1:2017/11/19(日)08:13:34 reR
彡(゚)(゚)「あー……暇やなあ」

 雲一つ無い晴天の秋空を、目的も無くただただ練り歩く。
 四月に入社して立派な社会人になろうと決意したのが遠い昔の様に思える。

彡(゚)(゚)「……仕事、探さんとアカンのは分かってんねん」

 実際、その夢は叶った。
 そこまでは良かったのだ。
 しかしそれから三ヶ月、ワイの運命が狂い出す。

彡(゚)(゚)「え、転勤ですか? いや、でもこ↑こ↓に正式配属として採用されたのに?」

彡(゚)(゚)「……ハイ、ワカリマシタ」

 元より軽い障がいを患っている(診断済み)ワイは、覚えは底はかとなく悪いものの大きなミスは無く、漸く慣れ始めた頃の、急な転勤。
 上司や他の人も優しく、だからこそまだ辞めたくないと必死にやっていた自分に取っては落胆が大きかった。

彡(゚)(゚)「でもこれはチャンスや、あっちで頑張れば何とかなる」

 そうして自分に言い聞かせ、心機一転頑張ろうと、こんな無能でも出来る親孝行をしようと必死だった。
 転勤先は挨拶の声から再指導されるくらいのスパルタだったものの、店長は情熱的で頑張りに応じて褒めてくれる人。
 前よりも辛いけど、これならいける――三日目まではそう思っていた。
2:2017/11/19(日)08:13:44 reR
先輩「なんで覚えられへんのやゴラァ!!!」

 唐突だった。

 自分の障がいの最大の特性は『適応性』の悪さである。
 今更になって、面接の時に軽い障がい持ちなのを告白しなかった事を後悔した。
 だが『軽い障がい』ではあるが障がい手帳はもらえない程度の曖昧な立ち位置故に、話す事を躊躇してしまったのだ。

彡(゚)(゚)「……スミマセン、コレカラキヲツケマス」

 だが悪いのは圧倒的に自分だと追い込んだ。
 客観的に見て悪いのは確かに自分なのだ、先輩が怒るのも無理は無い……

 しかしその怒りのぶつけ方は日に日に悪化した。

 金庫を蹴り上げる、胸倉を掴まれる、挙げ句の果てには○すとまで言われた。
 店長は気付けばその先輩の事を盲信し、ワイの話なんて何一つ耳に入れなかった。

彡(。)(;)「……悔しい。ワイに障がいなんて無ければ良かったのに……」

 耐えきれなくなったワイは本社の人に謝りながらも、自分の事を話した。
 何かが少しでも変わってほしかった、助言の一つでも良いからほしかった。
 だが無情にも『障がい持ちを雇う余裕は無い』そう言われた、無論規程事項にそんな事は書いてなかった。

彡(●)(●) 「ワイなんて生まれなければ良かったのに」

 その月の内に糸が切れたのかワイは適当に辞職する旨を店長に伝えバックレた。
 もう精神が壊れ掛かっていたのだ。
 毎日毎日来る日も来る日も○すと言われ、気が狂いそうになるくらいの残業をさせられ、自○が頭を駆け巡るくらいであった。
3:2017/11/19(日)08:29:48 reR
彡(゚)(゚)「……ワイに仕事なんて、無理やったんや」

 母親はそれを咎める事なく、好きなアニメ映画をリフレッシュに見に行こうと言ってくれたりしてくれた。
 涙が溢れるくらい嬉しかった。
 笑顔で接してくれる家族がいるだけ恵まれていたのだと言えばそうなのだろう。

 だがそれが、更に自分を嫌いになっていくキッカケでもあった。
 こんな家族に迷惑を掛けているのは誰だ?
 父親が事故死して、自分しかまともに働けないのにこんな様で恥ずかしくないのか。

彡(゚)(゚)「……分かってんねん」

 でも、一度辞めると自分の中の全ての決意が壊れる様に、自堕落になっていった。
 仕事を探そうとしても拒否反応を示し、面接に恐怖を覚え、いつの間にか歳上の人間に対する人間不信が出来上がっていた。


 そんなニート生活も丸四ヶ月が経とうとしている。
 日はそんなワイを嘲笑う様に、堂々と照っていた。

彡(゚)(゚)「この先、どう生きればええんや?」

 歩けば歩く程、自分の虚しさは増幅した。
 歩けば歩く程、自分の将来はどこへ向かっているのか分からなくなった。

彡(゚)(゚)「せめて彼女でも出来たら変わるキッカケくらいにはなるんやが……無理やな」

 中学を卒業してからと言うものの、幼馴染と呼べる女の子とは丸っきり会う事すら無くなっていた。
 それ以前に、中学で話した回数も数えるくらいだ。
 そんな自分に彼女など、夢物語とも呼べない程遠かった。

彡(゚)(゚)「……帰るか」

 途方に暮れたワイは、帰って寝る事を選択する。
 惨めと思いながらも町を後にする。

???「……あれ? もしかしてワイくん?」
4:2017/11/19(日)08:51:14 reR
彡(゚)(゚)「…………お、幼馴染?」

 確実に自分の事を呼ばれた、自分の名前はそうそういない事は分かっていたのだ。
 顔を上げると、そこには間違いなく幼馴染が立っていた。

幼馴染「久し振り……どうしたの、浮かない顔して」

 本当にこれは幼馴染なのだろうか、露程も自分に興味が無かったはずの幼馴染がここまで心配なんてあり得ない、でもそれが嬉しくて嬉しくて、底はかとなく堪らなかった。

彡(゚)(゚)「……実は途方に暮れてんねん」

 こうなるととてもじゃないが話さずにはいられなかった。
 自分が実は軽い障がい持ちである事、仕事の苦悩、辞職してから生きる希望が無い抜け殻である事。

彡(゚)(゚)「……アホやろ? こんな醜い奴で幻滅したやろ?」

 しかし幼馴染は困った様に笑っていた。

幼馴染「そんな事言ったらダメだよ……私が好きだった貴方らしくもない」

彡(゚)(゚)「…………は?」
5:2017/11/19(日)08:51:21 reR
あまりに不意に言われ、頭が思考を止める。
 今彼女は何を言ったのか。
 それは誰に向けて言ったのか。
 考えれば考える程意味が分からなかった。

幼馴染「……ね、貴方は私の事どう思ってるの?」

彡(゚)(゚)「……」

 頬を染め聞いてくる彼女に、胸がドキリと跳ねる。
 あり得る訳が無い、だが今こうして体験しているではないか。
 自分は幼馴染の事を好きでいた時期もあった、それは今や薄れているがここまで言われて、自分の生きる道しるべになり得る人にすがるなと言う方がおかしかった。

彡(゚)(゚)「……もし、好きって言うたらどうすんねん」

幼馴染「貴方の支えになる。いつまでもずっと、側にいる」

彡(゚)(゚)「…………」

彡(。)(;)

 涙が止まらなかった。
 壊れそうになっている、不甲斐ない自分に手を差し伸べてくれて、そして一生支えると言われてそれを振りほどけるくらい馬鹿では無かった。

彡(。)(;)「ありがとう……ありがとう……幼馴染ぃ……」

幼馴染「良いよ、いっぱい泣いて良いんだよ。辛かったよね、悲しかったよね。今はその溜めこんだ全て、私に見せて」

 ワイと幼馴染はギュッと抱き締め合った。
 それはさながら情けないとは思うが、これからは真面目に生き直してみよう、仕事も探してみよう、そう思えた。

 目を瞑り彼女の温もりを感じる幸福に、ワイはいつまでも浸っていた―――
6:2017/11/19(日)08:54:28 reR
目を開ける。








 そこは余りにも見慣れていた天井で。






 自分が感じていた温もりは、いつもは最高の心地を与えてくれる、しかし今はその温もりが何よりも残酷なもので。








 ワイは、取り敢えず何も出来ずに虚空を見つめるしか無かった。





 枕は濡れていた。


‐完‐
7:2017/11/19(日)08:57:52 reR
彡(゚)(゚)「これでSSは終わりや」
彡(゚)(゚)「なおこの話の元ネタは全てワイの実体験を元に書いたるで」
彡(゚)(゚)「仕事の話(ノンフィクション)+幼馴染の下りは今日の夢の話や」
彡(゚)(゚)「起きてから虚空を見つめたのも実話や」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「みんなは、決してワイにはならんでくれ」


彡(゚)(゚)「ほな、また…」
9:2017/11/19(日)12:54:18 nhB
12:2017/11/19(日)15:37:14 rdq
かわいそう、来世は幸せになるで
8:2017/11/19(日)11:57:57 r3A
乙やで…
【超短編SS】彡(゚)(゚)「こんな醜い人生に祝福を」
引用元:http://open.open2ch.net/test/read.cgi/onjanime/1511046814