきゃね!」
雷「提督くん、妹さんの好きな物とか――」
提督「んー、今食える好きな物ってーと…」
…それから。
阿武隈は大層(お見舞い品を)喜んだ。
そして雷と会話して、久々にまともな人と話したと喜んだ。
…うん?
何かおかしくないか、妹よ。
雷→ 178/500
813: 2014/06/16(月) 22:09:07.54 ID:sq/GaCMTo
【7月10日】
『聞いてくださーい!恋の――』
何処かで見た映像だ、と思った。
ああ―この前のライブの映像か。
こうして画面を通して見ると、また違うものだな。
「……オッヒョ…那珂ちゃん可愛い……」
隣で、同年代らしい制服の男が呟いた。
提督「…お前、那珂のファンなのか?」
「ヘェッ!?…は、はい、そう、ですけど……」
提督「……」
そうか。
当然だよな。
那珂のファンは全国にいる、なんたって大人気アイドルなんだ。
しかし――
「あ、あのー…な、なん、でしょう…?」
提督「…いや、俺もファンなんだよ」
「そ、そうですか…」
提督「そんだけだ」
「あのー……………?」
当然なんだけどさ。
なんかこう、モヤモヤするんだよな。
…気のせいだろうか。
コミュ対象>>+4
球磨 *98/500
阿武隈 167/500
間宮 **5/500
那珂 427/500
雷 178/500
823: 2014/06/16(月) 22:29:42.69 ID:sq/GaCMTo
――病室
雷「――――」
阿武隈「―――――」
………。
なんかさぁ。
ガールズトークから思いっきり省かれてるんだけど。
…折角時間を作って来てやってる兄になんだよその態度は!
……とは言えず。
ベッドの傍らの雷と楽しげに語り合う阿武隈を横目に。
1人、手慰みにグローブの手入れをする。
…そう、こういうこまめな手入れが重要だからさ。
野球人として当然の事だからさ。
………………。
………………。
阿武隈「…あ、お兄ー」
提督「おう!どうした阿武隈!この兄に何か用か!?」ポイー
雷「……グローブ投げた……」
阿武隈「あのさ、ちょっと気になったんだけど」
提督「おう!」
阿武隈「…雷さんとお兄って、どんな関係なの?」
む、どんな関係、と言われても。
…そりゃ――
>>+4
A.……なんだろう。
B.彼女……なーんつって。
C.友達。
830: 2014/06/16(月) 22:44:31.89 ID:sq/GaCMTo
A.……なんだろう。(*0.5)
俺と雷は――
………。
…なんだろう。
阿武隈「…………お兄?」
提督「……なんだろう」
雷「ええー…」
そんな目でこっち見るな、雷。
上手く表す言葉が見つからんのだ。
…ノートくれる人、と言っていいのなら言うが。
提督「…まぁ…友達?」
雷「疑問符いらない」
阿武隈「…ふふっ」
そんな俺達のやりとりを見て、阿武隈が笑う。
提督「阿武隈?」
阿武隈「いや…久しぶりにお兄が誰かと話してるの見たな、って」
提督「…そうかね」
阿武隈「うん」
阿武隈「…ちょっと、安心した」
提督「なんだそりゃ」
阿武隈「雷さん」
雷「どうしたの?」
阿武隈「こんなお兄ですが、仲良くしてあげてください」
ぺこり、とベッドに座ったまま、阿武隈が頭を下げる。
雷「うん、勿論よ!」
雷「阿武隈ちゃんも、よろしくね?」
雷が阿武隈に手を差し出す。
阿武隈「はいっ」
その手を、阿武隈はしっかりと握ったのだった。
……。
…俺は?
雷→ 240/500
俺と雷は――
………。
…なんだろう。
阿武隈「…………お兄?」
提督「……なんだろう」
雷「ええー…」
そんな目でこっち見るな、雷。
上手く表す言葉が見つからんのだ。
…ノートくれる人、と言っていいのなら言うが。
提督「…まぁ…友達?」
雷「疑問符いらない」
阿武隈「…ふふっ」
そんな俺達のやりとりを見て、阿武隈が笑う。
提督「阿武隈?」
阿武隈「いや…久しぶりにお兄が誰かと話してるの見たな、って」
提督「…そうかね」
阿武隈「うん」
阿武隈「…ちょっと、安心した」
提督「なんだそりゃ」
阿武隈「雷さん」
雷「どうしたの?」
阿武隈「こんなお兄ですが、仲良くしてあげてください」
ぺこり、とベッドに座ったまま、阿武隈が頭を下げる。
雷「うん、勿論よ!」
雷「阿武隈ちゃんも、よろしくね?」
雷が阿武隈に手を差し出す。
阿武隈「はいっ」
その手を、阿武隈はしっかりと握ったのだった。
……。
…俺は?
雷→ 240/500
831: 2014/06/16(月) 22:58:25.83 ID:sq/GaCMTo
【雷――その1】
始まりは、気まぐれだったように思う。
何となく、手助けをしたかった。
彼は凄い人だったから。
自分とは比較にならないくらい、凄い人だったから。
少しだけ、そんな彼に近づきたかった。
だから、あの日私はノートを渡した。
彼は、自分に感謝してくれた。
頼りにされていた。
何の取り柄も無い凡人の自分が、頼りにされていた。
…嬉しかった。
よくわからないけど、嬉しかった。
…だから、もっと色々彼の役に立ちたくて。
もっと、頼りにされたくて。
もっと、彼を助けてくて。
832: 2014/06/16(月) 23:06:11.30 ID:sq/GaCMTo
【7月11日】
『聞いてくださーい!恋の――――』
何となく、テレビを付けた。
開かない窓を、白いカーテンだけを見ているのに飽きたから。
液晶の真ん中で、最近人気のアイドルが踊っている。
阿武隈「……♪」
少しだけ、それに合わせて声を出してみた。
…すっごく、調子外れの音が出る。
阿武隈「……はぁ」
リモコンのボタンを押して、チャンネルを変えた。
『やべぇよ……やべぇよ……』
『降りろ!免許持ってんのか!』
阿武隈「……ドラマか、こっちの方が、まだいいかな」
ああいうのは、よくない。
自分の手に入らない物を求めてしまうから。
…作り話を見ている方が、ずっと気が楽だ。
作り話だって割り切れる方が、ずっと――
コミュ対象>>+4
球磨 *98/500
阿武隈 167/500
間宮 **5/500
那珂 427/500
雷 240/500
842: 2014/06/16(月) 23:33:14.96 ID:sq/GaCMTo
――喫茶店
間宮さんに無理を言って、今日までは仕事をさせてもらうことにした。
金だけ貰うなんて、俺には出来ない――と、いうのは建前で。
…本当の理由は、俺が此処に来たのは――
那珂「…提督くん?何でそんな所で突っ立ってるのー?」
提督「……那珂」
……ああ。
まさか本当に来るとは。
那珂「てーとくくーん、那珂ちゃん無視されると悲しいー」
提督「あ、ああ…すまん、えっと…適当に座っててくれ」
那珂「また接客放棄!?」
提督「…え、あ…ごめん、違うんだ、そういうつもりは」
那珂「……?…変な提督くん」
…全くもって仰る通りで。
動揺しすぎだろ、俺。
深呼吸を一つして、何とかメニューと水を持ってくる。
提督「…はい、メニューと水」
那珂「ありがとー!ふんふーん♪何にしようかなー」
鼻歌を鳴らしながら、メニューを見る那珂。
別に特別なことはしてないのに、そんなこいつから目が離せない。
………。
那珂「……ん、提督くんってば!」
提督「…へ?あ、ああ、どうした?」
那珂「注文、決まったってばー」
提督「…あ、すまん」
那珂「…今日の提督くん、なんかおかしいよー」
提督「……そうかもしれん」
那珂「何かあったの?」
那珂「あ、もしかして大会近いから緊張とか?」
提督「……いや」
…那珂の言う通り、俺はおかしいんだろう。
だって、この前からずっとお前の事を考えてるんだ。
…俺は――
>>+4
A.…好きだ、那珂。
B.…ああ、お前の言う通り、緊張してる。
C.…もう、会わない方が良いと思う。
852: 2014/06/16(月) 23:52:22.13 ID:sq/GaCMTo
C.…もう、会わない方が良いと思う。(*1.5 ED開放)
提督「…もう、会わない方が良いと思う」
那珂「………え?」
那珂が、持っていたメニューを落とした。
見開いた目で、此方を捉える。
那珂「…えと、ごめん、聞き間違えたかも」
提督「会わない方が、良いと思う」
那珂「…もー、提督くん、じょーだんキツいってー」
那珂「那珂ちゃん、弄られるのとか気にしないけどさー」
那珂「そういうマジな感じだと、冗談でも本気に――」
提督「本気だよ」
提督「…那珂、お前は俺と会ってる所、誰かに見られたらマズくないのか?」
那珂「……別に、だって、学校の友達って言えば」
提督「…横須賀だと、俺の顔を知ってる記者だっているかもしれん」
提督「お前ほどじゃないけど、それなりに有名人だと思ってるよ、俺も」
那珂「……」
提督「…そういうのってさ、マズいだろ?」
提督「だから――」
那珂「…何で?」
提督「え?」
那珂「…今まで何も言わなかったのに、何でいきなり、そんな…」
提督「………それは…」
那珂「良いじゃん!バレて無いじゃん!別に、那珂ちゃん達は悪い事してないし――」
提督「那珂」
提督「…お前は、アイドルなんだろ?」
提督「アイドルで在りたいなら――」
那珂「………っ」
那珂「……もう、良いっ!」
提督「那珂…」
……喫茶店の扉を勢い良く開けて、那珂が去っていく。
…これでいい。
これでいいんだ。
確かに、この喫茶店の中で話しているくらいなら見つからないかもしれない。
…でも、今、俺は。
その先を、那珂に求めてしまっているんだ、好きになってしまったんだ。
だから――これでいい。これがきっと、正しい。
那珂→ 500/500
提督「…もう、会わない方が良いと思う」
那珂「………え?」
那珂が、持っていたメニューを落とした。
見開いた目で、此方を捉える。
那珂「…えと、ごめん、聞き間違えたかも」
提督「会わない方が、良いと思う」
那珂「…もー、提督くん、じょーだんキツいってー」
那珂「那珂ちゃん、弄られるのとか気にしないけどさー」
那珂「そういうマジな感じだと、冗談でも本気に――」
提督「本気だよ」
提督「…那珂、お前は俺と会ってる所、誰かに見られたらマズくないのか?」
那珂「……別に、だって、学校の友達って言えば」
提督「…横須賀だと、俺の顔を知ってる記者だっているかもしれん」
提督「お前ほどじゃないけど、それなりに有名人だと思ってるよ、俺も」
那珂「……」
提督「…そういうのってさ、マズいだろ?」
提督「だから――」
那珂「…何で?」
提督「え?」
那珂「…今まで何も言わなかったのに、何でいきなり、そんな…」
提督「………それは…」
那珂「良いじゃん!バレて無いじゃん!別に、那珂ちゃん達は悪い事してないし――」
提督「那珂」
提督「…お前は、アイドルなんだろ?」
提督「アイドルで在りたいなら――」
那珂「………っ」
那珂「……もう、良いっ!」
提督「那珂…」
……喫茶店の扉を勢い良く開けて、那珂が去っていく。
…これでいい。
これでいいんだ。
確かに、この喫茶店の中で話しているくらいなら見つからないかもしれない。
…でも、今、俺は。
その先を、那珂に求めてしまっているんだ、好きになってしまったんだ。
だから――これでいい。これがきっと、正しい。
那珂→ 500/500
885: 2014/06/17(火) 22:48:21.38 ID:kVCCXfZlo
【7月12日】
「我々、選手一同は――」
遂にやって来た開会式。
というのに、俺の気持ちは重い。
絶え間なく溢れる汗が煩わしい。
昨日の事だ、昨日の事が全部悪い。
提督(………那珂)
女々しい物だ、と思う。
しっかり決めたはずなのに。
あれで良い、と。
とりあえず、1回戦が今日で無くて良かった。
コミュ対象>>+4
球磨 *98/500
阿武隈 167/500
間宮 **5/500
那珂 500/500
雷 240/500
896: 2014/06/17(火) 23:10:28.41 ID:kVCCXfZlo
【7月30日 横須賀スタジアム】
あれから、宣言通り彼女―那珂と会う事は無かった。
それでも、アイドルの『那珂』は変わらずに活躍していたし。
俺の日常だって、特には変わらなかった。
…結局、お互いの存在なんてそのくらいの物だったんだ。
そう思うと、少しだけ寂しくなって。
そんな寂しさを紛らわせる為に、俺は目の前の事に全てを打ち込んだ。
即ち、野球に。
そして――
『只今より、第×回全国高校野球選手権横須賀大会の決勝戦を――』
遂に、ここまでやって来た。
相手は、…何となく、予想していた通りの学校。
球磨「今日勝ったら甲子園だクマー!気張って行くクマ!」
…やっぱり最後に当たるのは、お前だったか。
……。
勝とう。
阿武隈だって、きっと病室で見てる。
間宮さんも、応援に来てくれている。
雷達クラスメイトも応援に総動員だ。
…もしかしたら、那珂も――
……糞、どんだけ女々しいんだよ、俺は!
青葉「では、1番バッター青葉、行って参りまーす!」
先行、三塁側のベンチから、元気に先輩が出て行って。
運命の試合が、始まったのだった。
898: 2014/06/17(火) 23:30:24.97 ID:kVCCXfZlo
ようやく始まった試合。
だが、特に序盤に動きはない。
1回は両校共に何の見せ場もなく三者凡退。
2回表、4番の不知火さんにヒットが出るも、後続が沈黙。
そして、2回裏――
球磨「…さー、かかってこいクマー!」
提督「……」
問題は、この先頭打者。
…ブンブンとバットを振り回す球磨。
相変わらず怖いスイングだ。
だが、俺だって遊んでた訳じゃない。
腕を上げ、振りかぶり、ボールをリリースする。
何万回とやって来た動作。
目の前の敵に、打たれないようなボールを投げ込む!
「ストライク!」
球磨「……クマっ!?」
表示された速度は―153km。
返球をグラブで掴みながら、どうだ、とほくそ笑む。
2球目。再び振りかぶって、また直球。
打てるもんなら――
球磨「…なめるなクマー!」
球磨がバットを振りぬき、甲高い金属音が響く。
提督「………っ!?」
打球は、三遊間を綺麗に抜くヒット。
…おいおい。
やっぱ、ありゃ化物だ。
…シングルで済んだと、前向きに捉えるしかない。
この後、後続を危なげなく打ち取り、この回も0がスコアボードに並んだ。
3回、4回、5回とも両校0を並べていき、試合が動いたのは6回表2氏。
多摩「にゃっ!?」
不知火「……甘い」
不知火さんのレフトスタンドに飛び込む先制のソロホームラン。
それ以降は、ランナーは出すものの点を入れられなかった。
そして、俺も相手打線を抑える。
球磨に3打席連続でヒットを打たれるものの、それ以外の打者を完璧に抑え。
…遂に、9回の裏のマウンドへと向かうのだった。
900: 2014/06/17(火) 23:43:05.59 ID:kVCCXfZlo
『9回の裏、球磨型軽巡高校の攻撃は―1番、ショート、北上くん』
提督「……ふぅ」
…落ち着け。
この回、もう球磨には回ってこない。
他の奴らに、俺が打たれる筈も無い。
なら、…俺の勝ちだ!
北上「……かー…いやいや、阿武隈っちのお兄さん強すぎっしょー…」
1番北上、三振。
2番大井、三振。
そして、迎えた最後のバッター、木曾。
観客席からはこれでもかと言うほどの大歓声が響く。
……あと、1人。
不知火さんが、ミットを構える。
そこに、後3球投げるだけだ――!
と、ボールをリリースした瞬間、バッターの木曾が微笑み、バットを横にした。
……セーフティーバント!?
軽い音と共に、三塁線に転がる硬球。
それはライン際を転がっていき――
…ファールと判断した三塁手を嘲笑うかの様に、ラインの上で静止した。
木曾「……ま、たまにはこういうのも悪くはねーだろ?」
木曾「つーわけだ…頼んだぞ、球磨姉」
球磨「まっかされたクマー!」
球磨が、打席に入る。
ホームランを打たれたら、サヨナラの場面で。
回らなかった筈の奴に、打席が回った。
9回裏、2氏1塁―バッター、球磨。
901: 2014/06/18(水) 00:08:30.82 ID:OHsp25zho
提督「……」
不知火さんや内野手が声を掛けてくれたけれど、内容は頭に全く入らない。
…どうやって抑えれば…いや…そうだ、最低シングルなら、別に良いんだ。
逆転されなければ――
1球目、外角一杯にストレート。
鋭い金属音、バックネットにボールが飛んで、ワンストライク。
…よし、抑えられる。まだ、球威はある。
2球目、内角に食い込むボール球のスライダー。
多少仰け反り見送られボール、1-1。
3球目、高めのストレート。
これもファール、内野スタンドに飛び込み、1-2。
…追い込んで、4球目。
外角低め一杯にチャンジアップ。
打てる筈無い、と投げ込んだ完璧なボール。
それをいとも簡単に球磨は弾き返した。
流し打った打球はライトポール際、ギリギリ切れてファール。
提督「………っ」
…嘘だろおい……いや、緩い球を読まれてたのか?
…だったら、内角高め、渾身のストレートで――
球磨「…クマっ!」
やはり、鋭い金属音。
今度は引っ張ってレフトポール際、またもや切れてファール。
…1塁側のスタンドが落胆の声で埋まり、すぐにまた歓声を出す。
……どう抑えるんだよ、こんなの。
不知火(………とりあえず、1球外しましょう)
高めのボールゾーンに構えられたミット目掛けてボールを投げ込み――
提督「……あっ!?」
それは不知火さんを遥かに超え、バックネットへ。
ワイルドピッチで、ランナーが進塁、2氏2塁。
提督「糞っ!」
ヤケクソ気味に放ったボールは大きく外れ、3-2のフルカウント。
3塁側からの声援に、野次が混じった。普段は気にしないそんな言葉さえも、今の俺を追い込む。
………どうすれば、どうすればいい。
…敬遠、そんな言葉が頭を過る。
そうだ、次のバッターは今日2三振の多摩。…こいつなら、打ち取れる。
…ああ、外してしまえば良いんだ。それで――
「……提督くーん!」
喧騒の中にあって、一際響く、高い声。
何か引っ張られるように向けた視線の先。
糞暑い日差しの下、ニット帽とサングラスとマスクという挑戦的なファッションの女がいた。
929: 2014/06/19(木) 20:59:53.89 ID:pO4cwEobo
「……おいおい」
その姿に一瞬、意識が飛びかける。
…あの、あの格好は…。
「……お、おい…何だあの女の格好…」
「…いや…でもさ、どっかで聞いたことある声じゃね、なんか……」
「……あ、言われてみれば確かに……つーか、暑くねーの、あれ?」
スタンドがざわめく。
当の本人は、そんな事を気にかけず、俺へ向かって叫んでいる。
「逃げんなあほー!」
「那珂ちゃんの知ってる提督くんは、もっとカッコよかったぞー!」
「いつもみたいに、偉そうに投げてみろー!」
「………那珂ちゃん?え?今那珂ちゃんって…」
「はは、んなわけあるか、馬鹿の間違いだろ」
「あー、…確かに、ありゃ馬鹿っぽい」
「………ば、馬鹿って…ずーん…」
……ははは。
…やっぱ馬鹿だ、馬鹿だあいつ。
何で来たんだよ、話聞いてなかったのかよ。
バレたらどうするんだよ、あんな変な格好しやがって。
偉そうに、好き勝手言いやがって。
ああ、そうか。
今、俺は逃げようとしてたんだ。
球磨から。
あのバッターから、逃げようとしてたんだ。
どうやって躱すか、どうやって長打を打たせないようにするかって。
シングルヒットなら良いとか、四球でも良いとか、アホみたいな事考えて。
「…………」
左手に握りこんだボールを見る。
…いつものボールだ。俺が、何万回も、何十万回も投げてきたボールだ。
正面にいる球磨を見る。
先程までとてつもなく大きく見えていた彼女が、何故か小さく見えた。
「……いつもの、俺、なぁ」
どうすればいい。なんて。
そんなもん、簡単じゃねぇか。
いつもみたいに投げればいい。
自分のボールを信じて思いっきり投げればいい。
傲慢に、不遜に、このグラウンドの一番高い場所から。
俺の球は打たれないって信じて、投げればいい。
誰が相手だとか、そんな事は関係ない。
最高のボールを投げればいい!
931: 2014/06/19(木) 21:16:55.20 ID:pO4cwEobo
(……提督くん)
不知火さんがミットを外角、外れても良いというようなゾーンに構える。
(…………)
それに、無言で首を振る。
(真ん中に、ド真ん中に構えてください)
(…提督くん)
(……そうですか、わかりました)
(……貴方がそう言うのなら、任せます)
ありがとうございます、不知火先輩。
心の中で、頭を下げる。
さあ、投げよう。
今ならきっと最高のボールを投げられる。
そんな、予感がするんだ。
あー…那珂の奴、本当にムカつくなぁ。
何で今声掛けるんだよ。
何で一番声を掛けて欲しい時に。
そんな事されたら――
腕を上げ、振りかぶり、思いっきり振り抜く。
細かい事なんて考えなくて良い。
「諦めきれなくなるじゃねーかよおっ!」
白い球は、真っ直ぐ構えた場所へ向かっていき。
球磨のバットを躱して、乾いた音と共に不知火さんのミットの中へと吸い込まれていった。
歓声が一瞬、静寂へと変わる。
「……バッターアウト、ゲームセット!」
主審が、大きく手を上げて。
スタジアムに再び、先ほどとは比べ物にならない程の歓声が木霊した。
『156km』
電光掲示板に表示されたそれは、まさしく生涯最高の1球だった。
3塁側スタンドの黒尽くめの女は、それを見て大きく両手を挙げ。
俺へ向かってVサインを作り、去っていった。
936: 2014/06/19(木) 21:36:21.49 ID:pO4cwEobo
「…いらっしゃい、提督くん」
「あの…」
「はい、いつもの場所に」
「……そうですか」
試合の後、様々な面倒臭い行事を終え、喫茶店に着いたのは既に夜。
…何故か、此処にあいつが居る気がしたんだ。
「や」
「…居ると思ったよ」
「来ると思ったよー」
そんなやりとりに、2人して笑い。
彼女の対面の椅子に腰掛けた。
「…おめでとう、提督くん」
「ありがとよ」
「………何で、来た?」
「んー?」
「…もう会わんって言ったろ」
確かに俺は言った、もう会わないと。
なのに何故―と、半ば詰問するような態度で問う。
しかし那珂は、それを全く意に介する様子もなく答えた。
「ああ、うん、あのね」
「おう」
「アイドル、やめちゃった」
「………はぁぁぁ!?」
口に含んでいた水を、再び容器の中へと戻しながら驚嘆の声を出す。
というか、驚く以外の行動が取れない。
「正式発表は、もうちょい先だと思うんだけど――」
「ちょ、ちょっと待て!」
「なに?」
なんでこいつは平然としているんだ!?
ドッキリか、ドッキリかなんかか!?
「な、ななな何でアイドルやめ…!?」
「あはは、提督くんが取り乱してる」
「良いから答えろって!」
「……ん、そだね」
「…那珂ちゃんは、さ」
「ずっと…皆の為に輝く、そんなアイドルを目指してた」
「……でも、ね」
そこで一度言葉を切って、俺へと真っ直ぐに視線を向ける。
939: 2014/06/19(木) 21:50:25.70 ID:pO4cwEobo
「この前の横須賀でのライブ、あれ、すっごく評判が良かったんだ」
「…何でだと思う?」
「……いや、さあ…?」
「……もー、気付いてよ」
少し不満そうに、那珂が唇を突き出して。
しょうがないなぁ、と笑った。
「…提督くんが、いたからだよ」
「………那珂」
「那珂ちゃんは、知らない皆の為に輝くよりも――」
「君の為に、輝いていたいんだ、って」
「……まぁ、その…気付いちゃった訳、で…はい、そんな感じかなー…」
どうにも恥ずかしくなったようで。
最後の言葉を言い切って、罰が悪そうに目を逸らした。
「…そう、だったのか」
「……うん」
「……」
「…って!黙ってないで、提督くんも何か言ってよ!」
「…あ、ああ……え、えっと…」
…もしかして、さっきのは告白的な何かなのか!?
あ、ああ待て、こういう時どうすれば…。くそ、9回2氏の時より緊張するじゃねーか。
「…俺は」
「うん」
「…正直、アイドルとかよくわからんかった」
「……うん」
「だから、お前が凄いとか言われても全然実感わかなかったし、どーでも良かった」
「……」
「でもな」
「…あの日、ライブで…お前を見てさ」
「…初めて、凄いって思った」
「こんなに輝けるんだって、惹きつけられるんだって」
「………ん、んー…そ、そう、なんだー…」
那珂が、顔を真っ赤にして俯く。
「…それから」
「お前が出てるドラマとか、曲のPVとか見るようになってさ」
「ドラマは全然内容が頭に入ってこなかったし、曲は正直うーんって感じだったけど」
「っておーい!」
「…でも、お前が出てきたシーンだけは覚えてるんだ」
「……」
確かに内容なんて頭に入っては来なかったけれど、那珂の台詞や、歌った歌詞だけは。
俺の頭に鮮明に刻まれていて。
946: 2014/06/19(木) 22:04:50.35 ID:pO4cwEobo
「…今日も、あの時」
「お前に…那珂に、声を掛けられて」
「取り戻せたんだ、自分を」
「…お前の、声で」
「………提督くん」
「……だから、きっと」
「俺も、お前が――」
好きなんだ。
と、続く5文字が出てこない。
言う準備が出来ているのに、やたらうるさい心臓が邪魔をする。
腰抜けと言われてもこれは仕方ない。
そんな俺に、那珂が痺れを切らしたらしい。
「あーもう!まだるっこしい!」
「な、那珂――!?」
「………んっ!」
「…………!?」
那珂の端正な顔立ちが、視界いっぱいに広がって。
唇に、柔らかい感触が残った。
「…っぷはっ!どーだ提督くん、今、ドキドキしてる!?」
「……そ、そりゃ…す、するだろ…」
「よし、それじゃあ提督くんは那珂ちゃんの事が好きなんだ!」
「…は、はぁ!?」
「…な、那珂ちゃんもドキドキしてるから、提督くんの事が好きだよ!」
「それで、文句無いでしょ!」
「………ははっ」
「…なー!?何で笑うのー!?」
…ああ、やっぱりこいつは馬鹿だった。
でも、俺はそんなこいつが――
「ははは…すまん、いや、文句はないさ」
「…俺も、那珂が好きだ」
「……よろしい!」
那珂が笑って、俺の手を握る。
暖かく、ぷにっとした手。
「…見ててくれなきゃ、やだよ?」
「勿論、トイレから風呂までな」
「……むー、なんでそういうこと言うかな、えOち」
「ははっ」
もう一度、どちらからとも無く、顔を近づける。
再び、柔らかく、暖かい感触。
今度は、長い、長いキスだった。
77: 2014/06/19(木) 23:45:54.31 ID:pO4cwEobo
エピローグは明日と言ったな、アレは嘘だ
――教室
雷「あら、スーパースターさまじゃない」
提督「…お前までそんな事を」
雷「ふふっ、冗談よ」
あれから行われた甲子園。
俺は何か凄く活躍して優勝した。
やはり俺は凄かったのである。
…が。
その代わり、色々な弊害も増えた。
「提督くーん!あのあの、一緒にお弁当を食べたいなって!」
「ちょっと!?提督くんは私と――」
雷「はいカットー」
「雷さん!?邪魔を――」
雷「教室は皆の物ですー」
ピシャッ、と雷が扉を締める。
廊下で悔しそうに舌打ちをする音が聞こえて、足音が遠ざかっていった。
提督「……雷、案外逞しいな」
雷「そうかしら?」
提督「…ああ、ちょっと意外だった…すまんな、なんか」
雷「いいのよ、気にしないで」
提督「…しかし、さ」
雷「どうしたの?」
提督「…いや、何でそんなに俺に…その、色々してくれるんだ?」
雷「……ん、そうね…」
雷「太陽には、輝いていて欲しいじゃない?」
雷「例え、手が届かなくても」
雷「雲を払う事くらいなら、私にも出来るもの」
提督「………よくわからん」
雷「あははっ、そう言うと思った」
提督「じゃあもっとわかりやすく説明してくれよ!」
雷「いーや」
提督「…くっ…俺が馬鹿なのを良い事に…」
雷「……それで良いのかしら…?」
雷「ま、でも――」
「…頑張ってね、提督くん」
――教室
雷「あら、スーパースターさまじゃない」
提督「…お前までそんな事を」
雷「ふふっ、冗談よ」
あれから行われた甲子園。
俺は何か凄く活躍して優勝した。
やはり俺は凄かったのである。
…が。
その代わり、色々な弊害も増えた。
「提督くーん!あのあの、一緒にお弁当を食べたいなって!」
「ちょっと!?提督くんは私と――」
雷「はいカットー」
「雷さん!?邪魔を――」
雷「教室は皆の物ですー」
ピシャッ、と雷が扉を締める。
廊下で悔しそうに舌打ちをする音が聞こえて、足音が遠ざかっていった。
提督「……雷、案外逞しいな」
雷「そうかしら?」
提督「…ああ、ちょっと意外だった…すまんな、なんか」
雷「いいのよ、気にしないで」
提督「…しかし、さ」
雷「どうしたの?」
提督「…いや、何でそんなに俺に…その、色々してくれるんだ?」
雷「……ん、そうね…」
雷「太陽には、輝いていて欲しいじゃない?」
雷「例え、手が届かなくても」
雷「雲を払う事くらいなら、私にも出来るもの」
提督「………よくわからん」
雷「あははっ、そう言うと思った」
提督「じゃあもっとわかりやすく説明してくれよ!」
雷「いーや」
提督「…くっ…俺が馬鹿なのを良い事に…」
雷「……それで良いのかしら…?」
雷「ま、でも――」
「…頑張ってね、提督くん」
78: 2014/06/19(木) 23:48:49.44 ID:pO4cwEobo
――高架下
球磨「クマー!」
提督「うおっ」
物凄い勢いで突撃してきた謎の物体Xを何とか避ける。
その正体は球磨であった。
球磨「甲子園優勝、おめでとうだクマー!」
提督「…ありがとう…はいいが、何故突っ込んできた」
球磨「気持ちが逸ったクマー…」
提督「なんじゃそら」
球磨「…そんなことより!」
ビシッ、と此方を指差して。
球磨「痺れたクマー!」
提督「…ん?」
球磨「あの球、本当に凄かったクマー…」
提督「…いや…ありゃ、そんな大したもんじゃない」
球磨「……嫌味クマ?」
提督「ちげーよ」
提督「…あれはお前以外にゃ、投げられん」
球磨「……クマ?」
提督「お前が相手だったから、投げられた」
球磨「………ふっふー、もしかして球磨ちゃんに惚れちゃったクマ?」
提督「それはないから安心してくれ」
球磨「クマっ!?」
提督「…ま、なんつーか」
提督「次も負けねーからな」
球磨「…望む所だクマー!」
これからも―それこそ、高校の、その先も。
あいつとのライバル関係は続いていく様な気がする。
…何となく、そう思ったんだ。
「よし、そこの河川敷で1打席勝負だクマー!」
…やめてくれ。
79: 2014/06/19(木) 23:50:14.41 ID:pO4cwEobo
――喫茶店
間宮「…兄さんを見つけた?」
提督「はい…知り合いに頼んだんですが、結構、アッサリと…」
間宮「………そう、ですか」
間宮さんが、唇を噛む。
その悔しさを向ける先は、父さんなのか、自分なのか。
間宮「…ごめんなさいね、本当に」
提督「い、いえいえ!間宮さんには俺が謝らなきゃいけないくらいで!」
間宮「いいえ、ごめんなさい」
間宮「私がもっとしっかりしてれば、貴方の苦労をもう少し減らせたかもしれないのに」
間宮「…本当は、私が兄さんを見つけなきゃいけなかったのに」
間宮「私は、何も…」
提督「…間宮さん」
多分、言ってもわかってくれないだろうから。
間宮さんを、抱きしめた。
間宮「提督くん…?」
提督「本当に、感謝してます」
提督「俺を雇ってくれたことも」
提督「俺に、いつも夕飯を作ってくれたことも」
提督「…本当に…言い切れないくらい、色んな事を…」
提督「だから、何も出来なかったなんて、思わないでください…」
少しだけ目をぱちくりとさせて、その瞳を俺に向ける。
間宮「…ありがとうございます」
間宮「……ダメですね、私、何で私が慰められてるんでしょう…」
間宮「…あの、提督くん」
提督「はい」
「また、一緒にご飯、食べましょうね?」
80: 2014/06/19(木) 23:51:31.04 ID:pO4cwEobo
――空港
そわそわとした身体が止まらない。
空港ロビーでかれこれ数十分…いや、体感では数時間程こうしてウロウロしている。
かなり見た目には不審であろうが、そんな事を気にかける余裕は無い。
搭乗ゲートの辺りに視線をやったまま、ずっと、ずっとあの金髪の少女を待っている。
あの無駄に高い声を待っている。
それから、どのくらいの時間が経ったか――
「お兄ー!」
提督「……あ」
ぶくま、と言おうとした言葉は、果たして続くことは無かった。
阿武隈が居た。
阿武隈が走っていた。
すっかり潤いを取り戻した肌に、さらりとしたしなやかな髪。
そして、曇りのない笑顔。
見た瞬間に、涙が溢れた。
阿武隈がそこにいたから。
昔と変わらない、阿武隈が。
阿武隈「……お兄?どしたの?」
提督「…あぶくまぁ…」
涙声を隠すことも無く、俺は阿武隈を抱きしめた。
夢でないんだと、現実なんだと確かめたかった。
阿武隈「…暑いし、恥ずかしいってばー…離してよー…」
提督「……良かったなぁ…」
阿武隈「…もー…お兄のあほー…」
口では嫌がる阿武隈も、俺を振り払う事はせず。
されるがままに、抱かれていた。
阿武隈「…お兄」
提督「…ん?」
「――ただいまっ!」
81: 2014/06/19(木) 23:53:53.13 ID:pO4cwEobo
提督「本当に、ありがとう」
那珂「いいっていいってー、何回目なのさこのやり取りー」
阿武隈の病気は、海外で手術しなければ治らない。
そう、医師に聞いたのが始まりで。
俺はずっと、その為に野球を続けてきた。
大層な額だった。
名医に頼む必要があり、その上交通費、リハビリ…なんて事を計算していたら、一体どのくらいの額になるか。
…ただ、それをポンと出してくれた奴がいた。
『むむ、よーし、那珂ちゃんに任せて!』
そんな気楽な言葉で。
俺の為に、そんな額を。
……本当に、頭が上がらない。
那珂「…とゆーかですねー、そのですねー」
提督「?」
那珂「…あの、将来の家族の為にですね、お金を払うのは…当然、じゃないかなー?」
提督「……将来の、家族?」
那珂「伝わってないのー!?」
提督「…ん、あ、いや、そんな事は…その」
那珂「……んにゃ、な、なら良いんだけど…」
提督「……那珂」
那珂「は、はいっ!」
提督「…子どもの名前、何にしよう?」
那珂「……………」
提督「…………?」
那珂「気が早いわーっ!」
顔を真っ赤にして怒る那珂を見て、自然と顔が綻ぶ。
これまで、それなりに辛い思いをしてきたのだ。
こんな幸せに浸ったって、悪くは無いんじゃないだろうか。
「だ、だいたい、その、子どもって、あの」
「…そりゃ、――をしてだな」
「えOちー!」ブンブン
「わ、ちょ、おま」
「ふん、お預けだからね、とーぶん!」
「……マジか…しゃーない、なら阿武隈で…」
「…ちょっとー!?」
俺は、那珂の人生を変えてしまった。
だから、絶対にそれを後悔させないように。
彼女が、笑っていられるように。
そんな風に、生きるんだ。
【那珂 HAPPY END】
艦娘達と過ごすちょっとした学園もの【4周目4月】
83: 2014/06/19(木) 23:55:42.48 ID:pO4cwEobo
阿武隈の設定を結局ほぼ明かせなかったのが反省点
プロローグでもうちょい説明しときゃ良かった
これで3周目は終わり、流石にプロローグは明日の夜だと思います
プロローグでもうちょい説明しときゃ良かった
これで3周目は終わり、流石にプロローグは明日の夜だと思います



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