1:2018/04/15(日)00:28:05
1989年 春―――

ウッマ「生まれたンゴ」

牧夫「おう お前体ちっさいなーwww」

ウッマ「ほっとけや」

牧夫「いっぱい食って早くデカくなれよーwww」

ウッマ「……ふん」草モシャモシャ


2:2018/04/15(日)00:30:20 tyo
牧夫「ウッマ トレーニングするで」

ウッマ「おかのした」パカパカ

牧夫(こいつ体はちっさいけど飲み込みが早いな……)

ウッマ(レースで勝てるように いっぱい練習せな)パカパカ
3:2018/04/15(日)00:33:16 tyo
1991年 春―――

厩務員「いらっしゃい 今日から本格的に調教していくで 覚悟せいやww」

ウッマ「よろしゅう」

厩務員(話は聞いてたけど確かに小柄だなぁ……ケガせずに中堅クラスになれれば御の字だが……)

ウッマ「練習や ワイにはそれしかないんや」パカパカ

厩務員「素直な子やなぁ」
4:2018/04/15(日)00:36:34 tyo
1991年 夏―――

厩務員「ウッマ デビュー戦が決まったで 今日はゆっくり休むやで」

ウッマ「おおきに……」ハァハァ

厩務員「なんやお前 顔色悪いな」

ウッマ「えぇ……」ハァハァ

厩務員「おま!熱あるやんけ!!こりゃレースどころやないで!!」

ウッマ「えっ……ワイのデビュー戦……」

厩務員(うーん やっぱこいつ体力ないんやろか……)
5:2018/04/15(日)00:39:17 tyo
ウッマ「結局デビューが1か月遅れたで」

ウッマ「こんなところで躓いていてはアカン ワイはヒーローになるんや!」パカパカ

ウッマ「」パカパカ

ウッマ「……勝ったで!!」
6:2018/04/15(日)00:42:23 tyo
1991年 秋―――

ウッマ「夏の2戦目は大敗やった……」ションボリ

ウッマ「気を取り直していくで」パカパカ

ウッマ「よっしゃ!!3戦目は勝ちや!!」

ウッマの足(ボキィ!!)

ウッマ「おごっ!足から変な音したンゴ!!」
7:2018/04/15(日)00:45:11 tyo
獣医「折れてますね」

ウッマ「」

獣医「幸い軽い症状です 後遺症もないでしょう」

獣医「でも治るまでは安静にね」

ウッマ「おかのした」

調教師「こりゃ今年の復帰は無理だな 田舎に帰ってじっくり治してこい」

ウッマ「……すまんゴ」
8:2018/04/15(日)00:48:20 tyo
1992年 春―――

ウッマ「半年ぶりのレースや 頑張るやで」

ウッマ「ん?なんかえらい毛並みのいいウッマがおるなぁ」

ブルボン「やぁwww君も走るのかいwwwwwwがんばろうぜwwwwww」ムキムキィー

ウッマ「うおっ!眩しい!!」

ウッマ(なんちゅう筋肉しとるんやこいつ……相当鍛えとるで)
9:2018/04/15(日)00:51:13 tyo
ウッマ「負けられんで!」パカパカ


ドドドドドドド


ウッマ「何やあいつ!早っ!!全然追いつける気がせぇへん!」

ウッマ「……大差で負けたンゴ……悔しいンゴ……」
10:2018/04/15(日)00:54:36 tyo
1992年 皐月賞―――


騎手「こんにちは はじめましてウッマ君」

ウッマ「……どうも」

騎手「がんばろうね」

ウッマ「ええ よろしゅう」

ブルボン「やぁwwwまた会ったねwwwwww」ムキムキィー

ウッマ「おま……今度は負けへんで!!」

ブルボン「HAHAHAHAwwwww」スタスタ

ウッマ「ギギギ」
11:2018/04/15(日)00:57:09 tyo
パカパカパカパカ

ウッマ「また負けた……だと……!?」ハァハァ

騎手「ドンマイ 次は勝とう」


次のレース

ウッマ「うおおおおおおお!!!!!」パカパカ

ウッマ「また負けた……ワイ才能無いんかいなぁ……」

騎手「そんなことないよ」
15:2018/04/15(日)01:00:12 tyo
1992年 東京優駿(日本ダービー)―――


ウッマ「今日こそは負けへんで」

ブルボン「あれ?君誰だっけ?」ムキムキィー

ウッマ(おのれ……今日こそはブッ●したる……)ギラギラ

騎手(すごく気合は入ってる…… なんとか勝ちたいものだ)
18:2018/04/15(日)01:02:46 tyo



ウッマ「うおぉぉぉぉぉおおおお!!!」パカパカ

ブルボン「ん?」パカパカ

ウッマ「うおぉぉぉぉぉおおおお!!!」パカパカ

ウッマ「」パカパカ

ウッマ(何やこいつ……やっぱり全然差を詰められん……)

ウッマ(強い……)
19:2018/04/15(日)01:05:18 tyo
ウッマ「結局負けてもうた……」ションボリ

騎手「でもこんな大レースで2位なんて立派だよ!胸を張ろう」

ウッマ「でも アイツには全然勝てる気がせんかった…… 差がデカい……」

騎手「ウッマ君」

ウッマ「ワイ あいつに一生勝てへんのやろか……」

騎手(……)
20:2018/04/15(日)01:08:16 tyo
1992年 秋―――


ウッマ「結局3回目も対戦でも勝てんかったンゴ……」

ウッマ「あいつデビュー以来負けなしやって 本物の英雄やないか……」

騎手「でも初対戦よりもだいぶ差が縮まってきてるよ 次こそ頑張ろう」

ウッマ「えぇ……」

騎手「君もヒーローになりたいんだろう?」

ウッマ「!!」

ウッマ(そうやった……!! 勝つ……!なんとしても勝つんや……!!)
21:2018/04/15(日)01:10:11 9uZ
騎手は的場やっけか
22:2018/04/15(日)01:11:07 tyo
1992年 菊花賞―――

ウッマ(ここは前回のレースと同じ競馬場やな)

ウッマ(京都はええ所やなぁ……ワイここ何か好きや)

騎手「行くよウッマ君 準備はいいかい?」

ウッマ「勿論!いつでもええで!!」パカパカ
26:2018/04/15(日)01:14:18 tyo
最後の直線―――

ウッマ「ぬぅおおおおおおおお!!!!」ドドドドドド

ブルボン「君か!やっぱり来たね!」

ウッマ「おおおおおおおおおお!!!!」

ブルボン「だがしかし!僕もこれに勝てば無敗のクラシック三冠達成だ! 皆が僕の勝利を望んでいる! 勝たせるるわけにはいかない!!」

ウッマ「ワイは…… ワイはヒーローになるんやぁぁああああ!!!」

ブルボン(殺気……!?)ゾクッ
28:2018/04/15(日)01:17:20 tyo
騎手「ウッマ君」

ウッマ「ゼェ……ゼェ……」

騎手「ウッマ君!!」





騎手「やったよ初タイトル!おめでとう!!」

ウッマ「へ…? ワイ……勝ったんか……?」

騎手「勝ったよ!!」

ブルボン「ついに負けちゃったか……まったく君には恐れ入るよ」

ウッマ「あかん実感がないで…… でも……」

ウッマ「お前も本当に強かったで……口から心臓が出そうだったで」

ブルボン「……頼んだよ。おチビ君」

ウッマ「……?」
29:2018/04/15(日)01:20:58 tyo
ウッマ「これでワイも英雄(ヒーロー)になったんか……!」


シーン


ウッマ(場内が静まり帰っとる……なんやこの雰囲気)

騎手(……)
30:2018/04/15(日)01:23:41 tyo
1993年 春―――

ウッマ「結局暮れのレースでは負けたか……なんかあいつも引退したらしいし張り合いないわ」

ウッマ「でも年明け2戦走って調子も上がってきたで」

調教師「よし 特訓しよう」

ウッマ「えっ?」

調教師「次のレースではとんでもない化け物と当たる ヒーローになりたければ覚悟を決めるんだ」

ウッマ「……」

ウッマ「望むところじゃぁ!!!」
34:2018/04/15(日)01:26:17 2Ra
知らんけど泣ける終わり方しそう
36:2018/04/15(日)01:27:19 tyo
1993年 天皇賞・春―――

ウッマ「……」ゴゴゴゴゴゴ

騎手(凄い気合だ……口から火でも吹くんじゃないか……?)

騎手(そして今日はウッマ君と相性のいい京都の長距離レース)

騎手(ただ相手も……)チラッ

マック「今日勝てば このレース前人未到の3年連続制覇 負けるわけにはいかない」ゴゴゴゴゴゴゴ

騎手(同じく長距離レースの現役最強馬 一筋縄ではいかないぞ……)
37:2018/04/15(日)01:27:33 V4o
知ってるけど泣く
40:2018/04/15(日)01:30:16 tyo
ウッマ「うおぉぉおおおおお!!!!!」パカパカ

マック「くっ……」パカパカ

ウッマ「よっしゃぁ!!勝った!! これでGⅠタイトル2勝目や!!」

ウッマ「よっしゃぁぁぁああああああ!!!!!!!やったでぇぇぇえええええええ!!!!」



実況『関東の刺客、圧倒的人気のメジロマックイーンを破りました!』

ウッマ「これでワイも!……今度こそ!!ヒーローに!!!……んん?」
42:2018/04/15(日)01:34:02 tyo
ウッマ(『刺客』ってどういうこっちゃねん 完全に悪役(ヒール)やないか……)

ウッマ(ワイはブルボンの三冠を『阻止』して……)

ウッマ(マックさんの三連覇を『阻止』して……)

ウッマ「なんやねん!ワイが勝ったらあかんのかいな!!」ガシャーン

騎手「!!」

騎手「ウッマ君!!……自棄になるな!」

ウッマ「!……」
43:2018/04/15(日)01:38:58 tyo
騎手「僕たちは勝負の世界に生きている」

騎手「勝つために血のにじむ努力をしてようやく勝利をつかむ そこには善玉も悪役もない そうだろう?」

ウッマ「……」

騎手「僕たちは漫画に出てくるヒーローなんかじゃない。戦えば褒められることもあるし、けなされることもある。でもそれは戦ってる奴だけの特権なんだよ。周りの雑音なんて気にすることないよ」

ウッマ「……」

ウッマ「うっ……うっ……」ボロボロ

騎手(……)

ウッマ「うう……」ボロボロボロボロ

騎手(…………)
44:2018/04/15(日)01:40:37 abU
かなしいなぁ
45:2018/04/15(日)01:42:47 tyo
1994年 春―――

ウッマ「あかん あのレースの後は全然勝てへん……」

ウッマ「6連敗か……でも今度こそ……」

ウッマ「次はマックさんに勝ったあのレース……今度こそ……!!」

ウッマの足(ボキィ!!)

ウッマ「グエー!!」
46:2018/04/15(日)01:45:22 tyo
獣医「あぁ…古傷が再発なんて……ついてないね」

ウッマ「」

獣医「今はレースは無理だ じっくり治そう ね?」

ウッマ「えぇ……」
47:2018/04/15(日)01:48:54 tyo
1995年 春―――

ウッマ(あのレースから2年のあいだ 結局ワイは1勝もできんかった……)

ウッマ(勝ちたい気持ちはもちろんある でも……)

ウッマ(でも……ワイはどうしたらええんや……)

ウッマ(このまま引退かな……結局ワイはヒーローにはなれんかったのかいな……)

スタスタ

騎手「ウッマ君、行こう。」

ウッマ「騎手さん……」

騎手「2年ぶりにリベンジするんだ! 京都で君に勝てる奴なんていない 君はまだ終わってなんていない!!そうだろう!?」

ウッマ「」
48:2018/04/15(日)01:51:39 tyo
1995年 天皇賞・春―――

ウッマ(そうは言うたものの……)パカパカ

ウッマ(勝ったところでまた悪役に……)パカパカ

ウッマ(ええい ごちゃごちゃ考えるのはヤメぇや!!)パカパカパカパカ



ウッマ「うぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!」
49:2018/04/15(日)01:52:48 tyo
ウッマ「もうええわ! 何とでも言えぇ!!! ワイは勝ちたいんやぁあああ!!!」ドドドドドドドド

騎手(ラストスパート早すぎるよ!?抑えなくちゃ……)チラッ

ウッマ「うおおおおおお!!!!!」ドドドドドド

騎手(この気合は……ええい行ってやれ!)
50:2018/04/15(日)01:55:30 tyo
ウッマ「ぜぇ……ぜぇ……」

騎手「ウッマ君」

ウッマ「はぁ……はぁ……」

騎手「顔を上げるんだ 聞こえるだろ?」

ウッマ「……!!」

ワーワーワー
パチパチパチパチ

ウッマ「これは……!」

騎手「そうさ!今度こそ君はなったんだよ! 英雄(ヒーロー)に!!」

ウッマ「……」

騎手「おめでとう、相棒!」

ウッマ「うっ……ううっ……」ボロボロボロボロ
52:2018/04/15(日)01:57:54 tyo
>>51
とてもうれしいで
53:2018/04/15(日)01:59:10 tyo
1995年 宝塚記念―――

騎手「人気投票の結果はウッマ君が1位だって」

ウッマ「ワイ ホンマにヒーローになれたんやなぁ」

騎手「そうさ もう君を悪役(ヒール)と呼ぶ人はいない」

ウッマ「ワイが勝っても もう誰かをがっかりさせることもないんかなぁ」

騎手「ああそうだよ 胸を張って勝てばいい 英雄らしく!」
54:2018/04/15(日)01:59:21 y0D
95年天皇賞春の前の6着やった日経賞ワイは親父の知人に招待して貰い馬主席におったんやが
「こんな馬終わってるわ!」連呼して後から近くにそのウッマの馬主さんがいたと聞いて申し訳なく思ったワイサイテーやったわ
終わってる言うたけど好きな馬やったし天皇賞は感動しまくって宝塚はウッマが主役やんけと感無量やったわ
55:2018/04/15(日)02:00:31 tyo
>>54
歴史の生き証人になったんやね ここに来てくれてありがとう
56:2018/04/15(日)02:02:12 tyo
ウッマ(そういえばまた京都競馬場や……)

ウッマ(当年1月に発生した阪神・淡路大震災の影響で、例年開催の阪神競馬場ではなく京都競馬場での開催となっていた[42]んやな……)

ウッマ「ワイここ好きや 今日も勝てるとええなぁ……」

騎手「頑張ろうね 相棒」

ウッマ「おかのした」


☆  ☆  ☆


騎手(……んっ?)
57:2018/04/15(日)02:04:38 tyo
ウッマ「」パカパカ

ウッマ「」パカパカ

ウッマ「」パカパカ
58:2018/04/15(日)02:06:52 tyo
ウッマの足「グッシャァ!!」

ウッマ「!!」

ウッマ(この音……あかんやつや……ああ……)
59:2018/04/15(日)02:08:27 tyo
バァーン! ドスッ ゴロゴロッ

ザワザワザワザワ



騎手「ウッマ君!!ウッマ君!!! くっ……」ズキズキ
60:2018/04/15(日)02:09:46 y0D
絶望のブルーシート・・・
61:2018/04/15(日)02:10:21 tyo
ウッマ「騎手さん……ワイ……どうなりますのん?」

騎手「……」












獣医「……君の足はもう元には戻らない……そしてどんどん腐っていって君の身体を蝕むことになる」

ウッマ「ほな ワイもう生きては行かれへんのですか……?」

獣医「……現代の我々にはもう 君が苦しまないようにするしか方法がない すまない……」

ウッマ(……)
63:2018/04/15(日)02:13:51 7Yw
泣いた
64:2018/04/15(日)02:13:59 tyo
ウッマ「騎手さん」

騎手「……ああ」

ウッマ「ワイは…ワイは『競走馬の英雄(ヒーロー)』に なれたんですよね…?」

騎手「勿論だとも……!!」

ウッマ「やったぜ……」






ウッマ「ほな……さぃなら…ゃで……。ぇぇと……『相棒』!」

騎手「!! ……」
65:2018/04/15(日)02:15:48 tyo
騎手は背筋を伸ばし、走り去る馬運車に深々と頭を下げ、英雄の最期を見送った。
表情を窺い知ることは誰も出来なかったが、その男の背中は、全てを語っていた。

その燃え尽きた生命に、祝福あらんことを。彼の馬名の導くが如く。
66:2018/04/15(日)02:16:25 9rd
泣いた
67:2018/04/15(日)02:20:11 tyo
こんな感じで終わりますが良いでしょうか?
これ以上語る言葉を僕は持っていません

かつて存在した ライスシャワーという英雄に興味を持って下さった方は
今日から僕の友達です
68:2018/04/15(日)02:20:34 y0D
強い馬なのにやっと人気者になれたのが95年天皇賞
主役として臨んだのが最期の宝塚記念という・・・

イッチお疲れさま久々思い出した・・・有難う
69:2018/04/15(日)02:22:24 tyo
>>68
当時 目の前の出来事を理解できなかったし受け入れられんかったよ
そして それこそがホースレースだと思い知ったよ
読んでくれてありがとうございました
70:2018/04/15(日)02:24:35 ql7
震災がなけりゃ死ななかったのかもな
73:2018/04/15(日)02:27:10 tyo
>>70
かもしれないね
ウッマは生きて 敗北したかも知れなくて その先は……

阪神だっ「たら」勝ったかも知れないとしか言えないし 言いたくないね


ウッマ「えっ! ワイが競走馬に!?」