1:2017/03/07(火) 00:08:49.088
― 城 ―

王「おぬしが王国主催の体力テストで、トップだった村人か」

村人「そうですだ」

王「では、その身体能力の高さを見込んで、おぬしに特命を申しつける」

村人「は、はいっ!」

王「近々、魔王討伐のために、勇者が仲間とともに出発することになっておる」

王「しかし、その旅は困難が予測される。おそらく幾度となく難所にぶつかり、つまずくことだろう」

王「そこで、おぬしに勇者のためにセーブポイントを設置してもらいたいのだ!」

村人「セーブポイント……?」



9:2017/03/07(火) 00:11:40.770
村人「なんですか、セーブポイントって?」

王「セーブポイントとは、勇者のみ扱える冒険を記憶することのできる装置だ」

王「これがあれば、勇者がたとえ冒険の途中で倒れても、そこからやり直すことができる」

王「しかもこれは、絶対に破壊することはできないのだ」

村人「へぇ~、すごい装置ですねえ」

王「おぬしには勇者の旅を先回りするようにして、これを各地に設置してもらいたい」

村人(こりゃあ大役だ……!)

王「ただし、気をつけるべきことが二つある」

村人「なんですか?」

王「一つは、セーブポイントの数は限られている。全部で50個しかない」

王「そしてもう一つ、一度設置してしまえば、やり直しは効かぬ」

王「ゆえに、どこにセーブポイントがあれば勇者が助かるかをよく吟味して、設置してもらいたい」

王「頼んだぞ」

村人「……頑張りますだ!」
14:2017/03/07(火) 00:14:28.812
― 村 ―

村娘「ええっ、セーブポイントってのを設置するために旅に出るだべか!?」

村人「ああ、魔王城までな」

村娘「そんなの危険だべ! 行かねえでくれ!」

村人「そういうわけにもいかねえだ」

村人「オラがちゃんとセーブポイントを設置しねえと、後で旅に出る勇者様たちは困っちまうだ」

村人「そうなったら、この世界は魔王の物になっちまう」

村人「だけど、心配すんな! オラ、絶対帰ってくる!」

村娘「分かったよう……あたし、待ってる。絶対死なないでくれよ!」

村人「もちろんだ! んじゃ行ってくる!」
16:2017/03/07(火) 00:16:36.712
村人「どっこいしょ」ドスンッ

村人「セーブポイントってのを、全部荷車に積み終えただ」

村人「じゃあ、しゅっぱーつ!」

村人「よいしょ、よいしょ、よいしょ!」ガラガラガラ…
20:2017/03/07(火) 00:19:26.036
― 洞窟 ―

村人(勇者様が最初に立ち寄る難所といえば、おそらくここだべな)

村人(この中にゃ、魔物がいっぱいいるってウワサだもんな)

村人「とりあえず、洞窟の入口にセーブポイントを設置して、と」ザクッ

村人「洞窟の中へGOだべ!」ガラガラガラ…
25:2017/03/07(火) 00:22:45.422
村人(ひえ~、おっかねえ)

村人(洞窟ン中、暗くて前がなかなか見えねえだ!)

バサバサバサッ!

コウモリA「キーキーッ!」

コウモリB「キーッ!」

村人「うわぁ、吸血コウモリだべ! あっち行け! シッシッ!」

ビースト「グルルル……!」

村人「ゲ、今度は猛獣だべ! ヨダレたらしてるべ!」

ビースト「ガァァァッ!」

村人「逃げるべえっ!」ガラガラガラ…
28:2017/03/07(火) 00:25:31.948
洞窟の主「ZZZ……」


村人(あれがこの洞窟の主だべな。でっけえ図体してて、おっかねえ)

村人(とてもオラじゃ歯が立たねえだ)

村人(だけど、こいつの手前にセーブポイントを設置すれば、きっと勇者様は喜ぶはず……)

村人「起こさないようにそーっと……」ザクッ

村人(よっしゃ、設置できた!)


洞窟の主「!」ピクッ
29:2017/03/07(火) 00:27:29.746
洞窟の主「わしの眠りを妨げるものは誰じゃ~?」

村人「ひっ!?」

洞窟の主「なんだぁ、オマエ? もしや人間かぁ~?」

洞窟の主「わしは人間が好物なんじゃ~! 丸飲みにしてやるぅぅぅ!」グワバッ

村人「ひえええええっ! 逃げる、逃げるだぁっ!!!」ガラガラガラ…
31:2017/03/07(火) 00:30:05.570
村人「ハァ、ハァ、ハァ……死ぬかと思った。けど、やったぁ!」

村人「洞窟の入り口と洞窟の主の手前に、セーブポイントを設置することができただ!」

村人「これで勇者様はだいぶ楽になるはずだべ!」

村人「よぉ~し、コツは掴んだだ! 残り48個、どんどん設置していくだ!」



一仕事を終え、ほっとする村人。

しかし、これは更なる苦難の始まりに過ぎなかった……。
34:2017/03/07(火) 00:34:19.357
― 草原 ―

村人「ふぅ、ふぅ、ふぅ、セーブポイントって重いなぁ」ガラガラガラ…

村人「ここらへんで休むだべか」


スライム「ピギャーッ!」

ゴブリン「グオオオオッ!」

ワーム「キシャァァァッ!」


村人「わわっ、魔物の群れだ! ひいいいっ、逃げるしかねえべ!」ガラガラガラ…
37:2017/03/07(火) 00:37:31.945
― 吊り橋 ―

村人「ひえぇ~、おっかねえ」

村人「こんなオンボロ橋を、でかい荷車を引きながら、渡らなきゃならないなんて……」

村人(だけど……これも勇者様のため! 世界のため!)ギシギシ…

ポトッ

村人「あっ……」

ザクッ

村人「あああああっ! セーブポイントが吊り橋の下に落ちて、設置されちまっただ!」

村人「ありゃあ、もうどうしようもねえだ……」

村人「勇者様、セーブポイント一個無駄にしちゃってごめんよぉ……」
39:2017/03/07(火) 00:40:42.530
― 山道 ―

村人「うへぇ~、キツイべ」

村人「こんな急な坂道を、登らなきゃならない、なんて……! よいしょ、よいしょ!」ガラガラ…

デビルベアー「グオオオオオッ!」

村人「し、しかも熊のバケモノまで飛び出てきた!」

村人「こんのおっ!」バキッ

デビルベアー「ギャヒイッ!」ドザッ

村人「オラだって、この旅で多少は鍛えられてんだ! ナメるんじゃねえべ!」
42:2017/03/07(火) 00:45:10.424
― 山頂 ―

村人「い~い眺めだべ~……」

村人「ここにも一個設置しとこう」ザクッ

村人(セーブポイント設置の旅に出なきゃ、こんな景色を見ることも一生なかったろうな)

村人(もし、オラがセーブポイントの設置を適当にやったら……)

村人(勇者様はうまく冒険できなくなって、世界は魔王の物になっちまうだ!)

村人「よぉ~し、頑張るぞ!!!」


ガンバルゾー……

ガンバルゾー…


村人「おおっ、声が響く! これが噂に聞く山びこだべか!」
44:2017/03/07(火) 00:48:18.181
― 山道 ―

村人「もうすぐこの山岳地帯を越えられるだ」

村人「さて……今日はこの辺で野宿するべ」ゴロン…

村人「ぐぅ、ぐぅ……」



盗賊A「おい、あのみすぼらしい旅人の荷車にある物体、なんだありゃあ?」

盗賊B「あんなに大切に運んでることは、よほど高価なもんに違いねえぜ!」

盗賊C「よっしゃ、丸ごといただいちまおうぜ!」
46:2017/03/07(火) 00:50:54.529
チュン… チュンチュン…

村人「ふああ……よく寝ただ」

村人「……あれ?」

村人「あーっ! セーブポイントが荷車ごとなくなってるだ! まだ40個あったのに!」

村人「あ、これは! 足跡がいくつも残ってるだ!」

村人「きっと盗賊が盗んでったんだべ……よーし、追いかけてブチのめしてやるだ!!!」
49:2017/03/07(火) 00:54:28.499
― 盗賊団アジト ―

村人「どりゃあっ!」バキッ

村人「うりゃあっ!」ドカッ

村人「もいっちょぉ!」ドゴンッ

村人「あーあ、こんなとこに三つも設置しちまって……こりゃもうどうしようもないだ」

盗賊ボス「ひ、ひいい……手下50人があっさりと……」

村人「さぁ、セーブポイント返すべ!」

盗賊ボス「か、返します返します! こんなのどうせ金にならねえし!」

村人「それと、もう悪いことすんじゃねえぞ!」

盗賊ボス「しませんしませぇん!」

村人「なら許してやるだ」

村人(セーブポイントを三つも無駄にしちまっただ。今度からは寝る時も気を付けねえと……)
51:2017/03/07(火) 00:58:53.053
― ふもとの里 ―

里長「盗賊団を壊滅していただき、ありがとうございます」

村人「いやいや、困った時はお互い様ですだ」

里長「勇者様のためにセーブポイントを設置する旅とは……大変ですなぁ」

村人「大変だけど、やりがいはあるだよ!」

里長「それにしても、200年前に倒されたはずの魔王が再び現れるとは、恐ろしいことです」

村人「え、200年前にも魔王がいたんだべか」

里長「ええ、その時に魔王を倒したのは、今の勇者様の先祖である英雄とその相棒の二人組だったそうです」

村人「へぇ~、きっと仲良かったんだろうなぁ」

里長「そのようです。二人は破竹の勢いで魔物の軍勢を破ったと聞きます」

里長「ところが……」
53:2017/03/07(火) 01:01:34.994
里長「魔王を倒した後、英雄は莫大な報酬を与えられるなど、大変厚遇されたようなのですが」

里長「相棒だった方は、それほど恩恵にあずかれなかったようなのです」

里長「二人とも同じぐらいの強さだったのに、ほんの少しお金を渡されただったとか」

村人「二人で魔王を倒したのにひどい話だべ……」

村人「で、その相棒はどうなったんだべか?」

里長「結局、失意のまま行方をくらましてしまった、ということです」

村人「そんなことがあっただべか……悲しい話だ……」

村人「ま、だけど、今の勇者様は素晴らしい人だから、仲間差し置いて褒美独り占めなんてしねえべよ!」

里長「……そうだといいですな」

村人「色々世話になっただ! 出発するだ!」

里長「お気をつけて」
55:2017/03/07(火) 01:04:37.567
― 迷いの森 ―

村人「すっかり迷っちまった……」

村人「うへぇ~、さっきも同じところ通ったなぁ」

村人「ここはセーブポイントを多めに設置しておいた方がいいだなぁ」ザクッ

人食い植物「キシャァァァァァッ!」ニュルニュルニュルッ

村人「わわっと、逃げるが勝ちだべ!」ガラガラガラ…
56:2017/03/07(火) 01:07:16.141
― 火山 ―

村人「ふぅ、ふぅ、暑いだ……」ガラガラ…

村人「だけど……火山には巨大な竜が住むっていうし、なるべくその直前に設置しなきゃ……」

ゴボゴボッ…

ファイアドラゴン「ギャァァァァスッ!!!」

村人「出、出たぁっ!」

村人「設置して」ザクッ

村人「逃げるだぁぁぁぁぁっ!」ガラガラガラガラガラ…

ファイアドラゴン「ナント逃ゲ足ノ速イヤツヨ……」
61:2017/03/07(火) 01:12:16.441
― 天空の国 ―

村人「いやぁ~、豆の木を登ったら雲の上に国があるなんて驚きだべ!」

天女「わらわは天女じゃ……」

村人「おわっ、こりゃべっぴんさんだべ!」

天女「ここまで来た褒美に、なにか願いを叶えてやるぞよ?」

村人「魔王を倒して下さい」

天女「すまん、そりゃちと無理じゃ」

村人「ハハハ、冗談だべ」

村人「じゃあ、ここにセーブポイントを設置してもいいだべか?」

天女「欲のない奴じゃな」

村人「いや、そうでもないべよ。ほら」ムックリ

天女「……下半身は正直な奴じゃな」
66:2017/03/07(火) 01:14:42.493
― 雪国 ―

ビュオォォォォォ……!」

村人「うへえ……さみ……!」

村人「オラ、暑いのはまだ平気だけど、寒いのは苦手だべよ……」

村人「とっととセーブポイント設置して、こんなとこからはおさらばするだ!」ザクッ

村人「うぅ~……さむっ!」
71:2017/03/07(火) 01:17:48.745
― 暗黒の谷 ―

村人(黒い霧に包まれたおっかねえ谷……)

村人(呼吸するだけで、肺が苦しくなるだ!)

村人(早く村に帰って、村娘とイチャイチャしてえだ)

村人(だけど……勇者様のために……! 世界のために……! 村娘のために……!)



村人「突き進むべえええええええええっ!!!」
73:2017/03/07(火) 01:21:34.294
― 魔王城 ―

村人「でっけえ城だなぁ~……」

村人「ついにここまでたどり着いただ……」

村人(50個あったセーブポイントも、あと残り二つしかねえ)

村人(まず入り口に一つ設置して、と)ザクッ

村人(ラストの一つは……なるべく魔王の近くに設置しなきゃなんねえ!)

村人「行くべ!」ザッ…
77:2017/03/07(火) 01:25:06.637
ダークナイト「侵入者は斬る!」ザシュッ

村人「ぐあっ!」

グレートデーモン「邪悪なる炎よ、敵を焼き尽くせ!」ゴォアアアアッ

村人「ひいいいいっ!」

デュークドラゴン「グハハハッ! 食ってやる!」

村人「オラは食ってもまずいべっ!」



村人(うへぇ~、魔王城ともなるとやっぱり今までとは敵の強さがケタ違いだべ!)

村人(もう適当な場所にセーブポイント設置して、引き返しちまうか?)

村人(いや……ダメだべ! ここまできて手抜きは許されねえだ!)

村人「うおおおおおおおおおおおっ!」
80:2017/03/07(火) 01:27:23.029
村人「ハァ、ハァ、ハァ……」

村人(あちこち逃げ回ってたら、どこ走ってるか分からなくなっちまったべ……)

村人(これじゃ、たとえセーブポイント設置しても、生きて帰れるかどうか――)


「なんだキサマは?」


村人「!?」ゾクッ…

村人(なんだべ!? 声かけられただけで、とんでもねえ寒気が……)
82:2017/03/07(火) 01:32:28.844
村人「おめえ……おめえ、まさか――」

村人「魔王か!?」

魔王「その通りだ」

村人(やっぱり! 今までの奴らとは、さらに迫力が違うべ……!)

魔王「キサマは……勇者、には見えないな。何者だ?」

村人「オラ、ただの村人だべ……」

魔王「ただの村人が、魔王城の最深部まで来るとはな……後で部下にはきつく仕置きせねば」

魔王「で、こんなところまでなんの用だ? ウソを感じたなら即座に始末する」

村人(う、ぐぐ……正直に話すしかねえ……)

村人「セ、セーブポイントを設置に……」

魔王「セーブ……記憶……。なるほど、そういうことか。なんとなくどういうものかは分かった」

村人(さすが魔王、頭いいべ……)

魔王「我々の頃はそんなものなかったが、便利になったものだな」

村人「へ? 我々の頃?」

魔王「いや……なんでもない。いずれにせよ、セーブポイントは私の災いになるものらしいな」
84:2017/03/07(火) 01:35:22.655
魔王「そんなものを城内に設置されたら面倒なことになる。セーブポイントとやらをよこせ」

魔王「さすれば、見逃してやる」

村人「…………!」

村人「い、嫌だっ! オラ、あんたの部屋の近くにセーブポイント設置するって決めただ!」

魔王「ならば……死ぬしかないな」ヒュッ

バキィッ!

村人「ぶげえっ!」

村人(オラも相当鍛えられてるはずなのに……見えなかっ……)

ドズゥッ! ドゴォッ! ボゴォッ!

村人「う、うげええ……っ!」
88:2017/03/07(火) 01:38:49.910
魔王「いっとくが、キサマなどいつでも殺せる。やらないのは、単にそういう気分じゃないからだ」

魔王「さぁ、セーブポイントをよこせ」

村人「い、いやだ……」

ズドォッ!

村人「げ、げほげほっ……!」

魔王「なぜ強情を張る?」

魔王「ここまで来たということは、少なくとも魔王城の入り口あたりにはセーブポイントを設置したんだろう?」

魔王「それだけでも十分すぎる快挙だ」

村人「ハァ、ハァ……オラもよくわかんねえ……」

村人「けど……ここで手を抜いたら……オラ……胸張って村に帰れねえから……!」

魔王「バカが……その強情のせいで、キサマはここで死ぬのだ! 村に帰ることなくな!」

魔王「地獄の業火よ! こやつを魂ごと滅してしまえ!」グォアアアアアアッ

村人「うっ……うおおおおおおおおおおっ!」
90:2017/03/07(火) 01:42:17.519
村人「セーブポイント、オラを守ってくれぇっ!」サッ

ゴワァァァッ!!!

魔王「な……! こいつ、セーブポイントでガードを!?」

村人「そしてぇっ!」

ガツンッ!

魔王「ぐふっ!」

魔王(く……セーブポイントで攻撃してきやがった! ムチャクチャな奴だ!)

村人「ハァ、ハァ、ハァ……」

村人(思いきり殴ったのに全然こたえてねえ……やっぱオラここまでみてえだ……!)
91:2017/03/07(火) 01:45:32.017
魔王「……最期に聞いておこう」

村人「な、なんだべ……?」

魔王「仮にキサマがセーブポイント設置という任務をまっとうしたとしても」

魔王「キサマの手柄は全て、後から旅に出る勇者に奪われる格好になる」

魔王「キサマはせいぜい国から小金を渡されて村に帰され、皆から忘れ去られ、寂しく生涯を終えるだろう」

魔王「なのになぜ、キサマはそうまでして力を尽くそうとする!?」

魔王「しょせんキサマは前座! 捨て石! 脇役! 報われないと分かってるのに!」

村人「…………」
92:2017/03/07(火) 01:48:17.206
村人「オラ……みんなが好きだから……」

魔王「!」

村人「王様は偉いと思うし、勇者様尊敬してるし、村のみんなのことも好きだし」

村人「旅で出会った人たちともまた会いたいし、村娘とはチューしたいだ」

村人「だから……脇役でもいいんだ……」

村人「世界を救うために、少しでも力になれれば……オラ、満足だ……」

魔王「なんの見返りもないとしても、か」

村人「……そうだ」

魔王「…………」
94:2017/03/07(火) 01:51:15.413
魔王「……設置しろ」

村人「へ?」

魔王「ここは私の部屋の目の前だ。ここにそのセーブポイントを設置しろ」

魔王「そうしたら、キサマはすぐ魔法で城の外に出してやる。後は勝手に帰れ」

村人「へ!?」

村人「な、なんで? なんでだ? なんでいきなり!?」

魔王「……もし」
95:2017/03/07(火) 01:54:27.340
魔王「もしも……私もお前のような心を持っていれば……」

魔王「あるいは魔王などに堕ちずに……」

村人「!?」

村人「あ、あんたまさかっ! 昔、勇者様のご先祖と一緒に魔王を倒した――」

魔王「うるさいっ! とっとと設置しろ!!!」

村人「は、はいっ!」ザクッ

魔王「……ではさらばだ。達者でな」パァァァァ…

村人「あ、あんたも、どうか――」


――――

――
98:2017/03/07(火) 01:58:10.151
それからしばらくして――

― 村 ―

村娘「お~い!」

村人「ん?」

村娘「都から号外が届いたべ! ついに勇者様一行が魔王を倒したんだってよ!」

村人「……そうか」

村娘「あれ、嬉しくねえべか?」

村人「いんや、そんなことねえよ? 嬉しいよ! やったーっ!」

村娘「変なの」
100:2017/03/07(火) 02:01:20.428
村娘「あんたが設置したっていう、セーブポイントのことも書いてあるだよ」

村人「え、本当か?」

村娘「勇者様、魔王に10回くらい殺されたけど、部屋の直前にセーブポイントがあったおかげで倒せた~とか」

村人「ハハハ、苦労したかいがあっただ」

村娘「セーブポイントが三つも設置してある謎の盗賊団アジト跡地とか」

村人(そりゃオラのミスだ)

村娘「吊り橋の下にあるセーブポイントは、隠しダンジョンの近くだったから有り難かった、とか」

村人(あの吊り橋の下……オラは行かなかったけど、難所だったんだな)
104:2017/03/07(火) 02:04:55.157
村娘「セーブって言葉には、記録って意味の他に『救う』『守る』って意味もあるけど」

村娘「あんたのセーブポイントのおかげで、勇者様は世界をセーブできたんだべな」

村人「……んだな」

村人(そして……魔王のこともセーブしてくれたんだべ……あの人は倒されて救われたんだ……)

村人「オラにはとても世界を救ったり守ったりする力はないけれど……」

村人「これからは、おめえのことぐらいは、セーブしてみせるだ!」

村娘「んもう、そんなこと真顔でいうもんじゃないよう……」







<おわり>