15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/03(日) 23:01:01.10 ID:LV6oaoDw0
ベジータ「おいブルマ! なんだこのシャツは!」

ブルマ「何って……この前買ったシャツじゃない」

べジータ「そんなことは分かっている! このシワはなんだ!」

ブルマ「シワ? あー、機械使うとこれくらいは残っちゃうのよ」

べジータ「ちっ……次はちゃんとアイロン掛けろよ」

ブルマ「それくらい我慢しなさいよ。第一、それ部屋でしか着ないじゃない」

べジータ「家事はお前の仕事だろうが! 手抜きは許さんぞ!」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/03(日) 23:10:55.74 ID:LV6oaoDw0
ブルマ「あのねぇべジータ。私が日中どれくらい忙しいか分かってる?」

べジータ「……知らん」

ブルマ「でしょうね。あんたトレーニングルームの籠りっきりだし」

べジータ「ふん、当然だ」

ブルマ「カプセルコーポレーションの仕事しながらあいた時間で家事全般やってんのよ?」

べジータ「……」

ブルマ「ここ最近は自分の時間だって満足にとれないのよ。アイロン自動で掛けるくらい多めに見なさいよ」

べジータ「お、俺は、その」

ブルマ「一応うちの製品使ってるから、あんまり気になるなら事例として担当部署に上げるけど」

べジータ「……要らん! 俺は出かけてくる!」

ブルマ「はいはい。……まったく、平和でやることないと細かいところにまでこだわるんだから」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/03(日) 23:16:24.82 ID:LV6oaoDw0
ピッコロ「で、何の用だ?」

べジータ「アイロンがけを教えろ」

ピッコロ「…………は?」

べジータ「アイロンがけを教えろと言っている! 耳が遠いのか、貴様!」

ピッコロ「いや、意外な人物から意外な言葉が出たもので、つい、な」

べジータ「聞こえたならさっさと教えやがれ」

ピッコロ「その前に、なんで俺を選んだ?」

べジータ「貴様は一応神らだからな。それくらい知っていて当然だろう」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/03(日) 23:22:38.20 ID:LV6oaoDw0
ピッコロ「アイロンの使い方は、俺は知らんぞ」

ベジータ「何だと?! 貴様、それでも神か!」

ピッコロ「必要ないからだ。そのシャツをここに広げてみろ」

ベジータ「ふん、これでいいか?」

ピッコロ「よく見てろ」

ピッ

ベジータ「し、シワが一瞬で消えただと? 一体どうやった?!」

ピッコロ「どう、と言われてもな……。繊維に気で干渉する、としか説明のしようがないんだが」

ぺジータ「説明はいい、俺にもそれを教えろ!」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/03(日) 23:30:06.08 ID:LV6oaoDw0
ピッコロ「普通の人間が発する気の何百分の一という微量な気のコントロールが必要だ。できるのか?」

ベジータ「ふん、それくらい……」

ボッ

ピッコロ「それではただの弱いエネルギー弾だ」

ベジータ「くそっ! 先月おろしたばかりのシャツが!」

ピッコロ「練習用にそんな良いもん持ってくるなよ……」

ベジータ「もういい、お前には頼まん!」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/03(日) 23:37:19.03 ID:LV6oaoDw0
ピッコロ「アイロンの使い方なら、専門家に聞けばいいだろう」

ベジータ「専門家だと?」

ピッコロ「理由はよくわからんが、おそらくブルマには聞きたくないんだろう?」

ベジータ「ふん」

ピッコロ「それなら、チチに教えてもらえばいいだろう」

ベジータ「カカロットの妻か」

ピッコロ「専業主婦だからな。家事全般に詳しいと思うが」

ベジータ「くそっ……」

ピッコロ「言うのが恥ずかしいなら紹介状でも書いてやろうか?」

ベジータ「うるさいっ!」

ピッコロ「今から行くなら、練習用のシャツを持っていけ。今出してやる」

ピッ

ベジータ「ふん。邪魔したな」

ピッコロ「行ったか。それにしても、あのベジータがアイロンがけとはな。これは面白くなりそうだ」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/03(日) 23:51:17.60 ID:LV6oaoDw0
悟空「よぉベジータ! 久しぶりだなぁ、どうした?」

ベジータ「ふん。今日は貴様に用はない」

悟空「悟飯か? あいつなら学校行ってっぞ」

ベジータ「用があるのは貴様の妻だ」

悟空「チチに? おめぇがか?」

ベジータ「教えてもらいたい事がある。旦那である貴様にも一応断っておく」

悟空「まぁ、あいつが教えられることなら構わねぇけどよ……おーい、チチー!」

チチ「どうしただ、悟空さ。何か用だか?」

悟空「ああ。でも用があるのはオラじゃなくてベジータみてぇだ」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 00:09:31.35 ID:WauYR85A0
チチ「ベジータさんがおらに用事? めずらしいこともあったもんだな」

ベジータ「俺に、アイロンがけを教えろ……教えてくれ」

チチ「…………は?」

ベジータ「ちくしょう、どいつもこいつも同じ反応ばっかりしやがって!」

悟空「お、落ち着けってベジータ! オラだってびっくりしてんだからよ!」

ベジータ「どういうフォローだそれは! 落ち着く理由にならんだろうが!」

チチ「そりゃ、アイロンがけくらい教えられるだが……」

ベジータ「よし、ではさっそくたのむ」

チチ「なんだか、変なことになっただな……」

悟空「なんだか面白そうだし、オラも見てっかな」

ベジータ「貴様はどこかに行ってろ!」

ボゥッ!」

悟空「あっぶねーな、分かった分かった! 遠くで修業してっから、そんなに怒るなって!」

ベジータ「くそっ! 俺のアイロンがけがそんなに珍しいか!」

チチ(この上なく珍しいと思うだ)

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 00:17:49.78 ID:WauYR85A0
チチ「そうだ、悟空さ。おらの代わりに洗濯もの取り込んでけろ」

悟空「あぁ、いいぞ」

チチ「夕食の買い出しも頼めるだか?」

悟空「おぅ。任せとけ」

チチ「飛んで行くのとか瞬間移動はやめてけれよ」

悟空「だめか?」

チチ「平和な時くらい普通に過ごして欲しいだ」

悟空「しょがねぇなー。んじゃ、車で行ってくる」

チチ「あぁ、気ぃ付けていくだぞ」

ベジータ「カカロットが家事の手伝いだと? 車の運転まで……」

チチ「あぁ。暇な時は手伝ってもらってるだ。夫婦だし、普通だべ?」

ベジータ「普通……」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 00:30:41.99 ID:WauYR85A0
チチ「悟空さが帰ってくるまで1時間以上あるだ。訳くらい話してもらえるだな?」

ベジータ「くっ……いいだろう。ただし!」

チチ「分かってるだ。悟空さにも、もちろん、ブルマさにもな」

ベジータ「……」

チチ「何かあっただな?」

ベジータ「実は――」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 00:37:52.47 ID:WauYR85A0
ベジータ「――という訳だ」

チチ「ははぁ。それでおらの所に来ただか。分かっただ」

ベジータ「……それだけか?」

チチ「何がだ?」

ベジータ「いや、その、もっと、色々言われると思ったからな」

チチ「そりゃ、ブルマさが大変そうとは思うだし、ベジータさの態度もどうかと思うだ」

ベジータ「くっ」

チチ「でも、こうやっておらの所に家事習いに来てるだ」

ベジータ「……」

チチ「そうやって頑張ろうとしてる人に、ぐだぐだ説教しても意味ねぇだ」

ベジータ「……すまん。礼はする」

チチ「礼なんて要らねぇだ。その代わり、3つだけ約束してけろ」

ベジータ「いいだろう。言ってみろ」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 00:46:17.11 ID:WauYR85A0
チチ「1つ。アイロンがけ以外に、家事全般覚えるまではちゃんと通うこと。」

ベジータ「ふん、当然だ」

チチ「2つ。料理覚えたら、おらと悟空さを夕食に招待してけろ」

ベジータ「腕試しという訳だな。いいだろう、望むところだ!」

チチ「3つ。ブルマさんにちゃんと『いつもありがとう』って言うこと」

ベジータ「なにっ?!」

チチ「照れて捨て台詞見たく言うでねぇぞ。ちゃんと目を見て言うこと」

ベジータ「くそっ……そんなこと、俺が……!」

チチ「たぶん、すごく喜ぶと思うだがなぁ。出来ねぇなら、教えるって話はなしだ」

ベジータ「……分かった」

チチ「3つ目はおら確かめようがねぇだから、その言葉、信じるだぞ」

ベジータ「二言はないっ!」


62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 00:53:35.04 ID:WauYR85A0
チチ「よし、そんならさっそく始めるだ。ビシバシ行くだからな、ちゃんと付いてくるだぞ!」

ベジータ「ふん、俺を誰だと思っているんだ?」



チチ「何やってるだ! そんなちんたらやってると服が焦げるだ!」

ベジータ「そ、そうはいってもだな……」

チチ「口はいいから手を動かすだ! あーあ、焦げちまっただ」

ベジータ「くそったれ……」

チチ「おら、左手でしっかり伸ばすって言っただぞ、お前ぇには耳がねぇだか?」

ベジータ「くっ……」

チチ「ほれ、どうするだ? もう一回だけやって見せるだか? それとも自分でやるだか?」

ベジータ「くそっ……。もう一回だけ、見せてくれ」

チチ「あぁ?」

ベジータ「もう一回だけ、見せてください……」

チチ「しょうがねぇだな。今度はちゃんと見て覚えるだぞ!」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 01:07:16.56 ID:WauYR85A0
ベジータ「……出来たぞ。どうだ?」

チチ「どれ。……袖の所が全然ダメだな、やり直しだ」

ベジータ「何だと? これくらい問題ないだろう?!」

チチ「ブルマさんが機械でアイロンかけたシャツは、もっと綺麗だったはずだぞ」

ベジータ「見たのか?!」

チチ「いんや。前にブルマさんから、家事関係の機械が入ったカプセルもらったことがあっただ」

ベジータ「……」

チチ「洗濯機は、自動でアイロンまで掛けてくれるやつだったから、使ってみたことがあるだよ」

ベジータ「それでか……」

チチ「お前ぇは、それでアイロンかけたシャツに文句付けただぞ?」

ベジータ「くっ」

チチ「確かに、シワは残るだ。でも気にしなきゃ気にならねぇだ」

ベジータ「……」

チチ「でも、おらは自分でアイロンかけてるだ。何でか分かるだか?」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 01:18:21.42 ID:WauYR85A0
ベジータ「カカロットに何か言われたのか?」

チチ「悟空が気がつく訳ねぇだ。服ならなんでもいい人だぞ?」

ベジータ「……分からん」

チチ「ブルマさんと違って、おらは専業主婦だ」

ベジータ「?」

チチ「稼いでねぇとはいえ、悟空さは一家の大黒柱だ。大黒柱支えるのは主婦の仕事だ」

ベジータ「……」

チチ「一日中家事できるなら、旦那や子供に少しでも気持ちよく過ごして欲しいと思うのは当たり前だべ?」

ベジータ「そう……なのか」

チチ「ブルマさんも同じはずだ。働きながら家事もやるのは並大抵の苦労じゃねぇはずだ」

ベジータ「そう、かもしれん……」

チチ「ブルマさん、金あるのに家政婦雇わねぇで、自分で家事全般こなしてるだべ?」

ベジータ「それは……」

チチ「おそらく、おらと同じこと思ってるからだ。さすがにアイロン手で掛けてる暇はねぇみてぇだが」


70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 01:25:35.08 ID:WauYR85A0
ベジータ「確かに、アイロンがけは相当時間がかかる。一枚2時間とは思わなかった」

チチ「そりゃ時間かけすぎだ。そんなんじゃアイロンがけで一日終わるだぞ?」

ベジータ「くっ……」

チチ「ま、今日の所はこんくれぇにしとくだ。基本は教えただ、後は帰って練習するだけだべ」

ベジータ「家でか……」

チチ「古いアイロンとアイロン台貸してやるだ。明日までに最低10枚はかけて来るだぞ」

ベジータ「10枚だと?!」

チチ「……あ?」

ベジータ「わ、分かった。ちゃんとかけてくる」

チチ「よし。明日は料理を教えるだ。ちゃんと遅れずに来るだぞ?!」

ベジータ「お、おう」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 01:34:01.03 ID:WauYR85A0
ベジータ「帰ったぞ」

ブルマ「あぁ、お帰り。そろそろご飯よ」

ベジータ「あぁ」

ブルマ「それと、今朝のアイロンの件だけど」

ベジータ「な、何だ?」

ブルマ「うちの担当部署に事例として上げといたわ」

ベジータ「そ、そうか」

ブルマ「お客さんでも、気にしてる人はいるみたいでさ。改善出来ないか調べてみるって」

ベジータ「……」

ブルマ「面白そうだし、私も首突っ込んでみるわ。おかげで忙しくなりそうだけど、面白そうだしね」

ベジータ「……食事はトレーニングルームに運んでくれ。今日は籠って修業する」

ブルマ「あ、そう……」


ベジータ「自分にヘドが出るぜ……ちくしょう……ちくしょう!」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 01:41:55.57 ID:WauYR85A0
ベジータ「……10枚目、できたぞ」

ベジータ「もうこんな時間か。少しだけでも眠っておかんとな……」

ベジータ「おっと、飯がまだだったな。食っておくか」

ベジータ「これは自動調理器じゃなくて、ちゃんと作ってあるのか」

ベジータ「美味いな……」

ベジータ「……」


ブルマ「あ、おはようベジータ」

ベジータ「ん」

ブルマ「……あんた、まさか徹夜で修業してたの?」

ベジータ「……ふん」

ブルマ「トレーニングするなって訳じゃないけど、体壊したりしないでよ? 今日はなんか目も赤いし」

ベジータ「ううううるさいっ! 今日も出かけてくる!」

ブルマ「はいはい、孫君の所ね。いってらっしゃい」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 01:50:38.45 ID:WauYR85A0
チチ「……ん。最初の方のはまだまだ出来が怪しかっただが」

ベジータ「だめか?!」

チチ「最後の方のはいい出来だと思うだ。時間は、数こなしゃ短くなるべ」

ベジータ「!」

チチ「合格だ。次は料理だな」

ベジータ「よしっ!」

チチ「何喜んでるだ、ずいぶんおまけして合格にしてやっただぞ。訓練は今後も続けるだ」

ベジータ「くっ……」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 01:51:21.70 ID:WauYR85A0
チチ「で、次は料理教えるだが……ちょうどいい、朝飯作るから、まずは見てるといいだ」

ベジータ「分かった。……カカロットは?」

チチ「朝から弁当持ってどっか修業行っただ。お前ぇが来る時は家にいるなって言ってあるだ」

ベジータ「そうか……すまん」

チチ「その代わり、全部終わったらちゃんと悟空さにも話すだぞ?」

ベジータ「……」

チチ「返事」

ベジータ「はい」

チチ「ん、それでええだ」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:00:51.11 ID:WauYR85A0
ベジータ「動きに一切無駄がない……!」

ベジータ「料理なんて、もっと待ってる時間が多いものだと思っていたが……」

チチ「毎日悟空の食う分料理するだぞ? こんくれぇの速さで作らねぇと間に合わねぇだ」

ベジータ「ブルマも、調理中台所には入るなと言っていたな」

チチ「あたりめぇだ。朝なんて特に忙しいだぞ。役に立たねぇ邪魔な男なんて居てほしくねぇだ」

ベジータ「役立たずは戦場には不要、ということか……」

チチ「そうだ。今のお前ぇは、台所じゃ役立たずの雑魚だ」

ベジータ「くそっ……! 畜生……!」

チチ「悔しいだか? なら、しっかり覚えて一人前の戦士になって見せるだ」

ベジータ「くっ……よぉし!」

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:07:34.24 ID:WauYR85A0
チチ「……手が違うべ! こう! そんな指伸ばしたら包丁で手切っちまうぞ!」

ベジータ「こ、こうか?」

チチ「そう。それで、真っ直ぐに、変な力入れずに……」

ベジータ「はっ!」

ベキ

チチ「アホ! 包丁が折れちまったでねぇか!」

ベジータ「す、すまん……」

チチ「そんなバカ力入れねぇでもちゃんと切れるだ! ほれ、こう、こう、こう!」

ベジータ「こ、こうか?」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:09:43.14 ID:WauYR85A0
チチ「ま、最初はそんなもんだべ。んじゃ、このキャベツ、今と同じ感じで全部せん切りにするだ」

ベジータ「全部だと? どれだけあると思ってる?!」

チチ「悟空さとかお前ぇなら一瞬で食い終わる量だな。それがどうかしただか?」

ベジータ「……分かった、やればいいんだろう」

チチ「……」

ベジータ「言われた通りちゃんと全部せん切りにする……します」

チチ「ん。終わったら次教えるだ」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:16:23.91 ID:WauYR85A0
ベジータ「で、出来たぞ」

チチ「どれ……」

ベジータ「どうだ?!」

チチ「今自分で切ったのと、おらが切ったの、食べ比べてみるだ」

ベジータ「わ、分かった」

チチ「まずは自分で切った方」

ベジータ「ん……何だ、大きいのがあったり小さいのがあったり、食いにくいな」

チチ「次、おらが切った方」

ベジータ「これは……太さも一定で食べやすい」

チチ「食えりゃどっちでもいいって思うだか?」

ベジータ「食べやすい方が……いい」

チチ「だべ? 切り方ひとつでここまで変わるだ。お前ぇが今切ったのはせん切りじゃなくてぶつ切りだべ」

ベジータ「くそっ……」

チチ「当分は切り方の特訓しねぇとな」

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:23:31.39 ID:WauYR85A0
ベジータ「……帰ったぞ」

ブルマ「お帰り。……ちょっと、大丈夫?」

ベジータ「要らん心配だ」

ブルマ「だって、あんた今までこんなつらそうな顔しなかったじゃない!」

ベジータ「お前には関係ない」

ブルマ「関係ないかもしれないけど、何もできないかもしれないけど!」

ベジータ「!」

ブルマ「私、あんたの妻なのよ? 私にだけは愚痴とかこぼしてくれても、いいんじゃないの?!」

ベジータ「……」

ブルマ「いっつも一人で籠って、一人で抱え込んで! 私ってそんなに邪魔? 頼りないの?!」

ベジータ「いや、それは……すまん……」

ブルマ「すまんじゃないわよ……。いつも本当に心配なんだから……」

ベジータ「終わったら、すべて話す」

ブルマ「……分かったわ。約束よ?!」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:31:49.87 ID:WauYR85A0
チチ「うんうん、だいぶマシになっただな」

ベジータ「……だいこんのかつらむき、出来たぞ」

チチ「どれ。……ま、こんくれぇできれば十分だな。よし、切り方は合格だ」

ベジータ「よし……」

チチ「次は、料理の基礎教えながら、簡単な料理も教えるだ」

ベジータ「いきなりか」

チチ「切り方分かれば、実践で覚えたほうがいいだ。それとも、怖いだか?」

ベジータ「ふざけるな! 誰が怖いなどと言った!」

チチ「じゃ、手っ取り早くていいでねぇか」

ベジータ「よ、よし!」

チチ「じゃ、まずそこにある材料切るだ。人参とじゃがいもはイチョウ切り、ごぼうは薄切りにするだ」

ベジータ「分かった」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:37:15.92 ID:WauYR85A0
ベジータ「じゃがいもは終わりか」

ベジータ「次は貴様だ、人参野郎!」

ベジータ「人間みてぇなその名前、まったくふざけた野郎だぜ」

チチ「ふざけた野郎はお前ぇだ!」

ゴン!

ベジータ「ぐぁっ! な、何しやがる!」

チチ「ふざけてねぇでとっとと切るだ! 日が暮れても終わらねぇだぞ!」

ベジータ「……人参は、やはり必要なのか?」

チチ「あたりめぇだ。豚汁に人参入ってなくてどうするだ」

ベジータ「あいつの苦みにゃへどが出る」

チチ「苦くねぇべ。甘くておいしいだぞ」

ベジータ「しかし……」

チチ「あぁ、そうか。一人前の戦士は甘く感じても、台所の役立たずにゃ苦く感じるだな」

ベジータ「くっ……くそっ、くそっ!」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:41:18.04 ID:WauYR85A0
チチ「で、後は柔らかくなるまで火が通ったら完成だ」

ベジータ「意外と簡単だったな」

チチ「……何ぼさっとしてるだ?」

ベジータ「火が通るまではやることがないんだろう?」

チチ「何のためにおらが料理してるところ見せたと思ってるだ!」

ベジータ「何? 料理しているところ……」

チチ「おらは、煮込んでる間何してただ?」

ベジータ「……洗い物か!」

チチ「そうだ。つかわねぇもんは、こういう待ち時間で洗っちまうだ」

ベジータ「なるほどな……」 

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:48:29.86 ID:WauYR85A0
チチ「よし、それじゃ、料理の卒業試験だ。制限時間は1時間」

ベジータ「よし! やってやるぜ!」


ベジータ「野菜を切り終わったら、まずは豚汁を作ってしまうか」


ベジータ「よし、野菜に火が通るまでにとんかつを始末してやるか」


ベジータ「揚げてる間に……いや、火が通りすぎるとまずいな、先にせん切りにを片づけるか」


ベジータ「よし、ちょうどいい色だな」


ベジータ「御飯も……よしよし、ちょうどいい炊け具合だ」


ベジータ「よし、出来たぞ!」

チチ「ん。5分前か。やるでねぇか」

ベジータ「食べてみろ! 味はどうだ?!」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:53:50.58 ID:WauYR85A0
チチ「……」

ベジータ「……」

チチ「……ん」

ベジータ「ど、どうした? 何か変か?!」

チチ「……んー、甘いかもしんねぇだが、合格にしておいてやるだ」

ベジータ「本当か?! よし、よしっ! やったぞ!」

チチ「よく頑張っただな。かなりきつい事言っちまっただが、よく最後までついてきてくれただ」

ベジータ「あぁ、おかげでちゃんと料理も作れるようになった」

チチ「おっと、お礼は言う相手が違うだぞ」

ベジータ「む……」

チチ「夕食会、楽しみにしてるだからな、頑張るだぞ!」

ベジータ「ふん、美味すぎて吠え面かくなよ?」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 02:57:53.29 ID:WauYR85A0
悟空「よぉ、ベジータ! 来たぞ」

ベジータ「ふん、遅かったな」

悟空「今日は何があるんだ? チチは何か知ってるみてぇなんだけど、教えてくれねぇんだ」

チチ「ふふっ、そのうち分かるだよ」

ベジータ「食堂で待っていろ」

悟空「食堂? 飯でも食うのか! なんだ、そういうことか!」

チチ「……準備はできてるだか?」

ベジータ「当然だ。あの後修業して、教えられていないものも1品作った」

チチ「へぇ、それは楽しみだな」

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:00:58.59 ID:WauYR85A0
ブルマ「あ、チチさんも来たの」

チチ「ブルマさんとあうのも久しぶりだな、元気だか?」

ブルマ「忙しいけど、なんとかね。それより、ごんめんね、今日は」

チチ「ええだ、ええだ」

ブルマ「ベジータの奴が、なんか変なこと始めたみたいでさ。今日一日私家から追い出されちゃって」

チチ「ふふっ……」

ブルマ「食堂に集まれとか言ってたけど、何するのかしら。まさか料理なんて作れるはずないし」

チチ「ま、行けば分かるだ」

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:06:27.39 ID:WauYR85A0
ベジータ「よし、集まったな」

悟空「おぉ、なかなか美味そうな料理だな、これ、食っていいのか?」

ベジータ「お前というやつは……いや、いい。とっとと喰らいやがれ!」

悟空「いっただきまーす! ちょっと量がすくねぇからすぐなくなっちまうな」

ベジータ「これだけ作るのも大変だったんだ、文句を言わず食え!」

ブルマ「えぇぇぇ?! こ、これ、あんたが作ったの?」

ベジータ「驚くのはいいから、食ってみろ」

悟空「うひゃぁ……ベジータの手料理食えるとはなぁ、オラ、びっくりだぞ!」

ブルマ「うそ、おいしい……まさか、ここ最近の修業はこれを……」

ベジータ「ふふん、どうだ、あまりの美味さで言葉も出ないか?」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:11:12.95 ID:WauYR85A0
悟空「ほんと美味ぇぞ、ベジータ! 御飯御代り!」

ベジータ「もっと味わって食いやがれ! まったく……ほれ!」

チチ「筑前煮も、よく味が染みてるだな。美味ぇだ」

ベジータ「ふっふっふ……はーっはっはっはっは!」

ブルマ「な、何よいきなり高笑いして」

悟空「ベジータ、御代り!」

ベジータ「えぇい、3杯目は黙って茶碗を差し出しやがれ!」

ブルマ「それにしても、なんで? どうしていきなり?」

ベジータ「そ、それはだな……」

チチ「それはおらたちが帰ってからゆっくり聞けばいいだ。今はベジータさんの料理を味わうべ」 

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:16:16.27 ID:WauYR85A0
チチ「それじゃ、おらたちはこれで」

悟空「サンキュー、ベジータ! すっげぇ美味かったぞ!」

ベジータ「ふんっ」

ブルマ「行っちゃった。さ、訳話してくれる?」

ベジータ「う、あの、その、つまりだな……」

ブルマ「つまり?」

ベジータ「その、いつも、家事をしてくれて……あ、あり、ありがとう……」

ブルマ「へへへ、やっと聞けた。その言葉」

140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:19:37.93 ID:WauYR85A0
ベジータ「き、貴様ぁ! 知ってて黙っていたな?!」

ブルマ「なんとなーく、ね。確証はなかったけど」

ベジータ「チチから聞いたんじゃないのか?」

ブルマ「聞かなくても分かるわよ。毎日毎日孫君の所に行くのに服は立派なままだし」

ベジータ「!」

ブルマ「朝台所行くと身に覚えのない野菜屑があるし」

ベジータ「三角コーナーのごみは捨ていたはずだ!」

ブルマ「排水溝のネットのの中も?」

ベジータ「ちっ……抜かった……」

ブルマ「それに、アイロンがけもしてくれてたでしょ?」

ベジータ「なぜ分かった?!」

ブルマ「機械よりも丁寧にかけてあるんだもん。見ればすぐ気がつくわよ」

143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:24:45.83 ID:WauYR85A0
ベジータ「そうか……すべてお見通しだった訳か……」

ブルマ「あんな事があった後にいきなりだもん。私じゃなくても気がつくわよ」

ベジータ「……ズバリ聞く。俺の料理はどうだった? 正直に答えろ」

ブルマ「とんかつは私の方が上手かな。でも、おいしかった。筑前煮は敵わないなぁ、正直」

ベジータ「本当か?!」

ブルマ「うん。今度教えてよ、味付け」

ベジータ「ふん、しょうがない奴だな。よかろう、ビシバシ鍛えてやる」

ブルマ「調子のっちゃって」

ベジータ「何か行ったか?」

ブルマ「ううん。ねぇ、ベジータ」

150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:30:19.22 ID:WauYR85A0
ベジータ「何だ?」

ブルマ「ありがとう。本当に、すごい、うれしかった」

ベジータ「うれしいと言ってなく奴がいるか。みっともない」

ブルマ「だって、あんたが戦い以外にこんなに真剣になってるの、初めてみたし……」

ベジータ「チチにしごかれて初めて分かった。家事も戦いだな。ここまで大変とは思わなかった」

ブルマ「ベジータ……」

ベジータ「なぁブルマ。俺は家事でも一人前の戦士になれたか?」

ブルマ「一人前なんてもんじゃないわよ! その辺にいる男どもよりずっとすごいわ!」

ベジータ「ふっふっふ、よーし。ならば次からは朝食作りに俺も混ぜろ。もう邪魔とは言わせないからな」

ブルマ「うん! うんうん! 作ろうよ、二人で!」

ベジータ「よし、そうなれば、専用にエプロンと三角巾も用意しないとな。さっそく買いに行くか!」

ブルマ「ふふっ。気が早いわよ、もぅ」

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:34:31.54 ID:HzemKxMLO
エプロンと三角巾してるベジータ想像して吹いたwwwwww

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:35:45.62 ID:WauYR85A0
悟空「いやー、ベジータの用事って家事の修業だったのか、驚れぇたなぁー」

チチ「いいセンスしてただぞ。予想以上に上達が早かっただ」

悟空「おめぇが作る方がさすがに美味ぇけど、その辺の店よりはよっぽど美味ぇぞ!」

チチ「おらがしごいただぞ? それくれぇは出来ねぇとな」

悟空「こりゃ、オラもうかうかしれられねぇな……」

チチ「ん? 悟空さもやってみるだか?」

悟空「ベジータだけできるのもなんか悔しいしな。料理で勝負すんのも面白そうだ!」

チチ「よーし、そんならこんどは悟空さに家事教えるだ! ベジータさんに負けるでねぇぞ!」

悟空「おぅ! あいつよりすんげぇもん作ってやる!」

171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:42:14.86 ID:WauYR85A0
ベジータ「ブルマ。夕食の買い出しに行ってくる」

ブルマ「あ、卵買ってきて」

ベジータ「タイムセールの奴だな? 分かっている」


ベジータ「よし、最後の1個が残っていた……む?」

悟空「あっ! わりぃ、オラもこの卵欲しくて……おぉ、ベジータじゃねぇか!」

ベジータ「カカロットか……貴様、この俺から卵を奪うつもりか」

悟空「いや、オラの方がはやったぞ?」

ベジータ「ふざけるな! これを逃せば30円も高く買わないとならないんだぞ!」

悟空「そりゃオラだって同じだけどよ。んー、まいったな―。今回は見逃してくれねぇか?」

ベジータ「いーや、ダメだ。この卵は俺が茶碗蒸しにするんだ」

悟空「いや、オラのだし巻き卵になりたがってるぞ」

ベジータ「勝負するか?」

悟空「おぅ! 負けねぇぞ!」

178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:47:59.51 ID:WauYR85A0
ブルマ「……それで、外で戦ってる間に他の人に買われちゃったの?」

ベジータ「……すまん」

ブルマ「しょうがないなぁ、なんだかんだ言ってもやっぱりサイヤ人よねぇ」

ベジータ「夕食の茶碗蒸しも、出来なくなったな……」

ブルマ「冷蔵庫にあるもので間に合わせましょう」

ベジータ「先週、ビーフシチューを作って冷凍しておいたものがあるが」

ブルマ「お、いいじゃない! それにしましょうよ。野菜はあるからサラダ付ければばっちりじゃない」

ベジータ「よし。サラダなら楽勝だ」

ブルマ「それくらい私が作るって」

ベジータ「いや、ベジータスペシャルドレッシングはお前にはまだ作れないだろう」

ブルマ「ぷっ、何よその怪しいドレッシングは」

ベジータ「怪しいだと?! これは、普通のとは違ってだな――」


終わり

185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:50:19.89 ID:op8jKtwK0
乙。面白かったー。

186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:50:36.73 ID:WauYR85A0
眠くて最後締めがいまいちだったけど、これで終わりでw

二次創作のSSは初めてだから、違和感あるところもあったかもしれないけど、
スレタイみて妄想したストーリーをそのまんま書いてみた
口調とか呼び方調べるのでだいぶ時間かかってしまったけど、
読んでくれた人、教えてくれた人、ありがとう!

188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:51:01.74 ID:LjCyVK19O

面白かった

193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/04(月) 03:52:02.39 ID:wNCtdgvE0
乙でした。

引用元: ベジータ「あのバカ・・・アイロンのかけ方もわからないのか」