1:2018/04/24(火)22:38:31
1995年 春―――

ウッマ「生まれたで」

マッマ「ハーイ ユーアーマイサーン」

マッマ「アイラービュー」

ウッマ「えぇ……(ミートゥー)」



2:2018/04/24(火)22:40:13
ウッマ「ワイはアメリカ人(※馬)として生まれたんか」

ウッマ「よっしゃ ほなら米国一のウッマを目指すで アメリカンドリームや!!」

ウッマ「はやくデビューしてみんなをアッと言わせるやでwwwwww」

ウッマ「そうと決まればトレーニングや」パカパカ
3:2018/04/24(火)22:43:19
オーナー「おっすおっす」

ウッマ「あっ 初めまして」

オーナー「ワイは日本で馬主やってる者や お前を日本でデビューさせるからひとつよろしくな」

ウッマ「ファッ??」オドロキー

オーナー「なんやお前 競走馬はメンタルもタフやないといかんで」

ウッマ「えぇ……」

オーナー「頼むで」

ウッマ(ワイは日本で走ることになるんか……)
4:2018/04/24(火)22:47:36
1997年 秋―――

ウッマ「ワイもようやく競走馬デビューや」

ウッマ「もう日本の気候にも慣れたし みんな良くしてくれる」

調教師『気楽にいけよ~』

厩務員『がんばれよ~ でも無理はするなよ~』

ウッマ「みんな強そうやな…… ちょっと緊張するけど 仲間の恩に報いるんや!」パカパカ

ウッマ「あれ? 圧勝やんけ」
5:2018/04/24(火)22:51:39
1998年 春―――

ウッマ「2戦目も圧勝したで」

ウッマ「今日は初の重賞レースや これでワイが競走馬として大成できるか試されるんや」

ウッマ「ワイはアメリカ一はもうどうでもええ 日本一を目指すんや」ゴゴゴゴゴ

パカパカ

ウッマ「勝ったで」
12:2018/04/24(火)22:53:41
グラス「よう お前強いな」

ウッマ「?」

グラス「お前ともデカいレースで一戦交えたいぜ」

ウッマ(こいつ……速そうやな)

ボキィ

ウッマ「ファッ!?」

グラス「あかんwww骨折れたンゴwwwwww」

ウッマ「……」

グラス「勝負はお預けや ええな!」

ウッマ(うーんこの)
13:2018/04/24(火)22:57:12
ウッマ「まぁええわ 余所は関係ないで ワイは強くなって勝つことだけ考えてればそれでええ」パカパカ

ウッマ「次のレースも勝ったで」

ウッマ「この調子や」パカパカ

ウッマ「よっしゃ 5戦5勝負けなしでG1レースを制したで!」

オーナー「やるやん」
18:2018/04/24(火)23:02:31


ウッマ「これでワイにも見えてくるっちゅうわけやな 一生に一度の晴れ舞台・サラブレッドの頂点『日本ダービー』が!」

中央「駄目です」

ウッマ「……ファッ!?」

中央「あなたは外国で生まれたので 日本のクラシック競走(※若い馬の重要なレース)に出る権利がありません」

ウッマ「なんでやねん! ワイはオーナーさんの意向で米国一を捨てて海を渡ってきたんやぞ!!」

中央「残念です 今後は外国産の馬が大レースに出られるようになれば良いとは思いますが 今の私には何の権限もありません」

ウッマ「……」
21:2018/04/24(火)23:05:30
中央「あなたは外国産馬 いわゆる『マル外』なんです 」

ウッマ「……?」

中央「外国で生まれて日本で調教された馬を通称『マル外』と呼んでいます わが国で生まれた馬とは出られるレースなどが異なるルールなのです」

ウッマ「!?」

ウッマ(『マル外』…… なんやねんそれ……)
23:2018/04/24(火)23:11:02
調教師「嘆くなや」

ウッマ「……」

調教師「生まれはともかく お前は紛れもなく日本馬 正真正銘ウチの子や ただルールやから出られんレースもある……」

調教師「……日本の競馬界が国内の産駒を優遇してる事実は 確かにあるのかも知らん」

ウッマ「……」

調教師「ほなら 世界一になったらええやないか! 夢はでっかく! アメリカ生まれ日本育ちのワールドホースになればええやないか!!」

ウッマ「!!」
24:2018/04/24(火)23:14:39
ウッマ(そうや……アメリカも日本も関係ない てっぺんに行けばええんやないか)

調教師「よっしゃ そうと決まれば強気で行くで 秋の目標はジャパンカップや」

ウッマ「ファッ?」

調教師「国内国外問わず 年齢性別も関係なく最強の馬が集まるレースや」

調教師「……このレース お前の歳で勝ったウッマは過去1頭もおらん」

ウッマ「」

調教師「でもワイは お前なら勝てると思っとる」

ウッマ「えぇ……」

調教師「どうや?お前のその『マル外』とかいう不格好な看板も このレースではなーんも関係ないで」

ウッマ(……!!)
26:2018/04/24(火)23:20:57
ウッマ「少なくともワイがジャパンカップに出れば」

ウッマ「ワイは『外人(※馬)』扱いはされん 『外国で生まれたけど日本代表のウッマ』として扱われる……」

ウッマ「……」

ウッマ「なーにが『マル外』や! 何処で生まれようとこっちの勝手やろがい!!」プンスカ

ウッマ「……」

ウッマ「くっそ……何やねん……」モヤモヤ
29:2018/04/24(火)23:23:49
1998年 秋―――

グラス「よう 久しぶりだな」

ウッマ「あっ」

グラス「今日は負けねえよ と言いたいところだが……1頭化け物がいるな」

スズカ「」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ウッマ「強そう(馬並感)」

ウッマ(だがしかし…… 負けるものか……!!)
28:2018/04/24(火)23:23:48 OyG
あぁ、やっぱりエルコンドルパサーやったか...
30:2018/04/24(火)23:25:14 z8T
エルコンドルパサーて外国馬扱いやったんか
31:2018/04/24(火)23:28:47
>>30
外国厩舎の所属馬よりはマシですが
当時は外国産馬に対して厳しい出走制限がありました
今は緩和されています
32:2018/04/24(火)23:29:29
スズカ「……」ギューーーン

ウッマ「!!」パカパカ

ウッマ(速すぎンゴ!!)

ウッマ(負けたンゴ…… 生まれて初めて……)

ウッマ(これが……古馬の壁…… やはりワイらの歳ではかなわんのやろか)

グラス「」チーン
35:2018/04/24(火)23:33:30
1998年 ジャパンカップ前夜―――

調教師「ええか 今年招待の外国勢は一流どころの辞退も多くて小粒や」

調教師「だが日本勢は侮れんぞ 牝馬ながらも天皇賞を制し歴史に名を残した『女帝』・エアグルーヴ」

調教師「お前も含めて『黄金世代』の呼び声高い同期からはダービー馬・スペシャルウィーク」

ウッマ「……」

調教師「門前払いされたお前にとっては複雑な思いもあるのかも知らんが……」

ウッマ「……」

調教師「ええやないか これで勝てば誰もが納得する 本当の一番が誰なのか!」

ウッマ「ええ……」

ウッマ「やったるで!!」メラメラ
38:2018/04/24(火)23:38:14
1998年 ジャパンカップ―――

ウッマ(ワイは3番人気か……)チラッ

スペ「」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

エア「」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ウッマ(流石に凄いオーラや……!)

ウッマ(鼓動が早くなる……)

ウッマ(これが……日本のトップ達 ……流石や)

騎手「……」
41:2018/04/24(火)23:42:18
最期の直線―――

エア「行くわよ!!」ドドドドドドドド

スペ「行きますよ!!」ギュイーン

ウッマ(やはりこの2頭は強い…… だがっ……!!)

騎手「そうだ 僕たちはここで負けるわけにはいかない!!」

ウッマ「騎手さん!?」

騎手「ウッマ 見えるか!? いや見るんだ!! あの坂を登った先には……」

ウッマ「先には……!?」
42:2018/04/24(火)23:44:04
騎手「『世界』が待っているんだッ!!」

ウッマ「!!」
43:2018/04/24(火)23:46:06
ウッマ「うおおおおおおおお!!!」ギュイーン

エア(くっ まだそんな力が!?)

スペ(さらに引き離されるだと!?……信じられない!)

ドドドドドドドド

ウッマ「か……勝った!!」

騎手「凄い! 良くやった!!」

ウッマ「どや!見たか! やったったでぇ!!」ヒヒーン
47:2018/04/24(火)23:49:51
ウッマ「その後 ワイは来年に備え休養に入ることになった 今年のレースはここまでや」

ウッマ「ところで この年はワイの同期達も大活躍したんや」

ウッマ「三冠レースのうち二冠を手にしたセイウンスカイ」

ウッマ「ダービー馬スペシャルウィークも古馬相手に一歩も引かず 更なる成長を見せる」

ウッマ「そして怪我で調整が遅れたけど 暮れの有馬記念で格上を粉砕したグラスワンダー」

ウッマ「ワイはそんな超一流のライバルたちと切磋琢磨して 実力を付けていったんや」
49:2018/04/24(火)23:53:03
1999年 年明け―――

ザワザワ

ウッマ(なんか今日は騒がしいなぁ)草モシャモシャ

オーナー「ウッマ! これを見ろ!!」ペラッ

ウッマ「!!」

 『JRA賞 1998年度 最優秀4歳牡馬 受賞』

ウッマ「おお!!」

オーナー「これは日本一の4歳馬の称号や! お前の強さは世間に認められたんだよ!」

ウッマ「……や やった!!」ウルウル

調教師「これでお前は文句なしの『日本代表』やで 胸を張るんやで」

ウッマ「えぇ…… おおきに…… おおきに……」ボロボロ
52:2018/04/24(火)23:56:30
オーナー「これで開けたな 世界への扉が」

ウッマ「世界……」

調教師「言ったやろ? 夢はでっかくってな 来年挑むのはこれや!!」ドン

 『フランス ロンシャン競馬場開催
   凱 旋 門 賞 ( 国 際 G 1 )』

ウッマ「」(白目)

調教師「歴史と伝統を誇る全世界のホースマンの憧れ! 文句ナシの最高峰 世界の頂点や!!」

オーナー「過去欧州勢の圧倒的な強さに跳ね返されてきたレースや 今度こそその壁をブチ破って歴史を変えてやるんやで!」

ウッマ(え……えらいこっちゃ……)
53:2018/04/24(火)23:59:05
1999年 春 フランス―――

調教師「まずはこのレースでフランスの競馬に慣れるんや ほいで秋にはデカい所獲るで!」

ウッマ「おかのした」パカパカ

ウッマ「2着……」

騎手「惜しかった…… でも地球半周の長距離輸送の上に慣れない環境 それでこの結果は上出来だよ」
57:2018/04/25(水)00:01:59 uLw
ウッマ「その後ワイは夏のG1レースを制し 秋にも前哨戦を勝利!」

ウッマ「ワイの活躍の様子は日本にも届き 多くの人が期待を寄せてくれとるみたいやった」

ウッマ「ワイは怪我も体調不良もなく順調 もちろんやる気も充分や!!」

ウッマ「そして…… 運命の日はやってきたんや」
58:2018/04/25(水)00:03:38 uLw
1999年 凱旋門賞―――

ウッマ「武者ぶるいがするで……」ブルブル

騎手「もうここまで来たら勝とう! 怖れることはない きっとやれる!」

ウッマ「ええ!!」

ウッマ(……)
59:2018/04/25(水)00:05:21 uLw
オーナー(回想)『お前を日本でデビューさせるからひとつよろしくな』

中央(回想)『あなたは『マル外』なんです』

調教師(回想)『アメリカ生まれ日本育ちのワールドホースになればええやないか!!』

グラス(回想)『勝負はお預けや!』

騎手「ウッマ……」

ウッマ(ワイは走る……! 『日の丸』を背負って……!!)

騎手「……行くよ!!」
60:2018/04/25(水)00:05:32 94g
ああ・・・
61:2018/04/25(水)00:07:12 uLw
最後の直線―――

ウッマ「うおおおおおおおお」ギュイーン

騎手(残り500メートルで先頭……! 余力も充分ある!)

騎手(あと300……! 200……!!)

騎手(行けるか……!?)

ウッマ「!!」
62:2018/04/25(水)00:09:12 uLw
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ウッマ(……なんか迫って来た!!凄いプレッシャーや!!)

モンジュー「やらせるかァ!」ドドドドドドドド

ウッマ(並ばれる……!? 負けるか……!! 負けるもんか……!!!)

ウッマ「うおおおおおおおお!!!」
64:2018/04/25(水)00:12:44 uLw
☆  ☆  ☆


ウッマ「……!!」

ウッマ(ま……負け……た!?)

ウッマ「はぁ…… はぁ…… くっそ……!!」

騎手「……」

騎手「ウッマ 見て」

ウッマ「?」チラッ

ウッマ(他の馬が遥か後方に置き去りになっとる……)

騎手「世界の頂点まであと半馬身……惜しかった でも」

騎手「間違いなく今の君は最強のサムライだ! 胸を張って帰国しようじゃないか!」

ウッマ「……ええ!」ヒヒーン
66:2018/04/25(水)00:14:18 uLw
 こうして あるウッマの戦いは幕を閉じた。
 かつて海の向こうで生まれ 我が国で育ち、愛され
 そして世界に向けて天高く翔けていった気高き大鷲。
 その飛行の軌跡は、今も色褪せることなく燦然と輝いているのだ。

                         おしまい
70:2018/04/25(水)00:17:11 3JE
20世紀最高の馬だと思ってるわ

諦めを知らない走りかっこよすぎるんや
72:2018/04/25(水)00:18:49 uLw
>>70
ほんと心技体そろった万能 スキがない名馬中の名馬やと思います
74:2018/04/25(水)00:21:19 uLw
さて 遅くまでお付き合いありがとうございました
ほな……