908: 2014/07/17(木) 14:11:38.50 ID:SEqjn0IRo



【プロローグ】

劇場版 艦これ


「…比叡」

手術中と書かれた赤いランプに照らされた廊下。

その手術室の側のベンチで、願うように漏らした言葉。

「ご主人様…」

隣では、いつも飄々とした様子のメイドが珍しく真剣な顔で僕を覗きこんでいる。

「…平気、心配しないで」

「……何度もお聞きしましたよ、それ」

「…そっか」

比叡が車に跳ねられた。

そして、手術をしている。

…親から言われたその言葉は、信じられない物で。

現に慌てて駆けつけた病院でこうして手術中のランプを目にするまで、信じていなかった。

いや、信じたくなかった。

「…ご主人様…」

何度目か、漣が俺を覗きこんだ時、赤く灯ったランプが消える。

白衣の医師が、ドアの向こうから現れた。

「ひ、比叡は…!」

「…――――」

「え………?」

告げられた言葉。

視界が、真っ白になったような感覚。

…結果として、彼女は生命を取り留めた。

けれど、その代わりに大事な物を失った。

909: 2014/07/17(木) 14:12:13.68 ID:SEqjn0IRo


病室。

真っ白なカーテンが、風に揺れている。

ドアを開いた音に気付いたらしい比叡が、顔を此方に向けた。

「……えーと…提督、くん…でしたよね?」

「…うん、そうだよ」

「…ありがとうございます、いつも」

「…気にしないで」

この病室の調度品の様に。

比叡の記憶は、真っ白に消えた。

記憶喪失。

信じられやしなかった。

目を覚ました比叡に、最初、僕は何度も詰め寄った。

本当に覚えてないのかと。

本当に忘れてしまったのかと。

笑って、冗談だって言ってくれと。

でも、彼女は怯える顔をするばかり。

男勝りで、少し勝ち気な彼女の面影は、何処にもなかった。

「…えっと…大丈夫、かな?」

「はい、身体は」

「…そう……なら、うん、良かった」

毎日、こうして会話を交わすでも無いのに、お見舞いに来て。

ただ、大丈夫かと聞いて帰る。

意味が無い事は知っている。

それでも、何かせずにはいられなかった。

「それじゃあ、…また」

「…はい」

病室のドアを、静かに閉める。

「…比叡様、そろそろ退院だそうですよ」

「漣」

見慣れたメイド服が、廊下に立っていた。

「…ここでお話をして、比叡様に聞こえてはいけませんので」

こっちへ、と漣が休憩室の方へ手招きする。

その中の椅子に、2人で腰を下ろす。

910: 2014/07/17(木) 14:13:42.96 ID:SEqjn0IRo


「……比叡…」

「心配ですか」

「当たり前だよ!」

言って、まるでこれでは漣に当っているようだと思い、語調を緩める。

「……そりゃ、幼馴染だし、心配に決まってるよ」

「…ご主人様」

「……これからの、比叡の生活とか…」

「では、ご主人様が比叡様のお側に居れば良いのでは?」

「…それができたら苦労しないよ」

来月から比叡は、遠くの学校で寮に入って暮らしていく事になっている。

幸い、身体的な問題は無いので、不安はあるが通わせると比叡の両親は言った。

その学校は男子禁制の、絵に描いたようなお嬢様学校。

…どうやったって、彼女の側にはいられない。

だが、漣は僕の言葉に笑みを浮かべる。

「ふふん、できる、と言ったらどうですか、ご主人様?」

「…できるわけないじゃないか」

「漣に…いえ、メイドに不可能はありません」

「ご主人様の性格のようにナヨナヨとしたほっそいほっそい身体も、ついに役に立つ時が来るんですよ」

「…さり気なく雇い主ディスするのやめてくれない?」

「良かったですね、食べちゃいたいくらいの可愛い顔で」

「…それは…褒めてるの?」

「褒めてるんですよ」

そう言って、メイド服の隙間からいくつかの道具を取り出す。

…どうなってるのさそれ。

バサバサと机に広げたのは、化粧道具と鏡。

そして。

「…ふっふーん♪」

さも楽しげに最後に取り出した、ウィッグ。

嫌な予感がした。

というか、嫌な予感しかしなかった。

「ではでは、ご主人様…いえ、お嬢様の改造計画、はじめちゃいましょうか♪」

「あの、漣…?」

「へっへー、まーまー、じっとしとけやおじょーちゃーん」

「ひっ、ちょ、漣ぃっ!?」

911: 2014/07/17(木) 14:15:18.58 ID:SEqjn0IRo


校門の側、入学式と書かれた看板。

そこ横に記された文字。

『舞鶴女子学園』。

…入学式なのだ。

そう、僕の高校の入学式なのだ。

なのに、女子校。

「あれー?お嬢様、ほらほら、立ち止まってないで急いで下さいよぅ」

「…わかってる…こほん、ええ、わかってるわ」

…名誉な事か、不名誉な事かは生憎わからないが。

女装で、入試も面接も潜り抜けてしまった提子ちゃん。

御年15歳、男子。

…男子。

「…ひえー…大きな学校ですね」

「…比叡さん、ほら、行きましょう?」

「はい、提督…ええと、提子さん」

「……うぅ」

これで比叡の側に3年間いられるとはいえ。

もっと別なやり口は無かったのか。

そう悔やむばかりである。

女子寮は、金の力で個室を確保。

隠し切れない女子にしては高い背と、少し低い声は、なんかお姉様っぽいキャラで通す。

そしてお付のメイドにフォロー役の漣。

ふははははは。

もう駄目だよ。

僕はなんなんだよ。

「…ふふふふ」

「こらお嬢様ー、そんなセンチにメンタってないで行きますよー」

「…ええ、漣…」

「…くくっ…」

「…今笑わなかった?」

「おじょ、お嬢様、この漣がそんな…くふふ…うぷ…うぷぷぷぷ…」

「…もういいわ」

「あ、待って下さいー」

「あの、置いて行かないで…」

「…ご、ごめんなさいね、比叡さん」

「くふっ…」

笑うメイドと、戸惑う比叡を連れて体育館までの道を歩く。

…うあー…。

912: 2014/07/17(木) 14:16:07.84 ID:SEqjn0IRo


「はい、新入生の方はこちらで――」

校門から体育館までは、思ったよりも距離があった。

比叡も、少し息があがっている。

「大丈夫?」

「…あ、はい、大丈夫です」

「…それならいいのだけれど」

「…ぷっ…くくっ…」

「メイド、黙ってなさい」

「あいあいさー」

馬鹿にするような笑みを張り付けたまま敬礼する漣。

…もう放っておこう。

先生らしき人が配っている新入生の手引きを取りに行こう、と比叡の手を引く。

「すいません」

「あ、新入生の方ですね、ええと―」

資料の山から、顔を上げた教師。

「……っ!?」

その顔を見て、俺は固まらざるを得なかった。

「…あれ?あ、もしかして…比叡ちゃん?」

「………?」

「…あはは、わかんないかー…私ね、明石…近所に住んでたんだけど、覚えてないかな?」

「…も、申し訳ないです」

「いやいやー…結構昔だしねー…しょうがないかー…と、君は?」

「……私、提子と申します…比叡さんとは、その…校門の所で、知り合いまして」

「おー、そうなの、そっかそっか、比叡ちゃんと仲良くしてあげてね」

「…って…あれ……?うーん、君もなんか、どこかで見たような顔なんだけど…」

「…気のせいでしょう、失礼します」

「あ…」

手引きを乱暴に受け取って、慌てて顔を背ける。

…忘れるはずもない。

忘れずはずがなかった。

明石おねえちゃん。

懐かしい、その名前を。

913: 2014/07/17(木) 14:16:43.43 ID:SEqjn0IRo

「へー、感動の再会ですね」

「へーじゃないよ!」

「ふふ、相次ぐお嬢様の不幸でメイド、メシウマです」

「もうちょっと主人を気遣いなよっ!」

「あぁ…どうしよう、もし担任とかだったら…」

「ま、別にバレやしませんて、この漣のヘンソウ=ジツは一級品ですから」

「…今、発音おかしくなかった…?はぁ…」

入学式を無事に終え、今度は校舎へと向かう。

これからの事を思えば、不安しか湧いてこない。

周りにはいかにもといった育ちの良さそうなお嬢様達。

その中で、3年間もどうやって過ごせばいいのか。

…というかバレたらどうなるんだろ。

…犯罪?犯罪だよね、はぁ…。

もう一度、周りを見回す。

「…あの方、とても凛々しいですわね…」ボソッ

「…ええ、美しい顔立ち…」ヒソッ

心なしか、皆が僕を見ているような気までする。

ヒソヒソと何かを呟きあって。

…やはり不自然なのだろうか…ああ…バレたら…。

そんな時、人垣の一角がざわめいた。

「きゃっ…!」

どうも、何かに躓いて人がコケてしまったらしい。

地面に、女の子がうずくまっている。

それを、皆が遠巻きに見つめていた。

「……あれー?立てないのかな?」

「…お嬢様、周りの会話をよーくお聞きになって下さい」

「…会話?」

漣の言葉に、周りに耳を澄ます。

「……まぁ、入学初日から制服を汚して…」

「…汚らしいですわね」

「…歩き方がなってないから…」

…それは、思わず耳を疑うような言葉だった。

誰もあの娘を心配なんかしていない。

むしろ、誰もが彼女を馬鹿にしていた。

それはきっとうずくまった彼女にも聞こえているはずだ。

「………っ!」

「お嬢様!?」

「提子さん!?」

そんな事を考えたら、身体が勝手に動いていた。

比叡と漣の制止を振りきって、地面にうずくまった彼女に駆け寄る。

914: 2014/07/17(木) 14:17:09.76 ID:SEqjn0IRo



「…貴女」

「……え?」

声をかけると、少し怯えた目を向けて顔を上げた。

髪の毛と同じ、栗色の瞳が僕を捉える。

…もしかして泣いていたのか、その瞳はどこか腫れぼったいものだった。

「……な、何か…?」

「…じっとしてなさい」

「あ、あの…?」

顔に付いた汚れと涙を、ハンカチで拭う。

「…き、汚い…ですよ?」

「そんな事はないわ」

「…………」

ひと通り顔を拭いて、彼女を立たせ、今度は制服に付いた埃を払う。

…触れ合ってしまうのは仕方ない、事故だ。

「…うん、これで良いわね」

「気を付けなさい、今度から」

「…は、はいっ…あ、あのっ!」

「何かしら?」

「…お、お名前をお聞きしても良いでしょうか?」

「…提子よ」

…凄く名乗りたくない名前なんだけどね。

ちくしょう、もうちょっと凝った名前考えればよかった。

「……貴女は?」

そんな内心を誤魔化すように、聞き返す。

「お、大井…大井、です」

「…大井、そう、いい名前ね」

「あ……」

「じゃあ、私はこれで」

「そうそう…大井さん、貴女、きっと笑っている方が可愛いわ」

去り際に、そんな事を言ってみる。

…別に口説いた訳じゃない、ずっと沈んだ顔だったからってだけだ。

「……は、はい…はいっ!て、提子お姉様っ!」

「……おね…?」

「氏ねやジゴロォ!」

「おごっ!?」

なんだそれは、と振り向こうとして、後ろから飛んできたメイドに腹をぶん殴られる。

とても女の子が出しちゃいけない声が出た。痛い。

915: 2014/07/17(木) 14:17:36.75 ID:SEqjn0IRo


「……ふーん」

「ただキュークツそうな学校だと思ってたけど」

「中々面白い人もいるねー」

「にゃは、うんうん、タイクツしないで済みそーだ」

そんな彼ら…いや、彼女らを、野次馬に混ざって見つめる一つの影がいた。

白い肌と、白い髪。

制服をダルそうに着崩したその影は、楽しそうに笑っていた。



【プロローグ 終】

946: 2014/07/18(金) 18:00:09.90 ID:gUX6x0yuo
今週のみ提督の名前表記は違和感バリバリなので省くよ


【4月1週】


「提子様、お付きのメイドまでいらっしゃるのですね」

「ええ、こんな歳にもなって恥ずかしいのだけれどね」

「そ、そんなこと無いと思いますわ!」

「あら、そうかしら」

大井「そうですっ!」

「…お、大井さん?」

大井「お姉様に恥ずかしい所なんて有りません!ええ!」

「…そこまで言われると、少し照れくさいのだけれど」

大井「も、申し訳ありません!…ですが、お姉様に恥ずかしい所など――」

「ええ、ええ…わかったわ、だから、そんなに力説しなくて良いのよ」

大井「ああ…素敵です、お姉様…」

漣「………比叡様、比叡様、見てください」

比叡「…?」

漣「あれがプライドを全部投げ捨てた者に出来る業です」

うるさいぞメイド。

せめて僕の聞こえないところで言え。

わかってるんだよ僕だって。ちくしょう。




コミュ対象>>+4


比叡  **0/500
漣    **0/500
明石  **0/500
大井  **0/500
レ級  **0/500

954: 2014/07/18(金) 18:20:36.65 ID:gUX6x0yuo


――女子寮・私室



提督「…ふぅ…あー…ダメだー、疲れたぁ…」

漣「初めての登校お疲れ様です、お嬢様」

漣「とても可愛らしかったですよ」

提督「………あのさー…」

悪びれもせずに言うメイドを睨むも、何か?と笑顔で躱される。

ホントに漣は…まったく。

提督「…だいたい、漣が僕にやらせたんじゃないか」

漣「…ふっ、お嬢様、私はただこういう方法もある、と提案しただけで、最終的に決めたのは貴女ですよ」

提督「あの時無理矢理ウィッグと化粧をさせたじゃないか!」

漣「…いや、私もここまでハマるとは思いませんでした」

提督「そういうことを言ってるんじゃないよ!」

どうやら何を言ったって無駄そうだ。

ベッドに身体を投げ出す。

高級な物らしく、ふかふかで柔らかい。

ベッドに沈む心地よさに浸っていると、ふと、ある事に思い至った。

提督「そういえば、漣はどこで寝るの?」

漣「……どこで、とは?」

提督「いや、この部屋、一つしかベッドないし…」

漣「あはは、お嬢様、決まってますって」

そんな事聞くまでもありません、と漣は笑い、僕の転がるベッドの側に立つ。

漣「勿論、ここです」

そして指差したのは、僕の隣。

…え。

…え?

…ええっ!?

提督「ちょ、ちょっと漣!?」

漣「…それとも、ご主人様は私に床で寝ろと言うのですか…?」

どう考えてもわざとだろうが、漣が目を潤ませて僕を見る。

こういう時だけご主人様を使うんだから調子が良い。

……え、えーと――


>>+4


A.…じゃあ、仕方ないかな。

B.…いや、ダメでしょ。

C.…わかった、僕が床で。

960: 2014/07/18(金) 18:35:26.76 ID:gUX6x0yuo
C.…わかった、僕が床で。(*1.5)


提督「…わかった、僕が床で寝るよ」

漣「…ご主人様?」

提督「やっぱり、漣を床で寝かせる訳にはいかないよ」

漣「…相変わらず、お優しいですね」

漣「ですが、気にしなくていいんですよ」

提督「いや、気にするよ、だから…」

漣「嘘ですから」

提督「ベッドで――え?」

提督「嘘?」

漣「はい、私は私でちゃんと部屋があります」

漣「ご主人様のお父様がねじ込んでくれましたから」

提督「…嘘なの?」

漣「はい、…あ、ふふー、期待しちゃいましたかー?」ニヤニヤ

提督「…漣ー!」

漣「あっはははは!怒んないで下さいよー」

提督「……いっつもそうだよ、漣は僕をからかって…」

漣「…でも、嬉しかったです、ご主人様」ボソッ

提督「…?今、何か言った?」

漣「いーえっ!何も!」

漣「それでは、私はこの辺で失礼致します」

提督「…うん、おやすみ」

漣「はい、おやすみなさいませ…」

漣「あ!」

提督「どうしたの?」

漣「…ティッシュの処理には気を遣ってくださいね?」

提督「余計なお世話だよっ!」



漣→ 114/500

961: 2014/07/18(金) 18:46:30.81 ID:gUX6x0yuo


【4月2週】


明石「…あ、提子さんじゃないですか!」

「!?」

「あ…明石おね…こほん、明石先生」

明石「はい!嬉しい、覚えていてくれたんですね!」

明石「入学式以来、中々会えなかったので、少し心配してたんですよ」

明石「比叡ちゃんとは仲良くしてくれてますか?」

「え、ええ…比叡さんは良くしてくれています」

明石「そう、それなら良かった」

「…あの、比叡さんとは小さい時に知り合ったと言っていましたが」

明石「ええ、近所に住んでたんです、昔」

明石「よく3人で遊んだなぁ…」

「…3人って…」

明石「ふふ、男の子もいたんですよ、1人」

明石「男の子なのに、とっても可愛い子だったんです」

「…そ、そうだったんですね」

明石「でも、比叡ちゃんが覚えてないのはちょっとショックだったけどねー…あはは」

…僕は覚えています。

そして多分、僕がその男の子です。

とは、言えないよなぁ。


コミュ対象>>+4


比叡  **0/500
漣    114/500
明石  **0/500
大井  **0/500
レ級  **0/500

975: 2014/07/18(金) 22:05:57.73 ID:gUX6x0yuo


――廊下


明石「ああ、提子さん」

「…明石…先生、どうも、こんにちは」

明石「はい、こんにちは…最近、よく会いますね」

廊下を歩いていると、後ろから投げられた声。

振り向けば、大量の資料を抱えた明石おねえ…明石さん。

「……大丈夫ですか?良ければ、手伝いますが」

明石「なんの、大丈夫ですよ、先生ですから」

「…しかし、女性がそのように重そうに荷物を持っているのを見過ごすのは…」

明石「…ふふっ、提子さん、貴女も女性でしょう?」

「……え、ええ…まあ、そうですけれども」

危ない。

素で僕に秘められし英国面が顔を覗かせていた。

…何やってんだよ僕は。

もっと、もっと女らしくならないと!

………。

実に悲しい決意である。

だが、必要な事なのである。

…僕って…。

明石「…提子さん?」

いきなり黙った僕を、明石さんが不思議そうに見る。

いけない、ただでさえ荷物を持っているのに、こうして立たせていたら、明石さんの負担が増えるだけだ。

「いえ…すいません、重そうな荷物なのに、引き止めて」

明石「ああ、いえいえ、気にしなくていいんですよ」

「…それでは、私はこれで」

明石「はい、次の授業も頑張ってくださいね」

明石さんに背を向け、教室へ向かおうと一歩を踏み出す。

すると、背後でバサ、と紙の舞う音がした。

次いで、あちゃー、と明石さんの声。

…………。

…何が起こったのかは、想像に難くない。

うーん…――



>>+4


A.手伝いたいけど、正体が…。

B.……手伝おう、見て見ぬふりは出来ない。

C.……急いで帰ろう。

985: 2014/07/18(金) 22:16:49.98 ID:gUX6x0yuo
A.手伝いたいけど、正体が…。(*1.0)


…手伝いたい。

大丈夫ですかと駆け寄りたい。

だけど…。

正直、できることなら明石さんとの接触は最低限にしておきたい。

無論、正体がバレるという危険性を危惧してだ。

あの人が何かのきっかけで僕に気付く、という可能性は流石に少ないだろうけど。

僕の方にボロが出てしまう可能性は十分にある。

……。

うん。

ごめんなさい、明石さん。

背後で、おそらくは一生懸命にばら撒いた資料を集めている明石さんに心の中で謝って。

後ろ髪を引かれる思いで、僕はその場を後にしたのだった。

…ごめんなさい。



明石→ *74/500

987: 2014/07/18(金) 22:24:42.77 ID:gUX6x0yuo


【4月3週】


…いつまでも慣れない、というか、慣れてはいけないだろうという物がある。

「………………」

それは、トイレである。

…いや、もう。

何と言いましょうか。

凄くムズムズする。

でも生理現象だ、行かないわけにもいかない。

便座に座っていると、女の子達の会話が聞こえるし。

お嬢様方、結構えげつない話題で盛り上がってるし。

…もう、はぁ。

なんかもう、ここに座っているだけで心が削られる。

「…でも、やはりA組の提子様、彼女は素敵ですわね」

「ああ、確かに…いつも非常に凛々しい眼差しでいらっしゃいますわ」

「…いつも一緒にいらっしゃる、比叡様という方とはどういった関係なのでしょうか?」

「もしかして…」

………。

ああ。

もうしばらく、便座に座っていなきゃだなあ、これ。


コミュ対象>>+4


比叡  **0/500
漣    114/500
明石  *74/500
大井  **0/500
レ級  **0/500




7: 2014/07/18(金) 22:50:48.58 ID:gUX6x0yuo

――女子寮・私室


提督「…あー…ホント疲れるね、毎日」

漣「おつー」

提督「軽いよ…」

漣「まーまー、どぞどぞ、心の安らぐカモミールティーでございます」

提督「…ありがとう」

どこから取り出したのか、ポットとティーカップを机に並べ、慣れた手つきで紅茶を注ぐ。

ふわっと、部屋に香りが広がった。

提督「…美味しい」

漣「この漣、お嬢様に喜んで頂けて至上の幸せでございます」

提督「……お嬢様はやめてよ」

漣「では着替えたら如何ですか?お・じょ・う・さ・ま?」

ニヤ、と意地の悪い笑みを浮かべる漣。

視線の先を追う。

提督「…へ…?う、うわっ!?」

そうだった。

未だに僕は制服にウィッグと、女装状態のまま。

…この格好で寛いでたのか僕…。

漣「ぷーくく…」

僕の絶望的な顔に、堪え切れない、そんな様子で漣が吹き出した。

提督「漣ー…言ってよ、ちゃんと」

漣「ぷぷ…なーに言ってるんですか、ちゃんと言いましたよー?」

提督「…もうちょっと早く」

漣「次からなるべく善処いたしましょう」

提督「…はぁ」

…ほんと、漣は変わらない。

主人だぞ僕は…なんて言っても適当にかわされるんだろうな。

漣「…しかしですね、ご主人様」

提督「うん?」

漣「私は、確かにご主人様をからかって遊ぶのが大好きですが」

漣「ご主人様の事は大好きですので」

提督「なっ!?」

淀みない言葉を、変わらぬ表情で並べる。

相変わらず、その本心は笑顔に隠されて見えない。

どういうつもりなのか――


>>+4

A.…なんか気持ち悪いよ、漣。

B.…僕も。

C.…まぁ、ありがと。

16: 2014/07/18(金) 23:04:05.55 ID:gUX6x0yuo
B.…僕も。(*1.5)


提督「…うん」

提督「僕も好きだよ、漣のこと」

意趣返し、という訳では無い。

一応、偽らざる本心である。

昔からずっと、まるで姉のように僕の面倒を焼いてくれていたのだ。

勿論、変えて欲しい事は一杯あるけど。

漣「………ごしゅ…ごほん!ご主人様、何ですかいきなり」

珍しく、漣が言葉に一瞬詰まった。

提督「別に、思ったことを言っただけだよ」

漣「…生意気です、ご主人様のくせして」

提督「そうかな?」

漣「そうです、気に入らないです」

提督「……えー…」

このメイド、なんとも傲慢である。

でも、それが漣だ。

漣「何笑ってるんですか、ご主人様」

提督「いーや、漣はやっぱり、漣だなあって」

漣「…意味がわからないです、ぶっ飛ばしますよ」

提督「はは、それは困るね」

漣「…むぅ」



漣→ 187/500


17: 2014/07/18(金) 23:09:57.54 ID:gUX6x0yuo


【4月4週】


一番困るのはいつですか?

…体育の時間です。

パーフェクトメイド漣のフォローにも関わらず、割と毎度毎度危機を迎えている。

それというのも…。

大井「…うへへ…お姉様のお着替え…生お着替え…うへへへへ…」

「…大井、貴女目が怖いわよ」

大井「そうでしょうか?どうかお気になさらず続きを…うへ、うへへへ…」

「…………」

漣助けて!

視線を送ると、しょうがないですね、と漣が息を吐く。

漣「申し訳ありませんがお嬢様のお着替えは比叡様と私だけしか見てはいけない決まりになっていまして」

大井「何ですって!?」

…君は何を言っているのか。

比叡「…そうだったんですか?」

…君も何を言っているのか。



コミュ対象>>+4


比叡  **0/500
漣    187/500
明石  *74/500
大井  **0/500
レ級  **0/500

53: 2014/07/19(土) 20:18:20.89 ID:6m6z/fJro


――女子寮・私室


漣「ご主人様、夕食をお持ちいたしました」

提督「…ありがと」

漣「いえ、お気になさらず」

一応、寮には食堂なるものが存在するのだけれど、いつも夕食は部屋で取る。

理由は単純に女装が嫌だから。

…嫌だからね?ホントに嫌がってるからね?

…こほん。

まあ、基本的に寮の食堂や大浴場には近寄らない。

……そのせいでまた変な噂ができていたりもするのだが。

肌を執拗に隠す理由がなんとかみたいな。

ただ、それは仕方ないと割り切るしかない。

だって食堂はまだしも浴場は…ねぇ?

そんなわけで、夕食はいつもこうして漣と一緒である。

漣「美味しいですか、ご主人様?」

提督「うん、ありがとう漣、美味しいよ、いつも」

漣「…それは良かったです」

本人は無表情のつもりなのだろうけど、口元が少し綻んでいる。

こういう所、可愛いなあ、漣。

漣「…何ですか、じっと見つめて」

提督「何でもないよ」

漣「……そですか」

何か不満気に、漣が食事へ戻る。

彼女の食事の姿勢は、かなり美しい。

それは食事に限ったことではない。

全ての所作が、漣は完成されている。

いい意味で適当なのだ。

漣「…だから、なんなんですか」

提督「あ、いや…ごめん、漣、礼儀正しく食べるなあって」

漣「当然です、私の恥は、ご主人様の恥…そんな物を晒すわけにはいきません」

漣「貴方にとって常に良き従者となるよう、私は心がけていますから」

提督「…そ、そうなの」

…結構重い理由だった。でもそんなに忠誠を見せるなら主人を女装なんてさせないでくれ。

しかし、漣め…案外僕の事を想ってくれてるんだな―――



>>+4

A.…ま、これからも精進しなさい。

B.…いつもありがと、漣。

C.………お礼を言うの、なんとなく照れくさい。

67: 2014/07/19(土) 20:33:06.23 ID:6m6z/fJro
B.…いつもありがと、漣。(*1.5)


提督「…漣」

漣「はい?」

提督「いつもありがと」

漣「……へ?」

完璧な動作が乱れる。

牛肉に突き刺そうとしたナイフが、皿を擦った。

甲高い音が鳴る。

漣「…な、なんですか突然」

提督「いや、さっきの言葉が嬉しかったから、感謝したくなった」

漣「い、いいんですよそんな事しなくて!」

漣「そもそもあんなの、従者として当然の心がけなんですから!」

提督「それでも、漣にありがとう、って言いたかったんだよ」

漣「……なんですか、もう、ホント…ご主人様のくせして」

漣「…………」ボソッ

小さく、漣が呟く。

それは、僕の耳には届かない。

提督「…今なんて言ったの、漣?」

漣「………」

漣「……これからも、頑張りますので」

提督「ん、お願いね」

漣「…ま、というかご主人様には私が付いてないとダメでしょうからね、しゃーねーですねホント」

提督「うんうん、そうだよ」

漣「……くぅー…」

おそらく恥ずかしさを誤魔化すために吐いた悪態を、笑顔で肯定してやる。

すると、今度こそ何も言う事がなくなったらしく、漣は黙って食事に戻った。

その動作は、やっぱり少し、ぎこちなかったのだけれど。


漣→ 284/500




68: 2014/07/19(土) 20:45:52.48 ID:6m6z/fJro


【漣―その1】


幼い頃の記憶。

よくわからないままに、薄れていった記憶。

気付いたら、独りだった事は覚えている。

施設の中で、ただ、生きていただけの私。

そんな私を拾ってくれた人。

貴方が、私を拾ってくれた。

貴方が、私を人間にしてくれた。

だから、私は人間としての一生を、貴方に捧げようと思ったんです。

貴方が望むなら、どんなことでも叶えてみせます。

貴方を害する物は、何であっても排除します。

それが、私という存在。

私は、真に貴方の物。

だから、感謝などしてくれなくて良いのです…けれど。

「…こりゃまいったなー…ちっくしょー…」

湧き出る嬉しさと、止まらぬ高鳴り。

「………いやはや、なんともなんともー…」

予想以上に嬉しかったです、ご主人様。

艦娘達と過ごすちょっとした学園もの【7週目5月】

引用: 【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★6【安価】